モテモテなタグ
「えっ……と……」
そう呟いて私が呆然と見つめるその先には宙を飛ぶキラキラした塊もとい妖精に運ばれていくタグの姿がある。
でも、あまりに妖精の数が多すぎてタグの姿はもう確認できない。
「セレナ、あれって?……」
「ほんと、あいつらは変わんないわね」
そういうとタグの行く先を見つめながら盛大にため息をつくセレナ。
「昔、私の仲間もあんな感じで妖精どもに誘拐されたわ。坊主はそいつに……なんとなく似てるし」
「えっと、つまり?」
「ミーハー野郎な妖精どもはイケメンを見つけだしては国に連れ去ってるのよ」
「え……」
「はあ……。こんなバカみたいなこと私の口からいいたくないけど、あいつらは大のイケメン好きで、近くに好みのイケメンがやってくると気配でわかんのよ。んで、イケメンっていったって種類があるでしょ。やれ可愛い系やらクール系やらチャラ系やら。」
「あ、うん」
「で、それぞれ支持する系統によって派閥を形成してるのよ」
「派閥を……」
「そ。さっき坊主を連れ去ったのはノーチルターンで最も大きい派閥ね」
「そ、そうなんだ。それで、その派閥の人たちはどんな人が好きなの?」
「王子系統」
「王子……」
そういわれて考えてみればタグは王族だし優しいし、王子さまっぽいのかも。
「まあ、さっきしたのはあくまで状況説明であって、坊主は全然イケメンじゃないと思うけど」
「うーん、そうだねえ。」
そういう風にタグを見たことないから私もよくわからないかも。
タグはなんだかしっかりしたお兄さん、という雰囲気だし。
第一私に私はイケメンという定義がよくわからない。
「あらま。こりゃ完全に脈なしって感じね。坊主哀れ」
「ん?どういう意味?」
「なんでもないわ。こっちの話。それよかちゃちゃっと坊主救出しにいきましょ。めんどいけど、あいつのおかげで私がいることも目くらましできたようだし」
セレナはそこまでいうと独り言のように
「……というよりかは、あいつらイケメンのことしか考えてない腐れ脳だから私のこと、とっくに忘れてそうだけど……」
と呟いた。
「はい、ついたわよ」
「うわあ……ここが……」
暫くしてついたそこは、今まで見たこともないような場所だった。
見上げるほどの大木がいくつもあるんだけれど、地面はデコボコで大木はいくつか傾いていたりする。
そしてその大木には目が痛くなるほど鮮やかな色とりどりの花が咲き乱れている。
ほんと、気分が悪くなるくらいにたくさんの色がある。
なのに気分を害したりはしないのが不思議だ。
よく見ると花の一つ一つが開いたりとじたりしている。
開いた花の中から妖精さんがでてきたり、逆に花の中に入っていく妖精さんもいる。
そっか。
妖精さんたちはあの木のお花にすんでるんだ。
そんなことを考えながら下へ視線をうつすと大木のど真ん中に穴が空いているのが見受けられる。
しかも私たちでも悠々はいれるくらいの大きさ。
集会所かなにかなのかな?
でも、それにしては大きすぎるような……。
なんて考えているとセレナに腕を引かれる。
「隠れて」
私は考える間も無くセレナにひかれるがままに近くの茂みにつれこまれる。
「それにしても見た?チルノ組の新しいコ。そのコ巡ってエルロン組と諍いあったらしいよ」
「マジ?!そんなにイケメンなの?チラッと見たけど細くて筋肉なんにもなさそうだったよ」
「ええ?!なにそれ最悪ぅ。やっぱチルノとエルロンの組とは気ぃ合わないねえ、うちら」
「ほんとだよね、筋肉こそすべてなのに。なんにもわかってないんだよ、あの子ら」
「マジ言えてる!人間やエルフの努力からくる筋肉もいいけど、ドワーフの幼い頃から鍛冶場で鍛えた筋肉とかすごい好き♡」
「きっも」
そうつぶやくセレナに慌ててセレナの口を塞ぐが、妖精の子達は話に夢中で全然気づいていないみたいだ。
よかったあ。
それにしても、セレナの言う通り妖精さんの声は相当な高音みたいだ。
耳がキンキンしたし、言葉だってなんとか聞き取れるくらいだった。
「さてと……」
妖精さんが去るとセレナはニヤリと口角を上げてそういう。
「タグを助ける作戦、思いついたの?」
「まあ、そんなところよ。坊主を救えて玉も手に入れられる素敵な方法。知りたい?」
「もちろん!」
「そう。それはね……」
「うわあ……」
「どう?性別が変わったご感想は?」
「んーと。特には変わりないかも?」
そういう私は今、セレナの魔法によって男になっている。
というのも、妖精さんの国ノーチルターンに入るにはそれが一番手っ取り早いから。
男の人になった私は自分ではその姿を確認できないので、感覚としては先程と同じようにしているかんじだ。
特に違和感もないし……。
「そうねえ。あんたの場合、元々真っ平らだったから見た目としての変化はさしてないわねえ」
「え?それってどういう」
「それよか、髪型変えるわよ。その長い髪のまんまだと女だと思われるわ。それかロン毛好きの妖精連中がたかってくるか。ま、いいわ。パパッといくわよ」
「うん」
私がそう頷いた瞬間セレナがパチンと指を鳴らして、先ほどまで頭にあった重みが一切消えて無くなる。
そして……。
「わあ。すごい!なんだかチクチクするよ」
そういって首筋の髪の毛をサワサワする私。
「あれまあ。なんか短くしすぎたかしら。」
「?そうかなあ」
なんていいながら前髪をさわってみようとすれば、おでこの、髪の毛の生え際のところまでさかのぼってやっと前髪らしきものを見つける。
「確かに短いかもしれないけど、これだと全然楽ちんだよ」
セレナはそんな私の言葉に呆れたような笑みを浮かべ、
「ああ、そう。別に楽ちんにするためにやったんじゃないんだけどね」
なんていう。
「さてと、私もいっちょやりますかねえ」
なんていってセレナが盛大に指を鳴らすとセレナの姿がみるみるうちに変わっていって……。
「ま、完璧、ね」
気づくとそこにいたのは完璧な麗人。
すごく綺麗で背が高くてそれこそ王子様みたいな人。
私よりも何十センチか背が高くて、漆黒の髪の毛は短くオシャレにカットされている。
鋭めの漆黒の瞳は無条件に惹きつけられるようだし、肌は白く透き通るよう……。
「セレナ、なの?……」
「たりまえでしょ。これでノーチルターンへ行けるわ。つうか、こんな近くにいんだからそのうち迎えが来るわね」
「お迎え?」
「ええ。タグを連れてったみたいにね。あの大木に大きな穴あったでしょ。あそこに連れてくの。それぞれの大木がなんの派閥かで分かれていて、つれてきた奴らは穴に保管ーって感じね。」
「ほ、ほかん……」
「ま、大丈夫よ。多分変なことはされないし。されそうになったらぶっ飛ばせばいいのよ」
「う、うん」
「じゃあ。それぞれ別々の場所で玉の在り処を探りつつタグ救出、よ。」
私はうまくやれるかなあ、と不安に思いながらも
「うん」
と大きく頷いた。




