001 ざまぁという名の謀略が始まる
先に言い訳しますが、「本編」が終了としか書いていませんよ?
読者様に申し訳ありませんが、近々検索とかに引っかからないように設定変更するかもしれません。
ご注意下さい。
思い出すのもツライくらいに、新しく我が国となった国の王都では、『仮面の貴公子』を題材にした歌が流行っていた。
正式に隣国から我が国になったその王都へ向うまでの道中にある宿泊する村や町には、必ず吟遊詩人が滞在してらっしゃった。これは歓迎じゃない。ただの嫌がらせだ。
新たな我が国となった国の王都で、新しい陛下に謁見する目的は元祖国(特に馬鹿王子)をざまぁする為に訪れたのだが………
いや、違った。我が領民の為に安全な内地とする為に、元祖国の土地を切り取っていく策を陛下に献上する為だ。
陛下としても、正式に私をリステル領次期当主として承認する為に招待する予定だったという事で、早々の謁見が実現した。
ローズ様についても、元より外交で顔を合わせた事がある外交官に顔を正式に確認してもらう必要があった為、同席の許可はあっさりと下りた。
まあ、領地から王都までの道のりは仮面着用が義務付けられ、完全に王家の人気取りに利用されている。これも忠誠を示す為だ。諦めよう。
陛下へ謁見後、私が語った策については追々説明をするとして、とりあえず私の案は全て受け入れられた。一応期限と失敗した時の条件付で。まあ、失敗はありえないのだから問題ない。
ローズ様も過去に顔を合わせて事があった外交官によってあっさり本物と認められた。
その後の式典パーティーでは、3曲以上踊って周りに私のものだとアピールした。新しく我が国になった王家の第1王子がローズに熱い視線を向けていたからだ。この可愛いお嬢様は俺のだ!
「お久しぶりです。『駿馬の暴れん坊将軍』閣下」
第1王子の存在に嫌な予感がした私は、領地が臨戦態勢である事を理由に早々に領地へ戻り、献上した策を実行した。
そうしたら、このおっさんが来たのである。
「全く予定通り過ぎて、お前が恐ろしくなるわ」
そう、この暴れん坊将軍が我が家の領地に来るのは、計画通りの事だ。
「またまた、ご冗談を。王家からのお使いなど、ついででしょうに」
今日の娼館は貸切予定だ。そして、思う存分お暴れ頂く予定だ。
「うむ。こんな詰らん用事はさっさと済ませて楽しませてもらおうかのぉ」
あれだ………黄金色のお菓子なんて賄賂として3流も良いところだね。超1流はこれくらいじゃないといかんと思う。
「そちらの宰相からの要求は1年で良いですか?」
少しだけ計画を語ろう。
正式に新しくなった我が国の陛下より次期辺境伯領の領主として認められた私は、早々に領地へ戻り「実はローズ様生きているよ! 暗殺されようとしていたのを助けたよ!」と元祖国へ噂をばら撒いたのである。
元祖国の馬鹿たちは、近衛騎士が帰ってきたことで暗殺失敗は既に分かっているが、我が領へ宣戦布告は済んでいるので近衛騎士を始末して公表を取り下げなかった。
そこへ元々信じていなかった国民に真実を広めただけなのだが、もう王家は民兵だけではなく、衛兵や国軍兵士まで一部逃走する騒ぎになっている。
この噂のおかげで正当性もなくなった上に、国を思って働いてくれていた人物を暗殺するような国なら、いつ自分たちが捨て駒にされるか分からない状況にあると、みんなが理解したわけだ。
ついでに捕らえておいた近衛騎士の残りに、先に帰した近衛騎士が殺されている事を教えず、国に帰って真相を広めて、無事戻って来た時は、我が領で騎士として取り立てると約束をして開放した。まあ、当然だけど生きては帰って来なかった。処分に困っていた人物たちも噂が広がる最低限の役に立ってくれたようだ。
そんな状況で現状国を支える事が出来る最後の1人である宰相が、時間稼ぎの為に外交交渉を計画した。失敗した際に中立派の権力を削げるようにと選ばれたのが中立派筆頭の暴れん坊将軍閣下であったというわけだ。
「全く予想通り過ぎて、確認するまでもないわ。最初は停戦期間を2年とふっかけてきおったが、交渉の末、最後は1年で折れるから、失敗すれば爵位を没収すると言われたわ」
交渉の際は、最初に現実的ではない案を提示して、徐々に本来の要求へ近づけていくのが王道だろう。それを丁寧に実行したようだ。予想通りすぎて笑えない。
