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クロスロード  作者: 睦月心雫
第6章 妖精の王国 ノーチルターン
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お手紙

「うう……」


そんな呻き声をあげながら徐々に瞳を開いていく。するとすぐそこにタグの顔が見える。


真っ直ぐ目が合うと心配そうな顔からパッと安心したような笑みをこぼしてみせるタグに思わず笑みが浮かぶ。


ぼんやりとした頭でぼんやりと笑みを浮かべていた私。

けど、それも束の間のこと。すぐにハッとして上半身を起こす。


「女王様はっ?!それに、ここは?」

そういって辺りをキョロキョロと見回す。


見れば辺りには林が広がっていて私の隣にはセレナが眠っている。

セレナがみんなの前で眠るなんて珍しい。


「ここは妖精の国から離れたところにある林の中の野営地だよ」

そういうタグに

「そうなんだ……」

と呆然として呟く。


それから、

「でも、女王様はどうしたの?」

と問う私。

そんな私にタグは少し困ったような笑みを浮かべながら

「それが、ソウとラナが来てね僕たちを助けてくれたんだ。今はいないんだけど……」

という。


ソウ、という名前がでてきてハッとする私。


ソウくん、やっぱりラナと一緒にいるんだ……。


なんだか少し複雑な気分でいるとそれを見かねたようにタグがニコリと優しい笑みを浮かべてくれる。


「ベジやセレナの危機を察知して駆けつけてくれたんだって」


「そう……なんだ……!」


そう聞いて途端笑顔になる私。

嬉しい。


結構前、夢にソウくんやお母さんたちをみたとき、ソウくんは「絶対にお前を見つけ出す」と、そういってくれた。


私はその時は自分が魔王の血族であることも、私以外の家族は今も閉じ込められているのだ、ということも知らなかったから、頭にハテナマークを浮かべていた。


けど今になってくるとあの言葉の意味もよくわかってきていて……。


ただ、なんでソウくんは私のところでなくラナのところへ行ってしまったんだってこの間会えた時思ってーー。


「あ、あれ?おかしいな……私……」


視界が少し揺らいできて慌てて手で目もとを拭う。

濡れている。あまり自覚はないけど、今私は泣いているみたいだ。

涙が出たのなんて何年ぶりだろう。


少なくとも十年くらいは経ってる気がする。

前に泣いたのは確か本当に幼い子供の頃だったと思うし。


「ベジ……」


タグは悲しそうに私の名前を呟く。


「あっ、大丈夫だよ、タグ。私、別に悲しくて泣いてるわけじゃないの。なんだか嬉しくて」

そういうと何故か余計に悲しそうな、切ない表情をするタグ。


そんなタグに私はどうすればよいのかわからずあわあわしてしまう。


けれどタグはそんな私の様子を見ているうちに不意にクスリと笑って

「僕の方こそなんだかごめんね」

という。それから、

「それにしても、セレナ、起きないね」

そういってスースーという寝音すら立てずに寝ているセレナを見やるタグ。


「そうだね。でも、私たちいつもセレナに頼っちゃってるからきっと疲れが沢山溜まってたんじゃないかな。もう少し寝させてあげようよ」

そういうとタグは「そうだね」といって微笑む。それから少しの間のあと、

「そろそろ夜だし、僕は少し焚き木を集めてくるよ」

というタグ。


「なら、私も」


「ううん、ベジはここで待ってて。セレナは今寝てて無防備な状態だし、こんな時に魔物がやってきたりしたら大変だし」


「そっか……。そうだね。わかった。ごめんね、タグ」


「いいんだよ。ベジは休んでいて。じゃあ、行ってくるね」

そういって去っていくタグの背中を見つめながら、不意に、以前ピンリィからもらった手紙のことを思い出す。


一人で読むように言われていたけれど、セレナは今寝ているわけだし、1人……みたいなものだよね。見ても大丈夫かな?

