028ー3 ゼノ要塞城の狂騒『第二幕』シーン3
【修行履歴】
2019年12月16日
①28話を4分割しました。
②文章の訂正をしました。
③主人の思考を表す、表現方法の変更をしました。
2019年12月19日
文章を訂正しました。
【メロside】
メロは、杖を振りかざしながら、彼女の何倍もありそうなゴブリン大将軍に向かって行った。
その後ろにイリスがついて行った。
ゴブリン大将軍達は、メロとイリスを無視してアメリアとゴブリン元帥の戦いを見ながら、余裕を見せて、二人で雑談していた。
「私は、メロ・アルファード。世界で二番目に強くなる予定の天才魔術師。今日は、魔術を使わず、お前をやっつけてやる」
メロは、そう言いながら二人のゴブリン大将軍の少しレベルが高い方を、杖で指し示した。
しかし、二人のゴブリン大将軍は、メロを全く無視していた。
イリスは、含み笑いを浮かべながら、黙って後ろから、その様子を見ていた。
「名乗りを上げたのに無視。先制攻撃しても文句は、言えない」
メロは、そう言うと、杖を両手で構え、闘気を、杖に乗せた。
ここで、ゴブリン大将軍は、注意をメロに向けた。
「お前では、小さ過ぎて苗床にもならんぞ」
メロが杖で指名した方のゴブリン大将軍は、メロを見ながら鼻で笑うように言った。
この言葉に、メロは、顔をしかめた。メロは、下品な下ネタが、特に嫌いだったからだ。
「汚らしい魔物。許さない」
メロの髪の毛が逆立ってきた。そして、闘気の密度が増した。
「面白い。このメスは、小さいが俺が貰っても良いか?」
横から、レベルの低い方のゴブリン大将軍が言った。
「あなたには、私がお相手するわ」
イリスは、スッと、レベルの低い方のゴブリン大将軍の前に立った。
イリスの戦闘スタイルは、力押しで、ゴブリンとは相性が良かったので、余裕のある顔色だ。
しかし、自分の前に出てきた、小さな女の子のイリスを見た、そのゴブリン大将軍は、少し顔を顰めて、肩を竦めて見せた。
「幾ら何でもお前では苗床にはできない。もう少し大きくなってから、やって来い」
ゴブリン大将軍が嘲笑うように、言った。
「ここじゃ。二人の邪魔よ。こっちにおいで」
イリスも、笑いながら言った。
「ふん」
ゴブリンは、無視しようとしたが何故かイリスの言う通り体が動いてしまうではないか。
「これはどうした事だ?」
ゴブリンは、フラフラとイリスの方に、歩いて行った。イリスの魔眼のスキル『支配』の効果だった。
☆
メロは、体に闘気が溜まったと確信した瞬間に、地を蹴っていた。
魔術師の杖は、武器としても意外に使えるのだが、魔術師は杖術が下手なものだ。
しかしメロは、水晶迷宮で、トロールの半神英雄ニドベリルに剣を教わった一人だ。ニドベリルから筋が良いと褒められた。
メロは、小さく可愛らしいが、運動神経は抜群なのだ。
闘気によって、速さだけでなく、重さが加算されたメロの打ち込みは、想像を絶する破壊力を含んでいた。
可愛らしい少女のメロが、打ち込んだとは思えない、強烈な打ち込みに、ゴブリン大将軍は、慌てて戦斧を抜いて避けたが、あまりにも激しい打ち込みに手が痺れるほどだった。
これが闘気の特性だ。同じ程度のオーラで受けないと衝撃を強く受けてしまうのだ。
ゴブリン大将軍は、改めて気合いを入れて戦斧を構えた。
それでも、ゴブリン大将軍は、恐れるどころか、小馬鹿にしたような顔は、そのままで、戦斧を左右に振りながらメロとの距離を無造作に、詰めた。完全に舐め切っていた。
ゴブリン大将軍は、大きな動作で、錆だらけの巨大な戦斧を、振りかぶると力任せに、メロに打ち込んだ。
その打ち込みは、半端なく強いだけの膂力に頼った、雑な打ち込みだった。
メロは、杖を斜めに振り上げてゴブリンの戦斧をそらし、そのまま体を前にぶつけるように飛び込んで行って、杖頭で、ゴブリンの顔面を激打した。
メロは、そのまますれ違いざまに、更にゴブリンの後頭部に杖を叩き込んでいた。
ゴブリンは、メロの杖の衝撃を和らげようと、頭を振った。
「弱~~~い」
メロは、拍子抜けしたような表情で言った。
「こいつ。これからが本気だ」
ゴブリン大将軍は、戦斧を、構え直しながら、悔しそうに言った。
ゴブリン大将軍は、素早く地を蹴ると戦斧を斜めに切り下げた。
メロは、片方の足をずらしただけで、その斬撃を難なく避けてみせた。
ゴブリンは、強引に戦斧の軌道を変えて戦斧を、横に振った。有り余った膂力を使った、強引な技だが、そんなめちゃくちゃ攻撃では、メロにかすりもしなかった。
メロは、無様に空振りして体勢を崩しているゴブリンの斧の柄が伸びているのを見て、あろう事か、杖を鋭く振り下ろして、柄を切り落としてしまった。
ゴブリンは、杖で戦斧の柄を切られて、その驚きに大きく口を開けてメロの自分の手の中の柄を見た。
メロは、そんなゴブリンの隙を見逃さなかった。杖をくるりと回して杖の先端でゴブリンの顔面を突いた。
ゴブリンは、必死で、避けるために体を斜めにした。
メロは、ゴブリンの軸足に体重が乗った所を見計らって、杖の頭で、足を払った。
巨大なゴブリンは、派手な音を立てて背中から地面に落下したのだった。
ゴブリンは、頭を振りながら、慌てて立ち上がろうとしたが、メロは、ゴブリンの隙を付いて、一瞬で、ゴブリンの耳元まで飛び込んで行った。
「ごめんね。飽きちゃった」
メロは、そうゴブリンに囁くと、右手を前に突き出した。メロは、手の平をゴブリンに向けたまま、鮮やかに、大きく後ろに飛び下がった。
その素早い流れるような一連の動作は、熟練の剣士か、武闘家のようだった。
ひとっ飛びで、ゴブリンから十メートルあまり飛び退いたメロは、手の平をゴブリンに向けたまま。
「『爆炎』!」
一瞬の準備期間もなくメロは第六グレイド魔法を、手の平の先に発動したのだった。
ゴブリン大将軍は、遅れて防御魔法を唱えたが完成するまでに、メロの『爆炎』は、普通の『爆炎』の何倍もの熱量を天に吹き上げてゴブリン大将軍を飲み込んだ。
ゴブリン大将軍は、メロの『爆炎』と唱える声を聞いた時は、まだ助かると思っていたかも知れない。それほどゴブリン大将軍の防御力とHPの値は、高かった。
しかし、メロの『爆炎』は、普通のフラミスとは比ぶべくもない。恐ろしい熱量で、可哀想なゴブリン大将軍と、彼を崇拝するゴブリン軍団を巻き添えにして、全てを燃やし溶かし尽くすのだった。
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一方、魔人イリスが取った戦略は、戦わずにゴブリン大将軍を支配下に置くことだった。
彼女は、未熟ではあるが、魔王候補者の端くれだった。魔王には、魔物を自由に使役するスキルが生まれながら持っていものなのだ。
「我が名はイリス・マンダリン。我が名において命ずる。我の僕になりて敵を平らげよ」
「……」
一瞬。ゴブリン大将軍は、イリスの命令に逆らおうとしているようだった。
そこで、イリスは、再度、魔物の使役のスキルを発動した。
「今一度命ずる。我が名によりて命ずる。我が命令に従って敵を討て!」
イリスは、少し強く言った。
「……。承知しました。イリス様の命令によりゴブリンどもを殲滅してまいります」
ゴブリン大将軍は、夢遊病者のようになって、いきなりゴブリンの群れに走って行った。
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この時、翔は、ゴブリン将軍とゴブリンの高級将校達に向かって駆け寄っていた。
「『爆洪』『爆氷』」
翔は、第七グレイドの魔法を連続で、発動した。
いきなり何処からともなく大量の水が湧き出てきてゴブリン達を飲み込んだ。次の一瞬後、全ての水と言う水が凍りついた。
