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クロスロード  作者: 睦月心雫
第7章 天使の楽園 ウィザード・ガーデン
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二度目の恐怖

「ここ、どこ……」


唐突に地面が抜けて真っ逆さまに落ちて行ってしまう時咄嗟に掴んだその手をギュッと握りながら辺りを見回す。

けれどあたりを見回そうとそこに広がるのは闇ばかりでここがどこかとか全くわかりそうにない。


「困ったなあ……」


「……うっ……」


そんな時握っている手がわずかながら動く。


「大丈夫?」

慌ててそう声をかけると

「ここは……」

というひどくか細い声が聞こえてくる。

この声はラナだ。


「わからないけれど多分ルナのいっていた秘密の場所だと思う」

そういった瞬間ピクリと驚いたように動く手。そのことを不思議に思ってるうちにその手はスルリと抜ける。


「ルナ……?なんなのよ、ここ!どこよ!!」

唐突に叫びはじめるラナにびっくりする。

まるで別人みたいだ。


悪魔の里で会った時は石碑の近くでなら正気を保てるといっていたけれど、最近ははじめあった時のような感じは一切なかった。


でも、この状況だからだろう。

我を失ってしまっている。


あの時ーー悪魔の里を訪れた時ーーラナにされたことが鮮やかに蘇ってくる。

普通に話していたかと思えば唐突に様子が変わって爪を立て、牙を剥き、私の血を吸い美味しいといっていた。


ゾッとしてきて全身に鳥肌がたつ。


「あんた、セレナちゃんの主人でしょ?!あのいけ好かない女!!」


「きゃっ」


唐突に肩を掴まれ思わず短い悲鳴をあげる。


「セレナちゃんは私のものなの!なのに……!」


肩に突き刺さる爪。

体を前後に揺らされて頭がクラクラしてくる。

どうしよう。どうすればいいんだろう。


「ラナ、落ち着いて」

でてきたのはそんな言葉。


「はあ?落ち着けるわけないじゃない。あんたなんて大嫌いなのよ!」

そんな言葉と共に目の前に迫ってくる殺気。

暗くてもわかる。そこに傷つけられるような何かが迫ってきていることくらい。

私は怖くて震える手をギュッと握りしめながら目を閉じていた。

すると……。


「きゃあああぁぁ!!」


耳をつんざくような大きな悲鳴にハッとして目を開ける。

すると目の前には大きな火柱が立ち上がっていた。

私は思わず息を飲んだ。

一体なにが起こったっていうの?この火は一体?……。

火柱が立ち上がったことによって一気に明るくなった辺りには誰の気配もない。

でもラナは?まさかこの火柱の中?でも、そうとしか考えられない。

でもどうしてこんな

そう考えていた時ハッとする。

そうだ、玉の力。セレナが言っていた。

妖精の王国で危機的な状況に陥った時使えた風の魔法。あれはエルフの里で手に入れた翡翠の玉の力だと。

これはこの間妖精の王国で手に入れた紅の玉の?……。

私は火傷するとかそんなこと一切考えずにその炎の中に手を突っ込んだ。

轟々とした炎と煙を巻き上げるその火柱に入れた瞬間に手に走る衝撃。

熱い。死んじゃう。

頭の片隅ではそう思っているのにその手を止めることはできない。


「ラナっ!」


肩まで火柱の中に入っていよいよ体中の感覚が麻痺し始めた時、ようやっと細い手首を見つけそれをギュッと握る。

私は力が入ってるか入ってないかもわからずに麻痺した感覚の中その手をこちらへ引っ張った。

やがてラナの手が火柱からでてそこからなんとかラナの身体を引っ張りだす。

ラナを引っ張りだした時には私はもう力尽きてばたりと後ろ手に倒れていた。

体中熱さと緊張で汗だらけ。

額を伝っていく汗の感覚を感じながら目を閉じる。

もう右腕右手の感覚はない。

火の中に入れたのだから、溶けてるのかも。

それを確認する元気もないけど。


「……っ。私……ってあなた……!!」


ぼんやりとし始める意識の中でそんな声が聞こえてくる。

気づくとまだかろうじて感覚のある左手をギュッと握られていた。

火柱はもうおさまったようで辺りに煙の匂いが渦巻いてはいるものの先程まであった身を焼くような熱さはどこにもない。


「ごめんね、ラナ」


セレナは言っていた。

