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逆お気に入りユーザー(奇特な方)が14人も増えていた! 昨日から今日にかけて何があった!!


あ、今日の本編はエロ回です。苦手な方や紳士淑女の方はご遠慮下さい。




 自宅へと帰り着くと、まずは本日の報告を長兄と義母に伝える。勝手に計画変更をしてしまったのだ。素直に謝罪した。


「謝る必要はありません。あのような者に我が家を貶されたままで隣国へ行くなど逃げるようなものです。遠慮は要りません。我が家の力を思い知らせてやりなさい」


 今までに見たことない程に熱くなっている義母に、長兄から意見が言えるはずもなく、あっさりと許可が出た。その日のうちに早馬を飛ばして父にも知らせる。報告連絡相談。そして確認大事。


 ただし、その日のイベントはそれで終わらなかった。


「ラインバルト様。この度は私たちの私事に巻き込んでしまい、誠に申し訳ありませんでした」


 急遽予定を変更する事になってしまった為に、明日には噂になって知られてしまっているだろうが………迷惑を掛けるだろう相手に謝罪の手紙をしたためていると部屋に来訪者が訪れた。

 そして、その来訪者の第一声がこれだ。


 その来訪者は………彼女たちは娼館から身請けを行なった2人だ。

 誰がどう考えても、悪いのはあの新エンターテイナーだ。気にする事ではないのだが、彼女たちの立場からするとそうも行かないのだろう。


「気にする必要はない。未来の予測不能因子を排除出来る良い機会を得たと逆に感謝しているくらいだ」


 新エンターテイナーの行動は、完全に予想外だった。逆にあれを予想できる人物がいるとするなら、私はきっと重宝すると思う。それくらい得難い人材のはずだ。


「しかし! 私たちがしっかりと元を断っておけば、あのような夜会で次期御当主に恥をかかせる事もございませんでした!」


 別に恥をかいたわけじゃないよ? むしろ大恥をかいたのは相手だからね。夜会にいた他の参加者が明日には面白おかしく噂を広げてくれると思う。しかも私側を正義の味方として。

 というか、物凄く感情が言葉にのっているような気がする。


「それに私は夜会のパートナーとしての仕事も、お仕えさせて頂いている使用人としての立場も全うできませんでした」


 いや、あの筋肉ダルマに対して、女性を盾にするとか無いから。むしろ衛兵ですら止められなかったのだから、そこは完全に気にする事じゃない。


「既に夜会でも利用価値のなくなってしまい、あまつさえ既に汚れている身ではございますが、最後にどんな扱いを受けてもご恩はお忘れいたしません」


 ん? 話の方向が変な方向に向かっているような気がする。


「私たちの為に使っていただいたお金は、どんな事をしてもお返し致します。今はこんな事しか出来ませんが、この身をどのように扱って頂いてもお恨みする事はございません」


「ちょっと君たち、ちゃんと話し合おうか?」


 おかしい………乙女ゲーの設定の世界じゃないのか? ヒロイン役(偽)の行動がR15以降になってから段々と私もそっち方面に巻き込まれている気がする。

 いや、この世界は現実だから、貴族社会としてはこれが当たり前なのだろう。マジでこのままだと悪代官ポジション一直線のような気がする。


 おら! お前は金で買われた女なんだ!! それなのに飼い主に迷惑を掛けるなんてふてぇ奴だ!! というやつだ。確かに帯をもってクルクルはしてみたいが、それ以上は望んでいない。


「この身も不要というのであれば、どのように処分頂いても文句はございません。如何様にでも………」


 なんか2人とも覚悟まで勝手に決めてしまったようだ。


「誤解があるようだから、先に行っておくけど。解雇も処罰もしないよ?」


 私の答えに2人が驚愕の表情を浮かべる。私、おかしい事は言っていないよね? 大丈夫だよね?


