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エピローグ

この作品は、読者様の感想に支えられた作品と言えると思っています。(誤字のご指摘大変ありがとうございます)


もし、感想欄までご覧になられていない方がいらっしゃいましたら、一度ご覧頂くのも新しい楽しさが見つかるかもしれません。(私よりセンスが光る人がいたよ!)


ブックマークを登録して下さった方々、評価を入れて下さった方々にも大変感謝しております。

ですが、一番感想を頂いた方に深く感謝させて頂きたいと思います。

誠にありがとうございました。


本編はこのお話で最後になりますが、最後まで楽しんで頂けたら幸いです。



「私は………貴方と本当の恋がしてみたい! 貴方が願ってくれたように貴方と幸せになりたい!!」


 つい先程、諦めたはずの声が私の胸に響く。世界観よ! お前は本当に仕事をしないのだな!! 今回はグッジョブだ!!!


「貴方が好きです! 貴方以外は信じたくない!!」


 そう言いながら、こちらへ飛び込んでくる心底惚れている相手を抱きしめないなんて無理だ!!


「私も貴女を愛しています。初めて踊ったあの日に見た貴女の瞳を忘れた事はなかった。もう離さない!」


 こんな乙女ゲーの世界に2度と渡すものか! ローズは私のものだ!!

 私はその壊れそうな華奢な身体を出来る限り、強く壊れないように抱きしめて誓う。


「これは夢ではないのですよね? あの夜のように突然消えたりしないですよね?」


 なんだこの可愛いご令嬢(いきもの)は、必死に私の目を見て語りかけてくる。


「不安が消えてなくなるまで、私はここに居ます。貴女を抱きしめています」


 お互いの体温が分かるくらいに気持ちを込めて伝える。


「この色褪せていない世界が本物か知りたいのです。………仮面を外して顔を見せて頂けますか?」


 彼女の不安がなくなるのなら、そんな事はお安い御用さ。

 私が抱きしめる力を緩めると、彼女は私の仮面に手をかける。私を見つめる瞳に………そこから一瞬の記憶がない。


「ラインバルト様! ここはまだ安全地帯ではございません!!」


 彼女の吐息が口に噴きかかっているのが分かる。その事実に恥ずかしくなると共に、とても残念で仕方がない。

 彼女も気づいたのか「きゃっ!」と言って顔を離す。あれか? 世界観? 全年齢対象だから止めたのか? 全年齢なら、これくらいはセーフだろ?


「せっかく次期当主は旦那様と違って、危険地帯でそういう事はしないお方だと思っていたのに………我々騎士一同はガッカリです」


 私とローズをいつの間にか囲っていた一番私と付き合いの長く、そして姉の部下でもあった女性騎士から、そう説教を受ける。

 いや、感動のシーンだからね? これくらいは許してくれても良いんじゃない?


「旦那様やカイン様に続いてラインバルト様まで、そのような事になっては私たちは騎士を辞めさせて頂かなくてはなりません!」


 あれ? これって、父と次兄のせいでキスもダメなの? それって真面目にやってきた私の評価が入っていなくない?

 まあ、彼女たちに騎士を辞められて貰っては困る。彼女たちには、私のローズを守ってもらわなくてはいけないのだ。ここは私が折れるべきだろう。恨みは父で晴らせば良いだけだ。


「すまなかった。彼女が無事である事を確かめて気が緩んでしまった」


 素直に謝罪をすると、相手も引いてくれた。ちなみに次兄は、止まらなかったらしい………。次兄、あなたはやっぱり残念な攻略キャラの1人だったようだ。


「敵は手加減はしたが生きていない者は、この場で処理して構わない! 生きている者だけ連れて、早々に本来の予定ルートに戻る! すぐに支度せよ!!」


 そう周りの騎士に指示を出す。近衛騎士が来ていた服装は、幸いな事に勝手に脱いでくれていた為、損傷はほぼなかった。

 これで予定通り、領地までは移送中を装って行動が出来る。


 一応、切り捨てた近衛騎士は全員生きていたようだ。そんな彼らの様子を見たローズは安心していた。どこまでも優しい心の持ち主のようだ。


「という訳で、領地までもう少しお願いね?」

 