「では、予定通りに1年と半年を停戦期間として正式に署名した書類を先にお渡しします。これで国内で閣下の基盤を強化しておいて下さい。裏切る時の為に………」
「うむ。これで交渉は成立だ。1年半後には我々もそなたたちの国にお世話になる。新しくなる陛下へはよろしくお伝えておいてくれ」
「えぇ。予定通り既に陛下からは中立派の寝返りに成功すれば、正式に領地と爵位は保障する旨のお約束を頂いております。何もかも計画通りでございます。将軍閣下」
「「ハッハッハッハッハ!」」
裏切る予定の中立派は、停戦交渉成功を理由に独自の軍備増強の許可を得る。2年前から用意していた戦力をこれで大々的に使う事が出来るのだ。
そして、我が辺境伯領に隣接してい領地は全てが軍備を整えた状態で再度裏切るという訳だ。元祖国の2度裏切られた後の反応が楽しみだ。
「それで閣下。王都の様子は如何ですか?」
「馬鹿王太子は憤慨しておったよ。ユリアをお主が攫ったと騒いでおったが、王都の民は馬鹿王太子の取り巻きが決闘を起こした時の騒動は知っておるからな。また難癖だと決め付けているようで、騒ぐだけしか出来ずに見えている方は楽しませて貰っておる」
「まったく持って心外です。私はユリアなんて女は知りませんよ」
「あぁ、確かにユリアなんて女はもう居ないな。ハッハッハッハ!」
ユリアとはヒロイン役(偽)であり、この世界を乙女ゲーの世界と勘違いした電波少女だ。そして、将軍閣下が言うように既にユリアは存在しない。
「あの王子はこの後、お主が正式にローズ嬢との婚約を発表すれば、2人の女に逃げられた愚か者としてまた笑われる事になるであろう。どんな反応を示すか楽しみで仕方がないわ」
「えぇ、ようやく彼女を幸せにしてあげる事が出来ます」
「うむ。あの娘は可哀想な立場だったが、ようやく幸せになれるのじゃな?」
「はい。間違いなく。本人にも誓って………」
新しく我が国になった陛下との密約で、元祖国の中間派の切り崩しが成功した暁には、正式に婚約者として承認頂くように話を通しておいた。
これで誰にも憚ることなく、彼女と婚約が出来る。
まあ、新しい我が国の慣習も、貴族は半年の婚約期間後に婚姻するのが慣習のようであった。
結局お預け期間は続くのである。まったく貴族社会は私に厳しい。
「婚姻と言えば、お主の新しい部下に未婚の者を大量に招きいれたと聞いたのじゃが?」
「えぇ。ご存知の通り、学園の学友たちを私の直属の部下として加えました。これからは手がいくらあっても足りませんからね」
「その者たちに嫁は必要ないか? 確か23人もいるのだろう? 1人でも2人でも貰ってやってくれんか?」
この暴れん坊将軍は、ナニ恥じぬ………。名に恥じぬ程度にはお盛んの為、大量の娘がいる。男はさっさと放り出すくせに娘には甘くて、常に嫁ぎ先に困っているのだ。前も私に2~3人押し付けられそうになった。
「残念ですが、21人です。既に2名は売約済みです」
「ふむ。手の早い娘がおるのか。早めに手を打たないと全員、他の誰かに持っていかれそうだな。お前の部下となったのなら人気も高くなるだろう?」
自慢じゃないが領内の私の人気は高い。政治の為に殺されそうになった令嬢を助け出したヒーローだ。既に領内を巡行する劇団が、その話を題材にして劇を公演して回っている。当然、告白シーンは台詞が全てそのまま採用されていた。そんな人物の部下なら必然的に価値が跳ね上がるというわけだ。当主を正式に継いだ後は公演を禁止にしよう。
そして、2人の脱落者は『いつもの女性騎士』と心の中で呼んでいる姉の元部下で、現在は私の直属の配下なっている者に、しっかりと捕食されていた。2人は少し痩せていた。あれだ………専業主夫が良く似合うと思うよ。
「えぇ。我が家に仕える騎士の家からの縁談が多く届いております。ですが、閣下と私の仲でございます。もちろん、優先的に取り次がせて頂きますよ。ヘッヘッヘ」
「なんじゃ? その笑い方は。ローズ嬢が見たら泣くぞ?」
うむ。この世界に越後家は居ないようだ。
閣下の言葉のとおりにローズ様はこの交渉の場にいない。交渉の場だというのにいるのは私と閣下だけだ。長兄は将軍を娼館の一件以来、苦手としているらしく同席を断られ、ローズ様は私が同席を断った。下ネタ親父に近づけたくない気持ちは分かるだろ?
