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第六十三話 救出出動

 さてさて場所は戻り、ここはピッグの街。領主の死後、難民達が押し寄せて、かなり騒がしい時期が合ったこの場所は、大分落ち着きが戻ってきている。

 それどころか一連の騒動で、破壊された家屋の修復作業も始まっていた。 一時街の中に入っていた避難民も、もう半分ほどが村に戻って、畑を直しに行っている。


 大分日が傾きかけ、空が赤くなる風景で、僅かだが人々の明るい声も聞こえてくる。

 ただし領主館の方は、相変わらず壊れたまま。館の庭園にも、少しずつ雑草が伸び始めている。その場所にじっと想い人を待ち続ける者がいた。


「勝太郎さん・・・・・・遅いわね?」


 そこにいたのはラチルであった。すぐ脇には真澄もいる。今彼女らは、領主館の残骸を椅子にして、何やら苛立っている様子。

 ラチルが待っているのは、勿論勝太郎である。事が全て終わったら、彼らはここで勝太郎と合流する予定であった。

 生憎勝太郎は、王都まで行ったことがないので、転移での合流が不可能だ。そのため一旦ここで落ち合い、そこで真澄の飛行機に乗って王都まで行き、そこで聖者達と共に天勝寺に帰るつもりだったのだ。

 だが王都でのゴタゴタは既に終わり、ここで数時間ほど待っているが、勝太郎の帰還は意外と時間がかかっているようだ。そこで真澄が口を開く。


「もしかして迷子になってるんじゃないのか? あいつ目が見えなかったし・・・・・・」

「ああ、そういえばそうだったわね」


 勝太郎が最初に一人で活動したときに、思いっきり迷子になっていたのを思い出す。

 さっきは討伐軍を止めると、勝太郎が自信満々に名乗り出たので、特に疑わずに任せたが、すっかり以前のことを忘れていた。


「てことは・・・・・・もしかしたら討伐軍は、一つも止められていないかもしれないわけね・・・・・・。うん困ったわね。しばらく迷ったら、ここに戻ってくるかしら?」

「むしろ諦めずに、あちこち走り回っている可能性が高いな。こちらから連絡する手段があればいいが・・・・・・。私は一旦王都へ行って、討伐軍の動きに変化がないか聞いてくるが、お前ここで留守番を頼めるか?」

「ええ、任せて。行き違いになったら困るものね」


 そうして真澄は、そこでニンジャ召喚。ラチルは即座に、プロペラの風に吹き飛ばされないように、物陰に隠れる。

 この領主館の広い庭で、突風を巻き起こしながら、空へと駆け上っていく、真澄が操縦するニンジャ。最初にここに離陸したときは、街の者達も驚き混乱していたが、今回は二度目なのでさほど騒ぎが起こらない。






 それから四時間ほどして。日は完全に落ち、空に薄い雲に覆われた月と星が昇る時間。再び真澄の乗るニンジャが、ここに戻ってきた。

 何やら慌てた様子で、真澄が操縦席から降りてくる。一方のラチルは、未だに一人でここで留守番だ。どうやらまだ勝太郎は戻ってきていないようだ。


「あら・・・・・・意外と早かったわね。勝太郎さんは?」

「大変だ! 勝太郎の奴、討伐軍に捕まったぞ!」

「・・・・・・・・・・・・へっ?」






 その日の深夜、王都の王宮にて。少々厄介なことになって、事態が混迷していた。

 かつては大臣達が座る場所であった、貴族院の席には、今は真澄・ラチル・ルチル・ラファエルの他、数人の聖者達が、難しい顔で座り込んでいた。


「予想の斜め上の事態だな・・・・・・まさか大翔の奴と、勝太郎がぶつかることになるとはな・・・・・・」

「ていうかあんた・・・・・・その大翔って奴のこと、前から知ってたわけ?」

「ああ、津軽王国の報道でも名前が出てたが、その辺見てなかったのか?」

「いや、全然・・・・・・全く興味なかったし」


 どうやらTVや新聞に目を通していなかったらしいラチル。苦笑いしながら、今の事態に頭を悩ませていた。

 まだ聖王が倒れたことを知らない、各地の砦から、討伐軍の動きが伝達されていた。現在このディーク領土には、一部隊の討伐軍が、こちらに向けて進軍している。


 最初は別の地区から、二つほど別国の軍勢が攻め入る様子を見せていたが、何故かその軍勢は、急に自国へと撤退した。ただ一つ、グンガンという国を中心とした、諸国の連合軍が、この王都へ向けて、まっすぐ進軍しているのだ。

