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005 ざまぁという名の問題対策

皆様の応援のおかげで、無事ランキングが転落中となりました。

感謝しておりますヾ(⌒(ノシ >ω<)ノシ

このまま転落人生を楽しみたいです。サボる言い訳じゃないよ?



「準備は整っているか! この作戦における行動も評価に入っている! 良いお嬢さんを射止めたかったら、奮起しろ!!」


 文句が多く、頭の残念な部下兼元学友を奮い立たせると、すぐに我が家の種馬屋敷へと向う。………なんか久しぶりに見た2名の痩せ方が心配だ。

 父が隠れている種馬屋敷は、少し人通りの減った一角に堂々と建っている。将軍閣下みたいに隠せと言いたい。


「ラインバルト様。ようこそいらっしゃいました」


 私たちが種馬屋敷に到着すると出迎えがあった。どうもここでも予定外の事が起きそうだ。部下兼元学友は既に屋敷を包囲展開済みである。父が何を企んでいても逃がす気はない。


「父上が私を待っていたのか?」


 警戒を込めて出迎えてくれた者に、そう返答をする。


「いえ、お出迎えは我々の自発的な行動です」


 私の質問に戸惑いながらも、答えてくれた。その様子から演技ではなさそうだ。

 いざという時のために、身を守る事に長けた部下兼元学友2名を選んで種馬屋敷へと入る。罠であれば囮とする為でもある。この屋敷内の罠なら彼らも本望だろう。


 いざという時に見捨てる覚悟を決めて扉をくぐると、そこには30名ほどの女性が左右に分かれて並んでいた。


「「「ラインバルト様、お待ちしておりました」」」


 一斉にそう挨拶され戸惑うが、それよりも正面の照明に照らされた物体にさらに戸惑った。

 最初は女性たちに目を奪われていた部下兼元学友2名も、その物体を見てからは驚愕の一言だろう表情を晒していた。


「我々は、これからは次期当主様であられるラインバルト様に従います」


 屋敷の外から案内をしてくれていた女性が、驚き戸惑っている私に対してそう告げる。

 今日1日は忙しすぎたせいか、頭がまともに働かないようだ。


 何故か父の愛人たちの屋敷の正面玄関に、父が気絶したまま縛られて吊るされている幻が見えるのだ。

 これは今日は早めに休んだ方が良いに違いない。


「ラインバルト様、我々のターゲットが既に捕縛されておりますが、どうしましょうか?」


 私よりもいち早く現実に戻った部下兼元学友の1人が、そう尋ねてくるが………私にはまだ現実として受け入れられる余裕はなかった。

 もう1人見てみると「こんなに囲った報いだ」っと周りの女性を見ながら小さな声で呟いているのが聞こえた。うん、現実を直視しよう。


「すまない。現状はある程度理解した。まずは話が聞きたい。あの物体は部下に先に屋敷の方へ運ばせる」


 認めたくない現実と向き合うと、早々に父と思われる物体を回収するように部下兼元学友に指示を出す。「解くの大変そうなので、このままで良いですか?」と尋ねられたので当然YESと返しておいた。どうせ、屋敷で再度吊るされるのである。手間が減ってむしろ助かるくらいだ。

 周りを囲っていた女性陣の案内を受けて、一番広い部屋であった食堂へ案内された。


「まずは父の捕縛感謝する」


 彼女たちが父の愛人でありながら、私の協力者になろうとしている事は既に理解している。だが、彼女たちの真意が理解出来ない。


「単刀直入に聞く。お前たちの望みを聞こう」


 分からない事は取り繕っても仕方がない。分からないです。ごめんなさい。教えて下さいと言う事にした。偉そうだって? 立場上の言葉遣いとはそういうものだ。


「ラインバルト様が女性に対してとても思いやり深い方だと噂で聞いております。我々の中には望んでこの場に居ない者も多くおります。そして、この機会に我々は新しい道を探したいと考えております」


 うちの馬鹿父が節操なしで、誠に申し訳ありませんと口に出そうになるが何とか堪える。


「つまり、父に代わって私に面倒を見ろという事か? 済まないが、私は女性をそのように扱う趣味はない。妾も愛人も作るつもりはない」


「いえ、そういう意味ではございません。それにお噂のとおり、女性を道具のように扱わないようで安心致しました。私たちが望むのは独立でございます」


 ふむ。元より情勢が落ち着けば、身内の後始末をする予定だったのだ。それが早くなるのは特に問題にはならない。

 それにしても閣下と違ってうちの父はダメ過ぎる。


「分かった。誰かと婚姻を結びたい者がいるのであれば支援を約束しよう。また、働きたい者が居れば我が家か家臣や寄り子の家の侍女として雇用しよう。他の待遇を望むのであれば、そこは私だけの一存では叶えられない場合があるが、まずは要望だけ聞かせてくれ」


