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知らされない評価

 俺が学校をサボった翌朝。今朝はちゃんと起きて家を出た。まだ多くの学生が家にいる時間に俺は通学している。基本的に俺は人が多い所にいるのが嫌だ。人間苦手。


 だから早くに登校し、授業が終わると速攻で帰る。ほとんどの非リアがそうだろう。異論は認めない。そんな訳で通学路で彼女に会ったのも偶然でも無ければ運命でも無いし何というか必然なんだろうなと思う。


「おはよう、トウヤ君。昨日はどんな反応された?」


 声の主、水無川レナは俺にそう問いかけてくる。朝からいきなり話しにくい話題を振ってくるなあ。ま、自業自得なんだけどな。


「ゴメン、疲れてて学校サボっていたから全く分からん」


「あー、やっぱり君も休んだんだね。何となく予想していたし別にいいよ。疲れは取れた?」


「まあまあ、おかげさまで。」


「それなら良かったよ。じゃあもうちょつと速く歩けない?早く学校に行こうよ」


「別にいいけど……」


 そこまで反応が気になるのか。意外と承認欲求が強いのか?


 そうしていつもより早く学校へ着いた。別々のクラスなので校門で別れる。そして1人、少し緊張した表情でクラスへと向かう。さあ品評会の始まりだ。


 ……と思ったんだけどなあ……。


 特にこれといって目立った様子は無し。いつも通り相手にされない日だったんだが。おかしい、《不可視》を使っているわけでもないのに無視されているなんて。


 しかし考えてみれば俺にとってはそれが普通か。相手にされないぼっちの非リアだしな。コソコソ噂くらいはされると思っていただけに意外ではあった。この調子だとレナも相手にされてないだろう。心の中で大騒ぎしてそうだな……。





 もう放課後だ。授業も休み時間も上の空だったから気がつかなかった。光陰矢の如しとは正にこの事か。違うか。


 期待していた収穫は無かったにせよ、とにかくレナに報告はしておくか……。そう思って席を立とうとした瞬間、鋭い眼光が俺を捉えた――ような気がした。


 多分前で話してる教師だろう、顔が怖くて有名だしな。挨拶を終えたその教師が気だるげそうに教室を出て行こうとする。彼が出て行ったらそこから放課後、すなわちリア充のゴールデンタイムが始まる。


 これからあいつらは散り散りに教室から飛び出し青春を謳歌するのだろうな。頑張ってくれ。俺にはもう関係のない事だ。皆はもう待ちきれないのか各々が使うであろう道具を手に持ち始めている。


 そんなに楽しみなのか。元気でいいねえ。


 そして一斉にボールを投げたり、俺に突っ込んで来たり……はい?


「あっぶねえ!?」


 ギリギリ体を掠める程度で済んだが次はない!一目散に俺は教室を飛び出した。振り返るとそこには道具を持った名前も知らないクラスメイトの姿があった。


「何のつもりなんです!?」


 驚きとどのようにこいつらに接すればいいのか分からなかったのとで変な喋り方になってしまった。こんなキャラだと思われたくないなあなんて考えるのはしばらく後の事だ。


「君、斉藤先輩と久保田先輩を倒したんだって?」


 クラスのリーダー格の男が問いかける。本当にリーダーかどうかは知らない。オーラで何となくリーダーっぽいと思っただけだ。キラキラしてるし生理的に無理そうだからな。


「だったら何です?」


 一応返答はするものの答えなんて大体読める。少しずつ、バレないように体勢を整える。


「俺達が、先輩の仇を討つッ!覚悟しろッッ!!」


 それが戦闘の合図か。リア充らしいありきたりで正統派な感じだ。その程度の感想しか思いつかないな、なんて流石に本人達には言えない。そこまでのコミュ力は持ち合わせてない。だから一言だけでいいか。


「《不可視ん条約(ノーアグリッション)》」


 この技は俺が攻撃を仕掛けない限り姿を消していられる。戸惑う彼らをよそに逃走。まさかお前らの間をすり抜けて反対方向に逃げるとは思うまい。それにしても逃げるにはおあつらえ向きだよな、この《自我》は。


 ふとレナの事を思い出す。あいつも襲われてるとみて間違い無いだろう。どうせ《麻酔》で一蹴してるだろうな。だからあいつの所へ行く理由は無い。このまま帰った方が俺らしい。それでも様子を見に行こうという気になってしまった。


 少し前のリア充との激闘が彼女に親近感を感じさせてるのかもな……。



「あっ、トウヤ君。そっちは大丈夫だった?」


 案の定、レナは無事だった。教室の真ん中で学生でできた山の上にただ1人立っていて、夕日に照らされているその姿は少しかっこいいと思ってしまった。


 周りに倒れている人間は《麻酔》の犠牲者だろう。声すら出せていないところから《麻酔》の強力さがひしひしと伝わってくる。本気を出せば人殺しに使えそうだ。


「まあ逃げる手段は持ってるしな」


「ダメだねー。私みたいにリア充を倒さないと。非リアの名が廃れるよ?」


 俺の《自我》じゃ大人数を相手にするのは中々しんどいんだよなあ。


「そうだな。すごいな。強いな。それで、今日はどのリア充を倒すんだ?」


「え?今日はそんな事しないよ?逃げるよ?」


 リア充を倒せとか言っておいてそれかよ。


「こういう時に迎え撃とうとする奴だと思ってんだけどな」


「流石に後ろの様子を見るとそんな事も言ってられないよー」


 振り返るとそこには多くの人影。冷静に考えれば俺達のクラスの人間だけが襲って来るなんて考えにくいよな。つまりこの大量の人間は他クラスのリア充か。


 他の非リアはこんな事には便乗しないだろうが、その人数を抜いても十分過ぎるほど多い。というかそいつらを便乗させるのがレナの目的だったな。実現が大変そうだな。そして周りの人間の多さで感じてしまう。うちの学校は非リアが少なそうだなあ……。便乗するやつも数が知れてそうなんだけど……。


「トウヤ君、行くよ!」


 急に腕を掴まれ、そのまま走るレナについていく。窓から飛び降り、ギリギリ着地する。この前の戦闘でも同じ事をやってる。今更怖がる理由はない。


「一気に抜けるよ!」


 そして校門を抜けてさらに猛ダッシュ。学校から離れれば離れた分だけ奴らが追ってくる確率は下がる。俺達よりも部活の方が大事だろう。執拗に追われるとは考えにくい。


「はあ……はあ……ここまでくれば大丈夫だろ……」


「あの数は迫力あったね。どう考えても不利なのは分かってたんだしこうするしかなかったんだけど……」


 どこかスッキリしないという感じのレナ。多分誰かリア充を襲いたいんだろうな……。仕方ない。


「じゃあ……今から街の方でも行くか?手頃なターゲットがいるかもしれない」


「えっ、いいの?迷惑じゃない?」


「どうせ今日は暇だし問題ないけど」


「それはいつもだと思うんだけど……ありがと。じゃあ行こっか!」


 それを言うなり駆け出すレナ。俺はこれまでと同じようについて行く。こうして次なる相手を求めて動き出す俺達。それを背後から監視している奴がいるとは思わなかった。


「……アレが先輩を襲った犯人なんだぁ。そんな野蛮な人には罰を与えないとねぇ?そうだよねぇ、みんなぁ?」



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