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求む!アクセス数を減らす方法!! あ、あとR15指定は下ネタの為です。下ネタが苦手な方は早めにココの事はお忘れ下さい。



 さすがは乙女ゲームに似た世界である。急に始まった2重生活。

 翌日に戻ることになってしまった学園で、学友たちに挨拶を済ませる。元気だったか野郎ども!ヤーハー!!


 我が家が裏で暗躍を始めたのいうのにも関わらず、この学園は平和であった。

 変わった事があるとするならば、週末の学園の休日には必ず伯爵家へ帰る事になった。表向きの理由がまもなく社交界に顔を出す辺境伯の次期当主の付き人としての仕事の為であった。

 もちろん辺境伯の次期当主は私だ。そして付き人も学園内の話であれば男爵家の子息を偽った私だ。もう訳が分からない。


 泣く泣く運命に逆らわずに2重生活を続けて1ヶ月もすると避けられない運命と遭遇した。

 さすがは乙女ゲームに似た世界である。完成された仮面は、どこの貴公子様だよ!という乙女チック(ふじょし)なご令嬢たちの人気が出そうな仕上がりであった。


 これを付けて夜会に出るなんて、どんな罰ゲームだ。

 王都の屋敷のメイドたちや義母たちには凄く受けが良かったが、長兄が必死に笑いを堪えて足を抓っている姿こそが私の中の真実だ。


 ちなみに私が仮面を付けることになった理由は、父との会話で少し触れた『次期当主の申請と挨拶は陛下に直々にしなくてはならないのが通例だが、戦場で顔に怪我を負ったという事にして、私は学園で情報収集をしていた私が陛下に直接会わなくて済むようにした』せいだ。


「兄上、私も当主の相続を放棄したいと思うのですが、どうでしょうか?」


 仮面をつけて貴公子さながらのポーズを決めて、長兄に相談を持ちかけた。

 当然、屋敷には滅多な事で笑わなかった長兄の爆笑が響いていた。


「いや、笑ってすまなかった。残念ながらバルトの願いは叶わないよ」


「まだまだ父上はご健在なのですから、弟たちを成長と共に社交を学ばせた方が確実に立ち回りは良い気がします」


 そう、仮面についても不満があるのは確かであったが、他にも不満があった。

 それは礼儀作法だ。剣と鍛治に生きて戦場にも立った私は当然のように礼儀作法については学ぶ事が多く残っている。


 まあ、他にもダンスもしなくてはならないのだが、身体を鍛えていただけあって数回のレッスンでお墨付きを頂けたのでそっちは問題ない。


「その仮面をつけて夜会に出たくない気持ちは分かるが、それは無理だ。妹たちの夫になる者たちからもお前は一目置かれている。部下になるものたちからの信頼を得られるのも次期当主としての条件だ」


 武官の信頼を得るって事は、つまりは文武両道じゃないとダメだという事ね………。はい。諦めますよ。今まで苦労していた分、自分の大概ハイスペックになってしまっていたようだ。


「それと紹介しておく人物がいる。入ってくれ」


 長兄の入室の許可と共に入ってきたのは私と同じくらいの年齢の人物だった。


「お初にお目に掛かります。次期当主様。夜会や公式の場での際は従者としてお供させて頂く事になりました。よろしくお願い致します」


 そう挨拶した人物はなんと私が学園で仮の姿として名前を借りている男爵家のご子息であった。そして、その容姿は私にとても良く似ていた。まあ、貴族らしくそこそこ血縁関係もあるから似てるのは当然だ。

 挨拶の終わりに「仮面とても似合っています」と震えながら言っていたので、緊張を解す為に素敵なポーズを決めて「うむ、よろしく頼む」と返事を返してみた。


 当然、本日2度目の笑い声が屋敷に響いたのであった。


「ハッハッハ。残念な事に従者役を務める君にも仮面をつけてもらうことになるだろう。でないと夜会と学園で違う人物だとバレてしまうからね!」


 受け渡された仮面の他にも用意されていた別の仮面を目撃していた私には、その用途が容易に想像が出来た。そして、この大爆笑をしてしまった従者役に私と同じ絶望を味わってもらった。

 うむ、とっても素直で顔色を悪くしていた。デビュタント夜会の後は2人の噂で持ちきりだね!