 現在、我が家の家計状況は潤沢だ。王家より新たな褒章も届く予定だ。私の一存で使える金額でもこれくらいの人数であれば余裕で対応できる。


「ありがとうございます。我々も我侭を通すつもりはございません。リステル家の意向に従わせて頂きます」


「なるほど、私は母上(ははうえ)たちの望みどおりに動かされたという事か」


「お察し頂き、ありがとうございます」


 そうなると父はいつから吊るされていたのだろうか? まあ、自業自得だから今回は手助けはしない。

 この問題は母たちが既にある程度予定を立てていると思うので、私も1つ予定を早める事にしよう。


「分かった。母上(ははうえ)たちとは良く話し合って決める。その間にもし父がやってきた場合は、済まないが暴走しないように抑えておいて欲しい。出来るだけ早めに対処する」


「度重なるご配慮ありがとうございます」


 無事に話し合いを終えて、種馬屋敷を後にする事が出来たが………問題は増えるばかりだ。

 そして、屋敷内に突入した1人が、色々と欲求という名の不満を抱えてしまったようだ。こちらも早めに何とかする必要がある。っていうか給料を娼館で使えばいいのに、どうしても嫁が欲しいのか………難儀な奴である。





母上(ははうえ)、ただ今戻りました」


 屋敷へ戻ると案の定、母たち出迎えてくれる。当然ローズ様も一緒だ。ローズ様へは個別に挨拶を交わす。この行動も母たちの予想通りなのか黙って見守ってくれる。どうやら、ミーナの件で私との誤解は生まれなかったようだ。


「対象の捕縛の任ご苦労だったわね。あの者は燻製室近くに吊るしてある。陛下の使者が見かける事はない」


 武闘派の義母が、そう答えてくれる。あくまで近くですよね? 燻製室の中だったりはしないよね? 大丈夫だよね?

 私は義母が放った殺気に気付いて、不安が過ぎる。


「あの者にはまだ役目があります。今晩ゆっくりと皆で話し合いをさせて貰うから安心しなさい」


 私の不安そうな表情を察したのか実母が、安心できるような出来ないような答えをくれる。生前の父の最期の姿が吊るし姿とかは勘弁して欲しいものである。

 ちなみにローズ様には父の事は伝わっていないようで、可愛らしく疑問顔を浮かべていた。


「では、母上(ははうえ)。食事の時にでもお話したい事がございます。お時間を頂いても宜しいでしょうか?」


 父の事はこれまでの自分のツケを払うのだ………。もう諦めよう。それより今は問題解決を優先させよう。母たちが怖いとかじゃないぞ?


「えぇ。私もあの屋敷の処遇を話し合いたいと思っていたところです。あなたなりの提案は楽しみにしています」


 話し合いの約束を終えると出迎えが終わった。私は混乱しているローズ様を連れて、つかぬ間の休息を楽しんだ。

 怖い姿を見せてしまった為、一応素直に聞いて見ると「甘いだけではなく、しっかりと先を見据えていらっしゃる姿に安心しました」とお答えを貰った。本当に互いに誤解がなく済んで良かった。


 その日の食事は当然、父の同席はなかったが陛下の使者も特にその話は切り出して来なかった。

 陛下の使者とは雑談を挟みながら会話して妻帯者だと知ったので、そういう空気を読む能力をしっかり備えているのだろうと理解した。


「まずはミーナの件は、私たちがローズ様と上手くやっているか知る為に敢えて見逃していました。その件でバルトに迷惑を掛けた事はお詫び致します」


 母たち6人が揃って私へ向って頭を下げる。

 食事が終わり、陛下の使者もお休みになったところで、本日最後の話し合いが開始されたのだが………いきなり謝罪を受けるとは思っていなかった為、意表と付かれた。


「本来であれば、侍女たちの扱いは私たちが責任を負うもの。今は次期当主という立場ではありますが、実質当主とも呼べるバルトのお手を煩わせた事は私たちの落ち度となります。あの侍女は確かに行き過ぎておりました」


 私が意表を付かれている間にも母の謝罪が続く。でも、実質当主?


