表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/102

空を駆ける

 『アトラ』の出入り口まで戻ってきた煉は、帰りの船がないことに気が付く。定期便となっているので待っていれば来ると思うが、ただ待つのには抵抗があった。

 『魔力掌握』の練習をしながら待っても良かったが、ダンジョン内と外では外部魔力の量が違いすぎるため、それも難しい。


 そこでふと煉は、自身の魔力を足場に空中に留まるスキル『浮遊』を思い出す。ダンジョン攻略中は魔力消費が大きすぎるため、実用的では無いと判断したスキルだが、魔力を気にしなくても良い帰り道ならば、練習に持ってこいであることに気が付く。


「それに船より走った方が早い。帰るか」


 この日ワイキキビーチでは、夕日をバックに空を駆ける煉の姿を見ることができた。

 


 次の日、煉がビーチに到着すると、『アトラ』専従の探索者たちも出発の準備をしていた。その中でも目立つ集団が2組、ここ『アトラ』で精力的に活動しているクラン所属のパーティであった。その中で煉が名前を知っているのは2人。

 1人は魔法使いのみ構成されているクラン『Fairy-Fairy』のサブマスターであるウェンディー・フローラ。彼女は呼吸をするかのごとく水魔法を扱うことができる。そのため水中で行動を阻害されることなく、逆にモンスターたちの行動を阻害することができる探索者である。『Fairy-Fairy』のマスターと昔喋った際に彼女の事を絶賛していたため覚えていた。

 もう1人は『アトラ』のならず者集団として有名な『Chaos』のクランマスター、デトロン・フューマ。彼はスキル『海獣』で、身体の一部、もしくは全部を海の生物に変化させて戦うことができ、そのスキルを生かし『Fairy-Fairy』1強であった『アトラ』において名を轟かせる存在となった。


「世界的にも評判の良い『Fairy-Fairy』とならず者と言われて嫌われている『Chaos』の勢力争いか。まあ俺には関係ないか」


 そう言い乗合船の方へ向かった煉は多くの探索者の視線には気が付かなかった。その中にはもちろん、2人の視線もあったのだが。


―――――――――――――――

 

 『Chaos』のクランマスター、デトロン・フューマは離れていく煉の後ろ姿を睨みながら舎弟の男に問いかける。


[あれは誰だ?]

[へい?]

[今、俺たちを観察してた奴は誰だ?]

[あ、あれはレンですぜ。日本のレン・カンザキってやつでさー]

[奴がそうか。こっちの化物どもと遜色ない強さだ。あれでまだ途上。末恐ろしいガキだ]

[それほどですか?]

[ああ。取り敢えずあのバカどもには手を出さないよう言っと…ってアイツらどこ行った?]


 デトロンが辺りを見渡すと、先程まで準備をしていた他のメンバーがいない。すると舎弟の男は遠くの方を指差し言う。


[何か暴れたりないって言って向こうで喧嘩を…]

[バカか。今からダンジョン探索だろうが! 何考えてやがる]

[何も考えてませんぜ]

[バカだもんな! てかお前も止めろ]

[俺が言って止まるならリーダーがこんなに苦労してませんぜ]

[偉そうにいってんな! 早く止めるぞ、小言を言われるのは俺なんだからな!]

[へい]


 結局、デトロンが血の気の多いメンバーを全員殴り飛ばしてしまったため、今日は探索どころではなくなってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