 こちらの支度が整ったので、協力者である学友たちにそう声を掛ける。


「あぁぁぁぁぁ! 一瞬でも慰めてやろうなんて思った自分を殴りたい!」


「やっぱりお前は元からこっち側の人間じゃねぇ! 俺たちの友情は終わった!!」


「1人で見せつけてるんじゃねぇぇぇぇ! 領地まで背中に気をつけろよ!!」


 学友(負け犬)たちの遠吠えが心地よい。


「ハッハッハ! 私は約束を守る男だ。領地についたらちゃんと紹介してやる。紹介まで1ヶ月くらい掛かるからそれまでしっかり準備は整えるんだな! 私は気分がよいから給料も前払いしてやるぞ!」


「「「俺たちはどこまでも親友だぜ!!」」」


 なかなか愉快な集団に育ったようだ。統率力は申し分ない。私の言う事にも忠実だ。約2年間ともに訓練をしていたおかげで、領兵とも遜色ない実力を持っている。よい人材たちだ。


「ラインバルト様、私は彼らが心配になります。主に頭が………」


「ふっ! 過酷な戦場(あの学園)は時に人を変えるものだ。被害が(同性愛に)出なかった(目覚めなかった)だけ彼らは優秀だ………」


 そんな心配をする、先程、私に説教をしてきた女性騎士を説得すると、嫁を連れて領地へと向かった。もうこの時点で悪役令嬢は俺の嫁。異論は許さん。





 領地に向かう間、私の婚約者として迎える予定の元悪役令嬢ローズ=ステイフォンが語ってくれた。今までの自分の事を。


 あぁ、俺の嫁と言いたいのだが「馬車に2人きりになったからと言って決して(・・・)致さない(・・・・)で下さい」と馬車の周りを固める事になった近衛騎士に扮した領兵4人から、それぞれ10回以上は言い聞かされたからだ。

 当然の事だが、私は反論したが「先走るようですしたら、我々も同席いたします」と女性騎士たちに睨みつけられてしまった為、泣く泣くローズ様と呼ぶ事になった。私は君たちの(あるじ)だよね?


 まあ、そんな私の事など彼女の大切さに比べれば、月とすっぽんくらいにはどうでも良い事だ。

 そして、私が彼女の話を聞いて思った事は1つだ。


( なんで強制力は悪役令嬢にだけ頑張って仕事しちゃっているの!? )


 とは当然思わない。現代知識と呼べるチートを持ってすれば、ローズ様の状態は分かる。

 所謂、多重人格障害という奴だ。幼い頃より殆ど洗脳に近い状態で育て上げられたのだろう。出会った当初の義理の姉になる予定のクリスティナ嬢の純粋培養されていた様子を見ても、犯人は容易に想像が付く。義理の父親になる事になるが、加減する必要はないようだ。


 それとして………兄の嫁が、私の嫁の妹になった場合の関係はどうなるのだ?

 逆に弟の嫁が、自分の嫁の姉になった長兄の立ち位置はどうなるのだろう? これはチート知識を持ってしても納得できる方法が思い当たらない。なんとも平和な課題が増えてしまったものだ。


 ローズ様に関していうならば、何も問題はないだ。

 我が家はどうやら複数の女性でも平気で愛を振りまける家系らしい。そんな家の次期当主が人格の2人や3人まとめて受け入れる器がなくてどうするというのだ?


「私は貴女の中の全てを愛します。ですので、ローズ様もご自身の全てを愛して上げて下さい。不安なら私と一緒に愛しましょう。貴女の全てを」


 もう、私は頭の中お花畑全開の口説き文句も平気で口に出来る。まあ、既にやってしまって言い訳にならないかもしれないが、ローズ様と2人きりの時以外は、もうしない。

 学園に散々ダメな見本が存在してたのだ。愚行を繰り返すほど、私は愚かではない! でもローズ様の良い香りは落ち着く………。


 私の言葉に「はい」っと小さく頷く彼女は社交界では見ることの出来ない程に顔を赤くしていた。

 騎士たちの忠告? 何それ? 美味しいの? と何度思ったか分からない。間違いなく、私には父の血が流れているようだ。


 移動の途中で馬を休ませる為に、休憩をとった際は必死に剣の修練をした。ただひたすら剣を振り、己を律する。

 

「ローズ様。ただでさえお疲れなのですから、剣の練習など見ておいでになられずに、お休み頂いて大丈夫です」


 欲望全開になりそうな気持ちを剣によって発散させているのに、見つめられてしまっては集中できない。そんなに見つめられると、色々と期待してしまう。うん、全く己を律せていない。


「本物の騎士というのは、ラ、ラインバルト様の事をおっしゃるのだと見とれてしまっておりました。練習の邪魔をして申し訳ありません」


 うん。とても可愛く、私の名前を呼んでくれた。謝罪? そんなの不要だ。これから、いつでも見せて上げようじゃないか!


