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巨神騎士伝ルトラ ~光の巨神よ、この世界を照らせ~  作者: 長月トッケー
第1話 蘇る神話 -鉱石魔獣アグルド登場-
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第1話 蘇る神話 (Part3)

 ギルド【流星の使徒】


 カトク国の東端、ウルブ国との国境に接するジョアーキン侯爵の領地内にある、高い木々に囲まれた石造りの古城を本拠地とし、どの国にも属さぬ絶対中立のギルドである。

 その活動の範囲は大陸全体にわたり、内容も多岐にわたる。

 一つは民間や騎士団の手におえぬモンスター退治、一つは異常な現象の調査、一つは大災害の救援活動……これらはまだ一部に過ぎない。

 ギルドの強みとして、最先端の技術を取り入れるだけでなく、最先端の技術を開発する力、そして設備を持っていること、そして当代最高峰と言える人材がそろっていることだ。設立者でもある貴族ジョアーキン侯爵が、領地と資金を強力にバックアップしており、常に最高の環境を維持することができる。フリーギルドの中ではエンヤ大陸最強と言っても過言ではなく、多くの人の憧れの存在である。

 ギルドは機動部隊、諜報部隊、研究部隊、救護部隊に分かれており、その中でも顔役と言えるのが機動部隊であった。


 その日の真昼、いつものように、機動部隊に依頼が入った。

 いつもと違うのは、緊急事態である、ということだけ。


 1人の男が巨大な魔力砲を片手にギルド本部の廊下をずかずかと歩いていた。男は身長は2mをゆうに超え、筋骨隆々とした肉体、誰もがおびえるような強面、橙色の肌、加えて額に2本の立派な角を生やしていた。


「さあって、仕事だ仕事だ、存分に暴れまわってやる」


 サンダ・ドクマ。オーガ族の男性。年齢は30。どんな大きな重火器も軽々扱う怪力無双。


 彼の横に、メガネをかけたのっぽの男性が合流した。男性の腰回りには金属製のボールのようなものがぶら下がっている。


「やあやあドクマ、出動が決まった時点でもう暴れだしそうってか?さっすが野蛮な脳筋だねー」


 ミロイ・イディ。人間の男性。年齢は26。研究部隊兼任隊員。ワイバーン乗りであり、錬金術師としても名高い。


「うるせぇ、マッド・アルケミスト、作戦がない時はずっと部屋こもりやがって、おめぇには外に出るいい機会だろ」

「マッドは余計だ!! それに僕だって訓練時はちゃんと外に出てますよーだ」

「それ以外全くの出不精じゃねーかっつの!!」

「こちとら高尚な研究をやってるんだよー、そっちこそ作戦がない時はどうしてるんだい?」

「こっちはいつも大自然の中で鍛錬だ、それに狩猟もして食料もちゃんと調達してる、へへっ、健康的だし、なかなか高尚だろ?」

「けーっ、どうせ狩猟ていったって、弓矢とか銃とかじゃなくて、鈍器とかで鹿とかの脳みそをかち割るんだろ?」

「ちげーよバーカ、引きこもり!!」

「言ったな、この野人!!」


「はいはい、二人ともこれから出撃だってのに何喧嘩してんのよ」


 薄い服装のボブカットの女性が、言い争う二人の男性の背中を思い切りひっぱたき、そのまま二人の歩みに合わせた。女性の両手に連射性の大型魔装銃をもち、背中には大きな青白い翼が付いている。