 そして報告の中には、二人のアマテラスのサムライが、その進軍中に衝突した。そして一方が、グンガンの軍勢に囚われたというものであった。

 その二人のサムライは、どちらも似た容姿の鶏人の少年であったという。


「今の話し、間違いはないのよね? もし嘘だったら、あんたの命の保証はないわよ?」

「いえ、恐らくは偽りはないかと・・・・・・。これは全て使い魔の目を通して、砦の魔道士が目撃した者が、この報告内容を纏めました。一方が目隠しをしていたかどうかは報告にありませんが・・・・・・恐らくは負けたのは、勝太郎様の方ではないかと・・・・・・」


 苦笑いをしているのは、ラファエルも同じであった。上手いことアマテラスのサムライに取り入って、どうにか生き延びようとしたのが、ここに来て雲行きが怪しくなってきたのである。


「まさか勝太郎さんが負けるなんて・・・・・・勝太郎さんは無事なの?」

「判りません・・・・・・彼が軍に担がれる辺りで、使い魔を退却させたようなので・・・・・・。それと敵軍がこの王都に着くまでにかかる時間ですが・・・・・・」

「そんなのどうでも良いわよ! 勝太郎さんを助けに行くわよ! お願い真澄! また力を貸してちょうだい!」


 思いも寄らなかった勝太郎の敗北。最初は混迷しきってラチルも、気を取り直すと、即座に勝太郎の救助を提案する。

 これに真澄は文句言わずに頷くが、ラファエルと聖者の方が疑問を浮かべながら問うてきた。


「まさかこれからグンガン軍に行くのですか? ということは、かの軍と戦うおつもりで?」

「ていうか私達は!? 皆を転移で向こうに送ってくれるという話しは・・・・・・」


 ラファエルとしては、ここで彼らが討伐軍を撃退してくると大助かり。聖者達の方は、最初に言っていた、勝太郎の力でアマテラスまで送って貰うという話しが、妙な方向に動き出して、かなり心配しているようだ。


「向こうが邪魔するならそうするわよ! もし邪魔しないようなら、すぐに勝太郎さんを返してもらって、それから皆で逃げましょう!」

「あの私は・・・・・・」

「あんたは聖者じゃないからパス! 真澄さんお願い! 私も一緒に行かせて!」

「ああ、判った! ルチル、しばらくここで皆を頼むぞ!」

「はい、任せて下さい! 真澄さん、姉様、どうかご無事で!」


 あの後何があったのか、はっきりラチルを姉と呼び、彼らを見送るルチル。そしてラファエルの急いで王城の庭園へと走り、再びニンジャでこの王城を飛び立った。






 ディークの領内を進む、諸国の討伐軍。今はその勢いが一旦止み、進軍経路があった村で休憩中であった。

 進軍の疲れもあったし、何より時間は真っ暗で、前方が見えにくくなったこともある。最初は誰もいなかった村の中で、推定五千の兵士達が、野営を行っていた。

 村の家屋や倉庫だけでは、兵士達全員が泊まるのは無理であり、しっかり天幕を張ってそこで眠っている。すでに食事を終えたようで、焚き火の後が各所に残っていた。兵士達の大部分が寝静まり、残りは交代で見張り番や、武器の手入れを行っていた。


 さてそんな大勢の兵士達が溜まっている場所で、場違いな服装を着た少年が、まるで工場見学のように、そこら辺を歩き回っていた。その少年は、言わずもがな大翔であった。


 目隠している勝太郎には、認識できなかった大翔の姿。それは勝太郎とほとんど同じ背格好の、和装の鶏人の少年。服装も勝太郎と酷似していて、麒麟を象った紋様が描かれて着物であった。ただ色合いが違い、勝太郎が白だったのに対し、こちらは薄い青色の生地である。そして彼の腰には、刀が差されていなかった。

 そして彼は、目隠しをしておらず、どこも隠さず素顔を現している。丸いぱっちりした目は、背格好同様に、かなり幼さを感じさせる童顔だ。

 そんな彼が、随分退屈そうな様子で、この野営地を見回っている。


「あっ、大翔様! こんな夜更けに、お休みなられなくて大丈夫ですか? まだ先程の戦いの傷は・・・・・・」


 天幕の見張りをしていた数人の兵士達が、大翔の姿を見て、少し驚いて敬礼して声をかける。大翔はそれを軽く笑って、受け応えた。


「ああ、大丈夫だ。もうどこも痛くないよ。多分明日明後日には治ってるんじゃないのか?」

「ええ・・・・・・あれほど血を流しておられたのに・・・・・・何か特殊な回復魔法でも?」

「いやいやそんなんじゃないさ! 俺の身体は滅茶苦茶頑丈だからな、治りも早いのさ! そんなことよりお前らこそ頑張れよ! 折角の復讐の機会なのに、歩くのと見張りに付かれてリタイヤじゃ、恰好がつかんだろう?」