「しかし! これ以上は夜会の参加は不要とお聞き致しました! 元々その為に買われた私たちがその役目を果たせなかったのです! そのような者は、もう元の場所にも帰れません!!」


 うん、完全に感情が先走ってしまっている。大きな声を出しているせいか、部屋の外の気配が、こちらの様子を聞き耳立てて、この会話を聞いているのが分かる。この気配は演劇派のメイドだ。間違いない。


「2人とも安心して。私は2人ともが悪いとは思っていないし、捨てる気もない。夜会の参加については元々今日が最後の予定だったんだ。近々領地に向かわないといけなかったからね。だから、君たちが要らなくなったなんて事はない。また参加しなくてはならない時には頼むかもしれない。だからこれからも私に力を貸して欲しい」


 そう、2人に出来るだけゆっくりと優しく諭すように告げると、2人は案の定泣いてしまった。それと同時に聞き耳を立てているメイドの気配が強くなるのが分かる。


「これからは、領地に戻る際は一緒に来てもらって、領地にある屋敷で侍女として働いてもらう事になる。今までは事情があって私付きの侍女を持てなかったから、2人は私付きの侍女となって貰うように話が進んでいる。私はそれだけちゃんと2人を評価しているよ。簡単に捨てたりはしない」


 泣いている2人の頭を撫でながら、落ち着くように。落ち着くように。話をする。上手く不安を取り除いて上げられると良いのだが………。

 

「ところで何で2人は同じ衣装を着けているの? しかも真っ白な衣装で」


 2人が落ち着いたのを見計らって、何気ない話題を振ってみた。もう少し落ち着いてくれると助かる。


「捨てられるなら、出来るだけ苦しまないようにとお願いする為にこの衣装をお選び致しました」


 うん、無知は罪だ。死に装束かよ!! しかも捨てるって殺すってことか!!!


「ごめん。知らなかった。2人の決意を軽んじた訳じゃない。許して欲しい」


 素直に謝ると2人の態度も明らかに軟化した。顔にようやく笑みが浮かんだ。


「はい。次期御当主様が他の貴族の方と違うというのは分かりました。こんな私たちの様な者にまでお心配り頂きありがとうございます」


 作り笑顔とは違う笑顔が見れたせいか。私もようやく落ち着いた。女の涙はやはり武器だ。簡単に心が動いてしまう。父の気持ちが多少分かる気持ちがしたが、なおの事。より一層気を引き締める事にした。


「他の貴族は随分酷い事を平気で行なえるようなんだな。同じ貴族として申し訳ない限りだ」


「いえ………。あくまで王都にいらっしゃる方でごく一部の方だけと思われます………」


 せっかく見れた笑顔を自ら壊してしまった。自分の経験の無さが恨めしい。


「今、この部屋の中での事は身分も雇用関係も関係ない。何を言ってくれても構わない。素直に本当の気持ちを話して欲しい」


 笑顔を壊してしまった私に出来る事は誠意を見せる事だけだ。だが、私のそんな一杯一杯の誠意に2人はあっさりと笑顔を戻してくすりっと笑った。


「ラインバルト様。それはお貴族様が使用人を口説く時の常套句でございます。無意識にしているなら相手に勘違いされてしまいますよ」


 そんな注意を受けてしまった。なるほど、確かに振り返ってみれば口説き文句だ。納得する私の姿に再度笑顔をくれた2人はお互いに向かいあって頷いていた。


「本来私たち元娼婦は、例え身請けして頂いたとしても、お相手させて頂いた方の事を申し上げる事は出来ません」


 うんうん、あの館はしっかりと教育を施しているようで安心する。誰と誰がご兄弟になっているかなんて知りたくないからね。というか何で今その話?


「ですが、私たちは今後はラインバルト様の為にのみ、この命を捧げたいと思います」


 なんだこれ………。なぜこうなった!


「ですので、今後の為にもリカルド様の事で知っている限りの事をお話させて頂きます」


 いや、あの新エンターテイナーの趣味とか知りたくないからね?


「あの方は王太子の婚約者でもあるローズ様を狙っております」


「なっ!?」


 この2人が部屋に入って来たときもそうであったが、それ以上に話の展開に頭が付いていかない。


「あの方は女性を乱暴に扱われます。それも完全に物のように扱う為に、私たちがおりました娼館からも出入りを禁じられておりました。なので、私たちの身請け先をあの方が知りえるはずがございませんでしたが、実際にはあのような事になってしまいました」


 私が混乱している事に気付いていないのか、2人が話を続ける。 


「お噂にもあるとおり、あの方は頭は良くございません。この事から今回の事は私たちは何か悪い企みに利用されているではないかと心配しております。少し前に王太子の取り巻きをされていた別の方が罪を着せられ幽閉されました。ラインバルト様がそれに巻き込まれているではないかと心配をしております」


