いざ、リア充の巣窟へ
路地裏での一件の後、程なくして俺達は例の喫茶店で合流した。とりあえずリンカが言った事は伏せておこうと思う。ミハギに言うと何となく逆効果になりそうな気がしたからだ。後でレナには伝えておこうか。
結局、俺達が出せた方針はあいつらを見つけ次第攻撃。リンカ以外を叩き伏せたところでミハギが説得をするという至極シンプルなものとなった。搦め手が有効でなさそうだし、俺やレナの搦め手はリア充を陥れるために使うものだ。他人の益となるような使用法など存在しない。
一応ミハギの《自我》についても聞いた。能力名は《植物》で目に入る所に好きな植物を発生させられるらしい。大きさまで自在に決められるのだから3メートルもあるチューリップも咲かせられると彼女は言っていた。生物学者がショック死するだけじゃないのか、それ。
「姿が消せる陰気臭い能力には言われたくないわ」
そう言ってミハギは笑っていた。俺達よりも1つ年下のはずだがその振る舞いからは大人の余裕のようなオーラが漂っていた。内気な性格からここまで変化したとは正直信じられない。他人を思う事でここまで変われるのか。あまり俺には分からない事情だ。
ともかく、こうして俺達はマリア達の捜索を開始した。レナ達にはまだあの事は告げていない。俺だけがこの行為が無駄だという事を知っている。いや、無駄だと言って切り捨てるのは早計すぎるか。俺は誰かと何かを行う事に無駄があるとは思わない。自分がそんな経験が全く無かったからそう考えているだけかもしれないが。
それに見方を変えれば割とチャンスなのではないか? 向こうから来ないし、接触できない以上時間的余裕がこちらに生まれる。その間にマリアの攻略法、ミハギとリンカの効果的な和解方法を考える事ができる。……今はそれに集中しようか。
「ぼーっとしてると置いていくよ?」
その声に引っ張られるようにして歩き出す。大都会とは言えないまでもこの辺りの地域では結構な都会と言えるその通りには多くの人が歩いていて2人の女子と歩く俺の姿は、はたから見ればリア充のように見えるかもしれない。
……俺達はそんないいもんじゃないけどな。リア充を高級品とするならば俺達はそれらの模造品だ。ぱっと見は分からないがちょっと調べればその差は一目瞭然。しかし、純正品を貶める存在としては模造品の例えは的確なのかもしれない。そう思うと笑みがこぼれた。不敵というにもふてぶてしすぎる笑みだが。
えっと、何をしなくちゃいけないんだっけか。ああ、マリア達の捜索だったな。実際にはただの散歩みたいなものだが。それを本当にどうやってミハギに伝えようか?とりあえず、思いつくまではブラブラついて行くか。妙案はふとした時に思いつくもんだしな。
そうして俺達は眩しい橙の空と人混みに飲まれていった。




