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第五十六話 巨大ロボット

「おい! あれは何だ!? 魔人か!?」

「いや一つ目じゃない! 巨人型のモンスターか、または新種のゴーレムか・・・・・・すぐ上に報告しろ!」


 城門上の監視用櫓では、再度騒ぎが起きていた。先程謎の巨大なニンジャが、王都付近に降り立ったという報告があり、至急を監視の兵を増員したばかり。

 そんな時にまた巨大鳥とは異なる、新たな闖入者が現れたのである。


『大丈夫か? しっかり掴まってろ!』

「ええまだ大丈夫、でも向こうに降りるときは気をつけてよ・・・・・・」


 この石と陶器作りの城壁の壁を、まるで蜥蜴のように、ずいずいと登る者がいた。それは城壁に指先をめり込ませて壁にしがみつき、木登りと比べて乱暴な手つきで登ってくる、両手足が付いた人型の物体。


 真澄たちが壁をよじ登っているのかというと、そうではない。いや真澄が登っているという点は正解だが、生身で登っているわけではない。

 それは巨大な動く人形であった。いや人形というより、あれはロボットであろう。


 全身が金光りする、灰色の部品で作られた無機質な身体。遠くから見ると、人間が甲冑を纏っているようにも見える。

 頭部はバイクのフルフェイスメットのような外観で、黒い尖ったガラスのような表層の、目のようなものが大きく付いている。後頭部の両端には、細いアンテナのような角が、山羊のように二本付いていた。そして腰には、これは武装なのか、日本刀型の武器が差されていた。

 そして驚くはその大きさ。立ち上がったときの推定身長は、おおよそ十二メートル。あの巨人魔人と比べると大分小ぶりだが、それでも充分巨人と呼ばれるべき大きさである。


 そしてその鋼の巨人頭部から、先程真澄らしき者の声が、電話越しに話しかけるような反響混じりの声で発せられた。恐らくは頭部内に真澄がいるのであろう。

 そして同行しているラチルとルチルは、現在その巨人の肩に掴まっていた。今までの乗り物と比べると、かなり乗り心地が悪そうだが、二人は女の身からは驚くほどの体力で、しっかりのその身体にしがみつき、この巨体にしがみついているのだ。


 何ということだろう。このファンタジーの世界に、戦車や戦闘機と言った現代兵器が突如現れたと思ったら、今度は巨大ロボットというSF兵器が出現したのである。

 そのあまりに異質な存在の出現に、当然のごとく城壁の兵士達は、目を丸くしていた。


 真澄が操縦していると思われるロボットは、最初はゆっくりと城壁を登っていた。だがある程度操縦になれたのか、一気に動きが速くなり、猿の木登りのように瞬く間に上へと上がっていく。

 巨人魔人は図体故か動作速度は鈍重であったが、こちらは並の人間以上に動きが速い。あの巨体でかつあの動作速度で、腰の刀を振るえば、どれほどの破壊力をもたらすだろうか?


「敵が侵入したぞ! 撃てぇ!」


 気を取り直した兵士達が、彼らに銃や魔道銃を向けたときは既に遅く、彼らは七十メートルある高さの城壁の天辺まで登り詰めていた。


 ダダダダダダン!


 幾つも銃弾や魔法攻撃が飛ぶが、それを躱すように、ロボットは地面を蹴った。そしてそのまま猫のように、城壁の向こう側、王都内へと猫のように飛び降りた。





 ズン!


 王都の外側に近い、城壁近い街中。そこは主に平民が暮らしている街らしく、団地のような複合住宅と、小規模の商店が幾つも建っている。

 その街のすぐ隣、城門近くにある、城壁を内周する街道に、何かが落ちてきた。


「何だ今の音? 地震にしては・・・・・・うおっ!?」


 とある民家の者が、音と小さな地響きに気づき、ぼんやりと窓に目をやる。

 するとやはりというか、そこには彼を絶句させる者がいた。何しろ自宅の脇の歩道に、巨大ロボットがいきなり立っているのである。


『ああ、どうも。お騒がせしました・・・・・・』


 巨大ロボットが、二階からの窓からこちらを見ている住民に顔を向けて、ご丁寧に挨拶をして、その場から歩いて行く。城門から伸びず、王都の中央街道まで進む気のようだ。

 早歩きで盛大な足音と金音を鳴らしながら、あっという間に住民の視界から消える巨大ロボット。住民は自分が何を見たのか信じられず、しばらくその場で放心していたのであった。






