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4話〜聖夜を取り巻く女性達〜

注意:この物語は不定期投稿です(今更)


とある土曜日の朝、埼玉県吉川駅にて。


「おはよ、聖夜。今日は車じゃないのね」

「ん? ああ、まあな。おはよう、凛音」


電車を待っていた聖夜の後ろから声を掛けた凛音。彼らは小学校からの知り合いなので、必然最寄り駅も同じなのだ。


「今日は確か、一年の前で部活発表……だよな?」

「うん。頑張っていいトコ見せてよ、次期部長? ……いや、副部長か」

「剣道でいいトコ見せろって言われてもな……ま、善処する」


副部長という立場上、今回は聖夜も体育館のステージに立つのである。


(ライブとかよりも、こういう方が緊張するんだよな……)


……まあ、現部長の指名とあらば仕方無い。聖夜は、剣道部現部長の阿良峰(あらみね)先輩には敵わないのだ。正確に言えば、彼女の年上らしからぬ少女っぽさに彼が翻弄されているわけだが。


ちなみに、彼らの入っている剣道部は、活動自体は男女合同である。だから部長が女性、副部長が男性なのだ。


「何時からだっけ?」

「十時半からでしょ。で、それが終わったら私達は下校」


と、そこまで言った凛音はふと口を閉ざした。どうした?と目で問う聖夜に、彼女は今思い付いた事を口にする。


「あの……今日さ、学校帰りにレイクでも行かない?」

「レイク? 別に良いけど……なんだ、それってデートのお誘いか?」

「ち、違うに決まってるでしょ!」


……実際には図星であったのだが。今のは間違い無く、デートの誘いのつもりだった。


「冗談だって。そんなに怒りなさんな」

「むう……」


……まあこんな感じで、彼らの一日は始まる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「おー、二人共おはようさん。朝から熱々なこって」

「はいはい、おはよう」

「別に良いじゃない」


教室に入った途端そう冷やかしてきた健を、もう慣れっこな聖夜達は軽くあしらう。これに瞬が絡んでくると面倒だが、あいにく彼はまだ来ていない。


「おはよー、汐織」

「おはよ凛音。聖夜も」

「おうよ、おはよーさん」


朝は必ず挨拶を交わす、これが彼らの日常だ。全員が礼儀に厳しい家庭に生まれたからか、毎朝当たり前のようにやっている。でも高校生にしては結構珍しい光景である。


「よっ……と。さーて、今日は忙しいぞ」

「ああ、聖夜は部活発表やるんだっけ? 頑張ってね」

「サンキュー。でも、汐織も吹部で発表やるんだろ? 楽しみにしてるよ」

「うん、ありがとね。私も頑張る」


聖夜にそう言われたのが嬉しくて、ふわりと笑みを浮かべながら汐織はそう答えた。


すると、それを見た何人かの男子が騒ぎ出す。


「うおお……今の笑顔はやばい……」

「天使や、天使がおるで……」


あとは割愛。


……ともかく、男子共は汐織の笑顔にやられていた。かくいう聖夜も、直視するのに少し顔を赤くしたほどだ。彼は、半ば無意識に言葉を発する。


「やー……なんつーか、とりあえず可愛かったな。中身は割と悪魔なんだけど」

「……何か言った?」

「いいえなんでもないです」


汐織が顔を赤くしているのは、まあ置いといて。多分怒ってるからだろう。実際には、怒りと恥ずかしさが半々だったのだが。


「にしても、流石学園のアイドルって呼ばれてるだけの事はあるな」

「私だけじゃないわよ。凛音だってそうじゃない」

「いやー、私は汐織ほど可愛くないよ。それに、私達の想い人はそういうの興味ないみたいだし」


それを聞いて、聖夜は昨日の自己紹介を思い出した。確か、二人の好きな人は同じだとか……。


「……二人の好きな人って、そいつは本当に幸せ者だよな。誰かは知らんが」

「…………はぁ、大変ね……」

「同感……」

「……俺、なんか悪い事した?」


当の本人が目の前に居るので真実を言うことも出来ず、代わりに彼女達は大きく溜め息をついた。もちろん聖夜にはその意味が分からず、一人思案顔。だが、ふと重要な事を思い付いたかのように表情を難しくした。


