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焦燥に駆られて

 マリア達捜索の為、手始めにショッピングモールへと足を運んだ。俺からすれば全て同じように見える店が所狭しと密集している。そこはまさに現代のジャングルだ。店の区別がつかない以上、高速で店から店へ移動それたら追跡は不可能だ。もしリア充とゲリラ戦を行ったらまず勝てない場所ナンバーワンである。


「それにしても本当に大きいね、ここ」


 レナが俺の気持ちを代弁してくれる。全くその通り。


「先輩達はこういう所は来ないの?」


「こんな所でリア充を倒そうとしても逆に袋叩きに遭うだけだからな。人目も多いし」


「いや、買い物しに来ないのかって聞いてるのよ……」


 げんなりした様子でミハギが返す。


「いや、わざわざ人の多い所で買い物する意味無いだろ」


「私は兄さんに任せているからね」


「私もどっちかというと非リアよりだって自覚はあったけど本物の非リアには敵わないわね……」


 少し引いたようにミハギが言う。まあ、非リアは引かれてナンボだ。その程度は気にしない。そんな非リア自慢をしつつ服屋を何店舗か物色していく。本当に違いが分からない。


「この辺りにはいないのかな?」


 レナが言う。リンカの言葉が本当なら見つかるはずなど無いらしいが。


「他の所も探してみるか?」


「そうした方がいいわね。他に行きそうな場所としてはここかしら?」


 そう言ってミハギが指したのはゲームセンターだった。


「え、ここなの?」


「ここにはいないんじゃないのか……」


 首を傾げる非リア組。こういうところってオタク系の人間が行くんじゃないのか。


「それは偏見よ。プリクラを撮るJKだっているし、非リアやリア充に関係無くゲームをする人は多いわ」


 言われてみれば納得できる。リア充も以外とこういう所に来るんだな。


「ねえトウヤ君、今度プリクラの中に罠でも仕掛けない?」


「そうだな。上手く使えば証拠が残らないしな」


「本当に歪んでるわね……」


 そんなこんなで見て周るが案の定あいつらはいない。それにしても絶対に俺達に見つけられない場所ってどこなんだ。


「中々見つからないね……」


「おかしいわね、いつもならこの辺りにいるはずなのに……!」


 そう漏らすミハギは苛立ちを隠せないようだった。


「ごめんなさい。もうすぐ日も暮れるから2人は先に帰ってくれるかしら。私はもう少し探そうと思う」


「それならミハギちゃんも帰ろうよ。いくら《自我》を使えるといっても夜は危険だよ。また明日にしよう?」


「でも、リンカちゃんが……」


「落ち着けって。そんな1人で強引に突っ走ってもいい結果は出ないぞ」


「そんなのはやってみないと分からないでしょ!」


 そう言って弾かれたように飛び出す彼女を止めるべく、言うべきでないのは分かっていたがあの事を口にしてしまった。


「マリア達はお前が見つけられる所にはいないんだ!」


「え……どういう事?なんで先輩がそんな事を知っているの……?」


「ここに来る途中にリンカと会った。その時にそう言われたんだ。それに私のために時間を使うな、とも言っていた」


 あまりにも咄嗟の出来事だったのでついベラベラと全てを話してしまう。だが後悔したってもう遅い。ミハギの声はどこか震えていた。必死に理性を保とうとしているように見受けられる。


 それはそうか。こんな重大な情報を、しかも最近まで部外者だった奴から告げられたら誰だって困惑するよな。迫り来る情報の濁流に飲まれまいとしながら彼女は答える。


「……何でそんな大切な事を早く言わなかった訳?」


「悪い、アンタに言うべきなのかどうなのか分からなかったから黙ってたんだ」


「何それ……力になるとか言いながらそんな事するんだ」


「おい待てって、誤解だ。俺はアンタ達の事を考えて……」


「うるさい!!」


 俺の無様な弁明を彼女の声が遮った。


「もう……いいわよ!1人で探すしリンカちゃんも取り戻すから!」


 そう言い残して走り出すミハギ。


「待ってよ!」


 そう言ってレナが追いかけるが、ミハギは俺だけでなくレナをも拒絶した。


「《花の障壁(フラワー・スクリーン)》」


 手を伸ばして彼女を掴もうとするもおびただしい数の植物がそれを許さない。大木がいくつも地面から生えてきてその周りを何重もの蔦と花が埋め尽くす。


「その花、棘を鋭くしたから触るとタダじゃ済まないわよ!」


 そんな捨て台詞を残したミハギの姿は既に植物に遮られて見えなくなっていた。



「……やっちゃったね」


 ……返す言葉もない。俺達2人が取り残されてからどれだけの時間が経ったのだろう。長かったのか短かったのか、その体感すら無かった。俺が感じていたのは後悔のみ。俺みたいになって欲しくなかったがために行った行為が裏目に出て最悪の結果を招いてしまった。


