007 ざまぁという名の王子も前座でしかない
sideリチャード
「ムーッ!ムーーーッ!!」
いくら叫んでも声が届かない。私が縛られて、もう3日目だ。
馬車に乗せられて、どこかに運ばれているのは分かる。揺れの具合から平坦な道を進んでいる事も分かる。
だが、誰も行き先を教えてくれない。夜以外は、誰も来ない。
昼間は水や食料すら与えられないのだ。
なぜ、こんな事になった………。
助けてくれ………。
夜になると奴が来る………。花の香りと共に………。
最初の夜は………悪くなかった………。
縛られている私を優しく扱ってくれた彼女に惚れても良いと思った。
機会を伺って解放するとも言ってくれた。その時の為に、必要な水と食料を他の者がいない隙に与えてくれた。
本当に最初は優しくしてくれた………。はずだったのに!
次の夜は違った。水と食料を与えてくれるところまでは優しかったが、それ以降はひたすら耐えるしかなかった………。
こんな事が続けば私は壊れてしまう。
そう思ったが、朝になると共に奴は消えていた………。
そして、また馬車で揺られてどこかへ運ばれている。
頼む。早く私を解放してくれ。
もう夕刻だ………。きっと奴が………奴が来る………。助けてくれ。
誰の助けも来ないまま、夜が来てしまった。回りから人の気配が消えるのが分かる。
必死に縄を外そうとするが、全身拘束されていて外す事が出来ない………。もう嫌だ。なぜ私がこんな目に!?
もがいていると花の香りがした………。そして馬車の扉をノックする音が聞こえる。
「今、馬車の前にいるの………」
今日はあまりにも暴れるものだから、疲れて眠ってしまった隙に目隠しをされた。
扉の開く気配が分かる。奴の声が聞こえる。空気が入れ替わり、花の香りが強くなる………。
そう、奴は確実にそこにいる。
「ねぇ、聞こえる? 今、あなたの隣にいるの………」
耳元で囁かれる声に恐怖しか感じない。誰か助けてくれ!
2日目の晩と同じように一部の拘束が解かれるのが分かるが………逃げる事は出来ない。
「今日の食事は、私の食事が終わった後ね」
そう奴が告げる声と共に、一部の拘束が完全に解かれる。嫌だ。もう無理だ。助けてくれ。
「私…リー…………。今、あなたの………………」
こうして、真実の愛に目覚めた『いつもの女性騎士』とリチャード殿下は平和に暮らしました。
という名の -前書き- です_(┐「ε:)
本当は「大丈夫。疲れても別の世界を見せてあげられるわ」的な
解放ENDの予定でしたが、
『いつもの女性騎士』のキャラが強すぎたので却下して、
前回と前々回の閑話にしました。
え? あまり変わっていない? 元々オチの流用ですから。
とりあえず、本来の更新内容はこちら ↓↓↓↓ ⊂(‘д‘⊂彡)
さて、事の顛末を語ろうか?
脳無し王子が、無事ヴィスト王国の首都に到着した後は、当然軟禁されたそうだ。
え? そっちの顛末じゃない? どこまでいったのか??
