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家族

 煉がいつも通りダンジョン探索を終え帰宅途中、見覚えのある後ろ姿を見掛けたので声を掛ける。


朱里あかり、今帰りか?」

「おにい…そっちも?」

「ああ、ダンジョン帰り。お前は塾だよな?」

「そうだよ。私は受験しないけど中3だからね。勉強しとかないと」


 煉の妹であり朱里は文武両道、品行方正であり兄である煉も容姿が整っていると感じるくらいの完璧超人である。


「俺は受験期とか気にせずダンジョン探索してたからな。俺とは出来が違うな」

「なに? それは嫌味?」

「うん? 本心だ。俺はダンジョン探索以外に誇れることもないからな」

「分かってるけど。おにいの性格は分かってるけど…」


 思っていることを素直に言えばため息を吐かれてしまう。そんな雑談をしているうちに家に到着する。


「「ただいま」」

「おかえりなさい。煉、朱里。もうご飯できてるから手洗いうがいしたら食べましょ?」

「わかった」

「はーい!」


 母親であるあかねに出迎えられすぐに晩御飯となった。神埼家の食卓での話は基本、今日の出来事である。


「それでね。いつきさんがね、煉のどうが? を同僚の人とかに見せびらかしたいって言ってた」

「父さん…まあ別に構わないが」

「だからね。私もそれを誰かに見せびらかしたいなーって」

「止めてくれ。父さんは単身赴任してるから俺に実害無いけど、ご近所さんは」

「えー、じゃあじゃあ後で煉くんのどうが見せてね」

「いいよママ。おにいが嫌がっても私が見せてあげるから」


 煉は家族に配信を始めることを言わなかったのだが、何故か配信開始の日に朱里にバレ、すぐに家族中に広まってしまったのだ。


「あ、そういえばおにいに伝言」

「伝言?」

「氷華ねえに連絡しろってまつり先輩が」

「祭が? なぜ?」

「氷華ねえが、竜王との戦いで怪我したおにいを見てずっと心配してるからでしょ。この前、ダンジョンに行ったときも氷華ねえの集中力が欠けてたからって」

「大丈夫だが」

「それを直接言えってこと。幼なじみ何だから氷華ねえが心配性なの分かるでしょ?」

「確かに氷華は昔からよく分からないことを気にするからな。了解、連絡しとく」


 煉の幼なじみである氷華と祭。この2人は煉の影響もあって現在探索者として活動している。

 中学で学校が離れて一年ほど疎遠になっていたが、ダンジョンという共通の話題が出来てからはそこそこ連絡を取り合うようになっていた。

 しかしダンジョンで怪我したくらいで連絡を必要とするとは、極度の心配性は健在であった。


「最近、どこ行ってもおにいの名前聞こえてくるし、おにいはまったく自覚無いし。それで焦ってあわあわしてる氷華ねえも可愛いけど」

「何の話?」

「氷華ねえの話」

「氷華ちゃん? わかった。氷華ちゃんがお嫁さんで来てくれたらいいのにって話でしょ。煉と氷華ちゃんも昔は仲良かったのよね。あの時に氷華ちゃんのハートを射止めてたら良かったのにね」

「ははは、そーだね」


 母親の鋭い一言に乾いた笑い声で応える朱里であった。


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