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袋小路とサッカーボール

「それにしても2人とも同じ《《自我》》なんてあり得るんだな」


「トウヤ君はあんまり他の人の《《自我》》を見せてもらえないから知らないんだろうけど、結構部活をやってる人達は同じような《《自我》》を持ってるよ。だからそんなに珍しくはないかな」


 そうなのか。てか地味にディスるのやめろよ。俺は見るまでもなく倒せただけだっつーの。


「さて、君達はこれで終わりって分かってるっすか?逃げ場は無いっすよ?」


「それはそこに突っ立ってるからだろ?逃げ場を塞ぐためにそこにいる以上、俺達は狙い放題だぞ?」


 と言って《綾》と《真奈》を彼らに向ける。レナもそれに倣って針を握る。


「さっきの《《自我》》を見て分からねえのかよ?……俺達はこんなこともできるんだぜ!」


 そう吠えて柴田は俺達のいる倉庫にボールを思い切り蹴り込んだ。レナと一緒に手近にあった跳び箱をぶつけて軌道を何とか変える。しかしボールは止まらない。天井、壁、床へと衝突しながら勢いをどんどん上げていく。それは辺り一面のものを吹き飛ばしながらこちらへと向かってくる。


「危ねえっ!」


 凶弾を紙一重で躱す。ボールが俺の頬を掠めていく。頬から顎へと赤い液体が垂れるのを感じる。


「くっ……」


 こいつは不味い。掠っただけでも威力と鋭さが分かる。流石に死にはしないだろうが直撃すればタダでは済まされない。


「トウヤ君、一旦退くよ!」


 潔いのは嫌いではないが一体どうやって逃げるつもりなのだろう。レナは、再び襲いかかるボールに対し細長い物体を投げる。しかしボールはそれすらも簡単に破壊するだろう。そんなのは分かりきっている。一体何を投げて――そうか!


「はあっ!」


 理解すると同時に即行動を起こす。レナが投げた物。あれには恐らく石灰が入っている。つまり、それを破壊するなら何が起こるかは決まっている。俺はそれに合わせればいい。


 ボールと石灰との距離はどんどん縮まっていき程なくして辺りを白く染め上げる。それに合わせて投擲を開始する。俺は麻酔弾、レナは麻酔針を。倉庫の入り口、つまり運動部2人がいる場所へとにかく弾を放り込む。


「柴田、下がるっす!」


「ちっ、言われなくても分かってる!」


 そう言って2人は倉庫の外、石灰に包まれていないところまで後退する。流石に視界を奪われた状態で俺達の攻撃を躱しきるのは無理なのだろう。無茶なことはせず、彼らは冷静に動く。ならば次に俺達がどのように動くかも分かっているのだろう。だからこそ柴田は舌打ちをしたのだ。


「逃げるよ!」


 俺はホワイトアウトした視界の中で、その声だけを頼りに進む。白い煙の中を抜け視界が明るくなる。そこには思っていた通りの光景が広がっていた。リア充達との距離はある程度空いている。その距離を広げるようにレナは走って行く。すぐ近くの校舎を目指しているようだ。周囲に倒れているのは恐らくリア充。レナが進みながら倒しているのだろう。それにしても抜け目ない……。


「トウヤ君、先に行って!」


 そう言ってレナは立ち止まる。1人であいつらの相手をするとは思えない。何か考えでもあるのだろうか。手を伸ばし彼女は叫ぶ。


「《麻酔(ナルコーゼ)撒菱(カルトロップ)》!」


 瞬間、彼女の手にいつも使っている麻酔針が生成される。そして、その小さくて細長い形は、さらに小さく、そして丸く、そのうえ一面に棘をつけた形へと変形していく。

 

 それをいくつも用意し辺り一面にばら撒く。そういえば言っていたな。麻酔の形は自由自在に変形できると。


 さらにレナが逃走経路として選んだのは校舎の細い廊下。なるほど、麻酔を敷き詰めてしまえば走って追いつくことは不可能となるわけか。さらにレナの麻酔は彼女の髪のような薄い金色をしている。遠目に見ただけでは気づかないだろう。視認されにくいという点でも彼女の《自我》がどれだけ厄介かが分かる。


 振り返るとその撒菱にかかって動けなくなる者、麻酔に気づいて急に足を止める者、様々なリア充が見受けられる。


 ……取り敢えず、動けそうな奴はやっておくか。気がついたら2人してリア充を得意の遠距離から襲撃していた。こちらは飛び道具。圧倒的に有利だ。


 こうやって他人を虐げるのは精神衛生的に良い。ああ……無防備な相手を襲うの、病みつきになりそうだ……。


「斉藤達もこんな風に倒さないか?」


「うん、この方法なら狙えると思う。先に倒した方にジュースでも奢るってのはどう?」


「おもしろい、()った」


 にやりと笑う。しかし、少し経てばそんな笑みは一瞬で消えてしまうのであった。


喉元過ぎれば熱さを忘れるという言葉がある。今の俺の状況を表すのにこれ以上の言葉があるだろうか。リア充を倒すためなら手段を選ばない。徹底的に倒すと決めたのに。そう、リア充はこんな簡単な罠にハマるほど甘い存在ではなかったのだ。



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