何の事かさっぱり分からないから話を続けるぞ。
私がヴィスト王国側に先発部隊の展開を終えた頃に2つの知らせが届いた。
1つは父が無事将軍閣下を説得に成功したという事だ。我が軍は装備を一新しており、旧装備を都合する条件を付けられたが、概ね好意的な同意を得られた。
むしろ、人の女を権力で奪おうなど許せん! と憤慨されていたそうだ。そして、ついでに父の種馬屋敷が解体された事で共に一晩飲み明かしたそうだ。
もう1つの知らせは、陛下が直々に謝罪をしたいとの申し出だ。ご丁寧に使者を切り捨てても良いように、脳無し王子のお付きとして先日来ていた者を使者にしていた。
まあ、切り捨てるつもりは元々なかったので、素直に会談に応じる事にした。
当然、リステル領に残っているローズ様を始め、皆へその事を知らせる。
「この度の我が息子の行い、いかようにも詫びようがない。誠にすまなかった」
出会いがしら早々に、全面的な謝罪を頂いた。
ちなみに会場は、何もない草原な上に、互いに馬上でだ。陛下は馬の扱いが大変上手でバランスを全く崩さず器用に頭を下げていた。
驚いた事に陛下が連れてきた兵は、200名にも満たなかった。お忍びとは言えないレベルではあるが、一国の王が遠出するのに必要な兵には遥かに足りていない。むしろ敵となっている可能性がある人物へ会いにくる数では決してない。
「陛下、お顔をお上げ下さい。本日お会いしたのは会談の為と伺っております。場所もこのような場所でなくともお伺い致しました」
私は陛下からの会談申し入れの使者の到着速度から、陛下が即断していた事は分かっていたので、話し合いをする気がある事は理解していた。
「うむ。最短で会談の場を設けるには、この場が一番早いと思ってな。本来であれば離反、報復されても文句は言えない状況にも関わらず、外部へ話が漏れないよう配慮して貰った。これは私なりの誠意のつもりじゃ」
陛下はやはり聡明だ。私たちが陛下からの対応次第では事実を公表するつもりでいた。そうなればヴィスト王国の王家は風前の灯になるだろう事は分かっているようだ。
今の王家の権力があるのはひとえにリステル家の力が大きいからだ。
不満を持っている貴族たちも、元祖国の地を切り取る時に手柄の機会を保障して不満を抑えている。我が家が離反すれば、その約束も反故にする事になるのだ。
そうでなくとも、王家に仕える貴族家の婚約者を奪い取れば、当然、他の貴族たちからも信頼などなくなる。自分たちの妻も奪われる可能性があるということなのだから。
その上、元の権力も弱く、自力ではまだ権威を回復できない状況なのを。しっかりと理解していると判断できる。
だからこそ、死を覚悟してその身を晒してまで、この場で会談を望んだのだろう。
馬鹿王子は馬鹿王からも賢王からも生まれる事が分かった。結局は本人の資質と周りの人間関係か………私もしっかりと注意しよう。その前にまずは………おっと話がずれたな。
「陛下にその気がないと分かれば、我が家はこの話は鞘に収めましょう」
「うむ。リチャードは厳重な監視の中で軟禁しておるが、リステル家が望めば処刑もしよう。当然、今回の事で迷惑を掛けた分の償いもする」
陛下の中で、我が家の価値はかなり高い事が伺える。そして国の為なら息子を切る事を即断出来る人物のようだ。
あまりにも破格な条件に、素直に喜べない。私は別に処刑でも何でも消えてくれるならそれで良いが、ローズ様が罪悪感を背負うのだけは頂けない。償い分も口止め料を含めて、望めば望むだけ出しそうな感じだ。
「リチャード殿下の行動はあくまで王家内での出来事。我が家が処遇に関知する事は致しません」
この陛下なら、処遇を間違えないだろう。
「分かった。表向きは病気による療養として表には出さないようにすると約束をしよう」
………表向きで、約束か。うん。深く考えないようにしよう。自業自得だからね。
「かしこまりました。ご随意に」
「すまぬな」
陛下の心労がとても激しい事が分かる。私としてもこの陛下に倒れられるのは本意ではないので、さくっと問題は片付けよう。
「我が家としての望みは、今までどおりの計画が実行される事でございます」
「分かった。リステル家の忠誠を感謝する」
今までどおりの関係でお願いしますという、私の意図が上手く伝わったらしく、この話はこれで終わりとなった。
あとは勝手に王家側で色々と便宜を図ってくれるようになるだろう。表立った金銭とかはあらぬ誤解を生むだけだ。この辺が妥協点だろう。幸い脳無し王子の行動は外部に漏れていない。
