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014

前回の下ネタ回でお気に入り登録をしてくれた方は、友達になれそうだ。


是非今度お茶会にお誘いしなくては!

(ะ •̀ㅂ•́)ะ <どれだけカオスな会話が生まれるか楽しみだわ オホホホホッモ



「よっ! お嬢さん、今ひとり? お茶しない?」


 随分と古い誘い文句だが、ナンパなんてした事がないのだから仕方がないだろ!


「だ、だれですか!?」


「この顔に見覚えはないの?」


 私が声を掛けた人物が、私の顔を凝視して驚く。


「リ、リカルド様の相手だった………」


「ちょっと待った! その言い方は誤解が生まれる」


「え? あ? ………うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええぇぇぇ!?」


 ようやく理解してくれたようだ。


「あ、あなた、なんでこの言葉が分かるの?」


 そう、声を掛けるときに使ったのは前世の時の言葉だ。当然、転生者である彼女も知っている。何せ、独り言をいう時に使っていた言葉なのだから。

 あの暴れん坊将軍からの詳細な報告がなかったのは、この独り言の言葉を理解出来なかったからだ。


 私の部下が観察している時は、聞いた言葉をそのまま文字にして提出させていたので、私だけが読み解く事が出来たというわけだ。

 独り言をしっかり言葉を変えていたあたり完全なバカでないという事だ。まあ、頭の中はお花畑だったけど………。現在はそうだったと過去形で言えるはずだ。


「交渉に来たんだよ。そして、私はリカルドの決闘の対戦(・・)相手ね。誤解を招く言い方はやめてくれ」


「わ、私の質問に答えて! なんでこの言葉が分かるの!」


 今この場所。この学園に人気は殆どない。王家の者が取り巻きを自らの手で殺めた事実と、現在の国の混乱具合から、貴族各家は王太子が通う学園から令息令嬢を避難させたからだ。


「ここまで察しが悪いとは思わなかった。とっくに自分の今の立場くらいには気付いていると期待していたんだけどね」


 相手からしてみれば、私は明らかな不審者の立ち位置だ。今も警戒をして必死に睨みつけている。


「まあ、良いだろう。ユリア=アトラルディ。私はお前と同じ転生者だ」


 私の言葉にヒロイン役(偽)はその顔に驚愕と恐怖を同時に浮かべる。なかなかに器用だ。そんな顔をされたら期待に答えないわけにはいかない。


「君にざまぁをプレゼントする者さ」





 何故、私がヒロイン役(偽)と接触をしようとしたのかを説明する為に、少しだけ話を戻そう。

 暴れん坊将軍と貴族ジョークという名の下ネタ満載の会議を終えた翌日。私以外に情報を集める事が出来ない人物の元へ向かった。その理由は冒頭で説明した通りだ。


 私は学園の制服を着て学園の門をくぐる。学園の門を警備する衛兵も、先日から続く人の出入りの多さに、チェックさえ行なっていない状況であった。

 学園内に入っても誰も私に気にかけるものはいない。今は学園から避難する方が先なのである。


 暴れん坊将軍の情報から、ヒロイン役(偽)が学園に残っている事は掴んでいる。そして王太子と取り巻きは、国としての対応に追われて王城にいる。まあ、全く役に立っていないらしい。

 当然目的はヒロイン役(偽)の状況確認だが、他にも目的があった。


「やぁ! 戦友たちよ。調子はどうだい?」


「な、なんでお前がここにいるんだよ!」


「そんなに大声出すなよ。卒業が近くて自習だからって人がいない訳じゃないんだぞ?」


 そう、学園が混乱しているのもあるが、卒業が近い時期であるせいもあって、学園内で最底辺の私が所属していたクラスは格好の隠れ家だったのだ。ちなみに先生など来ることはない。っていうか先生は既に学園から逃げた。


「分かった。静かに話を聞く。だから質問に答えてくれ。反乱軍の中でも首謀者に近い位置にいるお前がどうして学園にいるんだ?」


 我が家はどうやら反乱軍という扱いらしい。まあ、それでも学友の誰一人通報に向かわないので、友情なのか、現実を正しく認識しているのか。どちらにしても人材としてはありがたい。


「その答えは、お前たちと戦いたくないからだ。このままの状態がいけば、後ろ盾のないお前たちは真っ先に最前線に送られるだろう。なんて言っても私の学友だったからな。それだけで理由になる」


