表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/102

成長型ダンジョン

 渋谷の危機を救った英雄。そんな英雄を探索者協会が貶めようとしたという不名誉なニュースがニュースサイトに掲載された。


 発端は探索者協会上層部のとある企みであった。協会上層部はそもそも今回の作戦で事態が終息するとは考えておらず、下手をすれば全滅すると考えていた。そのため自分と懇意にしている探索者に最初の作戦には参加をしないように指示を出していた。

 しかしフタを開けてみれば特級ダンジョンの異常氾濫は終息し1人の英雄が誕生していた。

 この騒動に自分たちが一切関与していないことに焦る上層部が目につけたのが竜王の素材であった。探索要請を盾に竜王の素材を回収し、その上で英雄が使用する分の素材を提供する。そうすれば協会の利益を確保しつつ英雄にも好印象を与えられると考えた。

 結果は語るまでもないが、英雄の妄言を鵜呑みにすれば渋谷に住む住人全員に何らかの補償をするとなれば竜王の素材を回収したとしても差し引きマイナスである。かといって英雄の妄言は世間には受け入れやすいモノだ。否定すれば悪者はこちらだ。結局上層部の企みは竜王の素材の回収に失敗し、世間からの評判を下げるだけだった。


 そして日本の探索者協会を失態を受け、各国の探索者協会からの非難が殺到した。これこそ日本の英雄、煉が各国から注目されている証拠であった


 ―――――――――――――――


「え、摩耶さん昇進するんですか? おめでとうございます」

「あ、ありがとー」

「なんか嬉しそうじゃないですね」

「そうじゃないの。ちょっと経緯が複雑でね」

「そうなんですか」


 今日煉は、探索要請の話を自分に持ってきてくれた摩耶にお礼を言いにきたのだが、何故かお礼合戦になってしまった。その話の流れで摩耶の昇進の話となったのだ。


「昇進祝いか、今だと竜王の逆鱗とかしか持ってないですね」

「重い。色んな意味で重いアイテムはやめてね」

「考えときます」


 話も終わり、そろそろダンジョンにといったところで、煉がもう一つ摩耶に聞こうとしていたことを思い出す。


「そういえば摩耶さん」

「なんですか?」

「ここのダンジョンってダンジョンクリア可能なんでしたっけ?」

「え、えーとここ相模ダンジョンは分類上成長型だから踏破は可能だよ」

「よかった。ありがとうございます」

「あ、まって! 煉くん、もしかしてダンジョンボスの討伐をするつもりなの?」

「はい。この前ので自分の力不足を痛感したので」


 英雄的な活躍をし、史上初の竜王単独討伐を成し遂げた煉が、冗談なしに自分は力不足であったと言った。この言葉の重みに摩耶は何も言えなくなる。


「踏破すれば踏破するほど成長してくダンジョン。成長型って珍しいですよね」

「え、ええ」

「いやー、まさかここが成長型なんてラッキーでした。それでは」


 摩耶にできたのは、立ち去る煉の背中を見つめることだけであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