「それと正式にそなたとローズ嬢の婚約を認める書状を持ってきた」
そう言って陛下が馬を降りる。陛下の後ろに控えている兵たちが騒ぎ出すが、陛下はそれを手で制した。
当然、私も陛下に習って馬を降りて、自身の兵に控えるように合図を送る。
「ラインバルト=リステルとローズ=ステイフォンの婚約を、ヴィスト王国国王として正式に認める!」
そう大きな声で告げられると共に手渡された書状を、今度はしっかりと受け取る。ようやく願っていた日に一歩近づいた。
「私も式には参加させて貰おう。招待状は早めに送るように」
そう言う陛下はどこか悪戯心を含んだ笑みを浮かべていた。
「また、ローズ様との仲を裂こうとするような輩の同伴は勘弁して下さいね」
草原の真ん中でのささやかな宣言ではあったが、大声で笑う陛下に茶目っ気があるところが分かったのでよしとしよう。
陛下の大声での宣言が両軍の兵に聞こえたらしく、歓声が響いていた。
きっとこれから出す早馬よりも早く、領地に噂が届いているだろう。
陛下は、急ぎで城を抜けて来たらしく、用件を終えると急ぎ城へと戻っていった。
今回の騒動は表向きは大規模な軍事訓練という事になり、陛下は激励ついでに婚約許可を与えに来ただけという話になっている。
そんな軍事訓練を終えた我々は、何もする必要もなくなったので、早々に軍を退いて各方面の治安に回した。
当然、帰路では吟遊詩人たちによって祝いの新しい歌が出来上がっており、各村と街の者たちは治安も良くなったと歓迎されながら、ゆっくりと帰る事となった。
正式に婚約の認められたローズ様の待つ街へ戻ってくると、歓迎一色であった。
「『仮面の貴公子』様、万歳! 『白い花の舞姫』様、万歳!!」
「当主様、婚約おめでとうございます!」
「くそっ! 俺にも婚約者を!!」
街では様々な歓迎の声が上がっていたが、私はまだ当主じゃないし、あと婚約者は自分で何とかしろ。
事前に噂が広がった事で色々な尾びれや背びれが付いてしまっているかもしれないが、悪い気はしない。はっはっは。もっと羨ましがれ。
いつも通り、領民との交流を楽しみながら領館へと帰還する。
ただ、いつもと違って出迎えてくれたのは………何も隠すことのない将軍閣下だった。なぜ、ここにいる?
「丁度、今後の話し合いの為に寄らせて貰っていた時に、噂が届いてのぅ。せっかくだから直接祝いを述べさせて貰おうと待っておった。どうじゃ? ガッカリしたか?」
「えぇ。私の可愛い嫁が迎えてくれると思ったら、どっかの将軍様がお出迎えでしたからね。ガッカリなんて言葉じゃ言い表せないですね」
将軍閣下は涼しい顔をしていたが、共に帰還した部下たちの顔は引き攣っていた。この閣下は私の殺気にもびくともしやがらねぇ。
「まあ、そっちはついでじゃ。ユーリから手紙を預かっておる。読めん暗号で書かれているが、何が書いてあるか分からんから、直接渡した方がよかろう?」
あの女には、攻略キャラやイベントの情報で思い出した事があったら連絡するように言っておいたので、それ関係だろうか?
陛下なら脳無し王子を表舞台から完全に消してくれるとは思うが、まだ油断は出来ないという事か………。
「どうじゃ? 何が書いてあるか分かるか?」
さっと手紙に目を通す私に閣下が質問をしてきた。当然読めるのだが………。なんと伝えるべきか………。
「何箇所か読める部分がございますが、解読が少し時間が掛かりそうです。閣下もこの後すぐにお戻りになるのでしたら、後日内容をご連絡いたします」
とりあえず手紙の内容は保留にする。この場で口に出すべき事ではない。
「そうか。明日には戻る予定じゃから、それまでに間に合うようなら教えてくれ。それ以降は急ぎでないなら、いつでも構わん」
「かしこまりました」
暗に必ず直接連絡してくれという意味だ。閣下は、やはり信頼における人物で間違いない。
大きな頭痛の種は消えたが、また頭痛の種を抱える事になった………。あの女はどうしてくれようか………。
「では、今日の主役をいつまでも引き止めておけんので、この辺で失礼するかの。また後で会おうぞ」
そう言って、私が帰るべきはずの屋敷の中へと消えていく。………閣下? そちらは閣下のお泊りする娼館ではございませんよ?
閣下の行動に嫌な予感しかしない。
とりあえず、出迎えてくれない他の者たちが気になるので、急ぎ部下たちを解散させて屋敷へ入る。
「おめでとう。ラインバルト」
屋敷に入ってきて出迎えてくれたのは、実母だけであった。いや、ちゃんと周りに侍女はいるよ?
