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第十話 幼き聖者

 数分ほどして二人は、ある場所で足を止めた。足音からの反響で、そこが林の中だと判る。そして近くにある、大型の乗り物と動物の存在も。


「獣の臭いがするが、鹿じゃないな。もしかしてここにあるのは馬車か?」

「えっ? ええっ、凄いんですね・・・・・・」


 目が見えないのにそこまで気づいたのに、その人物は少し驚いていた。そしてその馬車に乗っているらしい、一人分の呼吸音の発生源も、勝太郎の存在に驚いている様子である。


「ウィリアム様!? そいつは一体!?」

「先程魔人に襲われたところを助けました。事情は分かりませんが、どうやらこの辺りを迷っていたようで。目が見えない様子ですし、砦から避難所の方に送ってもらおうかと・・・・・・」

「はっ、はあ・・・・・・ではどうぞ」


 馬車の御者と思われる人物は戸惑いながらも、二人を馬車に乗せる。勝太郎が、日本の車と比べると、固くて乗り心地が悪そうな座席に座ると、早速馬車は出発した。

 ちなみにこの馬車の乗客は、勝太郎とその謎の人物=ウィリアムの二名だけである。


「申し訳ありません・・・・・・急にここまで連れ出してしまって」

「いや、俺も助かったよ。丁度迷子だったし」

「そうですか・・・・・・私の名はウィリアム・ギャレットと言います。あなたは?」

「俺は山田 勝太郎。最初が姓で、後が名前だよ」


 前のラチル同様に、互いに自己紹介する二人。馬車の揺れが酷い車内で、ウィリアムはどうやらこちらを少し観察しているようだ。


「しかし勝太郎さんは、目が見えないようですが、何故あのような所に? まさか誰かに無理矢理放り出されたとか?」

「まあ、そんな所だな」

「やはりそうでしたか。目が見えないのに、何て酷い・・・・・・」


 この返答に、ウィリアムは本気で勝太郎を哀れんだ様子。あの場所にいた不審者である彼を疑う様子はなく、本当に巻き込まれた、只の一市民だと思っているようだ。


「しかし・・・・・・変わった衣装ですね。もしかしてアマテラスの方なんですか?」

「いや、違う。俺はアマテラスとは違う大陸の国の者だ。さっき会った奴からもそう言われたが、俺そんな風に見えるのか?」

「ええ、服装が以前書物で見た、異国の装束に似ていたので・・・・・・」

「そうなのか・・・・・・俺にはお前らの服装なんて判らないからな、その辺の違いは判らないが」

「ああ、すいません!」


 何故か謝るウィリアム。今の服装が見えるかどうかの話しで、失礼なことを言ったと思ったらしい。


「別にいいさ。俺も色々事情があってな、いきなりこんな所に放り込まれて、色々困ってたし」

「その事情というのは、お伺いしてもいいですか? 転移魔法で来たと言ってましたが、それって、中々できることではないですよね?」

「ちょっと言葉で話しても、中々信じられない話しだ・・・・・・。まあ今言える事は、俺は今“罪を償う”ために、今日から旅を始めた所ってぐらいか? 俺は昔、今の俺みたいに目の見えない奴に、随分ふざけたことをしてな・・・・・・。後の方は、お互いをもっと信用できたら、教えてやるよ」


 助けてもらった立場で、少し傲慢な物言いの勝太郎。


「そうですか・・・・・・よく判りませんが、大変なんですね」


 だがウィリアムは、特に気を悪くした様子もなく、あっさり納得していたが。


「ウィリアム様・・・・・・こいつはここですぐに降ろしましょう! こんな怪しげな身なりの者が、このような所を彷徨いているなんて、どう考えたっておかしいです! しかも転移なんて・・・・・・。それによく見たら、そいつは獣人ではないですか! もしかしたらそいつの言っていることが嘘で、本当にアマテラスから送り込まれた者だとしたら・・・・・・」


 手綱を引く御者が、この場で一番真っ当な意見を口にする。だがそれに、逆にウィリアムが不思議そうに首を傾げていた。


「ええ、獣人なのは見れば判りますけど・・・・・・それとアマテラスの者だったら? そうだとすると、何か問題があるのですか?」

「いえ、そういうわけでは・・・・・・」


 その問い返しの一言で、何故か押し黙る御者。彼はその後、何故か急に静かになり、この場への会話から、勝手に外れていった。


「まあ、正論だな。自分で言うのもあれだが、こんな怪しい奴を、そんな簡単に自分の家に上げるもんじゃないぞ。さっき会った奴も、何故かそんな怪しい奴に、色々頼み事をしてきたが。それであなた・・・・・・ウィリアムさんって言ったっけ? 音を聞いた限りだと、子供みたいだけど・・・・・・もしかしてどこかの金持ちとか、貴族の子だったり? いや・・・・・・こっちが事情を明かさないのに、そっちに一方的に聞くのは駄目か・・・・・・」

