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巨神騎士伝ルトラ ~光の巨神よ、この世界を照らせ~  作者: 長月トッケー
第6話 神無き知恵 -怪魔ゴーレムエインティア登場-
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第6話 神無き知恵 (Part7)

 暗い空間の中で、長い螺旋階段を、ハイアットが駆け足で降りていく音が響いていく。しばらくして、ハイアットは階段の最後の段から降りた。


「……やっぱり、か」


 そこは地下の岩盤をくりぬいたような洞窟だった。近くには、何者かが掘削したであろう、大きな穴。そして、その掘削した張本人がハイアットの目の前にいた。


 エインティア。手足は胴体に収納され、まるで眠っているかのように、その巨体はじっと鎮座していた。


 ハイアットはコミューナを起動させ、送信を機動部隊全員宛てに設定した。


「こちらハイアット、機動部隊全員に報告します、アルマント博士の屋敷の地下にて……!?」


 コミューナからいきなり大音量の雑音。


「なら、今ここで……私の手で!!」


 ハイアットの目は金色に、髪は橙色に染まった。

 しかし、その瞬間。


「うわっと!?」


 上方から黒い雷がハイアットに目掛けて飛来してきた。ハイアットは寸前で後ろに飛びのき、それをかわす。目と髪の色は元に戻っていた。


「見つかったか、っと!!」


 黒い雷が何度もハイアットを襲う。それを懸命にかわしながら、雷が降ってくる方を見ると、小さなエイのような形の何かが飛んでいた。色は黒く、7色に光を反射していた。


『間抜け面の若造、そこで何をしておる』


 いきなり、アルマントの声が空洞中に響いてきた。


「アルマント博士、貴方がこのゴーレムの……!!」

『その通りだ、やはり貴様らはわしを最初から疑っていたか、まぁ、わしを良く知るあの恩知らずがいる以上、お見通しだったがな』

「なぜ、貴方はこんな破壊のみの人形を、うわわ」


 ハイアットが会話している間も、小型兵器が彼に襲い続ける。それを何とかかわしながらも、ハイアットはそれを迎撃せんと魔装銃を持った。


『この世の中を破壊するためだよ、本当に愚鈍な若造だな』

「イディ隊員が、イディ隊員が貴方をどれだけ慕っていたか、貴方は知ってるんですか!! それなのに……!!」

『知らんよ、あんな恩知らずの気持ちなんぞな』


 ハイアットには、アルマントの言っていることの訳が分からなかった。

 なぜ、あれだけ世界のために尽くしたという人間がこの世界の脅威と化したのか、なぜ、イディの気持ちを踏みにじったのか、全く理解できなかった。

 だが、アルマントがこのような人物になってしまった原因の1つは、彼にはわかった。


「貴方が触れているの禁忌の力、貴方が扱えるようなものではない!!」

『禁忌の力? お前らがさっきから「黒」と呼んでいる魔力のことか? ……あれは、わしの人生の結晶を更なる高みへと導いた、もはやこの世界では追いつけぬほどにな』


 アルマントの声に、恍惚の色が感じられた。


「それは世界を混沌へと導く力だ!! このままだと、まず貴方の身が滅びてしまう!!」

『それは結構なことだ、わしが滅びるか、この下らぬ世界が滅びるかの競争だ……さあ、我が息子よ、目を覚ますのだ!!』


 その時、いきなり金管の警報音が空洞中に響き渡り始めた。すると、先ほどハイアットが降りてきた螺旋階段はするすると上に消えてしまった。


「しまった、閉じ込められたか……!!」


 なおも続く、小型兵器の攻撃をかわしながら、ハイアットは苦々しく呟いた。

 そして、警報音が鳴り終わった瞬間、エインティアの方から不気味な駆動音……鉱石の持つ魔力が反応している音が聞こえ始めた。エインティアの目に当たる部分が点灯し、地鳴りのような音を立てながら、胴体部から、腕と腰部、そして脚が展開された。エインティアの巨体が、大空洞の中で立ち上がった。


『行くがいい、我が息子よ、狙うはウルブ国のユシーム学院だ』


 アルマントの声を聞くと、エインティは地響きを立てながら歩きだし、洞窟の壁まで達すると脚をいったん収納し、巨大な数本の爪を脚部から出した。その爪を壁に向けると、脚部が回転し、掘削を始めた。

 その時の揺れでハイアットは転倒した。小型兵器は容赦なく彼を攻撃し、彼には何も手出しさせなかった。

 そして、エインティアは穴の向こうへと消えてしまった。


『それでは若造よ、貴様はそこで踊りつづるがいい、それこそ、この世界が破滅するまで』


 アルマントがそう言うと、機械の動作を切る音がした。ハイアットの周りにはまだ、数体の小型兵器が飛び回っている。

 ハイアットは目を凝らし、魔装銃を構えた。彼の目はまた金色に光り、小型兵器の軌道が見えていた。火属性の魔法弾を撃つと、まるで吸い込まれるように1体の小型兵器に当たった。

 しかし、火が軽く散っただけで、まるで効いていない。


「やっぱりダメか……っと!」


 別の小型兵器が、ハイアットに迫り、雷を放つ。それをハイアットは前方に転がってかわした。そして、その勢いそのままに起き上がると、振り返りざまに右手の指先から、円盤状の光弾を撃った。

 曲線を描き、先ほどの1体に当たった。大きな火花が上がった。目だった傷は見られなかったが、それはグラグラと揺れ、明らかに飛び方がおかしくなっていた。


「これなら!!」


 周囲の攻撃をかわしながら、その1体に駆け寄ると、ハイアットは星形の痣が光る、右掌でおもいきり叩いた。再び大きな火花があがり、ぐるぐると回転しながらその1体は地面に落下し、砕け散った。

 まだ、小型兵器は残っている。ハイアットはそれらに向けて、三日月形の光弾を連続して放った。全てが美しい軌道を描いて、目標に命中した。そして、演舞のようにハイアットは駆け回り、小型兵器を1つ1つ、光る右手で叩き落した。

 全てを破壊した後、ハイアットは肩で息をしながら膝をついた。ルトラの力を発揮するのに、ハイアットの身では負担が大きすぎた。


「いけない……このままじゃイディ隊員も、ユシーム学院も……!!」

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