「あなたとローズ様が政務へ関わられるようになって、数年滞っていた政策にまで着手していく能力は、既に恩恵を受け始めた領民でさえうすうす気付き始めています。そして、いかに自身の夫が未熟か思い知りました」


 政務に関しては私の手腕じゃない。ほぼローズ様の手柄だ。それを横取りするつもりないので一言添えさせてもらう。


母上(ははうえ)、お話の途中で申し訳ございません。政務に関しては、私は、ほぼ役に立っておりません」


「分かっております。実務については殆どローズ様がこなされておりますが、実現可能な案へと修正したのはあなたの手柄だとローズ様より伺っております」


 母の言葉に驚き、隣に座るローズ様を見ると笑顔で頷いていた。私の為に偽りを述べてくれたのかと一瞬でも疑った自分を殴りたい。


「ラインバルト様は、領民にとっても、私のお、夫になる方としても、これ程幸せな方はおりませんと思っています」


 最初は凛々しかったローズ様が私を夫と認めてくれるところで照れた姿に、緊張していた空気が和らぐのが分かった。本人も認めたから、もう私の嫁!異論はもう許さん!!

 本当はこのまま私の嫁を攫って行きたい所だが、凄く頑張って堪えた。本当に凄く頑張った! そして、なんとか「ありがとう」と私の嫁に伝えてから、母たちへ自分の素直な考えを告げる。


母上(ははうえ)たちのお考えはある程度、理解いたしました。しかし、私は次期当主の座は譲る気はございませんが、すぐに当主の座に就く事に興味はございません」


 私の答えが予想通りだったのだろう。母たちは黙って私の話を聞いてくれた。


「あの日、私の提案を聞いて頂いた父の姿を私は忘れておりません。確かに私は案は出しましたが、それを必死に実行しようとしたのは父上です。我が家の悲願達成は父の代で為すべきと考えております。そして、私はそんな必死な父上を尊敬しております。まあ、それ以外の父上は直して貰いたいところが多いですが………」


 真面目な話の最後に、つい本音がこぼれてしまったのは誰も責められまい。母たちも同じ事を思っていたのか、その点だけは激しく同意していた。


「バルト。あなたの気持ちは分かりました。無理強いするつもりはありません。今晩あの人としっかり(・・・・)話し合う事にします」


 どうやら、悪い癖の矯正だけは敢行するようだ。これは自業自得なので私の口から何も言えない。むしろ夫婦間の問題だ。そっと無事を祈ろう。


「では、あの人が囲っている者たちを住まわせている屋敷の処遇についても、この機会にはっきりさせておきましょう」


 本題よりも前置きの方が重要だったが、とりあえず話は進んだようだ。

 屋敷の話題についてはローズ様は知っているのか確認する意味で顔を見ると、頷いてくれた。反応から察するに、父が吊るされたままなのは知られていないだろう。それ以外は知っていると思って良さそうだ。


「私たちはあの屋敷に住む者たちを侍女として教育したいと考えています。我が家の侍女は他家と違って特殊です。新しく領地を賜った者たちへ侍女を付けた事で、この屋敷内で人手不足になっているので、丁度良いと考えています」


 特殊とはみんな父のお手つきって意味だ。まあ、順当だろう。あの屋敷は恐らく、母たちが父と住めるように改修するつもりだったのだろう。


「でも、あなたの考えは違うようね。バルト」


 さすがは母親である。6人とも私が何か違う案を口にしようとしている事を疑う者はいないようで、母親独特の余裕をもって私の言葉を待っている。

 これは領主としての能力を母たち知らせる………今まで他の兄弟と変わらぬ愛情で育てて貰った恩返しでもある。その気持ちを持って精一杯伝えよう。


「我が家がこれまで戦ってこれたのはひとえに我が家に仕える騎士たちの働きによるものです。ですが、このまま予定通りに話が進めば、いずれ我が領は内地となる代わりに騎士たちとの繋がりが薄くなります。そうなってしまえば、いざという時に戦えない可能性が出てまいります」


「あの者たちを我が家の婚姻政策に使おうというの? バルトらしくない案ね」


 意外な話の入り方だったせいか、私を疑ってもいない分かりきった口調で、話の続きを急かして来る。


「本人たちから直接伺いましたが、彼女たちは望んで来た訳ではない者たちもおります。騎士たちとの婚姻を希望する者がいるのであれば、もちろん仲を取り持つつもりではありますが、互いの関係を強要する気はございません。むろん、他の縁を望むのであればできる限り手を貸すつもりです」


