お前らのせいで異世界がヤバい
スタミナが切れました。六芒星結晶石を課金してください
「ふざけるな!今もっている石だってタダじゃないんだぞ。(無課金だけど)」
その画面が出るや否や携帯をベッドにふわりと投げ、そう言い放った。
やることも特にないのでベッドで横になりながら昔発売された、リメイクという名の携帯ゲームへの焼き直しのRPGゲームをしていた。そのゲームのレベルはもうすでに限界に到達している。固くてすぐ逃げ出すその世界で経験値が一番高い敵を、最速の突きで一撃で倒せるぐらいにはやりこんである。やることはほぼなく、していることは誰も使わないような雑魚のレベル上げである。その行為に意味のないことは自分自身が一番わかっていた。そしていつの間にか眠りに落ちていた
いつからだろうか。自分が自分の名前で呼ばれなくなったのは。いつの間にか俺は自分の名前ではなく「お前」と呼ばれるようになっていた。そして「お前」と呼ばれることも少なくなり名前すら呼ばれなくなった。そして俺はネットの仮想空間で「お前ら」としか呼ばれない存在になっていた。
「ここは?」
ベッドから起き上がるとそこには見知らぬ若い男が座っていた。
「ようやく目覚めたか。ここはお前らで言うところの異世界だ」
あたりを見回すとレンガ造りの普通の家だった。確かついさっきまでRPGゲームをしていた記憶はある。そこからの記憶は覚えていない。
「異世界?何言ってんのお前……」
その男は何事もなく人差し指で空間にゲームのメニュー画面を開いた。
「これで信じてもらえたかな」
疑心暗鬼にはなってはいるが手品でメニュー画面を空間に出せるわけがない。ただそれは異世界の説明にはなっていない。
「けど普通、異世界の人がここは異世界って言わなくない?宇宙人が我々は宇宙人だって言うぐらい変でしょ」
「それは俺も日本人だからかな。それに毎度毎度おまえらが、「ここは異世界か」っていうからだろ。記憶があるんだろ。どうせろくでもない人生送ってきて、トラックにひかれそうな子供でも助けようとしたんだろ。いい加減トラックの運転手に謝れ。ほんとに引いてたら会社にいられなくなるんだぞ」
「いや、俺はそんな理由じゃないと思うけど」
「ゲームやってたら、そのまま入ってきた系?」
「そんな感じだと思う」
「じゃあそのゲームのメニュー画面出せると思うから出してみて。ゲームのコントローラーのイメージで出せるから」
イメージすると確かに出せる。けどメニュー画面がこの人とは違っていた。
「ほんとに異世界なんだな」
「順応するのが早くて助かる。とりあえず、日本から来た人にはこれを書き込んでもらう決まりになってるからよろしく」