「失礼します。ローズ様。そちらは大変危なくございます。我々の近くでご休憩下さい」


 それって私が危ないって意味だよね? 目が笑っていなかったもんね? どこまで信用ないんだよ!


 理性と戦い、蔑みという名の暖かい部下からの視線との争いにも無事勝利を収めて、私たちは領地へ戻ってきた。

 途中、領地と祖国だった国の国境線の近くにある街で、最後の監視員が無事に王都へ報告に向った事を確認する。近衛騎士と直接連絡する事がないあたり、捕虜になって別に移送されている近衛騎士たちも確実に使い捨てという訳だ。

 

 ここからは堂々と、こんな移送用の安物の馬車に乗る必要はない。

 我が領内でもっとも快適に過ごせる馬車で、ローズ様の妹君であるクリスティナ嬢の元へ一度お連れする事になっている。しっかりとクリスティナ嬢との約束を果たす為。また、ローズ様に本物の家族とのひと時を与えてあげたかった為でもある。まあ、長兄が私を暗殺しないようにする為でもある。長兄のクリスティナ嬢への溺愛っぷりは私の比ではない。祖国だった国の対策より重要だ。


「ローズ様。私は私の役目を果たさねばなりません。ここから一度、貴女と離れるになる事をお許し下さい」


 私は自身のトレードマークとなってしまっている仮面を身につけ、一旦ローズ様と別れる。元祖国の策略に乗っかる為だ。ここで騒ぎを起こし、お粗末な計画が腐りきった王家に成功したと思わせる必要があるからだ。


 余談ではあるが、一時的に所用で戻った領地では私は仮面を身につけていないと、誰だ?これ?と領民に言われた事がある。当然周りの兵が激怒していたが、私は領民を罰しなかった。当然、その夜は泣いた。長兄が持ってきてくれた酒は最高品質でとても塩味がきいていた。


「私に貴方の身を心配させて頂けるのでしたら、お約束下さいますか?」


 そうして、その私の守るべき華奢な手を差し出す。私はその手に口づけを落とす。これは騎士の誓いのひとつだ。周りから黄色い歓声が上がると共に学友からの遠吠えも聞こえるが、私の耳には「ご無事で」と呟いた最愛の人の声しか聞こえない。全くこの辺の野良犬の遠吠えは無粋でしかたないな!

 

「ラインバルト様! しっかりとして下さい!」


 ローズ様を見送って、騒ぎを起こす作戦が決行されようとしていた私に、いつも私に説教をくれる女性騎士が、そう声をかけてくる。


「先程までの、次期当主として相応しい凛々しさはどこへ行ったのですか? 迷子ですか? 恋の迷い道ですか? 私に恋人がいないのを知っていてやっているなら殴りますよ!?」 


 おかしい。私は次期当主のはずだ………。騎士って普通は主君に忠誠を捧げるものじゃないの?


「腑抜けられては困ります! この作戦の成否でローズ様の今後に影響が出ても良いのですか?」


 良いわけないじゃないか!


「全隊。作戦を再度確認する! 作戦目標は敵国の近衛騎士を捜索および追跡をしているように装い、我が領内に潜んでいる不穏分子に騒ぎを知らせる事だ! 住民はこの事を知らない! 不穏分子を逃がす事が目的だ。住民に怪我のないように十分に配慮せよ!」


「「「はっ!」」」


 指揮官が直接指揮を執る事に大きな意味がある。特に私のような次期当主の立場ならば、作戦の成否で自身の評価を直接見てもらうチャンスがあるからだ。その為、士気を上げるのにとても効果的だ。

 私としても使える人材を見出すチャンスである。不測の事態が起こった時の為に備える事も出来る。このあたりの才能は既に領兵に認められている。領兵も安心して仕事が出来るというわけだ。まあ、無能な上官の場合には全て逆効果になるのが弱点である。


 そして「ローズ様の名前だけで釣れるなら、旦那様より楽で良いですね」と既に『いつもの女性騎士』という呼び名になりつつある部下が呟いたのは聞き逃していない。

 父はきっとその後、女性を用意する必要があるのだろう………。確かにそれと比べれば楽と言われるのは分かる。だが、私も謀略家を自負する。やられたままでは済まさない。


「お前もいつも私の我侭に良く尽くしてくれている。この作戦が成功したら、褒美を取らそう。私が学園から連れてきた者を好きにして良い」


 『いつもの女性騎士』にだけ聞こえるようにそっと呟く。


「はっ! ラインバルト様所属騎士の名に恥じぬよう全力で任に就かせて頂きます!!」


 うん、残念な事に君は父と同レベルだったからね?

