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戦争、しない?

 目が覚めた。俺はベッドの上にいた。


「……俺、生きてるのか……?」


「おはよう、やっと目が覚めたんだね。ちょっと睡眠不足なんじゃない?」


 そこにいたのは恐らく同年代であろう女の子。薄い金髪を水色のリボンでくくってポニーテールにしている。


「……アンタは誰だ?」


「私は水無川(みながわ)レナ。レナって呼んでね」


「は、はあ……。えっと、俺は……」


「旭トウヤ君、だよね?」


「えっ、なんで俺の名前を知ってんの?初対面だよな?」


「そりゃ、調べたからね。君のこと。最近、透明になってリア充を襲っているのは君だよね?」


「……ッ!」


 いきなり核心を突かれた。動揺する俺をよそに彼女は続ける。


「リア充は嫌いだよね? あれだけ派手にやってるんだし、聞くまでも無いか。ところで、私と組まない? 私と一緒にリア充相手に戦争をしない?」


 話が急すぎて理解できない。少し勝手かもしれないが、まずは状況を確認しないと。


「なあ、それについて話する前にここはどこか教えてくれない?」


「ああ、そういえば説明してなかったね。ここは私の家で、君は《麻酔》で眠らされてここまで運ばれたんだよ」


「あの針は麻酔針だったのか……。ところで何で姿を消しているのに場所が分かったんだよ」


「いや、普通に足音で分かるでしょ。足音を立てない練習はしておいた方がいいと思うよ」


 本当は足音も消せるけど、な。


「お気遣いどうも。で、戦争というのは?」


「簡単だよ。リア充をたくさん倒して有名になって、その時に他の非リア達を誘って全面戦争起こそうって感じ。有名になればできると思うの。《透明》と《麻酔》とか、組み合わせたら強いと思わない?」


「いや、俺の《自我》は、《透明》じゃなくて《不可視》だ。それと、悪いけど戦争を起こすのは協力できない。俺はこういうのは1人でやりたいしな」


 バタン!! 急にドアが開いた。まだ誰かいるのかと視線を移すとそこには男がいた。ガタイはよく、髪は逆立った茶髪。そして鋭い目つき。裏社会の人間じゃないだろうか。


「てめえ!! せっかくのレナの誘いを断るのか!?許さねえぞ!?」


 理不尽だ。そう思ったがこの人がおっかなさすぎて何も言えない。


「ちょっと兄さん、やめてよ。もう少し穏便に事を進めたいんだけど。そんな風に強制してもいい結果とか出ないよ」


「そもそもこんな奴のどこがいいんだ?戦争なんて俺とレナだけで起こせるだろう」


 突如始まった兄妹喧嘩に置いていかれる俺。もうこのまま帰ってもよくないかな。


「あっ、トウヤ君。この人は私の兄さんのサイガって言うの。よろしくしてあげてね」


「よ、よろしくおねがいします……」


 急に下の名前でよばれてドギマギしてしまう。こんなことができるなんて、あいつ、コミュ力が高くないか? どう見てもリア充にしか見えないんだけどな……。


「おい、本当にレナと組む気は無いのか? 本人がこんなに頼んでいるのに」


「はい。さっきも言いましたけど俺はこういうの1人でやりたいんですよ。そもそも他人と組んでも勝率が上がったり効率よく戦える保障なんてどこにもない。もしかしたら裏切られる事だってあるじゃないですか」


 2人は呆然として聞いていた。言ってやった。組みたくない理由を一気に。いや、正確には組まない理由かもしれない。無条件に人を信用するのは良くない。ロクなことがおきないって。そう自分に言い聞かせないと。昔みたいなことはもうこりごりだ。


「裏切られたのはもしかして君の実体験? それなら――」


「だったら何だよ?」


 最後まで聞くことなく即座に切り返す。そんな風に気づかったりデリケートに扱おうとするの、本当にやめろよな。逆にイラっとくるんだよ。


「ううん、ごめん。何でもないよ……」


「じゃあ、失礼します」


 そう言って部屋を後にする。無愛想にドアを閉めようとした時に彼女の声が聞こえた。


「君にはただのお節介かもしれないけど、一応言っておくね。私はどんなに頑張っても1人じゃどうにもならないことってあると思うの。もし、君がそんな事態に陥ったら迷わずに私を頼って。……私は君を裏切らないからさ」


 一体その根拠はどこにあるのだろう。俺は返事をせずにそのままドアを閉める。あんなことを言われてもまだ拒絶するように。ガタンという音だけが部屋に響いた。




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