「ただいま戻りました。実母上。ありがとうございます」
念のために周りを見るが………先に入った将軍閣下すら見当たらない。
「そう心配しなくてもすぐに会えます。少しは落ち着きなさい」
そうは言われても、一番会いたい相手に会えないのだ………。それは難しい。
その上、フラグっぽく台詞を言われたのだ。一目で良いからすぐに会いたいのは当然だろう。
「まずは身を清めて、着替えなさい。軍服のままで会わせる訳には参りません」
確かに戦闘をする可能性を考慮して汚れても良い服を着ていた………。当然よそ行きの服など戦場には持っていかない。
有無を言わさない実母の威圧を受けて、仕方がなく案内されるがまま侍女の後をついて入浴をする。
「坊ちゃま。ようやくこの日が参りましたね………。私は本当に嬉しゅうございます」
貴族は基本的に、1人で入浴をしない。必ず侍女が身体を洗ってくれる。これも侍女としての仕事だから。断る事は出来ない。断れば不要な人材と見なされる恐れがあるのだ。貴族とは面倒な事この上ない。
ただ、私の入浴を手伝ってくれるこの侍女に関しては私に不満はない。
若い侍女だったら、他の者なら羨ましい限りだろうが………私は恥ずかしくて落ち着いて入浴が出来ない。それに私には父の血が流れているのだ。暴走しないとも限らない。
「おめでとうございます。坊ちゃま」
祝いの言葉をくれた侍女は、私の乳母だった者だ。私が次期当主になった際に実母によって雇われて、以来ずっと入浴はこの侍女が担当してくれている。実母にとっての家族のような関係の人物だ。
「ありがとう。これからも力を借りる事があるかもしれないが、よろしく頼む」
感極まっている入浴補助の侍女に、改めてお祝いの言葉を投げかけられれば嫌でも分かる。
この後、しっかりとして正装に着替えさせられるのだろう。
予想通り、正装に着替えさせられて、屋敷内でパーティー会場として使われる一室の扉の前で待機をさせられている。
本来であれば、もっと早く開かれていたパーティーだ。
「い、いかがでしょうか? 私の服装は変ではございませんか?」
少し待っていると、お付き侍女2人に連れられて女神が姿を現した。
前のパーティーの時にも見た姿ではあったが、今日は一段と輝いているように見える。よく見ると、前はなかった白い薔薇が胸元に飾られている。
「私の『白い花の舞姫』ローズ様。その花の名にも負けない程、お似合いです。あなたのそのお姿ごと私のものになると思うと、早くこの扉を開いて皆に自慢したくなる」
我ながら、口に出る言葉は………色々とキツイものがあるが、本心で言っているのだから仕方がない。
「あ、ありがとうございます。私も早く皆様に認めて貰いたいです………」
顔を赤く染めて、言葉の最後の声が小さくなってしまっていたが、私は聞き逃す事はなかった。
この短いやりとりの間にも、お付きの侍女たちは姿を消していた。本当に良い侍女たちだ。彼女たちには必ず報いよう。
ローズ様が差し出した手をとり、口づけを落とす。そして私が立ち上がると同時にローズ様が手を絡ませてくる。
本当に1秒でも早く、この扉が開く事を願うばかりだ。
「ラインバルト=リステル様、ローズ=ステイフォン様のご入場です」
この日、転生した私は、ようやく婚約者が出来た。それもこの世界で最も愛している相手の………。
その後は、前の騒ぎの時よりも多くの人が集まった会場で、陛下の書状を読み上げられて正式に婚約を交わした。
女性の参加者が多く目立ち、彼女たちのお目当てが私の部下兼学友だちであったが、それも気にならなかった。
愚かしい判断をするようならまた褒美にすれば良いしね。
前の騒ぎが嘘のように静かに、そして盛大に祝われた。
会場での挨拶が終わると、領館の広間が見える窓へと向う。
そこには大勢の領民が集まっていた。
窓の外の広いベランダへ出る際は、私のトレードマークである仮面を付けて領民の前に姿を現す。盛大な歓声に包まれる事に、慣れない部分もあるが、凛とした隣に立つ相手に情けない姿は見せられない。
そして、基本は領民に姿を見せる時は必ず着用していたが、今日までだ!
「全ての領民に感謝を捧げる! そして全ての領民に次期当主として誓う!! ラインバルト=リステルはローズ=ステイフォンと共に皆の為に戦い、守り抜くと!!」
先ほどまでの歓声とは比べ物にならない歓声が木霊する。
その歓声に負けないように、大きく手を振り上げて仮面に手を掛ける。
その姿を見える距離にいる領民から、それ以上に歓声が上がる!
「おぉ! 仮面を外すぞ!!」
「なんだって!? 俺は顔にバッテン傷に銀貨を賭けてるんだ!」
「俺は大穴の実は女顔だ!!」
「いいぞ! さっさと外して俺を儲けさせてくれ!!」
誰だ! 私の顔で賭け事なんてしてるのは!