「おい。今朝から話題に上がっている仮面の貴公子ってお前か?」


「いや、寄り親に当たる伯爵家の次期当主様の事だ」


 そう、我々に敵前逃亡は許されず、当然デビュタントとなる夜会に参加した。社交界のでの立ち回りを覚える名目であるが、伯爵家に向いている目を私に向けて他の者たちが動きやすくする目的もあった。

 その為に開き直って頑張った。従者と共にあの戦場を生き残る事が出来た。


「仮面の貴公子の付き人も人気が高いらしいぞ? こっちはお前で間違いないよな?」


 昨日の自分を殴りたい………。1人だけでは心細かったので、つい従者役に同行してきただけの相手も巻き込んでしまった。

 参加した夜会が下は騎士爵から上は伯爵家までの比較的小さな方であったが、会場に到着した時に完全に気圧されてしまい、つい巻き込んじゃった。


 戦場でさえこんな事はなかったのに………あの時の私はどうかしていたとしか思えない。

 馬車を降りたときから衆目に晒された私の気持ちを察して欲しい。


 戦場生活の為、いつ死ぬか分からない為に婚約者はなく、また怪我を負って仮面をつける怪しい男だ。当然エスコート相手などいない。まあ、次回からは姉上に頼もうと思う。そこは土下座も辞さない覚悟を持っている。

 会場中から視線を集め、婚期の危うい年上のお姉様方から向けられる視線は戦場でもなかなかにお目にかかれないほど鋭いものであった。


 そんなところへ放り出されれば弱気になっても仕方がないと思うのだ。そして、巻き込んでしまった。男爵家の子息である彼を。それが次の日に厄介ごとになるとも考えずに………。


 私は年上のお姉様方と中心に身分が騎士爵から伯爵家まで、バーゲンセールさながらの大人気ぶりだった。仮面は凄く受けが良かったらしく、侮りがたし乙女ゲームの世界観。

 従者として付いてきた方は、そこそこ婚期に多少なりとも余裕がある方々を中心に伯爵家以外の家から人気が高かった。全体の割合から言えば、3対2くらいだろうか………もちろん私の方が3だ。


 婚約者のいない次期伯爵家の当主と男爵位出の従者の肩書きは、それはとても魅力的なものだったらしい。私が先の戦で用いた包囲殲滅線の効果をこんな形で体験する事になるとは夢にも思わなかった。

 まあ、唯一の収穫があるとするならば、戦場を共に行き抜いたもの同士でしか味わえない友情であった。私は彼を親友となろうと思う。そして決して逃がさない。こうなったら、やけくそだ。最後まで巻き込んでやる。


「あぁ、そっちは俺で間違いない」


 キャラ作りの為に、学園では第一人称を変えていた。どうして、こんな面倒な事になってしまったのだ!


「それでどうだった? 良い女はいたか?」


 私や学友が所属するのは兵士や騎士の育成クラスだ。基本的に子爵以下の爵位を持つものの次男以降は成人と共に身分が平民と変わらなくなる。

 そんな者たちが最後の悪あがきをするのがこの兵士や騎士の育成クラスだ。


 その為にか、学園に通う子女たちの人気は低い。最底辺と呼ぶに相応しいこのクラスだけあって、当然学友たちに女の付き合いはない。好意的な視線を向けられた事はなく、むしろ蔑まれる視線が当たり前だ。