「でもね、私がもしトウヤ君と同じ状況だったら黙ってたと思うんだ。他人の心なんて特に読めない人種だしね、私達」


「そんな慰めは大丈夫だぞ」


 何を言ったってもう遅い。覆水盆に返らずってやつだ。


「最後まで聞いてよ。失敗したってそれは取り返せばいいんだよ。それは時間が経てば経つほど難しくなるけどね」


 失敗してそれを放置すればどうなるのかレナはそれをしっかりと自覚していて、その上で取り戻そうと言ってるのか。失敗してそれを放置した事は俺もある。というか大体の人間はやった事があるだろう。


 特に俺は大量の間違いを犯しそれを無視してきた。癖にしてきた。これは直さないといけない悪癖だと分かっていても見ない振りをしてきた。もしかしたらそれによる周りの目から逃れる為に《不可視》を身につけたのかもな。だとしたら俺は失敗から逃れる事しかできないじゃないか。今更それを取り戻すなんて俺にできるのか……?


「私がいるから大丈夫だって。一緒に頑張ろう?」


 レナは難しい顔をして黙り込んでいた俺にそう語りかけた。


 ……確かに何も行動を起こさないのは良くない。何も変わらないのは嫌だ。折角リア充に対しても少しだとしても影響を与える事が出来たんだ。こんな所で逃げるのはもったいない。


「……そうだな。なら今からミハギを探そう。まずはあいつを説得しないと」


「説得する人が多くてこれから大変な事になりそうだね!あ、最悪でもマリア達を引っ掻き回す事だけは達成するからそのつもりでお願い!」


 そう言ってレナは駆け出し、俺も続く。どんな時でも忘れないそのリア充への執念には最早敬意すら覚える。……それにしても俺はいつもレナに背中を押されてるよな。いつもあいつの背中を追いかけてるよな。


 俺は、このままでいいのだろうか。俺も今までの分、レナを支えられるような役割があれば良かったのに。レナは俺の《自我》を高く買っているようだが実際には大した事なんてないんだよな。それにあいつが気づいた時、果たして俺の居場所は残っているのだろうか。


 街灯に照らされた道を駆け抜ける中で、ふと光の灯っていない街灯が目に入った。――例えば、レナの中での俺の価値があの壊れた街灯のように急に消え去る事があるだろうか?顔には直接出さない気がするが可能性が無いとは言い切れない。


 本当に、自分の付加価値を見出さないと。1つ、自分の苦悩の原因を作ってしまったと思う。自分に、出来る事か……。それならまずはミハギを説得する、彼女とリンカとの関係を改善させる。まずこれに集中しなくては。そして横に首を思い切り振る。余計な思考は今の間は捨てなくては。


「とにかくミハギちゃんはまだ遠くには行ってないよね」


「それにあの言い方から家に帰ってとは思えない。ならこの辺りじゃないのか」


「そうだよね。それにしても絶対見つからない場所ってどこなんだろう?」


「裏をかいてあいつらの行かなさそうな場所、ってのは流石に単純すぎるか」


 例えばリンカと会ったあの路地裏のように薄暗い場所とか――。


 と、思考を巡らせているとズンと心臓にまで響くような轟音。そして地響きを感じた。そして何回か鳴り響いた後その音はぴったりと消えてしまった。


「今のは地震か?」


「地震の音にしては不自然な気がするよ。もしかしたら、誰かが《自我》を使ったのかもね」


「他にアテも無いしとりあえず確かめに行くか」


 もしもばったりとイドに会ったら嫌だなとか益体もないことを思いつつ、とにかく震源へと向かった。




「はあ、はっ……本当に何なのよ、アンタ達」


「だからこれ以上絡まれるのはウザいって言ってんだしー。いい加減近寄らないで欲しいんだよねー」


 同時刻、そんなやりとりが路地裏で行われていたとは俺達は知る由も無かった。

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