ベジなら玉の力をいずれは制御できるようになると。

けれどそんなのとても無理そうだ。

だってこうやって無意識のうちに力を使ってしまうんだもの。


「あなた、ばか?!」

そんな悲痛な叫びに苦笑いを浮かべる。


「なんでこんな……。私なんて放っといて良かったのに」


「放っとくなんてできないよ」


「なんで……」


「セレナの大切な人だもん。それに私はラナのこと友達だって思ってるよ」


「あなたってなんでそう……。……ごめんなさい、さっきは。このことは話してなかったけど……。どうしてかはわからないけど、ソウの近くにいると石碑の近くにいるみたいに落ち着いていられるの。ソウはすぐそこに来ているみたい。だからこうしてあなたと会話もできる」

そういうとラナは私の手をそっとおいて右手の方にうつる。


「私これでも天使の端くれなの。癒すことくらい……」


ラナがそう言い終えた時、右手にぼんやりとやわい白い光があらわれる。

そして感覚のなくなっていた右腕右手に激痛が走る。


「痛いっ」


「ごめんなさい。少しだけ待っていて」


苦しそうな声でそういうラナの声になんとか頷くもののあまりの痛さに気がおかしくなりそうだ。

そう思っていたら少しずつ痛みが引いていく。


「すごい……」

そして終いには腕も手も元どおりに戻っていた。


「すごい!」

そう叫ぶ私にラナはどんな表情をしているのか。

相変わらずの暗さでわからないけれど

「私あなたのこと誤解していたかもしれない。」

そんな言葉がひどく優しい声音で響いてくる。

言葉にせずともわかる。

今ようやっとちゃんと、私とラナの心は通じ合ったんだって。

「私もねごめんね。いきなりあんな」

そう言ったところで遠くからソウくんとタグのものと思われる声が響いてくる。


「大丈夫よ。それより行きましょ。ソウたちはあっちみたい」

そういうと私の手を握るラナ。


そのことが嬉しくて思わず笑みがこぼれる。

そして暗闇の中パッと光が灯る。

見てみればラナの手前にランタンのような光が浮かんでいる。

ラナも魔法が上手だなあ。私もあんな風に火を具現化できたらいいのに。玉の力が現れるのはいつも危機が迫った時だけ。通常時でも自分の意思でだせるようになりたいな。


「ねえ……」

不意にラナが口を開く。


「なぁに?」


「あなたは前世を信じる?」


「え?」


前世。そう言われるとこの間会った、私のことを魔王の生まれ変わりだといい殺そうとしてきた人達のことを思い出す。


「私は……」

そう言ったところで言葉に詰まる。


正直、自分が魔王の生まれ変わりだーなんてあまり信じられない。

けれど不思議と納得してしまう自分もいて

「私は信じる。」

やがてそう口にしていた。


私の手を握るラナの手に少し力がこもる。


「この世界は魂の輪廻を繰り返している……でもそれは公平じゃない、幸福だけど歪な世界だからだとしても?……」

若干自分に問いかけているような声。


そして誰かがそうしているとでもいいたげな調子だ。

ラナは一体何を言いたいんだろう。そう思っていたらすぐそこで声がしてくる。


「おっ!いたいた!大丈夫か、ベジ、ラナ」

見えてきたのはニコニコした笑顔を浮かべたソウくんの姿。


「うん、大丈夫だよ。ソウくんとタグは?」

そう問いかけると二人ともニコリと笑んで大丈夫だ、と答える。


「それで、さっきは何を」

そういって改めてラナの方を見やるけどラナはさっきとは違った様子だ。


もうさっきまで話していたことについて何かを話してくれるような様子はない。


気分がのらなくなってしまったのかな。


「ラナ、大丈夫?」


「ええ、大丈夫よ」


短くそういうラナに私は渋々引き下がる。

あまり深追いしても繊細なラナを傷つけてしまうと思ったから。


「そういえばさ、ここに来るまでにいくつか屍見たんだけど」

唐突にそんなことをいいだすソウくんに固まる。


屍って……。自然とラナの手を握る手に力がこもる。


「まあ、俺たちは大丈夫だろ」

何を根拠にかそういうソウくん。

でもソウくんのその明るい声音を聞くと不思議と安心できて私は

「うん」

そう答えていた。

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