 私の基本的な考え方が変わっていないのを示して、母たちを安心させた上で本題を伝える。


「私はあの屋敷を騎士たちの奥さんや子供を預かる場所にしたいと思っております」


 母たちの反応を見る限り、この辺の考え方はこの世界では浸透していないようだ。


「バルト。理由を話して貰えるかしら?」


 一通り思案しても理解出来なかった為か、素直に話の続きを促してくる。


「我が家の強みは騎士の多さですが、それが逆に弱点にも成り得ます。もし、騎士の家族が人質に取られれば、絶対に我が家を裏切らないという保障はございません」


 私は今我が家に仕える騎士は、家族さえ最終的に見捨てると思っている。だが絶対ではないし、そもそもそのような状況を作らせたくないと考えている。表立って友好的であっても我が家には敵は多いのだ。


「つまり騎士たちが安心して働けるようにして、我が家との繋がりを留めたいということかしら?」


 私の意見にさすがに騎士たちが裏切らない事は分かっても、騎士の家族を守れる策である事は理解して貰えたようだ。


「はい。出来れば、出産時の施設としても利用出来るようにしたいと考えております」


 そういう行為を行う為の施設だったので、当然出産の為の設備もある。


「確かにあの人数を全員侍女として雇うとさすがに人が多いとは思っていましたので、2つの屋敷を管理する為なら、それも無駄になりませんね」


「騎士たちは長期任務に就く事も多いから、その方が確かに安心して現場に出られるな」


「何より、子供たちをみんなで見ることができるのが強みね。侍女を雇えない家だと大変でしょうから」


 母たちも概ね、私の案には良好のようだ。


 私の案はいわゆる託児所と産婦人科と小児科が入った病院をイメージしている。今は我が家の騎士だけの施設だが、そのうち文官や領民と行った順番で利用出来るようにしていこうと思っている。

 その事を、伝えるとローズ様に凄く輝いた視線を向けられた。


「凄いです! こんな事、あの国にいる時には誰も口にした事はありませんでした!」


 ちょっと興奮気味のローズ様が可愛い。真面目モードが解けそうになって困る。


「ローズ様もご賛成いただけているのであれば、私たちに異論はありません。バルト、あの屋敷についてはあなたの好きになさい」


 母たちからも無事許可を頂いた。女性や子供を守る施設の提案に、母たちは暖かな視線を向けてくれた。これで少しは恩返しが出来ただろうか?


 翌日の早朝には、戦いを終えた父と無事の再会を果たした。


「バルト。すまなかった。お前の気持ちは聞いた。妻たちとも話したが、我が領が内地になったらお前に当主を譲る。その時まで私は前線に立ち続けよう。お前はこの土地をお前の力で守れ。これは現当主としての命令だ」


 満身創痍と呼べる身体を引き摺ってまで、途切れ途切れの不器用な言葉を私に投げかける。


「父上。戦場を生き残った者同士。言葉は不要でございます。今はお休み下さい。私は私の務めをしっかりと果たします」


 それだけ返事を返すと、父は静かにその身体を地面へと預けていった………。

 

 こうしてやる気に満ちたローズ様を中心に、種馬屋敷の改築計画と父の愛人の侍女へとする計画が始まった。

 途中、騎士の1人が、父の愛人だった者へ求婚して、無事結ばれる騒ぎがあったが、計画は順調に進んでいるようだ。


 当然、1週間後に私とローズ様の婚約発表パーティーの支度も同時進行で進んでいる。こっちは私の出番はない………。ドレスもマイシスターになるクリスティナ嬢が用意してくれている。

 

 私は仕方がなく、通常の政務と招待状の手配や、ちょっと欲求不満気味の部下をとあるお嬢様に紹介したりと………地味な裏方に回っていた。


 そして、待ちに待った当日がやってきた。


「第1王子が到着致しました!」


 やべぇ! 隠しキャラへの対策を忘れてた!!



-後書き-


次回の話は物語に関わらない切ない物語です。(予定)


風邪の影響でストックが切れました。ちょっと体調優先してから続きを書きたいと思います。

本当に不定期更新になりますから!

忘れた頃にご来訪下さい(*'∀'人)


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