表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/74

幕間-8 『夜桜潤の事件ファイル』

 ——「さて、君の推理を聞かせてもらおうか、後輩くん」



 何か、状況を打開する手はないか。

 時間を稼がなくてはならない。俺はパサパサに乾いた口を開く。


「……まずおかしいと思ったのは襲撃のタイミングだ」


 俺が気絶(丶丶)したのは、俺と潮崎の2人が揃っているタイミングだった。最大限注意を払うなら、標的が1人になるタイミングで襲撃を行うべきだ。


 その上、何の前兆も感じなかった。俺の座っていた場所の背後には木が生えていたため、何の物音も立てずに襲いかかるのは至難の業だ。そもそも、後ろからの襲撃なら俺が目を閉じたタイミングなんて分かるはずがなかったし、そこを狙う必要さえなかっただろう。



「《デミゴット》を連れてこいって指示からして、金目的じゃない。順当に考えれば《デミゴッド》を連れ出させることが目的だ。俺は気絶してて、どうとでもできたんだから」


 だが、こう考えたらどうか。犯人の目的は、《デミゴッド》をこのあたりから遠ざけることだったのだと。

 約束の場所に誰も現れなかったということは、少しの間 《デミゴッド》を遠ざけられれば良かったのか、或いは犯人は少数、1人である可能性が高い。




 それら全てを鑑みて、犯人は潮崎だと、そう考えれば辻褄が合ってしまったのだ。



「なるほど、続きは?」


 潮崎は平然と先を促す。



「わざわざ《デミゴッド》を遠ざけようとしたくらいだ。人の目をできるだけ避けるとするなら、ここを選ぶと思った」


 駆けつけてみれば、潮崎はこの青年と戦闘中。彼女の計画は、最初から彼1人を標的としたものだったのだ。そのために邪魔になる《デミゴッド》を、俺を使って遠ざけた上で青年をこの場に誘い出した。


「お前の目的は最初からただ1人、そいつの殺害、或いは捕縛だった、ってことか」


 記憶喪失や死の感覚には触れず、青年が《デミゴッド》ではないと仮定した上で尚穴だらけの推測をさも自信ありげに言い切った。



 それを聞いて潮崎は、愉しげに笑みを深める。


「なるほど、驚いた。遠ざける対象に自分を入れていないあたり自己評価が低いようだけど、大方ボクのシナリオ通りだ」



 この様子からして、俺の記憶喪失は彼女とは無関係だ。そうでなければ俺に《デミゴッド》を探させたりはしない。

 彼、または彼女は、一体何者なのか。潮崎の計画を阻止するだけの能力があるのなら、今どこにいるのか。異変に勘づかれるリスクを冒してまで離れた場所に誘い出したからには、元から計画を察知される可能性があったということ。

 最悪の場合、時間を稼いで《デミゴッド》の助けを待つか。しかし《デミゴッド》が未だに駆けつけていないことを鑑みるに、(むし)ろ助けが来ない可能性の方が高いだろう。



「その反抗的な目、嫌いじゃないよ。けど、そろそろ種明かしといこうか」


 意味深な言葉と共に、潮崎が指を鳴らした。






 刹那、俺の視界は闇に包まれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想(アカウント不要)・ブックマーク登録・評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に)、 そしてレビューお願いします!
Twitterアカウント @HatsumiSatsuki でも小説を含め様々な発信をしていますので要チェックです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