005
アクセス数を減らす方法はないと分かりましたので、諦めて完結させたらこの作品はなかった事にして逃亡致します(・◇・)ゞ
あと、ブックマークと評価ありがとうございます? 沢山の方に読んで頂いているという嬉しさと羞恥心で身悶えしてたおかげで、とある1話は変なテンションで続きを書き上げる事が出来ました。くっ!いっそ一思いに殺せ・゜゜・.(/□\*).・゜゜・
なんともファンタスティックで精神的にドメスティックな2重生活苦を送って約1年が経とうとしていた。
父は隣国との秘密裏の交渉を無事成功に収め、その後に一向に進まなかった領土分割問題を解決した暁には新たな領土を賜る約束を陛下と取り付けた。
既に密約が成立していた為、表向きの交渉をあっさりまとめ、国内貴族たちの面目をつぶすと共に権力と領地の拡大に成功した。
姉たちもそれを機に正式に結婚して、分割で得た領土を夫と共に統治する為に王都より離れて行った。
「兄上、問題が発生いたしました。それも大問題です」
「お前が自分で解決できない問題なんて珍しいな」
正式に次期当主と認められてからも兄弟間の関係は変わらなかった。むしろ夜会で苦労している長兄との絆は強化されたと言ってもも良い。
「次の夜会のエスコート相手がおりません」
「確かにそれは大問題だな。お前が生きて戻れなくなる」
今までエスコート相手としていた姉が2人とも嫁に行って、新たな領地へ行ってしまった為にもう頼む事は叶わない。
妹たちもそろそろデビュタントしても問題ない年ではあったが、裏切る相手とわざわざ婚約するような機会を設けるわけにはいかないので、王都に来る事はない。
まあ、それは私にも言えることだ。婚約破棄前提で付き合ったとしても裏切った後には、その相手の家がどうなるかは目に見えている。よほど憎い相手でない限り使えない手だ。
「お前の通っている学園にこちらの力になってくれそうな相手はいないのか? 正室には難しいが側室になら隣国となった後も出迎えてやれるぞ」
「兄上、それは本気で言っているのですか?」
「あぁ、そうだが………そんなに問題がある事なのか?」
長兄も学園には通っていた。戦争の関係で卒業はしなかったが通っていたはずなのに、そう言うのは可笑しいと思ったが………良く考えて見れば長兄は伯爵家の長男として学園に通っていたのだ。つまり真実と言う名の現実を知らないという事だ。
「これを見てください」
そういって、約1年の成果とも言える『人生の墓場ランク』が記載された紙を長兄に手渡した。
「これは………何かの総評か?」
「はい。私が今所属している兵士や騎士の育成クラスの学友たちから見たご令嬢たちの真の姿です。ランクが高く、補足文が付いている者ほど………なかなかに豪の者と言えるでしょう」
私の言葉を聞いて、良く目を通す長兄の顔には驚きと戸惑いしかなく、とても真剣にその『人生の墓場ランク』が記載された紙を読み解いていた。
「いや、まさか………しかし、夜会での事を考えるとありえるか」
どうやら長兄の中にもある程度の答えが出たようなので、会話を続ける。
「兄上が見た学園は幻に過ぎません」
「しかし、これが真実だというならお前の学友たちがあまりにも不憫だぞ」
伯爵家しかも辺境伯なので家の価値としては侯爵家に引けを取らない立場で学園に通った者としては、やはり信じきれないものがあるのだろう。
「彼らはそんな極限の中で生き抜く戦士です。私は彼らがもし頼ってくる事があれば、暖かく迎え入れたいと思っています」
なんだが話の方向性が違ってしまっているが、これは私の本心だ。いずれ話をしなくてはいけなかった事が早くなった。ただそれだけの事だ。
「………分かった。もしもの時の受け入れの準備もしておこう。それまで彼らの心が折れないように助けてやってくれ」
これはきっと男にしか分からない感情なのだろう。長兄は武を嗜んでいないと言っても、夜会という常に命の危険が付きまとう戦場にて現在形で生き延びている戦士なのだ。また1つ長兄との絆が強くなるのを感じ、話を本題へと戻す。
「そんな訳で、学園のご令嬢は危険すぎる為、他の策を練らねばなりません」
そう戦場に向かうのに無策などあり得ない。
「では、こんな相手はどうだ?」
