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第七十九話 開眼

 勝太郎とロアとの戦いは熾烈を極めていた。一帯はロアが放った無数の光線のせいで、もう元の形が判らなくなるほどボロボロである。

 どこのものかも判らない無数の瓦礫に大空襲の後のように地面が抉れた後が無数にできている。城壁側の方では、あの魔法強化された分厚く頑丈な城壁に、幾つもの穴が開いている。

 貫通した光線が、街の方に被害出てなければいいが・・・・・・


「ラチル! あいつの目は、あとどのぐらい残ってる!?」

「今までので六個ぐらい潰したから・・・・・・あと十五個ぐらい?」


 勝太郎の叫ぶような問いに、ラチルの自身なさげな返答が続く。

 これまでの激戦で、ロアの目玉は確かに減っていた。数個の目が刀で斬られ、傷が治った後には、最初についていた目がなくなっている。

 だがまだ十数個分の目が残っている。ロアを確実に倒すには、この数を全て潰さなければいけないのだろうか?


(こっちも限界に近いな・・・・・・。全部潰す前に、俺の身体が持つかどうか?)


 彼がロアを斬った数は、もう百回以上に及ぶ。だが運が悪いのか、その攻撃は中々目に当たらない。

 その際に、勝太郎自身も何度も攻撃を受けていた。殴られたり光線を受けたりして、彼の全身各部が火傷まみれで、結構な流血もしている。

 常人ならすぐにでも病院に連れて行けなければいけない重傷だが、こんな身体でもまだ戦い続けられるのはさすがだろう。だがそれはいつ倒れてもおかしくない状態である。


 一方のラチルの方も、崩れた瓦礫に隠れるのは、彼女一人だけ。ルチルとロビン含めた他の者達は、激化する戦闘に危機を察して、他の場所に避難したようだ。

 国王一人を置いて、部下に先に逃げるという、かなり酷い状況だが、それを気にかける者はこの場にはいなかった。


「おい! 他の奴らはどうしたよ! 何で国王がこんな危ないところに残ってる!?」


 そう思ったら意外なことにいた。その場で突然乱入してきた人物は・・・・・・やっぱり大翔であった。


「大翔か!? 何でここにいる!?」


 放たれる光線を刀で弾きながら、勝太郎がそう叫ぶ。さっき皆を危険に晒してまで、彼を外に避難させたのに、当人がここにまた戻ってきては、まるで意味がない。


「ああ? 俺もよく判んねえよ! ただな・・・・・・うおっ!?」


 説明に迷っている最中に、ロアの放った光線が、その戻ってきた敵に向けて放たれた。大翔はそれを間一髪で避ける。

 そしてそのまま逃げるようにして、ラチルが隠れている瓦礫の山の裏側に走り込んだ。登場と共にすぐに逃げて、自分の隣に隠れこんだ大翔に、ラチルが激昂する。


「ちょっとこの負け犬! あんた何しに来たのよ!? いきなり出てきたと思ったら、戦いもせずに・・・・・・」

「うっせ! お前も人のこと言えるか!? お前の部下はどうした! 国王ほったらかして逃げられるとは、お前も人望がないな!」

「私は好きでここに残ったからいいのよ! 人望ないのはあんた方でしょうが! 討伐軍皆に見捨てられたくせに!」

「あれはお前らが馬鹿げた工作をするから・・・・・・おおっ!?」


 この状況での無意味な口げんかの最中、大翔は勝太郎達の方向を見て驚き入る。最初は大翔にも破れなかった結界を、勝太郎が剣撃で破ってロアの身体を切り裂いたのだ。

 それはこれまで、この場で何度もあった光景。だが大翔にとっては初めて見る光景であった。


「何だよもう決着が・・・・・・あれ?」


 だが刀で腹を割かれたロアは倒れない。そのまま彼に蹴撃を与えようとするところを、勝太郎が紙一重で避けている。大翔はその光景を見て首を傾げた。


「何だあいつ? 結界を破って斬ったのに倒せないのか?」