「……つーか凛音、好きな人居るんだからそいつを誘えば良かったんじゃねーか? 今日、俺を誘うくらいだったらさ」

「……へえ。凛音、聖夜をデートに誘ったの?」

「ちょっと汐織、そういうのじゃ無いってば!」


意外と汐織は嫉妬深い。それで少々冷たい声になってしまった彼女と、自分の気持ちが聖夜にバレやしないかと焦り必死で否定する凛音。


だが、そんな様子を見て聖夜が怪しまないわけもなく。というより、元々内面観察が得意な聖夜には既になんとなく分かっていたのであった。


(ああ、多分このクラスの奴なんだろうな……。じゃなきゃ、こんな必死になるかって話だ)


……かなり惜しい。いくら聖夜といえど、自分の事は勘定に入れてないのだ。


ま、いいか、と(あまりにも淡白すぎるが、これは彼の元来の性格である。)彼はまだ騒いでいる彼女達を放置し、自分の席に荷物を置きにいく。そして、そこから右後ろの席の方へ歩いていった。


そこには、机に突っ伏している一人の少女が。よほど疲れているのであろう、すうすうと可愛らしく眠っている彼女の肩を聖夜は軽く叩く。


「んー……」

「そろそろ起きといたほうが良いよ、歌姫様」

「零夜君……? やめてよー、恥ずかしいから……」


どうやら、歌姫はまだ夢うつつのようである。だがさらに彼が優しく揺り動かすと、ようやく彼女は顔を上げた。しかし、後ろにいる彼には気付いていないようだ。


「あれ……さっきのは気のせい?」

「違うと思うよ?」

「ひゃあっ! せ、聖夜君!?」


聖夜が後ろからひょっこりと顔を出すと、これまた可愛らしく悲鳴を上げて少女は仰け反った。


「おはよう。随分とお疲れのようで」

「びっくりした……うん、ちょっと昨日は忙しかったから」

「歌、だろ? しかも生放送の」

「うん。どうして分かったの?」

「いや、俺も少し見てたからさ。また上手くなったんじゃないか?」


彼女の名前は篠塚舞(しのづかまい)。見た目は至って普通の女子高生だが、実はネットで有名な歌い手の『九条マヤ』その人である。同じ歌う者同士、九条マヤ()御月零夜(聖夜)は仲が良く、お互いが何も隠さず音楽の話が出来る間柄だ。


……もっとも、舞の方はまた少し複雑なのだが。聖夜は彼女の事を親友だと思っているが、舞は……言ってしまえば、彼に恋をしてしまっている。月影聖夜に。そして、御月零夜に。


だが、それを口に出すほど舞だって愚かではない。自分じゃ相応しくないくらい、よく分かってるのだ。……それでも褒められたりしたら嬉しいものは嬉しいのだから、全く仕方無い。


「ありがとう。聖夜君にそう言われると自信がつくよ」

「こちらこそ、そう言ってもらえるなんてありがたいね。……そうそう、急な話なんだけどさ」


そう言うと、彼は真面目な表情でこう提案した。


「今度、俺とコラボしてみないか? 二人で、何かデュエットの曲を歌う感じで」


その言葉に、思わず彼を見返してしまう舞。


まあ無理もない。御月零夜()は、彼女の想い人であるのと同時に……彼女の憧れでもあるのだから。聖夜はバンド活動をしながらも、個人としてボカロの歌ってみた動画を投稿したりもしている。舞の目標は常に、彼の背中なのだ。