「はっ、はい大丈夫です! お気遣いありがとうございます!」


 何故か途中介入者であるはずの大翔に、まるで将軍に接するように敬礼する兵下達。どうやら彼は、諸国では相当慕われている様子である。


「しかしまさか大翔様が、我々と同行して下さるとは・・・・・・これならもしディークの奴らが、どんな抵抗をしても怖いものなしですな!」

「そうだな、抵抗があればよかったのにな。何とも退屈だよな・・・・・・途中通る集落で、一暴れして屑国民共を殺しまくると思ったのに、どこもかしこももぬけの殻だぜ。折角ここまで一緒に付いてきたのに・・・・・・おっと悪い! お前らに愚痴っても、しょうがないよな・・・・・・」

「いえ、それはまあ・・・・・・俺たちも拍子抜けでしたが・・・・・・」


 大翔の言葉に同調するように、兵士達も困惑して語る。ここまでの道中で、彼らは数カ所のディークの集落に接触した。

 早速略奪と虐殺を始めようと思ったら、どの集落も何れも無人。家畜・食糧・金品などの貴重品も持ち去られており、どうやら事前に皆避難していたようだ。

 斥候の報告では、この辺りの住民は、まだ魔人の脅威にさらされながらも、集落に残っているはずだった。だがまるで集団で引っ越したかのように、集落の住民は姿を消したのである。


「俺も、ディーク人の一人か二人、この手で狩ってみたかったのによ・・・・・・。奴らが俺のお袋を殺したみたいに、今度は俺があいつらを家族の前で泣き叫びながら、散々いたぶり殺してやろうと・・・・・・なのにあいつら、もう逃げてやがるとはな! くそっ、腹ただしい!」

「しかし確かに逃げるのが迅速すぎますね。ディーク兵が、事前に村人を逃がしたのかしら?」

「奴らがそんな民を大事にするとは思えんがな・・・・・・おや?」


 この事態に不思議さに大翔が考え込んでいる中、彼の耳に妙な音が聞こえてきた。しかもその音の先に目を向けると、更におかしなものが目に飛び込んできた。


「何だあの光は!? 蛍か?」

「あんなでかい蛍がいるものか! 魔物に決まってるだろう!」

「何だよこのバルバル!て音は? 竜の羽音にしては変だぞ?」

「皆を起こせ! 銃砲と弓矢・魔道士兵、空のものを撃てる者を、すぐに配置につかせろ!」


 大翔以外の者も、この不思議な来訪者に気がつき始める。寝静まった野営地が、見る見る騒がしくなってきた。

 彼らが注目しているのは、こちらから王都のある方角から、徐々にこちらに近づいてくる謎の存在。それは地面を進まず、低い位置の空中を移動する飛行物体。月と星の光の他に、その存在からは全く別の怪しい光が放たれていた。


 チカチカと点滅する蛍に似ているようで似ていない光を放ちながら、それはこちらにどんどん近づいてくる。それはまさしく、先程王都を出立した、真澄とラチルの乗るニンジャであった。

 ニンジャはどんどん野営地に接近し、月明かりでその姿の全容が、そちらからもはっきり見えるようになる。


「何だよあれ? 鳥じゃないよな? あれもこの世界の怪物なのか!?」


 空に銃口を向ける兵士達同様に、大翔もこの来訪者の出現に当惑している。意外なことに現代日本人であるはずの大翔には、あの姿を見ても、あれがヘリコプターだと認識できないらしい。

 彼は元の世界で、ヘリコプターという物を、写真ですら見たこともなかったのだろうか? ・・・・・・まあそもそも彼は弱視であったが。


「待て! まだ撃つな! よせ!」


 何人か動揺した兵士が発砲し、それを別の兵士が取り押さえる騒動が起こっている中、当のニンジャはゆっくりと下降していった。

 地上10メートルの超低空飛行に至った辺りで、ニンジャの後部座席が開かれる。そこからラチルが、操縦席から地面へと飛び降りる。


「ディーク兵? いや聖者か?」


 ロア教の高級甲冑を着たその人物を見て、何人かが敵かも知れないと思って身構える。また誰かが発砲し出す前に、ラチルを降ろしたニンジャが、十数メートル前方に移動した辺りで変身した。

 光と共に姿を変えて、今度はあのロボットの姿になり、大地に着地した。どうやらゲンイチは、操縦者を乗せたままでも変身可能らしい。


「化けた!? 何だあれは!? 魔人か!?」

「一つ目じゃないし、黒くもないぞ? 鎧を着た巨人種か? それとも新型のゴーレム?」

「刀を持った巨人が現れた! 何か不審な行動があったら、即座に撃て!」


 空を飛んでいた謎の物体が、いきなり刀を差した巨人に変身したことが、討伐軍達に更なる動揺を生む。睡眠中だった兵達のほとんどが、既に起き上がっており、大慌てで武装準備をしていた。


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