 こうして、義理の兄弟、義理の姉妹関係がどうなるのかの悩みに、部下の頭の悩みまで追加する事になったが、作戦は無事に終わった。一応学友も住民の避難誘導に参加させた。いきなり実践とかないからね?


 翌日、学友のうち2名ほどが自信に満ちた顔で忠誠を誓ってきた。丁度、反対側にいた『いつもの女性騎士』はナニか、すっごくツヤツヤしていた。父の例の問題は我が家だけじゃなくて領内全体の問題なのかもしれない。この世界に胃薬ってあったっけ?





 任務完了を斥候を使い、先に領主である父が住まう街へ伝令を飛ばす。

 これで事態が予想通りに動くまでしばらく静観の構えだ。無事、我が家の屋敷がある街に到着し、長かった嫁探しの旅が終わりを告げたのだ。え? 領民の為に働いていたんじゃないのかって? それは貴族なら当たり前の事だ。今更わざわざ口に出す事でもないさ。 


 最前線の砦としても使えるように作られた街の高い外壁を抜けると、住民からの歓声が出迎えてくれた。手紙では知っていたが領民たちが我が家の元祖国からの離反を受け入れてくれていた事に胸が熱くなる。年を取るとダメね………涙腺が脆くなるわ。

 『仮面の貴公子』コールを受けて、人に作られた道を手を振りながら進む。部下になった学友たちも調子に乗って、街の女性たちに手を振りかえしているが「誰あれ?」みたいな顔をされていたのは不憫だった。


 長い時間、民衆との交流の為、ゆっくりと進み、ようやく我が家に帰って来た。そして、そこには本来いないはずのマイスウィートハニーがいた。


「御姉様があまりにもラインバルト様の事をお話になるので、連れてまいりました」


 そう答えたのは義理の姉か妹か良く分からない関係になる予定のクリスティナ嬢だった。………声を聞くまで存在に気づかなかった。これは完全に私はダメになっている。まあ、分かっていても今は止められないけどね!


「貴女の元へ戻って参りました」


 そっと手をとり口づけを落とす。両親がいる?他の家族いる? そんなの目に映っている訳ないだろ?

 あたりから黄色い歓声が聞こえるような気がするが、止められる様子はなかった。 あれ? このまま突っ走っても良い?


「そのへんにしておきなさい。その子は私の可愛い義娘になるのだから」


 初登場となる私の実母が、声をかけてきた。同じく声をかけられるまで気づかなかった。よく見ると家族全員が揃っている。


「あらあら、私たちみんなの義娘になるのよ?」


「そうね。こんな可愛いクリスティナ様と一緒に、私たちみんなの義娘ね」


 母6人が素早くローズ様とクリスティナ嬢を回収する。私と長兄に拒否権は存在しない。

 まあ、受け入れられているのは良い事だ。


 その日は、夕食の席で、作戦の実質的な完了報告を入れる。ローズ様とクリスティナ嬢は、その間も母6人の手によって可愛がられている。

 実の娘たちは、お転婆だったせいか。2人の可愛さに夢中のようだ。一応、1人は私のだからね?


 その後は、元祖国の王都が動くまで静観の構えではあるが、次に備えての仕事がある。

 ローズ様は、しばらくクリスティナ嬢と共にゆっくり過ごして貰う予定だったのだが、なぜか私の政務の手伝いをしてくれている。否、私がいつの間にか手伝い役になっている。


 本人曰く「仕事をしていないと落ち着かない」との事だが、義理の姉か妹か不明のクリスティナ嬢は「離れたくない」と可愛い我侭を言ったと教えてくれた。





「ラインバルト様。この王太子殿下へお送りするお手紙は何という意味なのでしょうか?」


「ローズ様。相手は既に敵国の者です。馬鹿王子で問題ありませんよ」


 ローズ様はさすがに馬鹿王子の名称で呼んでくれなかった。私が彼女に告白をしてから2週間の時が流れたが、未だに正式な婚約者として迎えてやれていない。

 だが、元祖国だった王国が、ようやく外交に訪れていたとされるローズ様殺害を理由に正式に宣戦布告をしてきた事で、ようやくその準備が整ったのだ。


 当然、その宣言を受けて我が領は表向きは臨戦態勢に入っているが、実際に攻められる事はない。某将軍閣下より、王都の混乱振りは耳に届いている。戦争に必要な民兵が集まるどころか王都から民が逃げ出しているのだ。戦う以前の問題である。