 2人の私を思う気持ちは良く分かった。それが恋愛感情なのかどうかについては、経験不足の私には分かりかねないが、間違いなく私の身を案じている事だけは分かった。

 そして、2人からの情報は思いにもよらず得難いものが手に入った。


 2人は、もし私たちのところを解雇になっても、この情報を元に何かしようとしていた可能性がある。身元不明人が大金を稼ぐ手段なんて、そんなに数があるわけじゃないからね。確実に危険な道だ。

 ぶっちゃけ王太子の取り巻きの幽閉の件は、私が犯人だ。もちろん自首はしないがな! 私にたどり着く事になったら、それはそれで可哀想だから。確実に2人は保護しよう。


 そして、今回得られた情報で2つだけ注意を払う必要がある。1つ目はローズ様が狙われている事。もう1つはあの筋肉ダルマをけしかけた奴がいるという事だ。

 こんな不安な情報を残したまま王都を離れなくて良かった。あの新エンターテイナーもたまには良い仕事をする。きっと、けしかけた奴も奴の行動は予定外だったと思う。奴の行動を読める奴などいないのだから………。


 ようやく混乱の収まった頭で、物事の整理が付いた。差し当たって、すぐにやらなくてはいけない事がある。


「2人とも助かった。この事を知らずに王都を離れていたら大変な事になったかもしれない」


 本当に斜め上をいくやつらの行動で、大変な事になっていた可能性があるのだから、感謝してもしたりない。

 本気の感謝の気持ちを2人に伝えると、気持ちが伝わったのか安堵しているのが分かった。なんだか、今日も大人の階段を登った気分だ。


「さっそくで悪いのだけど、2人に頼みたい事がある」


 私の言葉に2人は嬉しそうに頷く。うん、なんだかとっても可愛い。………危ない危ない。父と同じ道を進むところだった。私はローズ様一筋。ローズ様一筋だ。


 なんとか気持ちを落ち着かせて、2人に簡単な指示を出す。そして誤解されないように意図もしっかりと説明しておいた。

 2人は楽しそうに笑ってくれると、喜んでその指示を受け入れて実行に移してくれた。


 さあ! 邪魔者は排除しようか!!





「や、夜分に失礼します。ミ、ミーナです! ラインバルト様のお呼び出しにより参りました! し、失礼します!!」


「良く来たね。ミーナ。言いつけておいたとおり準備は出来ているかい?」


「ひゃい! お姉様たちに手伝ってもらって入浴を済ませました!」


 どうやら指示以外にも私の意図を明確に汲み取ってくれて良い仕事をしてくれたようだ。うん。義母を説得して2人は私付きの侍女にしよう。


 入浴を済ませた状態で、夜間に次期当主の部屋に1人の侍女が呼ばれる。つまりそういう事だ。

 そして呼ばれた侍女の名前がミーナ。演劇派で某メイドは見たばりに覗き見が大好きなお嬢さんだ。


 当然、先程の彼女たちとのやり取りを見られているっていうか聞かれている。声だけだから想像の中できっと大変な事になっていると思う。

 そして、その演劇の才能を遺憾なく発揮して、ある事ない事が屋敷中に広まるのは容易に想像できる。だからこそ先に手を打つ事にした。才能の無駄遣いをするのはエンターテイナーたちだけで十分だ。


 だからこそ、邪魔者の排除。もとい、見てしまったお仕置きを敢行する。我が家に「あらあら、まぁまぁ」は義母だけで十分。


「そうか。明日の仕事は休みにするように申し付けてある。安心してそのベットで休みたまえ」


「ひゃい! し、失礼します!!」


「あぁ、服は脱がなくて良い。風邪を引かれては困るからね」


 うん。思惑通り完全にそのつもりでやってきたようだ。まあ、拡散器みたいな人物の相手はしない。自身の性癖がどんな形で広がるか分かったものじゃない。

 いや、待てよ? 今の服は脱がなくて良いの発言はまずった………。そっちが好みだと思われた可能性がある………。


 まあ、どうでもいいや………。どうせ私はローズ様一筋だ。誤解が生まれた時は素直にこの事を説明しよう。今回の件で些細な誤解を生まない為に話をする事の重要性は理解した。人は失敗で学ぶ生き物なのだ。