「何だあの化け物は!? まさか魔人か!?」

「大変だ! とうとう王都が攻められたぞ!」

「うわぁあああああっ! 助けてくれ!」

「何でお前が真っ先に逃げてんだよ! 兵士なら街のために戦えよ!」

「うるせえ! こんな国のために、命かけられるか!」


 人の多い中央街道に出た途端、当然のごとく騒ぎが起きていた。

 アドレーの領主街を、遥かに広大化したような、この国の中央拠点の街。その街に、前代未聞の巨大な怪物が出現したのだから当然である。

 運悪くその場に居合わせた住民達は、半狂乱になって逃げ回る。城門付近を警備していた兵士達も、戦おうとすらせずに、何処かへと去って行った。


「何か面白いお祭り騒ぎになったわね。アドレーの時を思い出すわ・・・・・・それでこれからどうするの?」

『決まってる、王族共が逃げ出す前に、一気に王城まで突っ切る!』


 未だに肩に乗っているラチル達の問いに、真澄は実に単純な作戦を口にし、そのまま勢いよくその中央街道を駆け出した。






 巨大な金属の巨人が、街道をぐんぐん進む。途中で人を踏みつぶしてしまわないよう、全速力ではなく、早歩きで進んでいく。

 幸い人は皆、彼らを恐れて、自分から街道の真ん中を避けていくので、割と進みやすかった。


 王城までの道のりは迷うこともない。巨大な白壁の巨大な城と付近の複数の塔は、ここからでも判りやすいぐらいに見える。

 この中央街道を真っ直ぐ進めば、簡単に王城まで辿り着くはずだ。実際の所、彼らは街の風景を眺める余裕などなく、彼らの視界にある王城が、接近によりどんどん大きくなっていった。


「見て、跳ね橋が上がってるわ!」

『おう、思ったより対応が早いな!』


 濠に囲まれた王城の、こちら側の街道から入れる城門。そこへと続く濠を通り抜ける、一本の橋。

 実在の西洋の城よりも、遥かに大きいその橋は、自動車どころかこのロボットが一度に二人ぐらい通れそうな幅である。


 だがその橋の入り口の両側から、城壁へと繋がっている巨大で長い鎖が、どんどん引っ張られている。それによってこの跳ね橋も、地面から離れ、背を伸ばすように立ち上がっていった。

 真澄たちがこの王都に侵入してから、まだ数分しか経っていない。王都内の兵士達も、彼らのあまりにも迅速な動きに、攻撃どころかほとんど何の対処もしていない。

 もしかしたら突然の来襲に、指揮系統が混乱しているのかも知れない。そんな中で、こちらの目的が王城だと早々に気づいたのか、迅速に跳ね橋を上げる指示が向こうで出されたようだ。


(これは・・・・・・間に合わないかしら?)


 真澄たちがその橋の位置まで到達したときには、跳ね橋は半分ぐらい上がってしまっていた。映画であるならばこういう状況の時、飛び跳ねて橋の先端に掴まるところだが、真澄はそうしなかった。


『お前達! ずぶ濡れになるだろうが、我慢しろ!』

「「えっ!?」」


 ドボン!


 何と真澄が操縦するロボットは、橋を無視して、その濠の水面に飛び込んだのである。何しろ飛び込んだ者の体格があれなだけに、水面落下の衝撃と水飛沫の量は、常人が飛び込むときの比ではない。

 噴水のように巻き上がる大量の水が、濠の岸辺と城壁を盛大に濡らした。言うまでもないが、別に入水自殺をしたわけではない。


 水に飛び込んだ後はどうするのかというと、何とそのロボットは、そのまま濠の水面を泳ぎだしたのだ。機体は見た目より軽いのか、それとも水に浮き上がる特殊な機能があるのか不明だが、巨大ロボットは濠の水面を、平泳ぎで悠々と進んでいる。

 そしてあっというまに、濠の内側の城壁に辿り着き、最初と同じように壁をよじ登って、向こう側の王城内部へと飛び降りた。戦車では濠は進みないと言っていたが、どうやらロボットならばできるよう。

 残念ながら迅速な判断で、一生懸命跳ね橋を上げた者達の努力は徒労に終わることとなった。





『こらっ! 聖王はどこだ!』

「ふっ、ふざけるな! そんなこと死んでも教えるわけ・・・・・・」

『死んでも良いなら、このまま握りつぶすが?』

「ひぃいいいいいっ! 止めてくれ! 多分あそこの東王宮に・・・・・・」


 城内の庭に、巨大ロボットが入り込んだことで、言うまでもなく城内は大混乱。真澄が乗るロボットは、逃げ惑う人々の中から、良いところの貴族っぽい男を掴み上げて尋問中である。