長兄が傍に控えていた執事に合図を送ると執事が何かを取りに向かった。
「兄上のお目に叶う相手がいるとは驚きました。『リステル家の最後の花』と呼ばれて狙われている状況なのに、良く観察する余裕がありましたね」
「ハッハッハ。『仮面の貴公子』と呼ばれるお前ほどじゃないからな」
待っている間に兄弟の会話を楽しむ。これは嫌味や嫌がらせではなく、お互いを労っての会話だ。下手なお世辞より互いの苦労が分かる分、素直な意味で受け取れる。………あれ、おかしいな目から汗が流れそうだ。
私の『仮面の貴公子』はその名の通りだ。父も長兄も美形であった為に、隠している顔を想像して付けられたあだ名だ。きっとご令嬢たちの頭の中で美化200%くらいされているのだろう。
かわって長兄の『リステル家の最後の花』はリステル家の関係者は基本的に肉体派だ。スラリとした長身に筋肉が付いている為、見た目は優雅に見えない。長兄は身体が弱く身体を鍛える事が出来ない(人並みの運動は出来る。戦場では耐えられないという意味)ので、程よい身体を付きをしていて美形だ。
そんな容姿を持った長兄は筋肉たちの中の最後の良心(見た目的な意味で)としてその名で呼ばれている。
まあ、この呼び名には裏の意味もあって、伯爵家を乗っ取る為の甘い蜜を持った花という意味もある。実際に夜会ではそれを目的として近づいて来る者が絶えず、我が家の権力が増大した今ではそれがさらに露骨になっている。
「この釣書のご令嬢はどなたでしょうか?」
程なくして執事に持ってこられた釣書に目を通す。どこかで見たような顔だ。
「先月にデビュタントを済ませたばかりの公爵家のご令嬢だ」
公爵家と聞かされて、ある人物が頭を過ぎる。そしてこの釣書の相手とも似ていた為、容易に予想が付いた。
「ステイフォン公爵家のご令嬢ですか?」
「そうだ。名をクリスティナ嬢という。お前の学園に通う王太子の婚約者の妹君だ」
予想が当たった事によって、私はまたしても問題を思い出す。現在の夜会シーズンを終えれば、学園での生活は最終学年を迎える。
乙女ゲームでいうと悪役令嬢とヒロインのガチバトルが本格的に開始されるわけだ。そのうえ、きっとイベントという名のトラブルも満載だろう。
「彼女は王太子の婚約者として国を支える姉を尊敬しているようだった。貴族として心配になるほど素直な子だったよ」
私が頭を悩ませているを見かねてか、長兄が説明を続けてくれる。考えていた事は別であったが、悪い子ではないようだ。
「ローズ様には王太子に呼び出しを受けた件で謝罪を頂いた事があります。王太子の後始末で学園にいる事は少ないようですが、その彼女を慕っているというのであれば確かに悪い子ではないのでしょう」
素直な感想を返して、長兄の考えを聞く事にする。
ちなみにローズ様が悪役令嬢の名前だ。ローズ=ステイフォン。王家の家紋がバラなので完全に生まれながらに王妃になるべく決まっていた、今となってはとても可哀想な人物だ。
「お前が予想をしていたとおりに王家と公爵家の仲は悪くなりつつある。最初は王太子が婚約破棄なんて馬鹿なことすると信じられなかったが、今の様子ならそれも十分ありえるのだろう。公爵もそれを見越して我が家と縁を結ぶ為に貴重なカードを切ってきたのだろう」
計画を語ったときに、婚約破棄からの断罪で王太子の婚約者が処刑か追放されると予想として話をしておいた。テンプレートというべきか、学園の様子を見てもほぼ間違いないと思う。しかも完全に冤罪コースの断罪だ。
そして公爵も自分たちの事だから当然手を打とうとしてくるのは予想が付く。長兄がカードと言ったのだから、完全に政略結婚の為の道具である事は間違いない。
「公爵も私が相手なら我が家を乗っ取るつもりだろうし、お前の相手なら何もしなくても権力は維持できるようになるから。どちらにしても王太子の婚約者であるローズ様は捨てられるだろう」
この話を聞く限り、公爵はこの世界における貴族らしい貴族と言えるだろう。娘たちは完全に権力競争の道具だ。
「そんな相手だから、遠慮も必要もあるまい。我が家が裏切った後はお前の策どおり、公爵家を使ってこの国を混乱させれば良い」
なるほど、自分で考えておいてなんだが、使い潰す家が相手なら婚約者としておいても問題はない。むしろ利用するという意味なら、婚約しておいた方が有利に働く。うん、兄上の考える事も怖い。