そんな相手から、まさかのコラボのお誘いである。彼女が驚いてしまうのも無理はない。


「……いいの?」

「ああ。お互いの知名度だって上がるし、それを抜きにしたってやってみたいんだよ」


無論、舞がノーと言うはずがない。彼女は快く承諾し、彼らは早速話し合う。他人に正体がバレるのは怖いので、二人ともかなりの小声だが。


「ボカロ曲でデュエット……っても、結構色々あるよな」

「うん……聖夜君が好きなので良いよ。私は基本的にどれでも歌えるから」

「悪い、サンキューな。……うーん、いくつかやりたいから……あ、『magnet』とかどうだ?」

「あ、いいかもね。それなら私も歌った事あるし、そっちだって余裕でしょ?」


「余裕かどうかは分からないけどな……まあ、足は引っ張らないよう頑張る」

「ふふっ……私こそ、零夜君の足を引っ張らないようにしないとね」

「うん、ここでその呼び方は止めようか」

「えー……」


表情こそ不満げだが、その声は笑っていた。普段の学校生活ではかなり物静かで目立たない彼女だが、ひとたび『九条マヤ』となればそんな印象は消え失せるのだ。明るく優しく、ときたま人をからかうような……まるで正反対の少女となる。


「あっ……私、ちょっとやらかしちゃったかも……」


そんな彼女が、不意にとある一点を見てあちゃー、という表情を作った。聖夜もつられてそちらを見ると、そこには不機嫌な目でこちらを見ていた汐織が。何故不機嫌なのかは、もちろん聖夜に分かるはずなど無いが、ともかく機嫌を取りに行かねばならないのは明らかだった。


