第3章14話 『走馬灯』
何はともあれ、『死に戻り』は成功した。今すべきことは——運命を覆すための行動。泣いている暇などないのだ。
「……。えっと、今何の話ししてたっけ?」
「えっと……、私達のとこにも殺し屋が来たって話だけど」
「……マジか」
それだと、もう一刻の猶予も無いことになる。技名以外も微妙に厨二病っぽいところのあるシュベールトのことだ。おおよそ、斬りかかるタイミングを見計らっているところか。
「——シュベールト、そこに居るんだろ?コソコソしてないで出てこいよ」
唐突な台詞に首を傾げる祐希と桑原をよそに、俺は警戒を強める。既にシュベールトが店内に入り込んでいるのだとすれば、振り切るには彼の意表をつくしか無い。
「厨二病とはいえ流石にこんな手には——」
「……何故俺の名を知っている?」
かかった。馬鹿じゃないの、こいつ?
「さあ?何でだろうな?……そんなことより、場所を変えないか?」
もとより、返事を待つ気はない。流石というべきか、既に通路に飛び出しているふたりを脇に抱え上げ、出口に向かって猛ダッシュ。……先払いの牛丼屋で良かった。
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「重っ!」
「女の子に向かってなんてこと言うんだ、君は!」
寧ろ咄嗟にふたりも抱えられたことが軽く奇跡。『神々の伝令』と言うだけあって、持ち上げる力も上がって——
「火事場の馬鹿力だこれ……!」
「伝令が運ぶのは荷物じゃ無いから!!」
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「そこのビルの屋上で迎え撃とう!目撃者も抑えられるだろう!」
「桑原さん、ビルの屋上って大体立ち入り禁止じゃない!?」
「ドア吹っ飛ばすくらいの魔術なら私が使える!」
「了解!」
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「オラオラオラオラオラオラオラ——」
「このエレベーター連打するとキャンセルされるタイプ!」
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——最上階へ到達。
エレベーターは2台あるので、シュベールトもじきに追いついてくるだろう。おとなしくエレベーターに乗ってるシュベールト。……なんだろう。笑える。
「屋上は!?」
「あっちに階段があるな!!」
「行こう!」
桑原さんの指し示した階段を駆け上がり、一息つく。
「はぁ、祐希、っ、ドアお願い……っ」
「うん。ちょっと下がって——
『殲滅』
——運命は、繰り返す。