 どうやら私の考えは図星だったらしく、一様に悔しそうにしている。色々と理不尽な要求とか言われているのだろう。


「そこでだ。提案があってやってきた。学園の卒業式の翌日に開かれる卒業パーティの後に、この国はさらに混乱する」


「お前のところの主家が何かを起こすというのか?」


「いや、すまなかった。先に誤解を1つ解いておこう」


 内ポケットにしまっておいた仮面を取り出すと、華麗に装着する。そしてポーズを決めると決め台詞を放った。


「私はラインバルト=リステル。この国に反逆する者の名だ!」


「「「………………」」」


 一世一代の大勝負だというのに学友の冷たい視線が突き刺さる。私にはエンターテイナーとしての才能はないらしい。


「お前、ふざけていると衛兵に突き出すぞ?」


「ちょっ! ちょっと待った。本当の事だ。この短剣を見てくれ」


 取り出した短剣にはしっかりと家紋が刻まれていた。今ではもっともホットな話題を提供する家の家紋だ。きっと学友たちも見た事はあるだろう。


「お、おい。これ盗んできたら、お前、家に帰れないぞ?」


 これでも信用されていないらしい。


「分かった。俺も男だ。私がラインバルト=リステルだという事を信じてもらう事を諦める。代わりの話は真剣に聞いてくれ」


「いや、ふざけたのはお前だからな?」


( ふっ。そう言われると返す言葉がないぜ )


 こんなやりとりでさえ、楽しいと思えるのは、きっと私が学園生活を楽しんでいたからだろう。


「すまない。真面目に話すから聞いてくれ。リステル家もこの状況だから当然動くが、混乱させるのは王家の自爆だ」


 この話の内容について、反論がない。王家が自爆するというだけで信憑性が十分という事なのだろう。


「具体的な事は言えないが、王都に残っていれば危ない。それを伝えに来た」


 私の言葉を黙って聞いてくれる学友が、何かを悟ったように頷く。


「やっぱりな。正直、俺たちは戦争で徴兵される前に逃げる計画を立ててたんだ。だが、戦力や金になりそうな奴らにはそこそこ監視がついていて厳しいんだ」


 学友の1人が代表して自分たちの状況を説明してくれる。


「それでも逃げろっていうのか? 下手したらその時点で殺されるぞ?」


 暴れん坊将軍の情報どおり、彼らはかなり厳しい状況らしい。


「だから最初に提案しにきたと言っただろ? 敵対しない事が条件になるが、それさえ守れば王都から逃がしてやる」


 私の言葉に学友全員が目を輝かせる。


「しかもだ。行く所がないなら、我が家………って言っても信じないんだよな。リステル家で雇って貰える」


 この条件については、意見が分かれたような態度だ。


「当然、いざって時に戦争には参加してもらうが、悪いが学生上がりをいきなり戦線に立たせたりしない。悪くても後方支援だ」


「それなら、悪くないな。俺は卒業したら、家には帰れないし、王都にいたら確実に最前線送りだ」


「俺も似たようなものだ。だからその話、受けるぜ」


 うん、反応は上々だ。だが、現代知識のチートを舐めるんじゃないぞ!


「おっと、話はまだ終わらないぜ。今回はなんと!今だけ(・・・)特別(・・)に簡単な条件をのんでくれれば、君たちの望んでやまなかったものもお付けします(・・・・・・)!」


 そう、ショッピング番組はある意味、交渉事の英知が詰まっているのだ。『今だけ』『特別』『おまけ』は三種の神器だ。


「そ、その条件とは?」


「何をくれるというのだ!?」


 うん、番組のような胡散臭さは逆に興味を惹くのだ。


「な、な、なんと!」


 ここは敢えて引っ張る。これはお約束だ。学友たちも息を飲むのが分かる。


「私がラインバルト=リステルと信じるのであれば、直属の部下に加えて、お嫁さんの面倒も見てあげよう!!」


「「「うおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 うん、ノリの良い連中だ。半分くらいは本気で叫んでいそうだが。


「だが、待て。この学園みたいな女じゃないだろうな?」


 冷静になった1人の意見に、周りも熱が引いていくのが分かる。直属の部下については興味が全くないようだ。


「安心しろ。高貴な血を引いているが、事情があって学園に通えないご令嬢たちだ。それが心配なら領兵の女性騎士を紹介しても良い。まあ、こっちは自身で口説く必要があるがな」


