待ち合わせ
「朱里」
「おにい遅いよ」
「これでも早い方だ。それで氷華たちは?」
「氷華ねえたちはちょっと先生に呼び出されてるからもう少し掛かるって」
「そうか」
氷華たちとの約束の日、彼女たちの学校の校門前までやって来た煉。本来なら校門前で待っている筈の氷華たちとさっさとダンジョンに出発する予定であったが、用事ならば仕方がない。妹の朱里と一緒に待つことになった。
「あかりー、まだ帰ってなかったん…えっ、煉さま?」
「ああ、よしのん。えーとこちら私のお兄ちゃん。名前は知っての通り煉ね」
「さま? あ、いつも妹がお世話になってます」
「え、こちらこそ朱里にはいつも助けて貰ってます。もう朱里! 煉さまがお兄様だったなら言ってよ!」
「私のお兄ちゃん、今話題の煉なのって? やだよ恥ずかし。てかよしのんが大声出すから皆、気が付いちゃったじゃん」
1人が気が付けば誰かは気が付くものである。ワラワラと学生たちな集まってきた。事態の収拾がつけなそうで困っていると、漸くお待ちの人物が登場した。
「これは何の騒ぎかしら?」
「「氷華先輩!」」
「本校の生徒として良識ある誠実な態度を持って行動しなさい」
「「は、はい!」」
煉がいることで緩んでいた空気が、氷華の登場によってキリッと引き締まる。そして氷華の無言の圧力を感じた生徒たちはすごすごと帰っていった。
「ごめんなさい。少し先生の手伝いをという話だったのだけど、色々と押し付けられていたの」
「そこまで待っていない。こっちこそ助かった。ありがとう」
「どういたしまして」
「あ、氷華ねえ来たんだ。それじゃ私は帰るね。行こよしのん!」
「え、うん。さようなら煉様、氷華先輩」
「ええ、さようなら」
妹たちも帰っていき、煉と氷華2人だけとなる。
「それにしても祭ともう1人のこ遅いな」
「まだ来てないのね。祭からは何も連絡は――」
「どうした? 祭から連絡があったのか?」
「あ、ええ。祭と優衣は今日は急用が出来たから来れないそうよ。だからパーティーの連携を見るのは今度にして貰いたいわ」
「了解。それじゃあ今日は?」
「個人レッスンをお願いしたいのだけどダメかしら?」
「別に構わない。それなら早めに行くか。今日は相模ダンジョンでいいんだよな?」
「ええ」
と言うことで急遽2人きりでダンジョン探索をすることになった。
そんな2人を物陰からほほえましく見守る者たちがいた。
「あれが氷華先輩。いつもと全然違うじゃないですか。あれが特級探索者の魅力ですか」
「どっちかって言うと煉の魅力かな? 昔から氷華は煉と一緒にいるときはあんな感じだよ。口調とかは変わらないけど、トーンと表情が全然違うの。本人は無自覚だけど」
「そうなんですね。てかどうしますか、付いてきますか?」
「ここはクールに去るわ。というか下手に付いていくと煉の『魔力感知』に引っ掛かる」
「さすが特級探索者」