「兄上から見て、クリスティナ嬢はどう思われますか?」
「公爵が今まで隠してきただけの事はある。釣書の方が劣っているくらいだ。正直言うと死なせるには惜しいと思っている」
長兄はロリコン疑惑が出てきてしまったが、貴族社会ではこれくらいの年齢差は当たり前か。
「もう1つだけ伺っても宜しいでしょうか?」
「あぁ、構わないぞ」
「ローズ様はどう思われますか?」
これは素直にどう思っていますか?と聞いている。ロリコンじゃないですよね? なんて聞く事は出来ないからね。
「あの方も惜しいと思う。自身の公務だけではなく、王太子の公務も代行している。明らかに我が家に不足している文官としての才は素晴らしいものがある」
どうやら兄上はロリコン確定のようだ。姉と妹で評価するポイントが違っている。能力と見た目。
知りたくなかった事実ではあるが、受け入れなくては先に進む事は出来ない。これがこの世界での現実なんだ。認めよう。
「それならばどうでしょうか? 2人とも我々で貰ってしまいませんか?」
私の発言に驚いたのか。今度は長兄の反応がなくなってしまった。
「私は武官としては戦争で戦い生き延びた経験があるので自信はありますが、夜会に参加してみて文官としての能力が足りていないと自覚しております」
「いや、お前は同年代と比べるなら間違いなく文官としても優秀な方だ」
「それでもローズ様には、とても敵いません」
「それはそうだ。ローズ様は王宮で幼い頃よりずっと学んでこられたのだ。比べる事自体が違う」
確かに環境が違うので、長兄のいう事はもっともだ。まあ、同じように王宮で幼い頃より学んでいるはずの王太子があれなので………素直に本人の資質も認めてもいいと思う。
それこそ比べる事自体が間違いなので、反論はしないが………。
「それほど優秀であるなら、なおさら我が家に来て頂きたいと思います。お噂ではローズ様はご兄弟との仲も良くないとお聞きしていますが、姉妹の仲は良いと聞いております」
これは学園のお嬢様たちが言っていたことだ。「私たちのような身分の者とは禄に話してくれないのよね。その妹君も、同じように我々の家をお茶会に呼んでくださいませんでしたわ」と自爆のような発言を聞きたくもないのに聞いてしまっている。
つまりは、『人生の墓場ランク』に載るような方々との付き合いは姉妹共にしていないという事になる。
兄上の話を信じるなら、姉のローズ様を慕う純粋な妹が相手を選ぶ理由は、操り人形であるか、姉のローズ様から話を聞いている可能性が高い。
この推測に誤りがあるとするならば、長兄のロリコン眼によって盲目になって人物評価を誤っている場合のみである。そこは兄上の理性を信じるしかない。
「確かに母が参加していたお茶会では姉妹の仲は良かったと聞いている」
義母が目撃しているなら間違いないだろう。一瞬でも疑ってごめん長兄よ。
「何にしても、今の問題は次の夜会を生き残る事です。利用するようで心が痛みますが、私も死にたくはありません。クリスティナ嬢にエスコートを打診して頂けますか?」
「分かったすぐに手配しよう」
生き残るの言葉に、その目に光を宿した長兄がすぐに執事へ指示を出してくれる。
そして、結論から言おう。めっちゃ良い子だった。自分が既にどれほど貴族社会に毒されているのかを思い知らされた。あかん。別の意味で心が折れそうや。
クリスティナ嬢に何度かのエスコートをお願いした後に、我が家へのお茶会を経て、婚約者候補として付き合いが始まった。両親に至ってはもう完全に可愛さの虜である。
婚約者候補という扱いなのは、私か長兄のどちらを選ぶかは本人に決めさせようという配慮からである。
ちなみに私のクリスティナ嬢への気持ちは「こんな妹が欲しかった」である。
我が家のお茶会のために、急遽王都へ呼び寄せた妹たちは年が近いにも関わらずお転婆でなぜかダンスの練習ではなく、剣の稽古にばかり付き合わされた。
まあ、妹たちとも仲良くなったようで、年相応に笑う顔が見れたのは良い事だ。うん、完全に兄気分だな。長兄と結婚したら義理の姉になるのだから、色々と複雑な関係になりそうだ。
この結果にステイフォン公爵は、非常に気分を良くしてエスコートのお願いに上がるたびに新しい夜会用の衣装を新調してくれる。