 アイカ・フィジー。有翼人種の女性。年齢は20代。空中から最前線で攻撃する、勇猛果敢な女戦士。


「あーいって、ちょっとは加減しろよ、フィジー隊員!!」

「オーガ族がこれぐらいで泣き言なんて、情けないね」

「あぁ、これでワイバーン乗れなくなったら、君のせいだからね!!」

「それぐらい憎まれ口たたけりゃ全然大丈夫だね、イディ隊員」


「おいおい、出撃前で3人でなかよしこよしか?お気楽なこったなぁ」


 後ろから、腰に小型の魔装銃を2丁下げた男が追い付いてきた。均整の取れた、男性として理想的な体形の上に、獣の頭が乗っていた。


 シン・ソカワ。狼系獣人の男性。年齢は28。エンヤ大陸で名高い狙撃手であり、優秀なワイバーン乗り。


「「俺(僕)たちのどこが仲良しだってんだ!!!!」」

「合わせんな、マッド・アルケミスト!!」

「合わせたのはそっちだろ、この脳筋!!」

「あっはっはっは、なーにやってんだか」


 ソカワが笑うのをみて、フィジーが肩をすくめる。


「はいはいはい、皆さん、これ歩きながらでいいからよんでくださーい!!」


 小柄な短い金髪の少年が4人の前に躍り出て、羊皮紙を配り、そのまま4人に随行した。


 ヴィンス・アーマッジ。エルフ族の男性。エルフ年齢は35、人間年齢に換算すると16。諜報部隊兼任隊員。隊歴は最も少ないが、既に計画立案に携わるほどの頭脳をもつ。


「おっと、アーマッジ隊員、ご苦労さん」

「ソカワ隊員、頭を撫でないでくださいよ」

「しょうがないじゃん、アーマッジ隊員、ちょうどいい小ささだもの」

「言っておきますが、僕の方が長く生きてるんですからね!!」


 アーマッジはフィジーを睨みつけたが、あまりにも迫力に欠けていた。


「あ、あと、今配りました作戦概要の書類ですが、アヌエル隊員の分はコミューナに送っておきましたから」

「うあっ、しまったー!! アヌエル隊員はここにいないんだった!!」


 そう言ってイディは残念そうに額を叩いた。その横で、ドクマも舌打ちした。


「ちっくしょー、あのバルンバルンのおっぱいが出撃前に拝めないか~」

「こんのバカコンビ!!」


 フィジーがイディとドクマの頭を翼ではたいた。


「……いつもながら、なにやってんだかなぁ」

『でも、あんまりガチガチになるよりはいいんじゃないかしら?』

「!?」


 アーマッジが苦笑いを浮かべていると、突然、彼の左手首に巻かれたコミューナ……腕時計型の、通信魔法を施した魔石水晶のついたバンド……の水晶部から女性の上半身が浮かび上がった。

 その姿は脳裏に焼けつくように美しく、肉感的でありながら、薄紫の長髪が神秘性を醸し出していた。そして側頭部には羊を思わせる角が生えていた。


 ユーリ・アヌエル。魔族の女性。年齢は不詳。救護部隊兼任隊員。世界中で数えるほどしかいない、蘇生呪文を詠唱できる存在。


「はぁ、おどろいたぁ、急に出てこないでくださいよ」

『あら、それはごめんなさいね、アーマッジ隊員』

「うおお、アヌエル隊員!! 今日もお美しいですねぇ」

『それはどういたしまして』


 イディの誉め言葉に、アヌエルはおっとりした態度で受け流した。


『私の方は例の患者にまだついてるわ、治療所の方はもう避難の準備をしているところね、こっちも準備ができ次第、患者と一緒に出るつもりよ』

「かーっ、アヌエル隊員がつきっきりなんて、うらやましいねぇ」

『ふふ、ドクマ隊員、任務を終えたらじっくり私の身体を堪能なさいな、それでは、現場で緊急要請があれば連絡をよろしくね』


 そう残して、アヌエルの映像は消えた。


「うおーっし、気合出てきたあ!! おもいっきりいくぞー!!」


 大声をあげて頬を叩く、ドクマを見てフィジーはため息をついた。


「あ~あ、男ってなんであんな馬鹿なんだろ!」

「おいおい、あの二人だけで男全体を決めるのはよしてくれないかい?」

「あら、ソカワ隊員はああいう、スケベ心がないってわけ?」

「ないと言えば嘘になるが、あんな露骨にはできんよ」

「ま、それが普通よね」


 ソカワとフィジーが同時にくすくすと笑った。

 5人が音を立てて廊下を進み、そのまま指令室の大きなドアを勢い良く開けた。広い部屋の窓際に、機動部隊のトップ二人が扉の方を向いて立っていた。

 壁面には魔力仕掛けの機械が並び、浮かび上がるディスプレイには外の風景が映し出されており、シグレの軍服を着た少女……先の会議に飛び込んできた少女……が、周りを飛ぶ小さな奇妙な動物たちと共に、せわしない様子で画像を見ていた。