「じゃあ、話はこれで……日にちが決まったら教えてね」

「……了解」


お互いが苦笑を浮かべる。なんとなく。


そして、聖夜は再び汐織の元へ。だが、彼女はぷいっとそっぽを向いてしまう。


「どうしたんだ?」

「自分の行動を振り返ってみれば分かるんじゃない?」


素っ気なくそう返されてしまった。無論聖夜にその理由が分かるはずもなく、彼は少し困り顔になって言う。


「俺が悪いなら謝るからさ……本当、どうしたんだよ?」


真面目にそう言われてしまっては、汐織も言葉に詰まってしまう。……こんな醜い嫉妬心は、自分の我儘だと分かっているのだから。


「別に、聖夜が悪いってわけじゃ無いんだけど……」

「だけど?」

「あー、えっと……ごめんなさい!私の我儘なの!」


結局、汐織は自分が謝る事に決めた。聖夜(想い人)に勘違いをさせたままで罪悪感を抱かせるのは、彼女自身にとって許されないことだからだ。


だが、聖夜はそんな事など一ミリも分からない。唐突に謝られ、困惑の表情を浮かべていた。


「えっ? いや、どういう……」

「ねーねー聖夜」


これ以上何も言えなくなってしまった汐織を見かねたのか、凛音が露骨に、だが有無を言わさず話題を変えた。


だがもちろん、彼はそれに乗ろうとはしない。


「あー、ちょっと待て。今はこっちの」

「何か言ったかな?」

「……なんでもありません」


撃沈。


「で、なんだ?」

「いや、次の例大祭どうすんのかな? と唐突に思いまして」

「そりゃまた本当に唐突だな……まあ多分、行くと思うよ」


今凛音が振った話題は、来月開催の『博麗神社例大祭』についてである。東京ビッグサイトで年二回行われる、東方projectオンリーの即売会だ。


「やっぱり? じゃあ、また一緒に行かない?」

「いや、俺は構わんが……さっきから言ってるけど、凛音の好きな人と行った方が」

「…………」

「はいなんでもないですごめんなさい」


再び撃沈。じとっとした目で見られては、聖夜も降参するしかない。立場弱すぎワロエナイ。


「ま、じゃあ一緒に行くとして……カタログ、いつから発売だっけ?」

「もう少ししたら出るんじゃない? その時はレイクのアニメイトまで買いに行きましょ!」

「はいはい。分かったから、年甲斐もなく騒がない」


ころころと表情が変わる凛音を可愛らしく思いながらも、聖夜はそう言った。そんな様子を見て、汐織が一言。


「……なんか、あなた達って兄妹みたいね。無邪気で元気な妹と、お人好しな兄って感じ」

「うーん……? 初めて言われたな、そんなこと」

「性格診断としては間違ってないと思うけどね。私が妹みたいってことはともかく」

「……俺ってそんなにお人好しか?」


聖夜にはそんな自覚は無い。だが周りが頷いているのを見ると、やはりそうなのだろうか。いまいち釈然としないが、その前に担任が来てしまった。


「はいはーい、着席ー」


……めっちゃスッキリした顔してる。まあ昨日あれだけはっちゃけてたから、そりゃ気分も良くなるか。


「今日は部活発表だから、終わったら体育館へ行ってくださいね」



…………忘れてた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「うあー、緊張してきた……」

「一万超える観客の前で堂々と歌える奴が何言ってんのよ……」

「いや、あれとはまたちょっと違うんだよ……」


と、汐織との会話で気を紛らわせようとしている聖夜の肩が、不意に重くなった。そして、彼が何事かと思う前に声が掛けられる。


「聖夜君、大丈夫?」

「うわっ、と……びっくりさせないでくださいよ。こんにちは、阿良峰先輩」

「うん、こんにちは。ごめんね?」


彼が振り返ってみると、案外すぐ近くに一人の女性の顔があった。


彼女は阿良峰雫(あらみねしずく)。剣道部の部長であり、また本校の生徒会長でもある三年生だ。


「いやまあ、大丈夫っすけど……」


その端正な顔で微笑みかけられ、聖夜は気まずそうに目を逸らした。すると彼女も、自分がいかに接近しているかに気付いたらしい。少し顔を赤らめ、そそくさと彼の前に回る。


「えっと、ね……緊張してない? 平気?」

「あ、はい、ありがとうございます。先輩こそ大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だよ。これでも生徒会長だから、もう慣れちゃった」

「……大変なんですね、生徒会長って」


彼には考えられないことである。それをこなせるからこそ、彼女は生徒に慕われているのだろう。


「そう? やってみると楽しいよ。……私としては、次の生徒会長には聖夜君を推したいんだけどなー」

「えっ? あ、いやー、それは……有り難いんですけど、もう少し考えたいかなー、なんて……」


聖夜にはそんなつもりなど無いが、しかしお世話になっている先輩の期待を裏切るわけにもいかず……と、曖昧な言い方になってしまった。


ちなみに、今の雫の発言は本気である。彼女は聖夜のことを大変信頼しており、彼なら自分以上にやってくれると信じているのだ。


「ありがとね。……じゃあ、今はこっちを頑張ろっか」

「そうっすね。もうそろそろ、先輩も挨拶に出なきゃでしょ?」

「あっ、もうそんな時間!?」

「忘れてたんですか……」


しっかりしてるなと思いきや、たまに抜けている。でもまあ、こんなところも彼女の魅力なのだろう……と、聖夜はふと思った。


「あはは……じゃあ行ってくるね」

「はい、頑張ってきてくださいね」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「………はあ〜」

「……あんたはオッサンか」


体育館舞台裏。緊張が解かれ大きく息を吐く俺に掛けられたのは、そんな汐織の呆れたツッコミだった。酷いと思います。


「いや、これは思ってた以上だったわ……意外と緊張するもんだな、やっぱり」

「そりゃそうでしょ。……でもまあ、かなり良かったわよ?」

「サンキュ。そういう汐織も、立派で格好良かったけどな」

「……そ、そう? ありがと」


……自分から言い始めといて照れるなっての。全く、可愛い奴め。


「……まあ、後は明日どれだけ来てくれるかだな」

「そうね……でもまあ、うちは剣道部も吹奏楽部も有名だから」

「だよなあ……心配要らないか」


うちは全国に出るようなレベルだから、結構知名度もある。わざわざ心配しなくてもそれなりに集まるのだろうが……やはり心配してしまうのである。次期部長だし。人が集まらなかったら割とショック。


