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クロスロード  作者: 睦月心雫
第8章 人魚の住まう海底都市トリトルン
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人魚さんの都

「で、〝リリーちゃん〟。どうやって玉を手に入れるつもりかしら」

試すように上からものをいうセレナに対し「うーん、そうだなあ」と可愛らしくいうリリィ。


その隣にはどこか険しげな、呆れたような表情をしている、タグの幼馴染、ティアナ。


相変わらず、本当に綺麗な人だなあ。

暗い気持ちも忘れてそんなことを思う。


「リリィちゃん、ここのどこに玉があるかは知ってるのよ。けどそこまでどうやっていこうかなあって」


「だからそれを聞いてんのよ」


「んーと、じゃあ、わかった!」

ポンッと手を打ち、名案だとばかりにニコリとえむリリィ。


「私とタグくん、ティアナちゃんとベジちゃんとセレナちゃんに別れて、突撃ゴーゴー!だよ」


「……はあ?」


「……なんでそうなるの?リリィ」


「ん?ダメだった?」


「ダメっていうか、変なチーム分けじゃない。大体、そこの坊やと組んでもなんの利点もないわよ。仲間である私が保証するわ」


「おい、セレナ」


「う〜ん、そうなのかあ。でもまあいいじゃない!とりあえず玉を手に入れればいんだから」

そんな言葉にセレナは呆れ果て疲れきった様子でああーはいはいといっている。

セレナはこういうタイプの子が苦手なのかもしれない。


「それで、二つに分かれてどうするの?」

そう私が尋ねるとリリィはニコッと可愛らしい笑みを浮かべた。

「二手に分かれて襲うんだよ」


「え?……」

ひどく楽しそうにしてるリリィに思わず黙り込む


「……まあ、それしかないわよねえ……」


やがてセレナがそう呟く。


「でしょ〜?私、確かにある場所は知ってるけど王族でもあるまいし、それを簡単に手に入れることなんてできないもん」

そういって少し頬を膨らませるリリィ。


「だからね!そうしない?」


「まあ、いいけど」


やがてセレナが面倒そうにポツリと呟く。


「じゃ、決定〜〜っ!」

リリィはひどく楽しそうにそういった。








「えっと、改めてよろしくね、ティアナ」

そういうと少し伏し目がちにこちらを見やりながら「よろしくね」と短くいうティアナ。


「じゃ、さっそく行きましょ。」

そういうセレナはこれから戦闘しに行くみたいにニヤリとした笑みを浮かべてかたをまわしている。


タグは再三セレナにとりあえずなにもなければ魔法を使ったりしないこと。無闇矢鱈に厄介ごとをふりまかないこと。……といっていたのだけれど……

この様子ではそんなタグの言葉もセレナには意味がなかったようだ。


セレナは完全に戦闘モード。

その横にはずっとモヤモヤした心を抱えてる私。

そしてそんな私の横にはどこか伏し目がちで悲しそうな表情をしているティアナ。


なんだか……大丈夫かなあ?