「あの………ラインバルト様はその………お休みにならないのですか?」


 覗き見メイドのミーナが、今回の件で謝罪の手紙を書き続ける私に対して、顔を赤くして尋ねてきた。

 当然、私に手を出すつもりは全くない。据え膳? そんな単語はこの世界にない。


 前世では草食系と男子という言葉があったが、それは間違いだ。毒肉を食べる趣味がないだけで、普通の事だと思ってる。


 まあ、話は戻そう。


「すまない。今回の件で立て込んでしまってね。出さなければいけない手紙があるのだ。私に遠慮せずに休んでいたまえ」


 屋敷の主人たちが使うベットと使用人である彼女が使うベットとは全く質が違う。早々に寝てしまうだろうと考えていたが、甘かったようだ。

 ちらちらとこちらの様子を伺う覗き見メイドは、完全に期待している眼差しを向けている。


 こうなっては根比べだ。既に手紙は書き終えたが、今後の為に書かなくてはいけない書類が多々ある。覗き見メイドを無視してひたすら仕事に向き合う。


 さすがは本職だけあって、ずっとこちらの様子を伺っているミーナに戦慄を覚える。そして………とうとう私も限界を迎えてしまった。


「え? え? ラインバルト様??」


 不安な様子で、覗き見メイドがこちらに声を掛けてくる。当然私はそれを無視して寝転がる。


「ミーナはそのまま寝ていなさい」


「え? あ………はい」


 そう答えた覗き見メイドを確認すると私は眠りについた。当然ベットではなく、ソファーでだ。


 翌朝目を覚ますと、驚いた事に覗き見メイドが寝る前と全く変わらない体勢のままでずっとこちらを見ていた。こうなってくると戦慄では済まない。この世のものとは思えない恐怖を味わった。


「ミーナ。もしかしてずっと起きていたのか?」


「は、はい」


 そう返事を返す声には疲労の色が見える。


「寝なさいと言っておいたはずだが?」


「も、申し訳ありません。ラインバルト様」


 あまり余裕のない私はつい咎める口調になってしまった。まあ、良い。予定とは違ったがある程度のお仕置きは出来た。実際にそのお仕置きの成果が現れるのは、今晩以降だが………。


「昨晩も言っておいたとおり、今日は仕事をしなくて良い。夕刻まではこの部屋で休んでいなさい。食事はこの部屋に持ってこさせる」


「え? あ………はい」


 何度も彼女の思惑を外れた行動を取り続ける私に理解が追いつかないのだろう。ただ黙っていう事に従ってくれる。


 その日は私は手紙を出すよう指示を出した以外は黙々と剣の練習に勤しむ。覗き見メイドは完全に放置だ。

 そうして夕刻の時間に、私付きの侍女になる予定の2人が、覗き見メイドを再度入浴させて部屋の掃除も済ませてくれる。これで全てのお仕置き計画が完了した。


「バルト。昨晩1人の侍女を部屋に呼んだそうね」


 夕食の時間に義母から、そう質問された。 計画通りだ。


「はい」


「その侍女からは何もなかったと報告を受けたのだけど、どういう事かしら?」


「本人がそう言っているのであれば、そういう事なのでしょう」


 私はしれっとした返事を返す。計画通りに覗き見メイドは義母から聴取を受けたようだ。今頃は他の侍女たちからも根掘り葉掘り聞かれているだろう。

 これで噂される側の気持ちが分かってくれればよいと思う。


「そう。念の為に、あの子には3ヶ月は男性との接触を禁止しました。もちろん、最近までに付き合いがあった者がいないか調べる予定です」


「畏まりました。義母上。どうぞご随意に」


 これは、計画を聞いた私付きの侍女になる予定の2人から教えて貰った事だ。ここまでやれば、さすがに覗き見は懲りてくれるだろうと思っての事だ。

 その噂好きと覗き見好きのせいで、下手な事になって処分されるような事にならないようになるならと、2人も快く協力してくれた事にも感謝している。


「では、前からお願いしてありました。あの2人の事ですが、私付きの侍女にして頂く事は出来ますか?」


「良いでしょう。あなたも次期当主としての意識が出てきたようです。明日からでもそうなるように手配しておきます」


 こうして、1人の犠牲によって、筋肉ダルマに目を付けられてしまっていた不幸な2人を目の届く所で守ってやれる体制が整った。


 あとは筋肉ダルマな新エンターテイナーの処分をするだけだ。残り6日。とても楽しみでしょうがない。

 早めに終わらせた仕事のおかげで、ローズ様の周辺に護衛を配置する事が出来た。これも某暴れん坊将軍のおかげだ。


 学園に通い始めて約2年。卒業まで1ヶ月を切ったこの日。初めて学園に行く事が楽しみになった。はーやく来い来い♪ 決闘日♪





















 我輩はエロ眼鏡である。名前は今付けられた。


「エロ眼鏡! 聞いているの! あなたが私の着替えを覗きに来ないからイベントが発生しないじゃない!!」


 もう一度言おう。我輩はエロ眼鏡である。

 って、そんな訳あるかぁぁぁぁぁ!!!!


