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暴食

 煉が帰国したことを知ったマスコミ等から、チャンネル広報用のSNSに取材の依頼がやまのように入った。それを煉は目線のみで拒否した。

 優弥から断ると後々面倒になりそうな相手もいることを伝えられたが煉の意思は変わらない。


「でもさ、クリアフィではインタビュー受けてたでしょ?」

「通訳と日本の記者の人しか会話できる人がいなかった。インタビューというより会話に近い」

「ならその感覚で他のも受けたら?」

「インタビューなんて受けると注目されてる感じがする」

「感じじゃなくて注目されてるんだよ!」


 煉は自身が世の中に広く認知されていることは理解している。しかし煉は、ダンジョン探索の成果によって誰かに持て囃されたい訳ではない。煉の中で趣味として完結しているモノを誰かに凄いと言われても何だか他人事なのだ。そのため空港のロビーに人が集まっていても自分を見に集まっているなど露程も思わないのだ。


「前も言ったが趣味を持て囃されるのは気まずいし、特に面白いことを言える気もしない」

「…わかった。取り敢えず伝えとくよ」


 優弥としても煉がこう言うことは分かっていた。ただ協会からの依頼を断った際に煉に対して辛口の記事を出したマスコミや煉を批判したニュース番組が軒並み炎上しており、そんな所からインタビューや出演のオファーが殺到していた。優弥としても掌返しに付き合いたくない気もするが、それで逆恨みされても詰まらないので、今回は受けた方がと提案したのだが、煉の意見は変わらなかった。


 ただ優弥の心配は杞憂に終わる。渋谷に続いて海外の貧困地域を救った煉の神格化はネットを中心に進んでおり、そんな者を相手に真っ向勝負を挑むほど元気なマスコミはいなかったのである。


 ―――――――――――――――


 週末になり、煉は来栖の元を訪れていた。


「これが『スキルオーブ』かーい?」

「そうだと思います。勘ですが」

「勘か。特級探索者の勘はあたるからーな。特にレンレンの勘はね。りょーかいした。今から解析してみるよ。すこーし時間を貰うけどどうする?」

「…なら特級ダンジョンでも探索してきます」

「いうも思ったよ。じゃあ夜にでもまたよってね」

「お願いします」


 ということでウキウキで特級ダンジョンに向かう煉であった。

 

 そして夜になり戻ってきた煉の表情はあまり優れていなかった。


「やーぱり不機嫌だなレンレン」

「何か凄く混んでいたんですが」

「まあ誰かさんのお陰でね」

「誰ですかその迷惑な人。見た感じ浅層レベルの人が下に進もうとして熟練のポーターの人とは揉めてるのを何回も見ました」

「まあ初心者探索者からしたらポーターなんて、ただの荷物持ちだからなー」

「うーん」

「ま、気になるならそこら辺を動画にしたら? マナー講座配信者なんだしー」

「はぁ」


 ポーターの件は置いておいて、自身のレベルより強い階層に行くのは、煉もやったことがあるのであまり偉そうに言えることでもない。とは言えマナー違反と言えばマナー違反なので優弥に言ってみて内容を考えるのを丸投げしようかと思案する。


「それで本題だけどー。『スキルオーブ』の解析は終わった。けーど、読み取れない部分もあった」

「読み取れない部分?」

「見てくれれば分かるよー」


 そう言って来栖は一枚の紙を取り出した。その紙にはスキルの説明書きらしき文章が載っていた。


『暴■』

 万物■食ら■■■

 ■らったを■■■み自身の■■するが■■■続けな■■■ス■ル■有■を食■■■■死に■■■める

 ■初の■■■の1つ


「解析出来たのはこれが精一杯だが、『悪食』の上位スキルかも知れないというレンレンの勘を信じると、このスキルの名前は『暴食』かな?」

「『暴食』?」

「あれ? 知らないかい七つの大罪」

「いや知ってますが。本当にそれなんですか?」

「さあ? 正直分からない。ただ大罪系のスキルは過去に一度だけ保有者が確認されている。その時のスキルは『憤怒』だよ」

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