幕間-9 『胡蝶の夢』
「さて、最低限の説明責任は果たそうか」
「当代《神託者》により、新たな調停者には試練が課される。遠い昔、調停者がこの世に現れた時からの慣習だ。余程のことがない限り、調停者は必ず試練を受ける」
「試練の形式は様々で、全ては《神託者》の裁量に任される。試練は一種の仮想世界、つまりは夢の中で行われ、新たなる調停者の能力、知力、そして人格を試す」
「《神託者》がその者を失格と判断すれば、全ての権能は失われ、調停因子は新たな適合者を求めて再び彷徨う」
「それが《神託者》の権能であり、使命だ」
「つまり今回の事件は全て、夢オチってわけさ」
……ムカついたので後はもう割愛する。もうヤダ。
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力は一般人にも劣るだとか、技術だって皆無だとか。
推理だって感情が邪魔してるとか。
人は疑ってかかれだとか、自己評価見直せとかもうちょっとポジティブになれとか自殺願望でもあるのかとかお人好しも大概にしろとか。
あと、一応合格だとか。
……人格に問題ありかよ。結構な暴言だよだいたい。
まあ半分くらい聞き流したが、夢の中とはいえキミは死んだんだ、常在戦中を心がけろ、とか言われた気がする。
あと潮崎が戦ってた人は実在しないモブキャラだとか。正直どうでもいい。
許し難いことは多々あるのだが——
「1日に2回死んでんだぞ軽々しく人殺すんじゃねえよぶっ殺すぞ!!」
怒るとちょっぴり口が悪くなる俺だった。
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一体どこから夢だったのか。
ホテルの部屋には食料の買い出しをとっくに済ませた祐希が居て。
時間はどう流れていたのやら、時計は3時を指していて。
死ぬほど腹痛に苛まれ。
ベッドの上で蹲りぶつぶつと恨み言を並び立てる様にドン引きされ。
何かを察した彼女に慰められ。
色々込み上げてきて半泣きになりながらコンビニのおにぎりをもしゃもしゃと齧り。
もうほんと惨めになって今度潮崎に会ったら1発殴り飛ばすと誓い。
なんとも納得のいかない形で、事件は幕を閉じたのだった。
因みに。幕間2『異世界転移は間に合ってる』で、潤がトラックから救った女子高生、(キャスト:潮崎未来)の深刻な顔、本来なら伏線になるはずだったのです。元はこの幕間、潤が彼女をトラックから助け、更にストーカー被害に遭っていた彼女を救う「夜桜潤の不幸な一日」、それだけのはずでした。
それなのに潤はトラックから彼女を救い出す安全な方法を思いつくことができなかった。実際2、3日悩んだわけですが。現状彼の能力と状況では不可能だったのです。いろんな奇策が浮かんでは消えていった。なんにせよ、彼はトラックに轢かれた。それがこの一連の事件の原因となったのです。
……納得いかない。