 部屋に入った5人はすぐさま横並びに整列し、姿勢を正した。それを見て、機動部隊長が口を開いた。


「諸君、この度集まってもらったのは他でもない、先日、ルガモル鉱山より現れた未知の怪物の件だ、そいつは現在、カトク国のラムべ町に迫っている、我々はラムべ町の安全を確保し、その怪物に対処しなくてはならない」


 トー・ムラーツ、人間の男性。年齢は42。機動部隊長。カトク国直属騎士団長としての実績をもち、今なお、その手腕を発揮し続けている。


「作戦については、キリヤ副隊長と諜報部隊のトップ二人に、アーマッジ隊員も交えて計画された、キリヤ副隊長、説明を」

「はっ」


 副隊長が一歩前に出る。燃える様な赤い髪が揺れた。


 シャーディー・キリヤ、エルフ族の女性。エルフ年齢は192、人間年齢に換算すると……失礼。機動部隊副隊長。エルフ族の戦士であり、多くの紛争を戦い抜いた歴戦の猛者である。


「作戦の概要はアーマッジ隊員が配ったものを参照してくれ、目的はラムベの町の防衛、怪物退治は二の次だ、まず町の北東2,000、1,000の位置にて、町を囲うように、爆裂系の魔法陣を敷く、爆裂とほぼ同時に攻撃し、怪物がラムベ町から遠ざかるようにする、攻撃にはショックの強い炎魔法、電魔法を使い、頭部辺りを狙う、飛行部隊は狙えるなら、視界を奪うよう目元を狙ってほしい、もしくは脚部を攻撃し、移動能力を鈍くする、使う魔法は氷魔法か緑魔法が望ましいだろう」


 キリヤが少し間を置き、隊員達の表情を見やった。皆、真剣だった。


「怪物がラムベの町より遠ざかり、他地域への影響の少ない方向に進行、距離5,000以上離れる、もしくは活動停止が確認されたら、作戦成功とする、もう一度言うが、退治は二の次、ラムベ町の安全確保が最優先だ、わかったか!!」


「はい!!」と5人は威勢よく同時に答えた。真剣なまなざしのキリヤの隣で、ムラーツはおもむろにパイプに火をつけた。


「……ま、作戦の説明の後にこういっては何だが、相手は情報の少ない未知の相手だ、ちまちまやらず、とにかく全力でやってくれたまえ、それが最良だ」


 ムラーツがにやりと笑い、煙を吐いた。一見すると緊迫感のない、彼の調子がむしろ5人の緊張を高め

た。シグレの軍服を着た少女とその周りの小さく奇異な見た目の動物たちが、出撃する5人に近づき、力いっぱいシグレ式の敬礼した。


「皆さまのご武運をお祈りいたします!! 私も精一杯、ここで後方支援に努めます!!」


 サイ・ホシノ、人間の女性。年齢は17。部隊最年少でオペレーション担当。大陸東端の国、シグレの名家出身で、式神使い。


「へへっ、ホシノちゃんに応援されたら勇気100倍ってもんよ!!」

「……さっきまでアヌエル隊員に鼻の下伸ばしてたのはどこのどいつですかねー」

「うるせぇ、イディ!!」

「イディ、ドクマ、私語を慎め!!」


 キリヤの一喝に、ドクマとイディは思わず飛び上がった。フィジー、ソカワ、アーマッジはそれをいつものように呆れた様子で見ていた。


「君たち、気楽で結構だが、あんまり羽目は外すなよ」


 ムラーツはどこか砕けた雰囲気で彼らをたしなめた。


「気を取り直して、イディ隊員、ソカワ隊員はワイバーンで、フィジー隊員、ドクマ隊員、アーマッジ隊員は彗星01で現場に向かってくれ」


 ムラーツの指示を受け、名を呼ばれた隊員はハキハキした声で返事する。


「キリヤ副隊長、君は現場での直接指揮を頼む、私はここでホシノ隊員のオペレーションを基に指示を行う」

「了解、現場には私の地走竜で向かう」


 キリヤの鋭い視線に、ムラーツはにやりと笑みを浮かべ、うなずいた。


「それでは、【流星の使徒】機動部隊、出撃!!」

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