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パーティー指導

 翌日、『Ruler』の暴露動画及びその動画に映り込んでいた煉の画像はトップニュースとして各局で取り扱われた。しかしその取り扱い方は様々であった。アメリカのカリスマ探索者の裏の顔についてフォーカスする局があれば、日本の若き英雄、煉について特集する局、この事件での各国の動きに着目する局もあり盛り上がっていた。


 そんな中、渦中の人物である煉はというと


「祭、遠距離攻撃に弱いなら『魔法斬り』なんかを習得できれば対策できるぞ」

「あのね。そんなにポンポンスキルなんて習得できないの普通」

「ならまず『魔法耐性』を高めて低級魔法で怪我しないくらいになってからだ。弱い魔法から徐々に強さをあげるのは氷華の練習にもなる」

「はぁー。了解。やってやろうじゃないの!」

「祭、少し冷静になりなさい。煉のペースにのまれてるわ」


 幼なじみパーティに指導をしていた。幼なじみの面々には色々と心配されたが、今日の約束を取り付けたのが氷華たちであったのもあり、戸惑いつつも指導を受ける運びとなった。


「それで、君はサポート役だっけ?」

「は、はい、バフと回復を主にやってます」

「さっきの戦闘をみる限り回復はそこまで問題ない。下に行くならもう少し射程と回復量を増やしたいが、それはモンスターとの戦闘を続けていけば自然と上昇するから焦らず伸ばしていってくれ」

「は、はい!」

「ただバフに関しては何とかした方が良い。バフの種類が豊富なのは強みだけど、バフの使い方が悪い」

「使い方ですか?」

「例えば、さっきのモンスター相手に、祭はスピード不足、氷華は威力不足だった。なのに使われたバフは両者とも『威力上昇』だった。祭に『スピード上昇』を使ってればもう少し早く倒せた筈だ」

「ですが、個人個人でバフを変えるのは」

「難しい。戦況を瞬時に判断してバフを掛けるのは熟練者でも難しい。だからすぐにできるようにはならない。まずはモンスターを倒し終わった後にどのバフが最適だったか考える癖をつけろ。それだけで大分変わる筈だ」

「分かりました!」


 そんな優衣への指導を見ていた祭は膨れっ面で煉へと近づく。


「私と優衣で何か教え方違くない? 私ももっと優しく教えてほしいな」

「祭は遠距離攻撃を警戒しすぎて多くの行動が半歩遅くなっている。だから遠距離攻撃への苦手意識がなくなるだけで、数段上の実力になる。だから『魔法斬り』を習得した方が良い」

「え、そう?」

「チョロいですよ祭先輩」

「優衣うるさいよ。あんまり知らないだろうけど、煉はダンジョンに関してはお世辞も嘘も言わないの」


 煉が探索者を誉めればそれは煉の本心なのだ。とはいえ、一言で機嫌が直った祭がチョロいのは変わらないが。


「楽しそうなところ悪いがそろそろ下層にいく。格上のモンスター相手への立ち回りを見させてくれ」

「了解」


 こうして『氷天華祭』への指導は1日中続くのだった。


 ―――――――――――――――


 ダンジョンでの指導を終えた煉は氷華と2人で帰宅していた。

 

「煉。今日はありがとう。助かったわ」

「別に。そういう約束だからな。特に礼を言われることでもない。それにしても祭も優衣も1日、ダンジョン探索したのにまだ予定を入れてるとはタフだな」

「そ、そうね。お陰で2人で帰ることになってしまったわ」

「別に2人でも良いだろ」

「そ、そうかしら」


 急遽用事があることを思い出した祭と優衣は何処かに行ってしまった。とはいえ全員で帰宅しなければという概念は煉にはないので特に気にしない。


「そういえば、『Ruler』の件大丈夫なのかしら?」

「大丈夫って? 何か朱里にも聞かれたな。別に生命に危険が迫っていた訳でもないしな」

「それでも、あなたがニュースになれば心配するわ。それがどんなに些細なことでもね」

「そんなもんか」

「ええ、煉も朱里ちゃんが何かニュースに出てたら心配になるでしょ?」

「…確かにな。何か俺の方が教わってるの多い気がするな」

「ふふ、そうかしら?」

 

 氷華とは煉を諭せる数少ない人物なのであった。

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