狙いは完全に私であるのは明白だ。
本人はというと、夜会シーズンが終わりに近づく頃には、長兄との交流も深めていたおかげで純粋で危うかったところも少なくなって、それなりに社交界を渡っていけそうだと思えるところまで来た。
「ラインバルト様。どうかお姉様を助けて下さい。私の全てを貴方様に捧げます。ですから何卒お願いします」
とある夜会の帰りの馬車の中で深く頭を下げたクリスティナ嬢が真剣な面持ちで頭を下げて、願いを申し出てきた。
( あぁ、この子も頑張り屋なんだな。もうローズ様の立場が分かってしまったのか )
妹のように思っている相手の成長を嬉しく思うのは、間違いなく愛ではなく家族愛なんだろう。しかもシスコン気味の家族愛だ。そんな私の答えは決まっている。
「私が………いや、私たちが家族のように思っているクリスティナ嬢の大切に思っている相手を私たちが放っておくと思うかい?」
私の返事を聞いたクリスティナ嬢は下げていた頭を上げて、真剣な面持ちを満面な笑みに変えてくれる。
もう、お兄ちゃんはクリスティナ嬢の為に頑張っちゃう。
「でも、そうなると君の父であるステイフォン公爵の意思に背く事になってしまうよ?」
「構いません。お願いするのですから、その覚悟はとっくに出来ています。それに………」
「それに?」
「リステル家のような家族になりたいのです! 父と決別する覚悟も、家を捨てる覚悟も出来ています!!」
小さな身体から、どうしてこんな大きな声が出るのかと思えるほど、決意に満ちた今までに聞いたことのない声色に心揺らされる。
まあ、心揺らされなくても返事は変わらないのだけどね。
そして、この娘は思った以上に聡明だ。私には正直勿体無い気がする。
「分かった。決してローズ様を悪いようにしません。あと、もう1つだけお聞きして良いですか?」
「あ、ありがとうございます。何なりとお聞き下さい」
感謝の気持ち一杯の笑顔が眩しい。学園にいるユリアっていう女よりもずっとヒロインっぽい。
「なぜ私へ相談に来たの? こういった事なら兄上の方が適任だと思うけど?」
「はい。最初はそうしようと思ったのですが、あの方ならきっとラインバルト様へ相談するように言うと思うのです」
( 兄上、おめでとうございます。気持ちは兄上にバッチリ向いていますよ )
「でも、お姉様を助けてくれるのはラインバルト様の方だと思ったからです」
上げて下げるではなく、下げて持ち上げるとは………。天然の誑しっぷりに、長兄の将来が愛妻家で、溺愛しまくりのダメっぷりが予想が付く。
まあ、信頼してくれているのは分かるので、助けますとも。将来義理の姉になるクリスティナ嬢の頼みなら、万難を排して叶えて見せましょうとも。
「お任せ下さい。ローズ様をお助けする事を今ここに誓います」
私の誓いの言葉に嬉しそうに「はい」と答えた笑顔は極上の天使スマイルだ。守りたいこの笑顔。
「話は変わりますが、婚約者を選ぶのは半年以内にお願い致します」
「はい。ラインバルト様とご結婚する場合は卒業に合わせなら最低半年の婚約期間が必要となる慣習があるからですね」
うん。そんな慣習知らなかった。私たちの反乱計画に関わってくるから要望しただけなのに、意外にも尤もらしい理由が提示されたので否定しなかった。
「もし、兄上と結婚する事になったら、お義姉様とお呼びしないといけませんからね。私の心の準備もあるのですよ」
冗談を交えながら、先程の重い空気を払っていく。
「わ、私が………お、お義姉様ですか!?」
おやおや、まあまあ。お顔が真っ赤に染まっていらっしゃる。もう完全に私に勝ち目はございません。長兄の幸せを願わせて頂く立場になりたいと思います。
そんな馬車の帰りの一幕の後は、長兄を除いた家族会議の末に使用人も巻き込んで暖かく2人を見守る事になった。
-後書き-
検索の除外?とランキングの除外?っていうのを一時的に設定したら、自分のスマホから作品の確認が出来なくなってしまいました。
設定は元に戻しましたが、気付かなかった時間が結構あります。
突然見れなくなってご迷惑をおかけした方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした。