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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第一章 レベルアップ編

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028ー4 ゼノ要塞城の狂騒『第二幕』シーン4

【修行履歴】

2019年12月16日

①28話を4分割しました。

②文章の訂正をしました。

③主人の思考を表す、表現方法の変更をしました。

【『始りの街』の北、エステランド公爵領にて】


 エステランド公爵クリストファー・フェステンは、ギルド本部からの特使の待つ部屋に入った。


「ご苦労。何事かな」


 フェステン公爵は尊大な態度で尋ねた。


 特使は、公爵に最敬礼してから。


「西にゴブリンの大軍団が発生しました。現在分かっているのは、『始まりの街』の南、ゼノ平原の西から進行してきております。現在ゼノ要塞で大軍を食い止めているとのことで王国軍の進発を急いで欲しいとの要請です」


 特使は平伏しながら言った。


「ギルドは少し可笑しくなったんじゃないか? 前にも将軍ジェネラルだとかそれ以上だとか良く分かってもいない情報を軽々しく流して来た。そんな愚にも付かない情報だけで軽々しく国王陛下の兵を動かせるものか」


 フェステン公爵は、顔を顰めて言った。


「しかし、『始まりの街』には、既に何千単位の難民も入ってきております。彼等からも状況を確認していますが、相当数のゴブリンの大軍が存在すると思われます」


「ゼノ平原に要塞などは無い。それだけでもその情報の信ぴょう性が疑われる」


 フェステン公爵は、鼻で笑った。


「その事については、Sランク“剛腕”のメンバーが魔法で要塞を作ったとの追加情報があります。難民を『始まりの街』に導いたのも同じ“剛腕”のメンバーとの事です」


 特使はフェステン公爵の追求にも怖じずに答えた。


「おい。俺はエステランド公子のフランツだ。“剛腕”はうちの“Fクラン”のパーティーだ。その要塞は、どのメンバーが作ったんだって?」


 フェステン公爵の息子のフランツが、公爵の背後から口を挟んだ。


「確か新人のサブメンバーで、名前は、ショウーという者だそうです。難民を救済していた冒険者の少女から聞きました。その少女はペガサスに乗っていました」


 特使は、夢を見るように宙に視線を泳がせながら答えた。ペガサスに乗っていたのは、半神女神のレイラ・リンデグレンだったが、そこまで特使は知らなかった。


「そいつらは、詐欺師だ!」


 フランツは、大声で喚いた。


「どうしたんだ。我が公子プリンスよ。突然叫ぶなど」


「父上。父上が私に下さった“Fとお供”の優秀な部下皆をたぶらかして私から奪った詐欺師の話をしましたね。それが翔ってみすぼらしい小僧だったのです。きっと“剛腕”の皆も騙されているんです」


「詐欺師には、何千もの難民を作るなんて不可能でしょう」


 特使は、フランツ公子の言葉を遮るように言った。


「お前は、我が公爵プリンスが誤っておると言うのか」


 フェステン公爵が声を荒げて、特使に食いついた。


 その瞬間、特使は話にならないと諦めた。


「私は、確かな情報と確信したギルドから正式に派遣された特使です。使命を果たしたので退散致します」


 最敬礼をして特使は、そのまま部屋を出て行った。


「なんだあの特使は」


 フェステン公爵は、憤懣ふんまんが収まらないと言う様子で呟いた。


「あいつら……。どこまで滅茶苦茶なやつらだ」


 フランツも憎々しげに呟いていた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





 エステランド公爵の屋敷を出た特使は、大きなため息を吐くと従者を呼びつけた。


「すまんが、俺はこのまま王都まで早馬を仕立ててゴブリン軍の事を知らせに行く。お前は、エステランド公爵は動かんとギルドに知らせてくれ」


 特使は、青い顔をして天を仰いだ。彼は、難民からゴブリン軍の様子を聞いてきたのだ。その時にペガサスに乗ったレイラとも出会ったのだった。


 ゴブリン軍は、三十万もいるという。彼等の話を聞いて過去の伝説で聞いたゴブリン軍よりも強大だと彼は!感じたのだ。


 しかし、彼の直感はまだまだ過小評価に過ぎなかった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




【ゼノ要塞城にて】



 この時、ゼノ要塞城では、一時的ではあるが、戦勝にわきたっていた。


「翔。お前は、殆ど一人で三十万のゴブリンを退かしたのだぞ」


 アルマは、賞賛した。


「所詮ゴブリンだからな」


 翔は、全く喜んでいない。


「それに勝ったわけじゃない。俺が一人で三十万のゴブリンに勝つように奴らにも俺よりも強いのが三人もいる。しかもこちらは千人にも至らない戦闘員とお荷物ですらある非戦闘員が一万余りしかいないんだからな。それに奴らにはまだ本軍があると俺は、思う」


「それは、無いと言うことで話が決着したじゃ無いか。ゴブリンは、本能的に群れる習性があり群れを分けたがらない。だからあれが本隊だって事になったじゃないか」


 アルマは、翔の話を遮った。


「俺は、ゴブリンの事は、詳しく無い。しかしあれ程知能が発達したやつらがいるんだから本能だけで動くとは思えん」


「しかし、軍はできるだけ集約した方が良いという合理的な理由もある。わざわざあれ程の大軍を分ける必要もないだろう」

 

 そのアルマの発言は、正当なもののように思えた。


「翔。強いのがたくさん来る。特に三匹はとても強い」


 メロが感知能力を示して言った。


「夜襲とは、懲りない奴らだ」


 アルマが鼻で笑った。


「お前達覚悟しておけよ」


 しかし翔は、緊張した顔でメロ達に忠告した。


「リミットオフ。全開で行くぞ。自分の防御は自分でするか俺の後ろに隠れていろ」


「分かった」

「承知した」

「分かりましたわ」

「承知しました」


 メロ、アメリア、イリス、レイラが答えた。


 エレベーターで外縁まで出ると、既に闘いが始まっていた。


「ゴブリン大元帥アークエンジェル、ゴブリン大司祭アークビショップ、ゴブリン大賢者アークセイジの三人か?」


 アルマが尋ねた。


「そうだな。強そうなのばかりだ。俺たち五人は、あの三人にかかりきりになりそうだ。後はなんとかしてくれ」


「お前が言っていたのは本当だったんだな。レベル80が三体とはな。お前達の言うことを信じてギルドをもう少しつつくんだった」


 アルマは、ポツリと言った。


「ああして、奴らだけで来るところを見ると、やはり奴らは、ただの捨て駒だな。さらにもっと強いゴブリンが幾らでも存在するって事だろう。今回の大敗の責任取りってところなんじゃないか。つまりゴブリン軍は数も質も遥かに上回る本軍があるって事だ。さもなきゃ奴らは気狂いの集団だろうさ」


 翔は、サバサバとした口調で言った。


「早々に難民を連れ出そうとしたレイラが一番頭が良かったって事だ。アルマ。お前は何故ここで抗戦することに固執するんだ? あの難民達を全滅させたいのか?」


 アルマは、一瞬頭が白くなった。


「すまん。私の考えが甘かった。ここでゴブリンをできるだけ食い止めて本国の準備が整う時間稼ぎをするのが私の任務だ」


「俺は、政治に興味は無いし、お前の任務にも興味は無い。この闘いが終わったら俺は難民達を連れて『始まりの街』に向かう。お前は死ぬまでここでゴブリンを引き止めていろ」


 翔は、冷たく突き放すように言った。


「俺についてくる冒険者達がいるなら全て連れて行く」


「お前達があそこを引き払ったらここはひとたまりもないぞ」


「俺達は、本気で召喚すればもっとたくさんの召還が可能だ。召喚獣だけは残して行ってやる。『始まりの街』に行けば少しは戦える奴らがいるだろう。全滅が必然的なのに籠城ろうじょうするなんて奴は、お前のように理由がある奴だけがする。お前は好きなようにしろ。しかし、俺達や難民を巻き添えにするんじゃない」


 アルマは、「すまん」とだけ言って肩を落とした。その様子を翔はジッと見ている。メロ、アメリア、イリス、レイラが集まってきた。


「難民を守りながら戦うなどという作戦はあまりにも愚かだし、何故奴らの本軍の索敵をしなかったんだ。お前のやっている事は全てちぐはぐ過ぎるぞ」


 翔は、アルマの目を覗き込んで静かに聞いた。本音を言えと言っているのだ。


「本当にすまん。この要塞の規模とお前達の戦力はあまりにも魅力的だった。あの難民達はお前達を足止めにする餌と考えて最初から犠牲になっても仕方が無いと思っていた。三匹のレベル80のゴブリン達が実在する事も本気で信じていなかった。お前のユグドラシルネットからの情報も眉唾だと思っていた。特にゴブリンの本軍が別にあると言う事やゴブリンキングなどと言う御伽話も何もかも信じていなかった。全ては私の考えの甘さが原因だ」