「これはお約束というやつでございます。閣下」
越後家がいないなら、仕方がないから私が文化として広めよう。まずは閣下から教育の開始だ。
「まあ、覚えておこう。して、お主の要望を聞こう」
「閣下はお話が早くて助かります。閣下の女を1人譲って頂きたいのです」
私の発言に閣下の表情が険しくなるのが分かる。閣下は女好きではあるが、囲った女性は決して粗末には扱わない。むしろ大事にする。それを寄越せと言われれば、この表情も仕方がない。
「それは私の信念を曲げろというのか?」
「いえ、その女性に無理強いをするつもりはありません。こちらへ来たいと言った際は気持ちよく送り出して頂きたいだけでございます」
「なんじゃ? お前が連れてきた女が今になって惜しくなったのか?」
「あの女は要りません。むしろ、返品は受け付けません」
あの女とは………説明が面倒なので機会があったらにしよう。
「散々な物言いじゃな。あれでも結構従順で可愛いところがあるのじゃぞ?」
いや、あの女のそっちの事情なんて知りたくない。
「では、誰が欲しいのじゃ?」
「閣下が当時『仮面の貴公子』と『白い花の舞姫』を引き合わせる際に、ステイフォン公爵家から受け取った女性ですよ」
学友たちと交わした約束から丁度1ヶ月が経とうとしていた頃。私は敵国である、とある侯爵家の別宅へお邪魔していた。
「あんたはなんて所に私を送り出したのよ! 何が助けてくれるよ!!」
せっかくお邪魔したので、懐かしい顔に挨拶と聞きたい事があってお茶の席を設けてもらったのだが、いきなりの罵声を浴びた。
「私が何度死ぬ思いをしたと思ってるの! 聞いてるの!?」
「ちゃんと生きているじゃないか? それに食事も衣服も住む場所もある。何が問題だ?」
こちらは約束を守っているのに酷い言われようである。
「チビでもハゲでもデブでもないから、確かに我慢したわよ! でもあんなに相手をさせられるとは思わなかったわ!」
「だから私はちゃんと現役だと言っただろ? この前も娼館を貸切にして大フィーバーしておられたぞ?」
「現役ってそういう意味だったの!? っていうかそんな何人も同時に相手にするような化け物のところに送らないでよ!!」
やれやれ。閣下のところならあの性格も大人しくなるかと思って送ったのに………。残念ながら失敗に終わったようだ。まあ、それでも返品お断りだ。
「こちらの質問に答えれば、閣下と交渉してやる」
交渉するだけだ。NOと言われたら交渉は終了だ。そもそも、この屋敷の外に出てバレたら命を狙われるのだ。ここから出すわけにはいかない。
「………分かったわ。何でも聞いて」
うん。この頭の悪さでは、絶対に外に出せない。絶対に自爆して他人を巻き込む。まあ、気にしても仕方がない。あの将軍が逃がすはずもない。
「逆ハー後の隠しキャラについて知りたい」
「え? 隣国の王子とリカルド様の従兄弟に会ったの?」
ふむ、確認しておいて良かった。学園で監視していた時に『隣国の王子』が対象だと知っていたが、筋肉ダルマの従兄弟?
「筋肉ダルマの従兄弟とは誰だ?」
「筋肉ダルマって言い方酷いと思うわ」
「いや、お前もそう呼んでただろ? ちなみに学園に潜入している頃の私を見て筋肉枠は1人で十分と言ったのも覚えているからな?」
お頭の具合がやはり芳しくないらしい。今さら「あっ!」じゃねぇ! 遅すぎるわ!!
「もう、いいからさっさと話せ」
さすがにこれ以上相手にするのは疲れる。さっさと用件を終わらせよう。そして見捨てよう。
「筋肉ダルマの従兄弟はユピタイト公爵家の嫡男で、育成パートで体力を結構上げると出てくる教師として現れるキャラよ。逆ハールートに影響がないから影の薄いキャラだったわ」
ユピタイト公爵家の嫡男? どこかで聞いた家名だ。
「一応こっちでも探したんだけど、いつの間にか家を追い出されちゃったらしくって見つからなかったわ」
うん、本物のお馬鹿で当て馬の元祖エンターテイナー君は隠しキャラだったようだ。そして、知らぬ間にざまぁしてたわ。ハッハッハ。そして、影が薄いか………もう本当に報われないな。本物はあんなに素晴らしかったのに………。
「あぁ、それなら会うこともないだろうから、もう1人の隣国の王子についてだ」
魂を引き継いだ新エンターテイナーも殉職した今、彼らとは永遠にお別れだ。
「あなたの亡くなったお兄様のカイン様が戦っていた国の王太子で、本当のシナリオは戦争が一度終って、逆ハールートに入ると再度戦争が起こりそうになるの。それで、互いの国に王家の交換留学生が来るの。それが隣国の王太子様よ」
うん。戦争が起こるのに交換留学生? 休戦か何かのお互いの人質ってやつじゃねぇ? 王太子が来るって事は、あのアホの国が優勢だったのか?
