表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスロード  作者: 睦月心雫
第7章 天使の楽園 ウィザード・ガーデン
69/119

楽園

「セレナ!私のこと呼んだっ?!」


「颯爽登場ソウくんだぞう」


そんな騒がしい声とともに僕たちの目の前に現れたのはセレナに呼び出されたという喜びからか頬を蒸気させているラナといつも通りという感じのソウ。


「ええ、呼んだわ。やって欲しいことがあんのよ」


そういうセレナにラナは食い気味で

「なになに?!」

という。


「実はねあんたの故郷に連れていってやって欲しいのよ」


「え?」


「この子たちを、ね」


「ええっ?!な、なにいってるの、セレナ」


目に見えて焦りだすラナ。


「何って?」


「な、何って、じゃないよ……そんなの無理無理無理!!」


頭を抱え髪を振り乱すラナだけどその様子は悪魔の里で垣間見た狂気よりはずっと落ち着いてるように見える。


「おいおい、どうしたんだよ。ケンカか?ケンケンカンカンいってんなよ」


ふざけた調子でそういうソウだけど相変わらず訳がわからない。


「セレナちゃん」


「何よ」


不意にセレナの方を向くソウ。


「胸大きくて白くて最高だぐふっ!!」


喋っている途中で思い切り腹を蹴られて咳き込むソウ。

哀れだけど自業自得だとも思う。


「ベジ、こいつは昔からこんななわけ?」


「えぇと……。まあ、そんな感じ、かなぁ?」

困ったように笑って見せてそういうベジはどこか寂しげにも思える。


「まあ、家にいた時はこういう刺激も少なかったしこういう面みせんのは初めてだけど、これが俺だよっ、ベジ」


「やめなさいよっ」


やけに決めた声でそういうソウとそれにすかさず突っ込むセレナ。


けれどそんな和やかな空気もいつまでもは続かない。


「俺とラナ、今世界中回って人助けしてる途中なんだよね。だからこうやっていきなり呼び出されるのは正直迷惑だよ」

そういうソウの言葉は分かりづらいけどさり気なくラナのことを庇っているようにとれる。


「そうね。あんたらも忙しいみたいね。だから別にいいのよ。無理なら無理で。できればって話なんだから」

そういってチラリとうつむいたままのラナを見やるセレナ。


暫くの沈黙。


やがてラナはバッと顔をあげた。


「わかった。逃げ続けてるのもなんだか癪だもの」

そういって握られた手のひらはふるふると目に見えて震えている。


ソウはニカリと笑って見せてそんなラナの手をギュッと握る。


「俺も隣にいるから。な?それに」


「それよりソウくんはなんでラナと一緒に世界中を回って人助けしてるの?」


ソウの言葉を遮ったベジの声は今まで聞いたことないくらい大きな声だ。


「へ?ああ、そういや言ってなかったな。」

そういうとさして気にした風もなくヘヘッと笑うソウ。


「ほら、俺らみんなあそこに閉じ込められてたろ。今だって父さんや母さんおじさんおばさんじいちゃんばあちゃん皆んながあそこにいる。それっておかしいじゃん。呪いとかいってあんな閉じ込められてさ。だけどだからって癇癪おこしてもなんも始まらない。復讐したって何も変わらない。だから俺、考えたんだ」


そういうソウの顔は本当に晴れやかでまっすぐで眩しすぎるくらい。


「人に沢山いいことすりゃあ、許してくれんじゃないかなって」


そんな言葉に思わず息を飲む。

そんな考え方、あるんだ。ほんと幻想的なのに何故か信じたくなる。

ベジが惹かれるのも頷けるや。


「まあさ、とりあえず天使のとこ?いくんだろ。天使ってすんごい美人多そうだよなあ」

なんて鼻の下を伸ばしていうソウには呆れてしまう。


すごいことを言ったかと思えば今度はふざけたことをいって(本人からしたらおふざけではないだろうが)そんなソウのことが最初は合わないと思って遠くに感じていたのに今は不思議とそんなに距離を感じなくなっている。


ふとセレナが隣にやってきて小声で

「とんだライバル出現よね。変態だけど」

という。


僕はそんな言葉に苦笑して「ほんとにね」という。

それからずっとなんとなく気になっていたことを口にする。


「人間の法ではいとこ同士の恋愛は大丈夫なのか?」


そんな言葉にセレナは一瞬目を見開いたもののすぐにニィッとした笑みを浮かべる。


「一応okね。ただあの調子じゃあ問題ないんじゃない」

そういってセレナが見やる先には穏やかな笑みを浮かべてソウと談笑しているベジの姿がある。


「あの子そういうことにとことん疎そうだもの。ま、頑張りなさいよ。」

そういうとセレナは僕の背中を思い切り叩いた。


「少しは加減をしてくれ……」


僕はズキズキと痛む背中をさすりながらそう呟いた……。







「じゃあ、私はここら辺ブラブラしとくわ。」

そういって手をひらひらさせるセレナ。


セレナが言ってたように天使の都へは僕、ベジ、ソウ、ラナが行くことになった。

セレナはその間地上で留守番だ。


セレナはふと考え込むような表情を浮かべスタスタとラナの元へ歩み寄る。


「セレナ?……」


不思議そうな声を出すラナの頭にポンッと手を置くとわしゃわしゃと一切の容赦なく頭を撫で繰り回すセレナ。


「大丈夫よ」

たったそれだけいうとセレナは満足したようにラナに背を向けテクテクと遠くへ去って行く。


ラナは暫くうつむいていて、白銀のボブヘアーで表情が一切見えなかったのだけれど不意にバッと顔を上げる。


そこに浮かんでいたのは今までにないくらい幸せそうな、でもどこか泣きそうな表情。


「ありがとう。セレナお姉ちゃん」







「今から呼び出すから。あの子達手加減できないの。万が一があったらごめんなさいね」

そういうとラナは手を口に入れヒューッと思い切り口笛を吹く。


今何をしているのかというと宙に浮かぶ天使の都へ行く方法を模索しているところ。

というのもラナは翼が片方しかないので上手く飛べないから僕ら全員を都へ運ぶことはできないから。


だからラナはある方法を思いついた。

それがこれなんだけど……。



「なんも起こんなくね?」


ソウがキョトンとしたようにそういって頭の後ろで腕を組む。


「でも、なにか聞こえるよ」


ソウの隣でベジが不思議そうにそういう。

そう言われてみればなんとなく羽音のようなものが聞こえる。

しかしこの音を聞くと嫌な思い出しか蘇って来ない。

初めてラナと会った時、こいつらに襲われたっけ……。


遠くから点々と姿を現し始めたのはまぎれもない堕天使。

ラナのお友達、だそうだ。


今回はその堕天使たちに都まで運んでもらおう、ということになったんだけれど……。


近くへやってきたそれはひどく禍々しい。

あの時はラナの魔法で濃い霧がでていてよく見えなかったからな。


まるで悪魔みたいな容姿のその人たちは背中に生えた羽だけが唯一天使の名残を残している感じだ。

ただ、名残を残しているというだけでその羽は純白とは程遠いしボロボロと羽が乱れているのが見て取れる。


「さ、みんな、この子達をあそこへ……私たちの地獄エデンへ連れて行くのよ」

そう言われて考えるような間も無く僕たちへ近寄ってくるその人たち。


どうやら感情とか考えとかはなさそうだ。ただラナのいうことに従っているだけのように思う。


近くで見るとその容姿がよく確認できる。虚ろな瞳に放置しっぱなしな身なり。

そんな人がすぐそこへやってくるのは一種の恐怖も同然で、僕は怖くて思わずギュッと目を瞑る。

すると唐突にガシリと脇をつかまれ持ち上げられる。


地から離れる足。


「う、うわあっ?!」


なんとも不安定な飛び方で空高くへ連れて行かれる。

魔法のじゅうたんで飛ぶのとはわけが違う。


「ヒャッハーっ!!」


「うわあ」


近くから聞こえてくるソウとベジの声。

その声に集中して他のことは一生懸命考えないようにする。

けれどこの状況下で考えないなんてできるわけない。


僕は妖精たちにさらわれた二の舞で気づかぬ間に気を失っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