なんて考えながらズボンのポケットの中で少しクシャリとしたお手紙をとりだす。


少しでも元に戻るよう伸ばしつつ封筒から中の手紙をとりだす。


それから手紙を広げてみるものの……


「なんて書いてあるんだろう……」


半分呆然としながらそう呟く。

今更思い出したのが私は字が読めないのだった……。

ソウくんが読んでる本をちらっと見たことはあるけれど読んだことは一度もないし、幼い頃父に絵本を読んでもらうことはあったけど、文字なんて考えたこともなかった。


なんとかいてあるのか、懸命にうーんうーんと唸りながらその文面を見つめる。


けれど一向にわかりそうにない。

困ったなあ。


「ふう……。持ってきたよ」


そんな声にハッとして振り返ればタグが両手いっぱいに枝木を抱えて立っていた。


「わあ。ありがとう、タグ」

そういって微笑んでから、そういえばこの手紙は一人で読まなくちゃいけないんだ、と思ってサッと手紙を隠す私。


そんな私を見て不思議そうな顔をしたタグだけどすぐに悲しげな表情を浮かべる。


「じゃあ、火を起こすね」

そういってなんでもないように枝木をおろすタグ。


なんだか心苦しい。


「あ、あのね、タグ」


「?なあに」


ピンリィごめんね。

私一人じゃ字も読めないから……。


「これ……読んでほしいんだ」

そういって隠していた手紙をそろそろと差し出す。


「これは?……」

純粋に不思議そうな表情でそういうタグに私は

「ピンリィからもらったものなの。一人で読んでっていわれたからさっき隠しちゃったんだ。でも私は字が読めないから……だから、タグが良ければ読んでほしいの」

という。


するとタグは少し経ってからニコリと笑みを浮かべて「もちろん」と答えた。







焚き火をおこして二人ともセレナのそばに腰を落ち着けるとタグが改めてその手紙を読んでくれる。


「ベジへ。わたくちとお話ししてくれてありがとうだっわね。あなたは今までに見たことがないくらいいい子だっわね。今度また必ず遊びに来てだっわね。

そして、ここからは大事なお話しだっわね。

わたくち、こんな感情抱くの初めてだっわね。

でも確かにそう思うんだっわね。」

そこまで読んだところでタグは口ごもる。


「タグ?」


「え、あ、ああ、うん。ごめん、読むね」


どうやらかなり動揺しているようだけど、なにがかかれているんだろ。


やがてどこか躊躇われがちに続きが読まれる。


「わたくち、あなたのことが好きだっわね。

だからいつか結婚してほしいんだっわね。」


「え……」


そんな言葉を聞いて驚く。結婚って……。


「毎日美味しいプリンを振る舞うだっわね。

だからどうか考えてほしいだっわね。答えは今度会った時に聞かせてほしいだっわね」


読み終えたタグは驚きを隠せない様子だ。


「ピンリィは男だったのか?いや、でもあの村の実態を知る限りでは動物と人間が掛け合わされているんだから、メスの鳥と男の人間が」

などとブツブツ呟くタグの横で私はぼんやりとピンリィのことを考える。


けどやがて

「ねえ、タグ、結婚って一体なに?」

と疑問を口にする。


「え?!あ……そうか。ベジはずっと……」


最初は驚いた様子だったけれどやがて納得したような表情をみせるタグ。


そう、私はずっと牧場で家族や家畜とだけ交流しながらろくに考えることもせずただのんのんと寝てばかり過ごしていたから色々とものを知らない。


「結婚っていうのはね、好きな人同士が一緒になることを言うんだ」


少し照れたようにしながらもハッキリとそういうタグ。


「じゃあ、私もピンリィが好きでピンリィも私が好きだから結婚できるね」


やっと結婚の意味を理解してルンルンしてそういう私だけれどタグが慌てたように

「違うよ!」

という。


「?なにが違うの?」


「だからさ……」


先程にも増して照れた様子のタグ。

一体何をいいたいのだろう。


「好きっていっても特別なものなんだ。仲間とか友達とかとはまた違う好きなんだよ」

そういわれてよーく考えてみるけれどイマイチ理解できない。


「好きって何種類もあるんだねえ」


今まで考えたこともなかった。


「う、うん。そうだよ。」


頬を赤らめながらそういうタグ。

私はふと疑問に思って

「タグにはそういう人がいるの?」

と問う。


「その、友達でも仲間でもない、好き、な人」


そう付け足すと俯いてボソボソした声で何事かを呟くタグ。


だけれどよく聞こえない。


「タグ、もう一回いってくれる?」


「え?だ、だから……今目のま」


そうタグが言いかけた時だった。

近くの林から誰かの足音が聞こえてくる。

思わず身構えたその時にはもう遅くて……。


「うっ」


すぐ後ろに誰かの気配がして、首元には長いかぎ爪があてられる。


「やっと見つけたよ。魔王の生まれ変わり」


「え?生まれ変わり?……」


血族なんじゃなくて?

唐突なことに驚くところだけどそんなことを思う。


……でもそう考えるとなんだか辻褄があう気がした。


みんなが私のことを魔王の子孫でなく、魔王、と呼んでいたことがーー。




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