「あいつには目が沢山あるから、一個潰してもすぐ殺せないのよ。勝太郎さんには、目が何処にあるのか判らないからね・・・・・・」


 既にただの野次馬となっている大翔。本当に何しに来たんだ?と誰も問いたくなる彼に、ラチルがうんざりした様子で説明する。


「判らない? 何でだよ? あんな気持ち悪い姿、弱点の目なんてすぐに・・・・・・見えない?」

「ええ、見えないのよ。勝太郎さんあの通り、目隠ししてるからね」

「ああ、そういえば変なの巻いてたな・・・・・・何でだ? あいつの貰った肉体、目が欠陥でもあったのかよ?」


 最初に会った頃から、ずっと気にかかっていたこと。勝太郎が目隠ししている理由を知らない大翔が、今ここで改めて問う。

 その最中に、勝太郎がまたロアの身体を切り裂くも、今回も目には当たらず外れであった。


「いえ・・・・・・そういうわけじゃないみたいね。何でも転生するときに、勝太郎さんが昔したことの罪を咎められて、目隠しするよう言われたみたいだけど」

「罪? 何の罪だよ?」

「あんたを殺した罪に決まってるでしょうが!」


 本当に理由が判らないといった風の大翔に、ラチルが苛立ちながらそう叫んだ。それに対し、何故か大翔の方は当惑した。


「はあ? 目の見えない奴を殺したから、目を見えなくしたってのか? くだらねえ、そんなことで・・・・・・」

「あんたにとっては済んだことでも、勝太郎さんにとっては大事なことなのよ! あの人ずっと、あんたが新しい肉体で生き返って、散々暴れまくって良い思いをしてるなんて、全然知らなかったんだからね! はん、何でこんな馬鹿のために勝太郎さんが・・・・・・」


 大翔に対して幾分憎しみが混じった口調で話すラチル。すると今までただの観衆だった大翔が、いきなり瓦礫の山の裏から、勝太郎達の前に姿を現した。


「勝太郎、もういい! 前に俺を殺したことなら、もう許す! だからさっさとそのくだらない目隠しを取れ! そんでその汚い化け物を、さっさとぶっ殺せよ!」


 大きく叫ばれる、大翔からの赦免発言。そしてその声を上げるために、姿を現した大翔に、ロアの複数の目が一斉に注目した。そしてその目がまた光り出す。


(あっ、やばっ・・・・・・)

(ちょっと、何やってるのよ!?)


 いきなり敵の注目を浴びる行動を取った事に、二人が後悔も叱責もする暇もない。ロアの光線が複数、ラチルと大翔がいた瓦礫の山に向かって放たれた。


 ドドン! ドドン!


 周辺の建築物の崩壊によって形作られた瓦礫の山脈。それらが連射される幾重もの光線で、更に細かく砕かれ、更に広範囲にばらまかれていった。

 大量の粉塵が撒き散らされ、大翔とラチルの姿が完全に見えなくなる。二人は発射の直前に、素早く移動していたが、果たして助かっているだろうか?


「うう~~、酷い目に合ったわ・・・・・・」


 幸い二人は生きていた。ばらけた瓦礫から、十数メートル離れた所で、鶏人の少年が、聖者の少女を横抱きで抱えて、ロアから距離を取るために走っていた。


「ちょっとあんたね・・・・・・いきなり何してんのよ!? あんな目立つことしたせいで、私まで死にかけたじゃないの!」


 鶏人の少年に抱えられながら、ラチルが先程の行動に関して、怒声を上げる。彼の突拍子のない行動のせいで、彼女まで巻き添えを受けたのだから当然だが。


「そう言うなよ・・・・・・あいつだって、お前や俺たちの為にしてくれたことだ・・・・・・」

「・・・・・・えっ?」


 彼の発言に、ラチルが瞬時に固まった。今自分を横抱きしている鶏人の少年。その顔は確かに大翔と同じ顔である。

 和服を着ている点も同じだ。だが先程とは、どうも雰囲気が違う。しかも今の発言もおかしい。彼は抱えているラチルの顔を見て軽く笑い、そしてラチルもそれが誰か即座に判った。