 アルマが頭を垂れるようにして言った。翔の目を見返す事も出来なかった。


「軍を集めるには時間がかかる。少しでも『始まりの街』の住民達が生き残るための犠牲ならやむ得ないと考えての事だ」


「お前は決死の覚悟があったんだろうな。しかしお前に崇高な覚悟があれば何をしても良いってわけじゃないだろう。難民達は俺達を釣るってだけのために犠牲になるのは理不尽すぎるんじゃないか」


 翔の言葉に今度は、アルマは何も答えられ無かった。


 翔の言う通りなのだ。


 メロが翔の腕にしがみつくようにして腕を回して来た。逆の腕を同じようにアメリアが掴んだ。


 二人の柔らかい胸が翔の腕を包み込んで優しく癒してくれる。レイラとイリスも翔の背中に全身を押し付けてきた。


 二人の柔らかい胸も翔の背中を優しく包み込んで翔の怒りを癒した。女の子達の無言の行動は、翔の怒りを柔らかく昇華させた。


 翔は、難民を犠牲にしようとしたアルマの行為に腹立ちを覚えていたが、アルマもなかなか動かないギルドや国の対応の遅さのために生ずるであろう犠牲者を少しでも少なくする為に命を賭して国民を守ろうとしたのだ。アルマは、ただ任務を遂行しようとしただけなのだ。


 翔は大きなため息をついて振り返ると順番にメロ、アメリア、イリス、レイラを見た。


 メロもアメリアもイリスもレイラもしっかりとした意志のある目を翔に返してきた。


 翔は、四人の美少女達の頭や肩や背中や腕に触れて行きながら皆に頷いて行く。皆は翔に合わせて頷いた。


 翔は、皆にそれぞれ優しく微笑みかけると、アルマの方を向いた。


「お前は、俺に助けを求めた。一度助けてくれと言った者を全力で助けるのが俺の主義だ。お前の助けて欲しいと言う依頼は難民を助けて、だったな。全力で助けてやる。お前は、自分の責任として命がけであの難民を連れて逃げろ。俺達五人は、ここに残り少しでも時間稼ぎをしてやろう。お前は、難民と一緒に一刻も早く帰って軍を組成しゴブリン達を迎え撃て。さもなくばこの国は、ゴブリンの国になるかもな」


 その場にアルマ達“剛腕”を残して翔は、ゴブリンの強敵に向けて歩き出した。


 アルマは、痴呆のような顔になって、翔達の後ろ姿を見ていたが一瞬で我に帰った。


「貴重な時間を無駄にするんじゃないよ。あの難民達を連れ出すよ」


 アルマは、叫んでいた。


 アルマの横に“稲妻スパーク”のバッシュがやって来た。


「姉御。俺は、今メンバーと話し合ってたんだが、ここに残ってあいつらと闘う」


 バッシュは、意を決したような顔で告げた。


 アルマは、少し目を開いてバッシュを見た。


「帰っておいでよ。約束を果たさせてくれ。もし、帰ってきたら今後は、この身体はお前一人にだけ捧げよう」


「ああ。是非たのむ」


 バッシュがはにかんで言った。二人は一瞬だけ抱き合うとバッシュは走り去った。


「剛腕の。俺達も残る」


 “火神マルスの杖”のラビノビッチ・バシコフだった。


「『始まりの街』の俺たちの子供達を頼む」


 “火神マルスの杖”はダブルカップルでそれぞれ二人と一人の子供がいるのだ。


「ああ。あの子らの為にも帰って来いよ」


 アルマは、ラビノビッチ以下の“火神マルスの杖”のメンバーと強く握手しながら言った。


 同じようにここに残る事を決意した冒険者達がどんどん彼らを追って走って行った。


 ここに残るのも決死、出て行くのも決死。どちらも覚悟をして行動しているのであった。


028 了

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