 余談だが、卒業までにそっちに目覚めるのが一定数いるのも不人気に一役買っている。


「学園に通うような余裕のある貴族たちの夜会じゃなかったから、この学園に通うような女はいなかった………が………」


「「「 が? 」」」


「もっと恐ろしい野獣たちが(ひし)めいていたよ」


 この私の返事に、クラスの反応は2分された。


「それでも構わない! 彼女がいればこのツライ学園生活でも生き残れる!!」


「いや、あくまで爵位を持った相手の子女だから、付き合うなら婚約が大前提だぞ?」


「くっ。所詮は金と地位の世界か………。もう平民でも良い。俺に癒しをくれ!」


 と叫ぶ、追い詰められた『もう誰でも良い派』か


「いや、平民であっても癒しがないのはダメだ。金も地位もダメならせめて愛に生きたい」


 そう反論する『まだ現実を知らない派』もしくは『夢見る男の子派』だ。


 どっちの派閥に所属するのも構わないが、追い詰められすぎたり現実を知って男に走るのだけは勘弁してくれと心で祈りつつ、馬鹿話をして夜会の翌日を無事乗り越えた。


 無事で済まなかったのはさらに翌日の事であった。


「こちらにリステル家に縁がある方がいらっしゃると伺って参りましたのですが、どなたがそうなのでしょうか?」


 扇子を片手に優雅とは少し言いがたい典型的なお嬢様が、このむさ苦しい男ばかりのクラスへやってきた。

 昨日の学友の様子から、このお嬢様の登場で多少色めきだってもいい様なものだが、彼ら(学友)は私とお嬢様を一直線で繋ぐように道を作ってあっさりと売り渡してきた。


 なんだこれ。このお嬢様はモーゼかよ!


 まあ、それも仕方がない。この学園のお嬢様方からの扱いは虫以下に等しい。誰も関わりたくないのだ。


「あなたがラインベルト=リステル様の縁の方ですか?」


「はい。今は従者の見習いをさせて頂いております」


 人の道を堂々と進んできたお嬢様が、挨拶もなく用件だけを伝えてくる。この扱いで私たちの普段を少しでも察してくれると嬉しい。


「いくつか聞きたい事があるのだけど、よろしくって?」


「はい。ご随意に」


 拒否権のない言い回しをされれば、もう勝手にしてくれとしか言い返せない。


「ラインベルト=リステル様がエスコート相手に困っていると噂をお聞きしたのですが、お相手をお探しになっているのではなくって?」


 なんだろう。どうやって回答すれば良いんだ。こんな質問。

 お前の仕えている(あるじ)はエスコート相手もいないんだろ? 私がエスコート相手になって差し上げますから取次ぎなさい。と目の前にいる本人に向かって告げている訳だが………本当になんて答えれば良いだよ!


「申し訳ありません。私に主家の意向は伝えられておりません。また口を挟む権限もございません」


「あら、まったくの役立たずなのね。時間の無駄でしたわ。こんな事ならお父様に言った方が早かったわ」


 確かに早いと思う。お前の行動がな! デビュタントから2日後に行動を自分から起こすってどんな行動力だ!!

 とりあえずは、言いたい事を済ませたお嬢様はあっさりと引き下がって、つかぬ間の平穏が訪れた。


「うわぁ。もうさすがとしか言えないわ。あんなのが嫁になったら、俺なら逃亡するね」


「いや、あの行動力なら逃亡しても捕まるか、それとも別れの慰謝料を請求されるぞ。捕まった時点で人生諦めるしかねぇ」


 嵐が去ったのをいい事に言いたい放題だが、気持ちは分からなくはない。ただ、あっさりと売り渡したお前たちとの友情も私は忘れないぞ?


 こんな感じで次の夜会に出席するまで、毎日のようにお嬢様の来訪を受ける事になった。


「今のはなかなかの高得点じゃないか?」


「そうか? 確かに底辺と蔑む感じはあったが、ここに来たのも家からの指示っぽくて本気じゃなさそうだから、今は暫定的な評価でいいと思うぞ」


 こんな感じで学友たちは、いつの間にか来訪するお嬢様方の評価を付けて馴染んでいった。


「そうだな。ここは星3つの暫定でだな」「「「異議なし!」」」


 結果として学友たちの結束が強まったのだから良いことかもしれない。私以外の結束ではあるが………。


 そして誤解なきように言っておく。この評価は容姿に対しての評価ではない。騎士を志す者として女性にそんな事は出来ない。

 この評価は『人生の墓場ランク』だ。最高5つ星の評価が与えられ、それは大変栄誉な事であり、恐れ多くて決して婚姻は結べないという意味だ。その辺は勘違いしてはいけないぞ?


 まあ、この評価が後々の役に立つことになるなど、この時点の私には知る由もなかった。


-後書き-

アクセス数が伸びて、萎縮してしまっておりましたが、感想を下さる方のおかげでモチベーションが回復いたしました。

感想の書いてくださった方にはお返事をお出しするようにしております。

そちらでもお伝えしましたが、感謝しております。ありがとうございます( ≧ω≦)ノ

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