「いえいえ構いませんよ! 別に隠すようなことでもないですし。ただそれはちょっと微妙です・・・・・・一応私の両親は貴族らしいですけど」

「らしい? 親に会ったことがないのか?」

「ええ・・・・・・私は神聖魔法を会得するために、幼い頃から、特別な場所で、ずっと訓練をしていたので・・・・・・でもこの戦いのお役目が終わったら、私も家族が会えるそうですけど」


 どうも身の上話が変わっているウィリアム。この口調からして、彼は実の家族に、あまり興味がないように思える。

 幼い頃から、親というのを全く知らずに育ったら、こうなるものなのだろうか?


「神聖魔法ってのは・・・・・・さっきの魔人とか言うのを、泥に変えた奴か? 俺には見えなかったが、殴った時の歯ごたえも変だったし。腹をぶち抜いても死なないし・・・・・・あれは一体何なんだ?」

「ええ・・・・・・それが魔人なんです。あの魔物が、いつどこから現れたのか判りません。ただいつ頃からか、ああして突然現れて、人を襲うようになったんです。その凶暴さといい、人間の負の感情を取り込んで強化・増殖するという特性といい、奴らは完全に私達人間の敵です・・・・・・」

「それの討伐を、お前が一人でやってるのか?」


 その魔人というのが、危険だというのは判るが、それで何故ウィリアムのような子供が、あんな風に単独で戦っているのか?

 そのことは魔人の正体同様に、彼にとっては謎な話しである。


「それは・・・・・・私達にその力があるからです。私達のような特別な訓練を受けた“聖者”と呼ばれる者達が、魔人達を滅する力があるんです。奴らはまさに不死身に近い存在で、人間の力で倒すのは困難ですが、私達聖者の力を持ってすれば、容易く葬ることができるんです」

「へえ・・・・・・」


 さっき自分が戦った魔人は、確かに殴っても蹴っても、全く死なないやりにくい相手だった。だがこのウィリアムが出てきたときに、奴は一瞬で泥となって崩れ落ちた。

 具体的にどうしたのかは、目が見えない勝太郎には判らない。だが何となくそのイメージはついた。


(光属性で、ゴースト系モンスターを浄化か・・・・・・まあゲームではありがちな設定だな)


 それは彼の想像通りのことである。ウィリアムが魔道杖から放つ光の魔法が、闇の存在である魔人には、非常に効果があり、簡単にその不死身の身体を機能停止させられるのである。


「色々話してくれてありがとうな。それで俺はどうなる? 俺はしばらく、この国の中を、旅して回る予定だったが。別にこの場で降ろしてくれてもいいんだぜ?」

「それは行けません! 目が見えない方を、途中で降ろすなんて・・・・・・。一度砦に戻った後で、そこから兵士の方に、人がいる場所に送ってもらいます。今軍の方では、先程の村などから逃げてきた人々を大勢保護しているので、そちらに来てもらえれば安全かと・・・・・・」

「ふうん・・・・・・“保護”ね」

「あの・・・・・・ここに飛ばされた事情を話せないならいいのですが・・・・・・勝太郎さんのいた異国のこと、話してくれないでしょうか? ちょっと興味が湧きまして・・・・・・」


 ここに来て、唐突な頼み事。さっき会ったばかりの者に、随分友好的に会話すると思ったら、いきなり彼の故郷のことを聞きたがる。これに勝太郎は、首を傾げるが・・・・・・


「うん? まあいいけど・・・・・・何か急な話だな? 俺の衣装が、そこまで興味をそそるものだったか?」

「ははっ・・・・・・まあそれもありますけど。私は少し前まで、訓練所の中で篭もって生活してて、外の世界のこととか、全然知らなかったんですよ。今お役目をもらって、こうして外に出れてますが・・・・・・こんな風に教会と軍の方以外と、お話しする機会が全くなくて・・・・・・。まあ、確かに急な話ですよね! それも聞かれたくない話しでしたら別に・・・・・・」

「(箱入り息子にしては過度だな・・・・・・)いや別にいいぞ。まず俺の生まれた国は、日本て言ってな・・・・・・」


 それから数分ほどして、二人を乗せた馬車は、今ウィリアムが世話になっているという、ディーク神聖王国の砦に到着した。



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