表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/102

精鋭攻略

 煉は福岡に到着するとすぐにダンジョンで虎太郎と獣太と合流した。


「あれは用意してくれました?」

「ああ、これが福岡ダンジョンの蟻モンスターの体表ワックスだ。知り合いの『錬金術師』に抽出してもらった」

「しかし中々に危険な作戦じゃのう。蟻の体表ワックスで擬態して最深部まで行くとは、思い付いてても出来んわい」


 煉立案の作戦は蟻系モンスターの習性を利用した潜入作戦であった。蟻系モンスターは視覚ではなく触覚で敵味方を区別する特徴がある。その時に触覚が何をもって敵味方を区別するかというと、今回用意した体表ワックスに含まれる化学物質である。そのため体表ワックスを使えば蟻系モンスターに襲われることなく潜入することが可能なのである。

 前回の作戦は氾濫を阻止すべく蟻系モンスターの掃討を掲げていた関係で、この体表ワックスは使われなかったのだ。


「まあ基本的な蟻系モンスターにしか通用しないので下層を抜ける裏技くらいに思っておけばいいですね」

「それでも今回は、残兵を気にせず進めるから気が楽だ」

「じゃのう。氾濫を食い止めながら進まなくて良いだけでかなり楽になるわい」

「それじゃあ、行きましょうか」


 今回の作戦は無駄な戦闘は極力避けて『蟲の女王』の元まで最短で進むことを目的としていた。体表ワックスで潜入する関係上、それの効果が切れた場合敵陣で孤立する危険があるため、前回失敗した掃討作戦よりも全滅の危険性は高い。今回、秘密裏に行うため問題にならないが、公に協会が立案していたらまたもや炎上するであろう作戦なのであった。


 ―――――――――――――――


 煉たちがダンジョンを進んでいくと驚くべきことに蟻たちは下層と中層の境にある大階段付近まで進軍していた。協会や煉たちの計算より明らかにペースが早かった。


「結果論じゃが掃討作戦はそもそも難しかったじゃろうな。明らかに異常事態じゃけんの」

「そうですね。我々だけじゃ途中でじり貧になってましたね、このペースだと」


 自分たちに気が付く様子もなく素通りしていく蟻たちを尻目に冷静に考察している2人、それとは対照的に興奮気味に色々と実験している煉。


「『本能覚醒』状態の蟻にグラルの思考誘導は効かないか。そもそも状態異常の上書きが出来ないのか、思考誘導の性能が足りないのか。グラルに蟻を食わせれば『本能覚醒』についても…」

「煉坊、熱中してるとこ悪いが時間もないから早く先に進もう」

「そうじゃな。考察してたワシらがいうことじゃないが」

「あ、すいません。行きましょうか」


 少し時間を掛けてしまったが、3人は無事に軍隊蟻の集団内に潜入するのだった。


 軍隊を指揮する統率蟻の中に『魔力感知』的な方法で敵味方を区別する特殊能力をもった蟻がおり、集団リンチをくらいかけるというハプニングはありつつ、特に怪我など負うことなく下層を抜け深層に到達した。

 下層にいた統率蟻が特殊能力で体表ワックス偽装を見抜いたということは、優秀な子を踏襲した次世代を産み出す『蟲の女王』の性質的に、統率蟻相手にはもう体表ワックス偽装は通用しないだろう。


「できる限り統率蟻を先に討伐するので、コジエズさんはよろしくお願いしますね」

「了解じゃけん、任せとけい」


 そのため最低限の戦闘で行くためには統率蟻から潰していく必要がある。その役割として適任なのが虎太郎なのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