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第2章12話 『地獄の門戸は開かれた』

 抜刀音。


 爆音。


 悲鳴。




 ーー断末魔の叫び。




 納刀の音。




 倒れた俺の上に、祐希がもたれかかる。かつて牛丼屋だった瓦礫のところどころから苦鳴が聞こえる。


「祐希……早く起き上がれよ」


「あの人たちを助けないと……」


「祐希?寝てる場合じゃないだろ」


 俺にもたれかかった体を横にずらす。



















「クソッ、()()()()()なんて紛らわしい」





「怪我でもしてんのか?桑原さん、治せるだろ?」


















 断末魔の叫びを上げる桑原は答えない。




「桑原さん?桑原さん!」

















「……治せよ!桑原ァ!!」


















「ーー現実から目を逸らし、狂気に溺れる。《統率者》ともあろうものが、このような輩だとはな。調停者連中のたかが知れる」









「お前ェッ!」








 ーー殴りかかった右腕が斬り飛ばされた。




 痛い痛い痛い痛い俺は痛いただ当たり痛い前の日常痛い痛い痛いを過ごして痛いいたかった痛いだけだけ痛いなのに痛い痛い痛い痛い痛い痛い世界痛いはそれをそれを痛い痛い許さなかっ痛いた痛い痛い痛い痛い痛い親は痛い痛い親は死んだ痛い痛い痛い痛いいきなり痛いこんな痛い争いに痛い痛い巻き込痛いまれた痛い痛い痛いどうして痛い運命は痛い痛いこうまで痛い痛い酷なのか痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い左痛い腕も痛い痛い斬り痛い落とされた憎い憎い憎い憎いこの憎い世界が憎い憎い憎い憎い運命が憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

           意識が


              黒く


                暗く


                  深く


                    沈んで



            「あの男の覚悟とは比べるべくもない」









 ーー覚悟。













『これからずっと!私と一緒に闘い続ける覚悟はある?』












「俺、は……」



 ーー俺は、誓ったじゃないか。祐希と一緒に闘っていくと。どんなに苦しくても闘っていくと。




 ーーあの日、後悔したじゃないか。両親に何も返せないまま、ふたりを死なせてしまったことを。




 ーーあの日、決めたじゃないか。近しい人の死を言い訳に、怠惰に沈むのはやめようと。










「今の俺に、出来ることは」


 祐希は、俺を庇って死んだ。桑原さんも、殺された。ーーそれなら。







「お前の名前は?」


「ーーシュヴェールト」




「そうか。覚えておく」




















「ーー俺を殺せ。シュヴェールト」

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