「えっと・・・・・・もしかして・・・・・・勝太郎さん?」


 彼の着ている服の色。そして腰に刀を差している点。これらから考えられるのは一つしかない。彼は大翔ではなく勝太郎である。

 しかしいつも顔に巻いている、あの特徴的な目隠しはなく、彼は今目元を堂々と晒しているのである。


「ああ、そうだよ。俺は山田 勝太郎だ。ははっ・・・・・・何か知らんが、急にこの目隠しが、勝手に外れたんだ。大翔が叫んだ直後にな。どうやら冥界は俺のことを許してくれたみたいだな・・・・・・」

「ああ・・・・・・」


 ラチルにとっては初めて見る勝太郎の素顔。それは勝太郎の方も同じである。彼にとって、今日初めてラチルの顔を見るのである。

 あまりに突然の事に、ラチルは呆然として、彼の顔を見上げる。勝太郎の方も同じで、二人は横抱きの体勢のまま、互いの顔を見つめ合っていた。そして唐突に、勝太郎が先に声を上げる。


「お前・・・・・・中々可愛いな。前に顔を手で触れたときに感じたよりも、ずっとよく見えるぜ。何て言うか・・・・・・俺も良い花嫁を貰ったもんだ」

「ちょっともう・・・・・・そんな急に大胆なこと・・・・・・」

「いちゃつくのは後にしろ! 敵が来るぞ!」


 二人が顔を赤くして語り合おうしている中、どこからかまだ無事であったらしい大翔の声が上がる。見るとロアがこちらに真っ直ぐ向かって、今まさに光線を放とうとしていた。


「うぉおおおおおっ!?」


 感動の初対面に時間を割る余裕などなく、勝太郎は大慌てで、ラチルを抱きながら光線を避け続ける。


「おいおい、本当にビームじゃないかこれ! それでここはどこだ!? このスクラップ場みたいな所が王城か?」

「ええ、そうよ! もう見るも無惨だけど!」

「ちくしょう、初めて見る異世界の光景がこれかよ!」


 光線を避けながらそう叫ぶ二人は、見た目と違って結構余裕がありそうだ。


(参ったな、ラチルを抱えたまま戦うわけにも、その辺に置いておくわけにもいかんし、どうするか? おや?)


 その時、彼の耳に届いてきたエンジン音。彼がとある倉庫らしき建物の裏に回ったときに、そのエンジン音の主が姿を現した。それはあの飛行バイクに乗ったルチルである。


「大翔さん、姉さんをこっちに! ここは私が避難させます!」

「え、お前ルチルか!? ていうか何だそれ!? 飛んでんじゃん! 普通のバイクじゃなくて、すげえSFじゃん!」


 これまた初めてルチルの顔を見る勝太郎。だが彼はルチルの顔よりも、彼女の乗っている飛行バイクに釘付けであった。

 今までは車輪付きの普通のバイクと思っていた物が、実は超未来的バイクであったことを、彼は初めて知ったのだ。


「えっ? あなた勝太郎さん? 何で・・・・・・て、それより姉さんを早く乗せて!」

「おう判った! こいつを頼む!」

「うわっ・・・・・・」


 近くに魔人の気配が迫っている事に気づき、慌てて促すルチルの言うとおりに、勝太郎は即座に抱えていたラチルをその飛行バイクに乗せ込んだ。そして自由になった手で、再び刀を引き抜く。


 ドム!


 ルチルとラチルが飛行バイクでその場から走り出したと同時に、建物の壁が光線によって砕かれ、できた穴からロアの姿が現れた。


(さっきもチラッと見えたが・・・・・・何とまあ、水木し〇るの漫画に出てきそうな奴だな)


 そしてこれもまた初めて見る魔人の姿。その異形の姿を見て、勝太郎は特に恐れることなく軽く笑う。


「それじゃあ、改めていくとするか!」


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