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第十三話 盲目治療

 さて事を終えて、すっかり静かになった王国兵達から離れて、勝太郎は牢獄ある一角に向かう。それは先程、あの王国兵が、目を潰したと言っていた囚人がいると思われる方向である。


 彼は手錠鎖の音を鳴らしながら歩き、そしてその牢の前に立つ。その檻には、確かに一人分の人間の、弱々しい呼吸音が聞こえる。

 彼は俯せに倒れ込んでいるようで、こちらに対して何の反応も返さない。恐らくは気絶しているのであろう。


「なあ・・・・・・目を潰された囚人ってのは、こいつか?」

「えっ? ああ、そうだ。そいつ以外にも、耳を落とされたり、鼻を削ぎ落とされた奴が、他に何人もいる・・・・・・」


 周りにいる囚人達に確認を取る勝太郎。どうやらここで間違いないらしいと知ると、彼はその牢の鉄格子の鍵穴付きの扉部分を音で探る。


「無理だ。ここの鉄格子はただの鉄じゃない。全部特殊な製法で強化されている。開けるには鍵がいる。多分向こうの部屋のどこかにあるが・・・・・・あなたには・・・・・・」


 バキィイイイン!


 目が見えないなら、鍵を見つけるのも無理だろうと言いかけたときに、凄まじい金属が強引に砕かれる音が聞こえた。

 何をしたのかというと、彼はその鍵穴があると思われる部分に、勢いよく正拳突きを与えたのだ。

 その檻の扉の一カ所が、障子紙のように簡単に破られる。そしてその鉄格子の扉が、実に呆気なく開いてしまった。


「嘘でしょ?」

「すっ、凄すぎる・・・・・・これがサムライの力か?」


 囚人達がやや誤解が混じる形で驚いている中、勝太郎はその牢の中に入り、そこで倒れている囚人達に寄り添った。


(この状態じゃ、本当に怪我人なのか判らないな。しかし呼吸音が今にも止まりそうな程弱いし・・・・・・効くかどうか判らないがやってみるか?)


 目隠ししている勝太郎には、彼の怪我の程度がどの程度なのか判らない。

 もし足が折れ曲がったりなど、四肢の形が変形するような怪我ならば、反響で判る。だが火傷などは、肌の状態を見なければ判らないので、彼にその怪我の程度が判らなかった。

 だが先程の王国兵と、今の囚人達の言葉は嘘でないと考え、勝太郎は彼の目元の部分に、右掌をかざした。


(行くぜ・・・・・・気功治癒!)


 以前王国兵と村人の骨折を治した、勝太郎の治癒術。それをその人物の目にあてる。


「光った!? 何をしている!?」

「もしかして魔法を使ってるの!?」


 位置的に死角になって、その牢の中が見えないらしい囚人達。だがその言葉を聞く限りだと、恐らく勝太郎の手元では、あの治癒の光が輝いているのであろう。

 そしてそれから十数秒ほどして・・・・・・


「うっ、ああ・・・・・・あんたは?」

「おお、目覚めたか。見えるか?」


 先程までかなり弱々しくなった呼吸音が、ある程度勢いを取り戻す。そして目覚めたようで、声を上げていた。

 勝太郎の視覚では判らないが、恐らくは傷が回復したのだろう。その男は、倒れた自分の顔の上に、身を乗り出している、勝太郎の顔のある方向に、顔を向けていた。

 そして“見えるか”の発言を聞いて、彼は驚愕した。


「みっ、見える! 見えるぞ!? 何でだ!? 俺はあの時目を・・・・・・ていうかあんた誰だ? 何で目隠しなんてしてんだ?」

「ああ~~それはいい。とりあえず傷は治ったみたいだな? でも多分、水分と栄養が足りてないだろうから・・・・・・後で何か食っとけよ」


 驚いて起き上がろうとする囚人。だが身体に力が入っていないのか、上手く起き上がれない様子である。


「嘘だろ!? まさか目を治したってのか!? サムライってのは、そんなこともできるのか!?」

「お願い、他の皆も助けて! この牢には他にも沢山、傷を負った人がいるの!」

「はいはい、判ってるよ・・・・・・」


 この牢獄には、他にも呼吸音が弱く、先程から全く動いていない人の気配が、まだ大勢いた。勝太郎は彼らの治療もしようと、他の牢獄に足を進めた。


(カーミラの奴、罪を償えって言って、俺をこの国に飛ばしたが・・・・・・それならこの国で荒事に首を突っ込むより、この力で、世界中の視覚障害者を治して回った方が、いいんじゃないのか? まあやれって言われたからには、続けるしかないか。 ・・・・・・そういえばここでこんな騒ぎをしたのに、どうして次の兵士が降りてこないんだ? もう上の砦には、このことは伝わってるはずだが?)


