第2章7話 『その笑顔、100万点。』
「野宿か……この近くに村はないの?」
どうにか頼み込んで泊めてもらったりできないかな。できないだろうな。仮にあっても。
「仮にあったとしても、走って行くのはやめたほうがいいよ。また魔獣を引っ掛けるかもしれないし、探してるうちに夜になったら目も当てられない」
田舎の夜って真っ暗だもんな。夜までに火を焚くなり準備して交代で見張りを立てる必要があるだろう。
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「君、乾いた葉っぱと枝を拾ってきてくれる?魔術で火をつけるくらいの体力は戻ったから」
「魔術!?それって俺にも使えたりする!?」
「んにゃ、魔術って言っても私の権能だからね。この世界に魔法はないから、権能で我慢しといて」
ーーなんて一幕を挟みながら、焚き火と落ち葉を集めた即席の寝床を用意した。
「祐希が既に寝床に潜り込んでる!」
まあどうせ俺が最初の見張りに立候補するつもりだったから別に良いんだけども。
祐希はなんだか思い詰めた様な表情をしている。空気がコロコロ変わってついていけない。
「ごめんね。こんな形で巻き込むつもりじゃなかったんだけど……」
「こんな形?……ああ、魔獣のことか。でも、『君はまだ引き返せる』って言ったけど、祐希はもう引き返せないんだろ?それじゃ俺も1年前に逆戻りしてたよ。」
自分の意思で見捨てたのだから、以前よりももっと自分を責めただろう。
「ーーいちばん長い英単語って知ってるか?」
「ニューモノウルトラミクロスコーピックシリコボルケーノコニオシス?」
「いや何それ?……じゃなくて、”smiles”だよ。SとSの間に1マイルあるから」
「君こそ何それ」
「……俺たちはさっき何マイルも走ってきただろ?……だから、お前も笑えよ。俺は後悔なんてしてないから」
意味の分からない言い方になってしまったけれど、まああれだ。キミにそんな顔は似合わないー、みたいな。うわやだ。
祐希は一瞬めんくらった様な顔になり、そして、吹っ切れた様に涙を流して、笑った。
「ーーバカか」
「その笑顔、100万点っ!」
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