そうこうしている内に教室へ戻る許可が出たので、相変わらず駄弁りながら俺らは帰り始める。周りには俺らと同じように発表をした人達と、一番最後に出て来た一年生しかいない。


「せーんぱい♪」


すると不意にそんな甘えた声が聞こえ、背中に軽い衝撃。それと共に、俺の胴に腕が回された。


その相手? 言わずもがな。俺にこんな事をしてくる後輩なんて一人しか居ない。


「……どうしたんだ、瀬那ちゃん?」

「どうもしませんよー。ただ先輩が居たから突撃しただけです」

「迷惑極まりねえな……」

「えー……嫌ですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど……目立つから、な?」


ついでに言ってしまえば、背中に当たっている柔らかいものが気になって如何ともしがたい。彼女にはちゃんと女性らしい起伏があるので、健全な高校生たる俺でも意識してしまうのだ。


どうにかして、渋る彼女をなんとか引き剥がす。……と、後ろに深央ちゃんも居たのに気付いた。今のやり取りを見て何を思ったか、苦笑を浮かべている。


「仲、良いですね」

「……なんというか、お見苦しいところを見せてすまないね」

「いえいえ、微笑ましい光景でしたよ?」


いつもやってるくだらない事も、第三者の目があると途端に恥ずかしくなる。……まさに、今の俺だった。


というか、何故に瀬那ちゃんは平気なのだろうか。と思い、そちらを見やる。


「……ねえあなた、聖夜とスキンシップ取り過ぎじゃない?」

「別に良いじゃないですか。大切な兄がどんな女と関係を持っているのかは心配になりますし、仕方無いでしょ?」


……なんという事でしょう。ブラコンを全面に出した瀬那ちゃんが、汐織と睨み合っているではありませんか。うわあどうしようメッチャ険悪じゃん。あの間に入りたくないんですけど。


「ストップストップ! ……うん、一旦落ち着こうか」


とはいえ放置しても状況が悪化するだけなので、仕方無く止めに入る。


「オッケー?……じゃあ、まず瀬那ちゃん」

「なんですか?」

「汐織は良い奴だから、別に心配しなくても大丈夫だよ。……んで、汐織は何故に不機嫌?」

「あなたに変な女が寄り付いてないか心配になったからだけど?」

「うん、ありがとな。でもまあ、この子も大丈夫だから」


……妹だけでなくクラスメートにも心配されるどうも俺です。


「つーか、社交パーティーとかで面識あるんじゃなかったっけ?」

「ありますけど……ダンスの時、いつも先輩を奪っていく人としか見てないです」

「あなたに言われたくないんだけど……」

「まあ実際、ほとんどはお前らとしか踊ってないしな」


もちろん、誘ってくれるお嬢様方は他にも結構いるのだが、大体はこの二人である。でも、この二人が一番踊りやすいのも事実だ。踊っているときの違和感が全くないので、もしかしたらリズム感とかが合っているのかもしれない。


とか思ってると、不意に瀬那ちゃんの目線が俺を捉えた。……やっば、目が笑ってない。


「そういえば先輩、一昨日の事なんですけどー……」


……あ、すっごい嫌な予感がするー♪


「……深央と、随分遅くまで楽しんでたみたいですね?」

「その言い方だと誤解を生じる恐れがあるので止めて頂きたいんだけど」

「えっ……まさか、もう後輩に手を出したの……?」

「ほら言わんこっちゃない……」


戦慄したような目でこちらを見ている汐織。んなわけあるかと俺は深央ちゃんを見る。すると彼女はそれに気付き、わざとらしく頬を赤らめた。


「楽しかったですよね、夜まで……」

「やめーい! 俺の社会的地位がやばくなる!」


生徒が大勢いる中でそれはマズい。幸い誰にも聞かれてなかったみたいだが、今のはマジで焦った。


「……なんなん? お前らは俺をいじめたいの?」

「えっと……その、ごめんなさいです」

「ごめん、ちょっとノリで……」

「えへへ、ごめんなさーい……」



……あーもう、可愛いから許す。







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