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巨神騎士伝ルトラ ~光の巨神よ、この世界を照らせ~  作者: 長月トッケー
第7話 魔性の香の下に -爆殺魔獣ファルドゥ登場-
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第7話 魔性の香の下に (Part2)


「リーブキーで? あの温泉街でか?」

「はい、先ほどザタル国から連絡がありました、リーブキー内で殺人が発生、被害者は境界警備隊の一人、外傷の程度や魔力の残滓から魔物によるものとの事です」


 イディの疑問にホシノが答えた。


「リーブキーに張られた結界はエンヤ大陸内でも指折りの強固さを誇る、更に塀もかなり頑強……ただの魔物なのか?」

「ただの魔物と思えないから、こちらに要請が来たのだろう、イディ隊員」

 そう言って、ムラーツはパイプの煙を吹いた。

「さらにその魔力の残滓なのだが、向こうの分析では全く見たことないものとの事だ、まぁ、後は察せるよな?」


 ムラーツの言葉に、隊員たちの表情は険しくなった。


「……「黒」の魔力か、くそ、そういう面倒ごとはみんなこっち任せかよ」

「そう言うな、ソカワ隊員、他では解決できないことを解決するのが我々の役目の1つなのだからな」


 キリヤに諌められ、ソカワはため息を吐いて閉口した。


「今、被害者の写真をディスプレイに映します」


 ホシノが機械を操作すると、部屋の中央に大きな画像が浮かび上がった。

 首がねじ曲がり、金属製の鎖帷子ごと巨大な爪で切り裂かれた、境界警備隊の制服を着た男性が写っていた。身体つきや顔つきからして、しっかり鍛錬と経験を積んだものであることが伺えた。


「かなりの怪力の持ち主っぽいね、竜か何かかな?」

「もし犯人が竜であるならば、竜が襲ってきたと、緊急連絡が来る、今回はそれがない、何者かわかってないんだ」

「まだ見つかってないんだ……これだけの傷だと、それぐらい巨大じゃないかなって思うけど」


 キリヤの回答に、フィジーが納得のいかない表情を浮かべる。


「俺たちオーガぐらいの怪力で、巨大な爪を持つ、それにさほど大きくない……相変わらず、けったいな奴が来るな」

「それに、まだ正体がつかめてないという事は、まだ見つかっていないという事です、油断なりませんよ」


 ドクマとアーマッジが小さな声で話していると、通信筒からけたたましい受信音がなった。すぐにホシノがそれを取った。


「はい、こちら【流星の使徒】……えっ!? はい……はい、わかりました!!」


 通信筒を切り、ホシノは振り向いた。額には、汗。


「ザタル国より緊急の報告! リーブキーでまた被害者が出たとのことです!!」


 作戦室内の緊張が一気に高まった。


「どうやら、事態は一刻の猶予も許されないようだ、キリヤ副隊長以下、ホシノ君以外の隊員は大至急、リーブキーに向かい、警備にあたってくれ、諜報部隊、救護部隊に協力は要請しておく」


 ムラーツの視線が、隊員たちに鋭く刺さる。


「それでは、【流星の使徒】機動部隊、出動!!」



 ザタル国リーブキー。

 山岳の中腹に建設された温泉街で、エンヤ大陸内でも有数の観光地である。観光地であるがゆえに、多くの人が訪れることから、安全確保のために、周囲には高く頑強な塀が建設された上に、強力な結界が施されている。

 更に侵入者対策のために、実力のある者を集めた私設の境界警備隊が結成されており、街でありながら、国と同水準の防衛力を保持している。


 それが、今、破られたのだ。


 リーブキー内は観光客は全く見られず、先の境界警備隊や【流星の使徒】を筆頭とした、警備についているものばかりであった。

 その中で、ハイアットは東の門付近の警備を行っていた。張り詰めた表情で、周りを見渡していた。


「おう、お兄さんお疲れ、随分と気合が入っているじゃないか」


 境界警備隊の印が付いた鎧を着た、斧を担いだ精悍な青年がハイアットに話しかけた。


「あ……お疲れ様です」

「そんな、頭を下げないでくれよ、こっちは頼んだ側なんだからさ」


 青年が軽くハイアットの肩を叩いた。


「本当、頼むよ……俺は仲間の仇を、何をしてでもとりたいんだ」

「……はい」


 青年の表情は真剣そのものだった。

 しばらく黙って、互いの視線を交わした後、青年は軽く手をハイアットに手を振って、警備へと戻っていった。それを見て、ハイアットは息を整え、また、張り詰めた様子で周りを見渡した。

 敵がいる、さほど遠くない場所に。

 すでに、ハイアットは気づいていた。「邪」の尖兵が、こちらを伺っていることに。その姿は見えずとも、「邪」の力がハイアットには感じられた。


「……あっと」


 ハイアットのコミューナから、受信音が鳴った。起動すると、キリヤの上半身がコミューナから浮かび上がった。


『こちらキリヤ、総員、現在の状況を報告せよ、まずはドクマ隊員、どうだ』

『こちらドクマ、南門周辺は特に異常なし』


 キリヤと入れ替わるように、ドクマの上半身が映し出された。


『はぁ、しっかし、目の前に温泉があるってのに、アヌエル隊員もいるのに、入れないなんて……ちっくしょう……』

『コミューナ使って愚痴るな馬鹿者、これが終わるまで我慢しろ、次、アーマッジ隊員、そっちは?』

『こちらアーマッジ、繁華街の方も特に何も無いようです』


 続いて、アーマッジの姿が現れた。


『それと、諜報部隊からの報告ですが、今のところ、街中で魔物の姿を見た者はいないそうですが、夜中、風がない時に木が鳴る音を聞いた、窓の外から赤い光が見えたという人はいるようです、やはり、敵は周囲に潜伏しているとみて間違いないでしょう』

『了解、次に、ハイアット隊員はどうだ?』


 ハイアットの番が来た。


「はい、こちらハイアット、東口付近ですが今のところ異常は……」


 その時、東の門から爆発が上がった。門は大きな音を立てて、崩れ去った。


『どうした、ハイアット!? 何が起こった!?』

「緊急事態です、東門が爆破されまし、た……!?」


 ハイアットが報告している間に、門のところから、影が飛び出した。そして、爆破音を聞いて集まってきた者達の中央に立ち、金切り声を上げた。

 一見すると、通常の人間より一回り大きい猿のようだった。

 しかし、全身は黒の近い紫で、体毛というよりも、全身から長い針が出ているようだった。そして、細長い真っ赤な目が3つ並び、口はまるでムカデのようだった。そして、やや長い腕の先には、巨大な爪が生えていり。

 ハイアットが改めて、コミューナに目を向けた。


「事件の犯人と思われる怪物が出現、直ちに迎撃します!!」

『了解、東門に近い隊員も援護に回れ!!』


 周りの者が魔装銃を怪物に向けて数発放っていた。

 しかし、いずれもたやすく怪物の巨大な爪で弾かれた。そして、怪物はある剣士に飛びかかると、その巨大な爪を振るった。

 剣士は間一髪、盾でそれを防いだ……か、に見えた。衝撃に耐えきれず、盾は砕かれ、剣士は大きくはね飛ばされた。

 その隙に、別の槍騎兵が、雄叫びを上げながら、槍を怪物の背中に向けて突き出した。怪物は飛び上がってそれをかわすと、そのまま振り向くと同時に、その槍騎兵に向かって爪を振り上げる。槍騎兵はそれを防ごうと槍を構えた。

 しかし、爪の一振りで、槍はバラバラにされ、兵は薙ぎ払われた。彼の身体は鎧ごとえぐり取られた。


「化け物め、仲間の仇っ!!」


 今度は斧を持った兵士……先ほどハイアットに話しかけた青年が、高々と斧を振り上げて、怪物に向かった。

 金属質の音が響き、斧の刃が怪物の右肩口に刺さった。

 確かに、刺さった。しかし、傷が開いた様子は見られない。

 怪物の針のような体毛に受け止められてしまっていた。


「く、くそっ!! このっ!!」


 斧は怪物の強靭な体毛に挟まった状態となり、抜くことも押し込むこともできない。手間取る青年に向かって、怪物は左腕を振り上げた。


「させない!!」


 ハイアットは咄嗟に魔装銃を構え、魔法弾を撃った。白く光る魔法弾は怪物の左腕に当たると、バチンという音ともに火花を散らし、怪物は呻き声を上げながら痙攣した。魔装銃に装填された魔石の力ではなく、自身の持つルトラの魔力を銃に込めて、怪物に放ったのだ。

 その瞬間、斧が抜け、青年は後ろに転倒した。


「早くそいつから離れて!!」


 ハイアットの声を聞いて、青年は怪物がまだ怯んでいる隙に素早く距離を取った。

 そして再び、苦しむ怪物に向かって周囲から一斉に魔法弾が撃たれた、ハイアットのものも含めて。何度も、何度も撃たれた。怪物は金切り声を上げながら、爪を振り回すが、次第に、その動きも徐々に弱々しくなっていった。それでも、警備の者達は手を緩めなかった。ついに、怪物の動かなくなり、その場に突っ立ったままになった。


「仕留めた……か……?」


 ある兵士が呟いた。それを機にしたように、皆の攻撃の手が緩む。


「ダメだ!! 奴はまだ生きてる!!」


 ハイアットが大声を上げた。

 手遅れだった。攻撃が緩んだ隙に、怪物の口から黒い丸鋸のような弾が吐き出され、警備隊の1人に刺さった。

 そして、大爆発が起こった。爆炎と、爆音、煙と衝撃波があたりを襲った。少し離れたところにいたハイアットも吹き飛ばされた。

 煙が晴れると、その跡には、爆破に巻き込まれた者達の肢体と、地面にうずくまる者達が残った。怪物の姿は、ない。


「しまった、奴は……!?」


 気配を察知し、ハイアットは上を見上げた。

 上空より怪物が飛びかかってきていた。爪の切っ先が当たる寸前に、横に転がり回避する。しかし、間髪入れず、怪物はハイアットに向かって丸鋸型の爆弾を口から放った。ハイアットが飛びのくと、弾は地面に刺さり、また爆発が起こった。周囲にいた者は衝撃でまた飛ばされ、地面には大穴が。

 ハイアットは体勢を立て直し、立ち上がり、怪物と対峙する。怪物は、まるで笑うかのような目つきを浮かべた。ハイアットを、ルトラを挑発するかのように。

 ハイアットは奥歯を食いしばり、魔装銃を怪物に向けた。怪物もまた、そのムカデのような口を開けた。

 その次の瞬間、怪物の後頭部から、大きな火花が上がり、怪物は慌てふためいたように、爪を振り回した。その隙を狙い、ハイアットも引金を引いた。魔法弾が怪物の口元に当たると、瞬く間にその部分が凍結し、怪物はすぐにその場から飛びのいた。


「遅れてすまない、ハイアット隊員!」


 空から、ワイバーンの羽音とソカワの声が聞こえてきた。ハイアットのすぐ上を旋回していた。


「ソカワ隊員、僕はなんとか……」

「しっかし、えらいことになってやがるな、全てあいつのやったことか」


 ハイアットはこくりと頷いた。ソカワとハイアットの視線の先で、怪物は憎悪をみなぎらせながら、咆哮をあげていた。


「……早めに決着をつけようぜ!」

「はい!」


 ソカワの言葉に答えると、ハイアットは改めて、魔装銃を怪物に向けて構えた。周囲の兵士たちも各々の武器を怪物に向かって構える。

 その時だった。

 遠くで何かが爆発し、建築物が崩れる音が聞こえてきた。皆がその音に驚くと、その隙に、怪物はまた丸鋸型の弾を吐き、自身を囲う兵士達を爆破し、その方向に向かって走り出した。そして、兵士たちを薙ぎ払って包囲網を容易く突破した。


「畜生!! 街中に逃げやがった!!」


 ソカワが怪物を追いかけようと、ワイバーンの手綱を強く握った。

 その瞬間、コミューナが緊急起動し、ドクマの姿が現れた。


『こちらドクマ!! 南門も爆破された!! ……くそ、怪物も出やがった!!』

「はあっ!? どういうことだよ!? さっきまでここで戦ってたんだぞ!!」


 ソカワは愕然とした様子を浮かべた。


「……奴は2体います!!」


 ハイアットがソカワに向かって叫んだ。それを聞いて、ソカワは強く舌打ちした。


「まずはさっきの奴を追いかける、行くぞ!!」

「了解!!」


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