 その途中で、上から増援の兵が来ないことに違和感を覚える勝太郎。だが治療をするのに都合がいいので、彼は特に気に留めずに作業を始めた。







「おいっ、何をしている!? 何故捕らえにいかない!?」

『それが・・・・・・みんな怯えて、中々地下牢に突撃する勇気が出ないようで・・・・・・』


 砦の司令室にて。そこにいる副騎士団長が、電話と思しき、黒い通話機を相手に、激怒の声を上げている。

 その回答に、彼は更に激怒している。ちなみにその怒鳴られている副騎士団長は、さっき領主に通信映像で会話をしていたあの若い騎士である。


「勇気が出ない!? 何を言っている! 相手はたった一人であろう!? こんなことで怖じ気づいて、神聖なるディークの兵士として・・・・・・」

『そうは言ってもですね・・・・・・。騎士団長含めて、砦の殆どの兵士が、アラン村に向かっていきましたし。しかも相手は、能力者の兵士五十人に一人で勝つほどの者でしたし・・・・・・仕方ないんじゃないですかね?』


 何ともやる気のない電話の向こうの王国兵の言葉。この砦にはおおよそ千人近いもの騎士・王国兵が、常時駐留している。

 だが今この砦の人員の八割方は、あの村に出動しているのだ。勿論目的は、勝太郎討伐のため。

 だが当の勝太郎は、今現在この砦にいる。しかも捕らえたと思ったら、あっさりと自力解放して、地下牢で暴れ回っているのだ。こちら側からすれば、守りが手薄の所に奇襲を受けた形である。


『何か凄い勢いで噂が広がってますよ。アマテラスの軍が、とうとうディークに侵攻してきたんじゃないかって。あいつはその先発じゃないかって。それで皆震え上がってますし・・・・・・』

「くう・・・・・・流石にそれはないと思うが・・・・・・。確かに皆アマテラス人に対して、怯えていたからな・・・・・・。領主には・・・・・・いや、あの馬鹿に報告しても、あまり意味はないか。ならばすぐに、アラン村に出動した騎士団長に報告して、引き返してもらって・・・・・・」

『あっ、もう間に合いません! もう敵が出てきました!』


 その直後に電話の向こうから、凄まじい轟音と、兵達の悲鳴の声が騒がしく聞こえてきた。







(駄目だな・・・・・・どいつもこいつも、弱すぎて全然面白くねえ)


 勝太郎は砦内の広間で、絶賛無双中であった。周りには幾人もの王国兵達が、これまで通りに苦悶の声を上げて転がっている。

 広間の中心にいる勝太郎の周りにいる兵士達は、彼を囲ったまま、中々仕掛けてこない。勝太郎が地下牢から上がってきたときは、かなりの数の兵士が、彼に剣や銃を向けてきた。

 だが彼らの攻撃は、全く勝太郎には通じない。剣で切られても、銃で撃たれても、彼の身体には傷一つつかない。ただ一方的に、彼らは勝太郎に蹴り倒されるだけ。

 彼の強さを直で見た兵士達は、既に完全に臆していた。


(来ないなら、こっちから来るか!)


 勝太郎は自分を囲う兵士達の陣の一カ所に突撃する。そして次々と、ドミノ倒しのように、兵士達を蹴り倒す。


「ちくしょう、これでも喰らえ!」


 一人の王国兵が、剣とは異なる形状の物を持って、勝太郎にその先端を向ける。


(鉄砲か? それに)


 反響から感じられるその物体の形状と、そこから感じられるやや不快な匂い。硝煙の匂いというのは嗅いだことはないが、もしかしたらこの匂いがそれなのかも知れない。

 勝太郎は銃口と思しき物を向けられた瞬間に、自身の身体をその位置から、素早く移動させる。


 ドン! カン!


 銃声と思われる音と共に、勝太郎のいるすぐ横に、何か小さな物体が、とてつもない速度で移動したのを感じた。

 それと同時に、地下牢の壁の一角から、パチンコのような衝突音。恐らく銃弾が、壁に命中したのだろう。


(成る程これが銃か・・・・・・まあ、避ける意味はなかったが)


 気功を纏った剣撃を受けても、傷一つつかない、勝太郎の頑丈な身体。恐らく当たっても平気だろうが、とりあえず銃弾を避ける方法は覚えておいて損はないと、勝太郎は考えた。

 ただしその経験を積むための、二発目の銃撃は訪れない。


「冗談じゃねえ! こんな奴、相手にしてられるか!」


 そう言って一人の兵士が、勝太郎がいるのとは逆方向に走る。するとそれに続いて、他の仲間達も、次から次へと走り出した。

 無数の足音が、周囲から騒音のように、勝太郎の耳に届いてくる。だがその騒音は徐々に小さくなり、勝太郎の周りには、倒れた兵士以外は、誰もいなくなっていた。


(さて・・・・・・これからどうしようか? そもそも俺がここに来た目的は・・・・・・)


 彼は別に、この砦の兵士達を倒すために、ここに向かったわけではない。逃げる敵を追うことはなく、彼が探し物を見つけようと歩き出したときだった。


「勝太郎さん! これはどういうことですか!?」


 不意にある方向から聞こえてきた声。それはつい先程、砦の門前で別れたウィリアムであった。


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