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支部長

 竜王の素材で造られた装備を取りに行ったり、ダンジョン攻略に勤しんだりと、煉は日々、楽しく活動していた。


「日々変化してくダンジョンを見られるのは新鮮だ。だいたいダンジョンボスが復活するタイミングも分かってきたから、ある程度の規模までは早めに成長させたいが」


 そんな事を考えながら協会支部に着くと、いつも笑顔で出迎えてくれる摩耶が浮かない表情をしていた。


「どうかしましたか?」

「煉くん…支部長が煉くんにお話があるそうなのですが、今からお時間大丈夫でしょうか」

「摩耶さんが敬語になるときって何かあったときですもんね。大丈夫ですよ」


 この後とくに予定も無かったため支部長室で話を聞くことになった。

 ここ相模ダンジョンで活動する唯一の特級探索者である煉は、何度か支部長と話したことがあるが、いつもオドオドしている人だったと記憶していた。しかし支部長室には支部長以外にもう1人男が座っていた。


「よく来てくれた! さあ座ってくれ」

「はい」

「私、探索者協会の探索部長の荻野です」

「煉です」

「煉くんの最近の活躍は私も耳にしているよ」

「ありがとうございます」

「あの異常氾濫を終息させた探索者が日本にいるなんて、探索者協会に勤めている者として鼻が高いよ」

「そうですか」


 無駄話が続く。心の中で早く本題に入ることを祈る。するとようやく


「さて、それで今日君を何故呼んだかと言うとだね」

「はい」

「現在、煉くんに多くの国から派遣要請が来ていてね、政府と協会とで協議をした結果、まずこの国がいいんじゃないかという結論になったのだよ。まあもし気に入らないようなら他の候補もあるから眼を通してくれ」


 そういって何枚かの書類を渡してくる。多くの国と言っていた割に候補の国数は少ない。

 煉は全ての書類に眼を通す。そう提案してきた荻野は、何故か不機嫌になっていたが構わず内容を確認して結論を出す。


「お断りします」

「ほう、やはりこの…は? 煉くん、今なんと?」

「今回の要請は、あくまで要請ですよね?承諾するかの決定権は自分にありますよね?」

「日本政府と探索者協会の顔に泥を塗るつもりか!」

「と言われましても要請を断るのも探索者の権利なので。話がこれだけなら失礼します」

「ま、まて! 話はまだ終わって、恥を知れ恥を!」


 要請を断ったら掌を返したように罵倒してきた荻野を後目に支部長室を後にするのだった。


「話が違うではないか支部長!」

「す、すいません荻野部長」

「まったく最近の若者は国のためにという精神がないから困る。まあいい。私を虚仮にした報いは受けて貰うとするか」


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 派遣要請を断った帰り道、優弥から1つのメッセージが送信されてきた。その内容は丁度タイムリーな話題であった。


【外国の貧困地域からの探索依頼らしい。何か日本の探索者協会に依頼したけど門前払いだったからこのSNSに言ってきたらしい。一応、ダンジョンを調べてみたけど煉が興味持ちそうな感じだった。一応詳細も添付したから眼を通して上げて欲しい。なんか凄く切実そうだったから】



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