 予定通りであるが、あの予想の斜め上をいく連中が自爆しないとも限らない。先手、先手でこれからも手を打つ必要がある。


 手始めに元祖国に、「隣国の一部になったのでよろしくね」というご挨拶文と「向ってくるなら全面戦争ね」という宣戦布告文を捕らえてある近衛騎士を使ってお送りする。

 せっかくなので、ローズ様の(認めたくないが)元婚約者である馬鹿王太子に個人的に手紙を出そうというわけだ。


「あの、お手紙の意味は教えて頂けないのでしょうか?」


 そんな可愛くお願いされたら教えたくなるが、それは出来ない。なぜなら、ある単語がこの世界にない言葉だからだ。


「言葉の意味は、今は説明できないんだ。これから馬鹿王子に降りかかる出来事が、その言葉の意味になるからね」


 そう返答しても可愛いローズ様は、首をかしげるだけだった。


「さあ、私たちも支度がある。新しい陛下に私たちの婚約を認めて貰わなくてはいけない。そんな馬鹿王子への手紙に気を取られている暇はないよ」


 これから、この辺境伯地を内地にするべく、陛下に策を献上しにいかなくてはいけないのだ。

 謁見の許可は既にとってある。


 仮面をつけての告白および、一時的に別れる際の騎士の誓いなどは、すぐ近くに居た女性騎士たちに全てを見られていた為、我が家の最終拡散兵器ミーナのおかげで領内だけではなく、新しく我が国となった王家へも話が広がってしまった。

 「仮面を付けての謁見を許可する」との許可証まで頂いたくらいだ。あれだね………。仮面をつけて来いって意味だよね。これ? 絶対に酒の肴にされるよね?


 だからこそ、馬鹿王子へいつまでも気を掛けている暇などない。

 この陛下に献上する策が受け入れられて初めて、私はローズ様と婚姻を結ぶ事が出来るのだ。


 失敗などはあり得ない。その為の準備は全て整っている。だからこそ、1日も早く策をなす覚悟を示す為に先に馬鹿王子に手紙を送っただけだ。


『この悪役令嬢、要らないなら貰ったよ。見返りはざまぁで。ついでにヒロインも貰ったよ? ざまぁ奮発するから楽しみにしててね』


 『ざまぁ』はこの世界に該当する言葉はない。いわゆる造語だ。

 馬鹿王子たちが、今までの報いを受けたときに、世界がこの言葉の意味を知るのだろう。


 乙女ゲーの世界よ! ざまぁを私が作り出して、既に終った世界観にトドメを刺してやる!!


「ラ、ラインバルト様。久しく踊っていないので、式典の後のパーティーが不安です。ご用意が終わった後で構いませんので、練習のお付き合い願えないでしょうか?」


 私が陛下へ謁見する為の書類を確認していると、そんなお願いが聞こえてきた。

 本当になんだこの可愛いお嬢様(いきもの)は………。他の事がどうでも良くなってきた。


「私の『白い花の舞姫』。私と一曲お付き合い願えますか?」


「はい! 私の『仮面の貴公子』様!!」


共に踊るローズ様の胸には少し前に私が送った誓いのペンダントが舞っていた。




-後書き-


そう、この世界は乙女ゲーの世界ではなかった。ただ1人の少女が愛する人を欲しがっただけのただの世界だったのです。めでたし、めでたし。


本編はこれで終了です。納得いかない終わり方だと思いますが、問答無用で本編はこれで終わりです。




ざまぁを読者がしてはいけないという法律はありません。

読者様が著者をざまぁしても良いんだと思います。ちゃんと理由さえあれば。


この気持ちはもしや!と思った方も勘違いです。私にそっちの気はありません!


著者は逃亡しますので、この場を借りて先に作品にお付き合い下さり、ありがとうございました。

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