「分かった。親友よ。俺は最初からお前があの『仮面の貴公子』だと信じていたぜ」


「あぁ、2年もこの学園で共に戦い抜いてきた学友を信じないなんて事はないぜ」


 実に調子とノリの良い連中である。まあ、この学園を生き抜いた戦友であるのは確かだ。暖かく迎え入れよう。


「それに今日すぐに決める必要はない。また数日後に顔を出す予定だ。もし事情が変わっても、領地まで来てくれれば迎える準備は既に出来ている」


 昔、長兄に相談しておいて良かった。本当にいつ来ても良いように準備は済んでいるのだ。


「先に学園と王都の脱出方法について教えておく。その際は全員同時に行動してくれ。そう何度も使える手じゃない」


 私の言葉に素直に従う。さすが兵士となるべく教育を受けたものたちだ。協調性は並じゃない。


 こうして、学園内の拠点を得た私は、ヒロイン役(偽)の監視を行い、ぶつぶつと呟く独り言から全ての現状を把握して接触を図る事に決めた。


 



「ざまぁって、あなた本当に転生者なのね………。あなたが物語を邪魔したの!!」


「おいおい。『ここはゲームの世界じゃない。やっぱり現実の世界だと認めなくっちゃ殺されちゃう』って呟いたのを聞いたから声を掛けたんだぞ?」


 そう、この呟きを聞かなければ、放置しておく所だった。


「てっきり、自分の立ち位置が分かったから言った言葉だと思ったのに、違ったのなら助けてやる事もないな。精々頑張って長生きしろや」


 なんか、頭は残念っぽいままだから放置して帰るとしよう。学園での活動は既に終わってる。


「ま、待って! でもあなた、私をざまぁするって言ったじゃない!!」


「あぁ、あれはその場のノリだ。でも、あながち間違いじゃない。結果的に王太子と結婚なんて出来ないからな。そういう意味じゃハッピーエンドなんて望めないぞ?」


「ノリでざまぁされるところだったの!?」


 うむ、ちょっと調子に乗りすぎていた。まともに話が出来ないのは、明らかに私のせいだったな。


「その予定だったが、今のままだと、お前は放置しても勝手に死ぬ。お前の立ち位置はそういう所だ。頭の中お花畑で現実が見えていないなら、話をするつもりもない」


 私の失態だったとしても、優しくしてやる必要はない。これで分からなければ、見捨てる。利用できるから声を掛けたのだ。利用できないと分かれば、さっさと次の手を打つだけだ。


「待って! どうすれば助かるの!! 私はまだ死にたくない!」


 このままだと殺されるのは分かっているようだ。


「私が手を貸す条件を守れば、助けてやる。あくまで同郷としての(よしみ)だ。礼儀も知らない奴なら、それをしてやる義理もない」


 頭の出来具合がこれで分かる。ゲームをやる程度には頭があるなら、最低でも義務教育くらいは受けているだろう。


「わ、分かりました。お願いします。私を助けて下さい。助けてくれるなら何でもします」


 言葉遣いが多少残念だ。おそらく義務教育途中と推測できる。


「なら、まず質問に答えろ。この世界の元となっているゲームは年齢制限があったのか?」


 この世界が乙女ゲームを元にした世界だと知ってから、色々と知った現実でこれは個人的に聞いてみたかった事だ。


「? いえ、年齢制限はありませんでした」


「それでお前は、あんな恥ずかしい事をしてたのかよ! 完全にR15指定じゃないか!!」


「仕方ないじゃない! 相手がそうしてくるんだもん!!」


 うむ、とりあえず1つ謎が解けたという事で良しとしよう。R18展開まで繰り広げようとしていた事を知っているのは同郷としての情けだ。黙っておいてやろう。


「分かった。今ので分かったとおり、俺はその元となるゲームについての記憶は皆無だ。だからお前の物語を邪魔する事は出来ない」


「あ、そっか。知っていれば聞かないもんね」


 ………やっぱり、こいつの頭は大丈夫か? こんなんでこの学園で良く生き残れたな。最初に王太子と仲良くなっていなかったら、上位貴族の連中にいつの間にか消されているぞ。