てめぇら! よく見て損をしやがれ!!
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉ」」」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁ」」」
歓声と慟哭が半分くらいだ………。ほぼ領民が賭けに参加していないと、このようにはならないはずだ………。お前ら私の誓いを返せ。
いや、賭けに参加していた連中が偶然に集まっただけと信じたい………。心が折れそうだ。
「皆様、私たちの為に、お集まり頂き感謝致します」
ローズ様の澄んだ声に、悲鳴を上げていた男たちもすぐに静まる。なんだ、君たち? 私との扱いの差は? 覚えていろよ?
「お帰り頂く際には、持ち帰り出来る食事を用意してあります。ご家族の方と一緒にご自宅で召し上がり下さい。私たちをお祝いくださり、ありがとうございました」
操り人形のようだった頃からの貴族以外にも優しい気持ちを向ける姿は変わらない。
仮面舞踏会で踊った時に瞳に惚れ、国の為に平民を問わず必死に働きかける姿に心まで惚れたあの姿のままだ。
感謝の言葉を告げるローズ様の姿に領民たちから惜しみない拍手が送られる。
「あぁ、俺もあんな嫁さんが欲しい」
「俺も頑張って貴族になれば、あんな綺麗な人と結婚できるのかな?」
「僕は頑張って、領兵になって綺麗なお嫁さんを貰うんだ」
と男性陣の負け犬の遠吠えも拍手に混ざって聞こえる。羨ましいか? これが俺の嫁だ!
まあ、最後の少年には、頑張って貰いたい。危険がないように『いつもの女性騎士』に狙われないようにだけ注意してやろう。
一通り歓声が止むまで手を振り続け、落ち着いたタイミングを見計らって会場に戻る。
「本当に領民に愛されているのぅ」
会場に戻ると閣下が楽しそうに声を掛けてきた。賭け事の事は会場にも聞こえていたらしい。
「えぇ。半分は損をしたみたいですが、私のローズ様を見れたのでお代だと思ってもらいましょう」
閣下に悪いが、今日の私には余裕がある。隣にローズ様がいる限り負ける気がしない。
今回は閣下を軽くあしらい、他の家族からも再度祝福を受け取る。
その日は遅くまで、皆でパーティーを楽しんだ………。
「『白い花の舞姫』。あの日のお約束を果たしに参りました」
パーティーが終わった夜に、そのまま仮面を付けて、ローズ様の部屋を訪れ、膝をつき、あの夜の口調で告げる。
そんな私の様子を、ローズ様は無言で見ている。
「私の婚約者として、これから共に時を過ごして頂きたい。私に貴女の時間を共に過ごす栄誉を頂きたい。私を貴女の側に居させて頂きたい」
あの夜とは違う状況、私は今の気持ちを素直に口に出して告げる。
ローズ様が涙を浮かべているのが見える。間違いなく、あの夜とは違う。
「私の剣は貴女に捧げます。どうか、私と共に領民の為に、ひいては貴女自身の為に、私の手をとって共に歩いてくれませんか? 私の愛おしい『ローズ』」
小さく涙声で「はい」という消えそうな声だけが聞こえた。
私の手を小さく華奢な手が強く握っている。
私とローズは夜の暖かく静かな光に照らされて………とても淡くて暖かい誓いを交わした。
そして、あの思い出の夜よりもずっと深い夜になった………。
-後書き-
前書きに1000文字も使うとか、著者の頭はどうかしていると思う。
ざまぁ成分が不足しているから、ちょっと追加しようかなと思っただけですよ?
当然、反省はしていない。また必ずやる(๑•̀ㅂ•́)و✧
そろそろ誰か止めてくれないと、本当にまたやるよ?
言い訳をすると、真面目に恥ずかしい事を書いてると耐えられなくなるのですよ………。
ごめんなさい。
あと明日の更新はありません。不定期更新詐欺ではありません。
師走で忙しい事もありますが、本来の予定とずれて、
読者様からご指摘を頂く事が増えた気がします。
もう少し丁寧にこの先を書きたいと思いますので、お待ちいただければ幸いです。
現在、検索除外設定をしてあります。年内の完結を目指しておりましたが、難しそうです。
忘れた頃に更新すると思いますε=ε=┏(゜ロ゜;)┛