「聞いてるの!? ちゃんと覗きに来てよ!!」


「お前はどこの痴女だぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」


 私の反論に、エロ眼鏡や覗きを連呼していた痴女が怯む。


「そんな速攻で衛兵のお世話になりそうな事をする馬鹿がいるか! お前は人生を舐めてるのか!?」


「な、なによ! この世界は私の為にあるんだもん!! エロ眼鏡は黙って私と王子を結ぶ為に覗きなさいよ!!」


「だから私はエロ眼鏡じゃねぇぇぇ! っていうか眼鏡すら掛けてねぇよ!!」


 こんな会話の後に自己紹介など、おこがましい事は分かっているが、私の名誉の為にも告げねばならないだろうから、どうか許して欲しい。


 私はいわゆる転生者だ。とある国の侯爵家の嫡男として生まれた。

 最初は冒険溢れるロマン活劇を繰り広げられると期待していたが、現実は厳しい。


 1人で外に出ようとすれば、即連れ戻され。下手をしたら屋敷の侍女や衛兵が解雇されそうになる。さすがの私もそんな事になったら目覚めが悪いので必死に両親を説得して解雇は阻止した。

 当然、その時点で冒険は諦めた。


 せめて魔法でもと思って屋敷にある図書部屋で本を探すと、なぜかアーッ!な作品があった。タイトルは「公園に座る男の冒険譚」だ。どうやら彼はこっちの世界にも存在してるらしい。そして、ご夫人(ふじょし)も存在している事が分かった。

 まさか母の持ち物じゃないですよね?


 当時の私の世界は、屋敷の中だけだ。満足に庭にも出る事は叶わない。侯爵家の嫡男とはそれだけ価値があるものらしい。

 だが、私はそんな狭い世界の中で、この世界の真実を知る。


 頻繁に父と執事長が共に姿を消す。偶然、ある部屋の扉の前で共に出てきた2人を見た時の衝撃は忘れない。

 その後も、父と母が喧嘩をした後の仲直り後は、必ず一足のピンヒールの靴が捨てられていた。何に使われたのかは当然不明だ。


 おっと、これでは自己紹介ではないな。ただの家族紹介になってしまった。


 そんな現実を思い知った私は早々に真面目に生きる事を決めた。間違っても間違った意味の尻穴貴族になるなど、ごめんだ。

 硬い決意で紳士として生きてきた私を、容赦なく目の前の痴女が台無しにした。


 貴族社会とは、弱みを見せたらつけ入れられる。この痴女のせいで、この後の私に関する風評被害は考えるだけでも恐ろしい。


「ヒソヒソ、聞きました? 真面目な顔をしても、やはり殿方なのですね」


「えぇ。少し良いと思っておりましたが、さすがにあの噂の女を相手にされるような方とは怖くて縁は結べませんわ」


「それに、婚約でもしようものなら何をされるか分かったものじゃありませんわ」


 既に遅いらしい。学園に通うご令嬢たちからは、一歩、また一歩と物理的な距離が開いていくのが分かる。


 この目の前に居る痴女の噂は、この学園に通っている婚約者のいる王子に、身分も考えずに、猛烈にアピールしているという噂だ。

 そして、ここに来て重大な勘違いをしていた事に気づく。


 この世界は、冒険活劇の異世界でなく。乙女ゲーの異世界だったという事だ。

 しかも私の役回りは当て馬? それにしても覗きから始まる恋ってどんな当て馬設定だよ!


 考え事をしている間に、学園の友人だった連中も既に遠巻きに見つめる連中の仲間入りを果たしていた。

 友情など儚いものである。


 



 





-後書き-


この作品の感想をくれた某読者の度肝を抜こうと決意して、こんな感じの一部読者のニーズがありそうな話を題材としつつ一生懸命考えました。当然反省などしていない。きっとまたやる。アーッ!(*ノ∀ノ)


続き? あるけど、気が向いたら短編として書くかもしれない………。


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