 この城内には、数階~~十数階ぐらいの大型の建築物が、複数に渡って建ち並んでいる。男がその中の一カ所を指差すと、さっさとその男を解放して、急ぎ足でそちらへと駆けていった。

 放り投げるように地面に降ろされた男が、勢いよく地面に激突し、骨が折れるような音が聞こえた気がしたが、別段誰も気にしない。


「うわぁああああっ! 何かこっちに来たぞ!」

「待って下さい母上! 置いていかないで!」

「ええい、邪魔ザマスこの馬鹿息子! お前はさっさと私の盾になっておればいいのザマス!」


 城内の芝生と花畑を踏みつぶし、邪魔な建物を軽々と飛び越えて、人々の喧騒を無視して真澄たちはどんどん進む。

 そうこうしている内に、ようやくというか、遅すぎるタイミングで、敵の攻撃が始まった。


『お前らちょっと降りてろ。これじゃあ戦いにくい』

「ええ、判ったわ」


 ラチル姉妹が、ずぶ濡れの姿のまま、ロボットの肩から飛び降りる。そして近くの像の脇に、隠れるように移動した。

 真澄の眼前には、こちらに向けて銃や魔道杖を向ける、百人以上の兵士達が待ち構えていた。


「貴様ら何者だ! 直ちに投降しなければ、即裁断するぞ!」


 武器を向けて、以外と勇敢な口調で問い返る指揮官。他の部下達は随分と怯えているようであった。

 そんな彼らに向けて、真澄は自ら姿を現した。ロボットの頭部が、鰐の口が開いたかのようにパックリと開き、そこで操縦席に乗っている真澄の姿が現れる。

 怪物と思われた巨人の中から人が出てきたことに、兵達は更に驚き困惑しているようだ。真澄は二本の操縦桿を握り、操縦座席に座り込んだ状態のまま、彼らに声をかける。


「私はアマテラスの鉄士の、酒井 真澄だ。聖王に直訴しにここに来たんだが、そこを退いてくれないか?」


 正直に自己紹介をし、そしてさっさと消えろと言わんばかりに、兵達に退避を要求する。当然彼らも、それを素直に聞くはずもない。


「撃てぇ!」


 ドドドドドドドドン!


 真面目に話する価値なしと判断したのか、即座に攻撃命令が出された。数十の鉄砲と魔法弾が、一斉に真澄の乗る操縦席に向かって飛ぶ。


「おっと!」


 真澄は引き金が引かれる前に、素早い対処で機体を動かした。横に身体を反らしたおかげで、操縦席に弾が当たることなく。その代わりに別部位に弾が当たったが、特に効果はない様子。しかもその動作の間に、操縦席の蓋が瞬時にしまう。

 その後も攻撃は飛び続ける。兵士達は皆相応の腕前のようで、この距離からでの発砲でも、ほぼ全弾操縦席にある頭部に命中していた。

 だが装甲で覆われた頭部には傷一つ付かない。小石が当たったかのように、カンカンという小さな金音と、砕けた金属片や魔法の火花が、小さく飛び散るだけだ。


「近接攻撃隊行けぇ!」


 遠距離攻撃では効果がないと判ったのか、今度は剣や槍を持った兵士達が、一斉にロボットに向かって突撃してきた。

 その数はおおよそ五十。一様にロボットの足下に、蟻の群れのように集まってくる。それを操縦者の真澄は、微塵も避けようとせずに、黙って突っ立っていた。


 ガキン! ガキン! ガキン!


 ロボットの脚部を、多勢の兵士達が刃で斬り付ける。だがむなしい金音が聞こえるだけで、やはりロボットの装甲には傷一つない。中には逆に、得物の刃が欠けてしまった者もいた。

 気がつくと、こちらに集まってきた兵士達は、最初の倍以上に増えている。どうやら騒ぎを聞きつけて、王城各地の兵達が集まっている様子。

 最初は前から待ち構える部隊だけだったが、今は左右後ろにと、取り囲むように兵士達が集まってきている。


(うわっ! やっぱりこっちにも来た!)


 やはりというか当然というか、その兵達の何人かが、槍を構えてラチルとルチルのいる方へと、明らかな敵意で突撃してくる。ラチルは即座に、腰の剣を抜きはなって、応戦を始めた。


蛇足話:今回ゲンイチが変身したロボットは、以前投稿した「転生戦車と転移日本」に登場した、30式機人・特戦型のコピー体です。

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