「本来なら、戦争を止める代わりに私がその王太子の元へ嫁いで両国は同盟関係になるの」
あれだ………世界観さんに同情だ。なんで子爵家のしかも庶子を嫁に貰って戦争を辞める国があるんだ?
「私は実は王家の血を引いていたらしく、カイン様と隣国の王太子が私を掛けて決闘するシーンが好きだったわ」
世界観さん、あなたは働かないのではなく、ボイコットされているのですね? 分かります。それも仕方がありません。今までのご無礼をお許し下さい。
次兄も完全に当て馬か………。もう色々と手遅れだ………設定的な意味で。
「分かった。隣国の王太子は何番目の王子だ?」
「王太子なんだから1番目に決まっているじゃない?」
何をさも当然と言わんばかりに胸を張っていたので、無性に張り倒したくなった。
第1王子は王太子に指名されていない。謁見した感じだと新しくなった我が陛下は、間違いなく聡明な部類だ。その陛下がこの時期にも関わらず、王太子を指名していないという事は、第1王子に問題があるのは間違いなさそうだ。念の為に、他の王子にも気を配る必要があるな。
「さあ! 私を解放してもらうわよ!」
質問の終わりを告げると急に元気になった。うん、毎日相手してもらっても大丈夫そうだな。
「私の女であるユーリとの会話は楽しめたかな?」
「えぇ、閣下。必要なお話は全てすみました」
ユーリと呼ばれた私の会話相手が元気に騒ぎ出したのを見たのか閣下が声を掛けてきた。そして、そのユーリと呼ばれたヒロイン役(偽)のビッチであの女と称した元ユリアが早く早くと急かしてくる。お前は完全にエロキャラだ。
「閣下。彼女を他の者に与えても宜しいですか?」
「ダメだ。私の女はやらん」
交渉は決裂だ。
「と、いう事だ。諦めろ」
「ちょっとぉぉぉーーー! 約束が違うぅぅぅぅぅぅぅ!!」
ちゃんと交渉しただろ? という視線を向けても涙目で必死に助けを求めてくる。でも、お前は私のざまぁ対象だからな? 命をとらないだけだ。
「閣下。女性の躾けは得意と伺っておりましたが、それはお噂だけのようでしたか」
「そんな事はない。ベットの上では3回も相手をすれば大人しくなる」
ふむ、それは大人しくなっているのではなくって………。まあ、エロキャラにはご褒美なような気がしないでもないが、彼女はここで永遠に監禁ENDでざまぁ完了としよう。
騒いでいるユーリを将軍閣下が連れて行くように命を送ると、周りにいた侍女たちが一斉に彼女を拘束して連れて行った。愛人とか妾とか叫んでいるようだが、私は閣下ほど胃袋は丈夫じゃないので無視だ。
あの馬鹿が騒いだせいで、用意されていたお茶の席が乱れていたのを、残った侍女たちが丁寧に片付けてくれた後に、再度、お茶を入れてくれる。
私が侍女に感謝の言葉を伝えると、侍女がティーポットを地面へ落とし「ガチャン!」と割れる音がした。
「………う………そ………………………………」
-後書き-
他の作品のネタばれ有なので注意。
私が好きなアニメに某人を操り世界に挑む作品があります。謀略系の主人公が好きなのは、その作品の影響になります。
他にも好きな作品があります。
途中でよく考えさせられる事があり、考える楽しさを学びました。そして最終話が物語の後日談となっていたのがとても印象に残っています。
2番煎じどころか、1万番煎じを超えていると思いますが、後日談こそが私の書きたかった話になります。本編はいわば、長い長いプロローグです。
本編完結までに頂きました感想を参考に、もう少し深く考えながら続きを書きたいと思っています。
(主に馬鹿王子の始末方法とか………)
残りの話数はそんなに多くない予定です。
ここからは不定期更新になると思われますが、気長にお付き合い頂ける心が広くて大変暇な方々、またよろしくお願い致します。