「次の質問だ。前世のお前の記憶は何歳まである?」 


 ちなみに、私は高校生だったと思う。ぼっちではなかったと信じたいが、家族との思い出もない。漠然とした知識だけがあるから、そう判断している。


「私は、中学生の時に死んじゃった。学校には行ってなかった。病気でずっと病院にいたの」


 うん、聞かなければ良かった。次兄の仇ではあるが、本人にその意図があった訳ではないのは理解している。完全に感情がついていっていなかっただけだが、こんな事を知ったら折り合いをつけるしかない。

 まあ、実際に『お助けキャラ』を次兄のいる戦場に送り込んだのは王太子だから、ざまぁは王太子に追加しよう。


 そして、この事から分かるように、利用できるだけ利用して捨てるつもりだったのだ。ボロ雑巾のようにな!! それも出来なくなったがな………。私は本当にこの世界の貴族社会に染まったようだ。


「分かった。今お前は、王太子を避けているな?」


「え?」


「王太子を避けている理由を言え」


 急に前世の話題から変わったので、理解が追いつかないのだろう。対人スキルが殆どないようだ。こうなると転生したら必ず良い方向になるとは言えないという事だな。まあ、ゲームのおかげでそっち系は非常に優秀なようだがな………。ある意味チートか。


「王子がリカルド様を殺しちゃったから………私もその現場にいたの。だから怖くなっちゃって」


 中身は完全に前世の世界の中学生レベルだ。こっちで生きてきたはずの15年以上の経験が全く存在していない。これが本人によるものなのか、いわゆる登場キャラの強制力なのか分からない。

 まあ、おおよその元の性格も理解できた。生き残る道も提示してやれそうだ。


「最後の確認だ。お前はユリア=アトラルディとしては何歳から記憶がある?」


「今から丁度3年前に、アトラルディ家の隠し子として貴族教育が始まったところから。その前はどこにいたかも覚えていないの」


 確かにヒロイン役(偽)は頭が悪い。前世では全く学校に通っていない状態で、そんな状況にいきなり叩き込まれたら対処できないのも無理はない。

 自分でも甘いと思うが、こいつは殺せない。だが、国を混乱させた責任はある。その事と折り合いはつけさせよう。


 ユリアの処分が私の中で決定する。


「お前の状況は理解した。だが、お前がやった事は国を混乱させる行為だ。理解できないかもしれないが、王太子の後ろ盾を失ったら、即、殺されるほど恨まれている」


 この事はなんとなく理解しているのか。息を呑むのが分かる。


「助かる方法は1つだ。名前と身分を捨てて、権力者の庇護下に入る事だ」


「ごめんなさい。庇護下に入るって?」


 そうだった。元は中学生で学校に行っていないのであった。


「遠まわしに言っても伝わらないな。エロ親父の愛人になるって事だ。これなら分かるだろ?」


 さすが元中学生の頭脳だ。ありありと拒絶反応を示している。この世界の貴族は下手をすれば中学生の年齢の時に嫁に行く者もいるのだ。これを受け入れられないなら、残念ながらこの世界で生き残る手段はない。誰も知らない土地へ連れて行っても1人で生きてはいけないだろう。


「一応、貴族の当主だ。当然現役だ。お前と同じくらいの年齢の娘がいるが、この世界の貴族ってのは美形が多い。俺は男だから、男の容姿についてはお前の考えを理解してやれない。だが、お前が愛人になるのはチビでもデブでもハゲでもない。これが精一杯の譲歩だ」


 精一杯の譲歩した提案を出す。子供が出来ないようにする薬を受け取った事あるだろ? こっちの世界の貴族事情は把握してるんだろ?

 それを知っていても恋愛脳なら、切り捨てるだけだ。


「あ、あの譲歩ってなんですか?」


 ………お馬鹿って面倒ね。最低限の勉強って本当に大事だと思う。うん。


「我侭を言うなら、この話は無しだという事だ。勝手にしろ」

 

「わ、分かりました。チビでもハゲでもデブでもないなら我慢します。私を助けて下さい!」


 ふぅ。物凄く疲れる。当初の予定だともっとスマートな交渉のはずだったのに………。どうしてこうなった!



-後書き-


真面目な話ー c⌒っ゜Д゜)っ


お気づきの方も多いと思われますが、この作品は著者の右往左往ではなく、試行錯誤の為の作品でございます。

前書きや後書きに真面目な考察等が書いてあるのも、その一環となります。

そこで今までの皆様の反応から、私なりの結論が導き出されました。


この作品の読者はドS率99%だ(#゜Д゜)ニャー!!


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