なんて不安に思っていると不意にセレナが口を開く。


「ところであんた」


まっすぐ、ティアナの方を見て言葉を紡ぐセレナ。


「カーラたちとあんたらはなに?どうせあのリリィだかなんだかに聞いてもはぐらかすのがオチでしょうからあんたに聞くけど」

後半はどこか面倒そうに付け足すと睨むような目をしてティアナの回答を待つセレナ。


ティアナは暫く黙り込んでいたけれどやがて、

「正直、私もよくわからないんです。」

という。


「はあ?なによ、それ。ふざけてんの」


「ふざけてるわけではないです。ただ、本当にわからないって、それだけ。そもそも私はカーラのことなにも知りません。ただ、リリィが仲間だといっていたので……。」


「けど、仲間だなんていってなーいとかいってたわよ、あの子」


どこか試すようなものいいにティアナは表情を変えずに

「はい……。だから、余計に、わからないです。リリィは……不思議な子なので」


「不思議、ねえ。不思議で済まされる範疇なのかしら、それ」


「そうですね。でも、そういう子ですから」


「あの調子じゃあ、すぐまた、今度は私たちのことを裏切りそうだけれど」


どこかニヤリとした笑み浮かべてセレナがそういうとティアナがバッと顔を上げる。


「そんなこと……!……少なくとも私は……あなた方のことそんな……」


「そんな、ねえ。そんな組織に身を置いていてよく言えるわね」

そういうセレナの言葉はひどく冷たい。

けれど、あたたかい冷たさだと気づく。

そんな組織ーー魔王を、魔王の生まれ変わりを殺すための組織ーー。


リリィもティアナも前に出会った狼人間さんや妖精さんもヘンゼルもみんなその組織のひと。


改めて心の奥底がえぐられるような痛みを覚えて苦しくなる。


「結局、あんたは……」

そこまでいったセレナだけどすぐ黙り込む。

それからなにも言わずに私の背中をさすった。

「なに考えてそんな苦しそうな顔してんのか知らないけど、余計なこと考えんじゃないわよ」

ただ、それだけをいって。

「…………私は……好きでこの組織にいるわけではありません」


ティアナがポソリとそういう。


「ふーん。じゃあなに。なんでそこにいるのよ」


どこか挑発するような口調。


なんの感情も宿していなかったティアナの美しい顔に少しずつ少しずつ怒りの感情が滲み出でくる。


「……私の……場所……あなた方が……とっちゃったから」


ティアナはか細い声でそういう。

だけれどセレナは挑発するような声音を変えることはない。


「なにをとったっていうのよ」

やがて、耐えきれないというようにティアナの瞳から涙が溢れでてきた。

美しい顔が歪むくらい抑えきれない感情が溢れだしてくる。

ティアナ……無感情なんじゃなくてただそれを内に秘めていただけだったんだ。


なんだか私は耐えきれず、ティアナの手をとりギュッと握る。


「私の大切な場所……!タッくんを……!あなた方がとっちゃったから……!!」

激しい嗚咽とともに吐き出されたのはそんな言葉。



胸が苦しくなる。


私が、ソウくんをラナにとられたように感じてどうしようもなく悲しくて悔しくてでもそんな事口にできないと感じていた時と同じ気持ちをティアナは感じていたんだ。



そっか。

私も、気づかない間に誰かにそんな苦しい感情を与えてしまっていたんだ。



今更、気づく。



「私……タッくんだけが居場所だったから……そしたらそんな私の元にあの人が現れて……」


セレナが整った形の眉をピクリと動かす。


「あの人、って?……」


ティアナはいっていいもだろうかと迷ったような様子を見せながらも口を開いた。


「私もよくは知らないけど預言者エンペラーの生まれ変わりを中心とした反魔王組織ーー白閃ルイティア約束ホーライズのリーダー。だから、きっと彼が、預言者エンペラーの生まれ変わり。いつもフードを深くかぶっていて素顔を見たことはないけど、私より少し背が低いくらいの同い年くらいの雰囲気の人で……」


「ふ〜ん……」

セレナは何かを考え込むように口に手を当てる。


そんな様子を横目で見やりながら前を見れば目的地が見えてきていた。


「あれが裏口、じゃないかな」

そういって私が指差す先には青の都の裏手門がある。左右に一人ずつ門番さんがいるけれど……。


「ちょちょいとやっちゃいましょうか」

そういってセレナがニヤリと笑ってその手に炎を宿す。


そんなセレナを止めようとしたらティアナが唐突に私たちの方を向いてバッと頭を下げた。


「どうしたの?」

そうたずねるとティアナはゆっくりと顔を上げた。その目に映っているのは怪訝な顔をしたセレナだ。


「あなた……セレナさんのおかげでなにか吹っ切れました。……わざと、ですよね。私が気持ちを……吐き出せるように……。やっぱり、タッくんはいい目を持ってますね」


「はあ?私はただあんたのこと気に入らないからああいったのよ。そんな深い意味あるわけないわ」

そういうセレナとティアナを見やりながら、きっとティアナのいうことが正しいのだろうなあと思った。


セレナはいつだって素直じゃない。

けれどこんなにもあたたかくて、優しい。

そんな思いに続けて大切な仲間、という言葉がでてきたけれどそれはすぐにしぼんでしまう。


大切な仲間ーー大切であればあるほどに、なんだか怖い。


「それにあんな坊主、あんたが望めばいくらでもあげるわよ」


そんなセレナの言葉にハッとする。

「え、本当ですか?!」

ティアナの表情が一気に明るくなる。

それを見て普段なら微笑ましいと思うところだった。

でも自分でも気づかない内に


「ダメ!!」

と半分叫ぶような形で大声を出していた。

驚いた様子で私を見やる二人。

私は気恥ずかしくてなんといえばいいのか言葉を探しながらもだもだと口の中で言葉をつっかえさせ

「タ……タグはその……ダメかなって」


「ふーん。じゃあ、私は?」


顔は見れないけど絶対にニヤニヤしているだろうセレナの声が聞こえてくる。


「もちろん、セレナもだめだよ」


「さっきとは気迫が全然違うみたいだけれど?」


「ち、違うよ!私はタグもセレナもとても」


「なんだか、可愛い」

やがてクスクスとした優しい笑い声とともにそんな言葉が耳に入ってくる。


「えっと……」


「そういうところ、可愛いなって思ったの。なんだか、ね、その指輪のこととか」

そういわれて見やるのはセレナと契約した時に捧げた、タグがくれた指輪。


「勝手にモヤモヤしてしまってたの」

そうだ。前会った時、二人はそのことで喧嘩していて、私は慌てて飛び起きて謝ったんだよね。


「やっぱりあなたって不思議な人だね。憎めないよ」

ティアナは少し眉を歪ませながら困ったように笑む。


「あのね、ベジ、セレナ」

やがてティアナは、どこか意を決したように口を開いた。


「私の大事な幼なじみをよろしくね。私はもう、側にいられないから。一緒にいたいけれどね、結局、いられないの」


「なんで?」


私がまるで子供みたいにたずねるとティアナはフッと優しい笑みを浮かべて

「なんでも、よ」

といった。

私にはその意味がよくわからなかった。

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