「『爆炎嵐』!」
更に翔は、第七グレイド魔法『爆炎嵐』を唱えた。
硬く凍りついたゴブリンと大量の水は、一瞬で熱せられ直ちに熱湯になり蒸発した。
レベルの低いゴブリンは、ここで力尽きた。
この時、翔は、召喚したデュラハン達を、半壊のゴブリン軍団に、切り込ませた。
もともとデュラハンは、個体では、ここにいるゴブリン達よりも遥かにランクの魔物なのだ。瞬く間にゴブリンは、狩られて行った。
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【戦いの後】
この日、アメリアは、ゴブリン元帥と刺し違えた。復活障害は、翔が取り除いた。
復活早々にアメリアは、メロのゴブリン大将軍との闘いで圧勝したとの話を聞いて、復活障害で失ったレベルを回復するために、一人で、ゴブリン退治に出て行った。
アメリアが出て行ってから、直ぐに爆発音が響いていたから、退却しようとするゴブリンの軍を攻撃しているのだろう。
イリスは、部下にしたゴブリン大将軍が殺しまくった経験値が、自分の物になる事を知り、調子に乗った彼女は、その後、近づく高レベルゴブリンを皆配下にしまくったため、魔力が枯渇して魔力症になりダウンした。
レイラは、そんな彼女達とは、別に、友達のペガサスを呼んで、八千二百名の難民全てを『始まりの街』に避難させる事に成功した。
翔は、今日の殊勲者は、レイラだと褒めた。
一度に、難民が流入した『始まり街』では、大変な事態になった事を改めて実感した事だろう。
翔は、五人のゴブリン将軍と二百余の高レベルゴブリン貴族を殆ど瞬殺したあと、防御魔法で固めている本軍に向けて、第七グレイド魔法を何十発も食らわせていた。
ゴブリン軍は、翔の広範囲魔法の連発に徐々に数を減らして行ったのだった。
この日、翔が退治したゴブリンは六桁に及んだ。午後三時頃。ゴブリン軍は完全に撤退して行った。
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【ゴブリン本軍】
大木が組み合わせられて、大規模な荷車が組み上げられていた。その荷車の台車の中には、高台が作られ、巨大な玉座が設えら
れていた。
その玉座には、体長三メートル余の巨大なゴブリンが座していた。
玉座に座るゴブリンは、見た目は、人族と、ほとんど変わらない。美しい顔立ちですらあるが、その額には長い角が何本も左右対象に生えていた。
そして、玉座の前には、同じぐらいの体型のゴブリンが、高価そうな僧侶の衣装を着て平伏していた。
頭の角は玉座のゴブリンと同じくたくさん生えていた。
彼は、ゴブリン大主教だった。
「尊き御方。ご命令の通り、先陣の軍を、一旦、後退させました。明後日、本軍と合流させる予定です」
ゴブリン大主教が恭しく報告した。
「左様か。ご苦労」
玉座に座るゴブリンが答えた。
「先陣の軍団から、司令の大元帥、大司祭、大賢者の三名が、敗北した責任をとって自刃し、大敗の責を全うしたいとの嘆願が入っております」
「自刃は、許さぬ。闘って死ぬ栄誉を与えよう」
玉座のゴブリンが言った。
「ありがたきお言葉。かの者たちは、名誉が保てる事を、喜ぶでしょう。直ぐに知らせを送ります」
「良きように計らえ」
「もし、かの三人と共に闘いを望む部下がおりました場合は、いかが計らいましょうか」
「ランクが騎士以下のもの達は、まかりならぬ。貴族以上は、自らの意思を尊重させよ。決して強要させぬよう大司祭、大元帥、大賢者共を三十名程選定し総監として、派遣し軍の運営を総監させよ」
「尊き御方のご命令の通りに」
ゴブリン総大主教は、恭しく平伏しつつ答えた後、その姿のまま後退った。
天幕の端まで後退り、大主教は、そこで、後ろに振り返えった。彼の前には、三百の騎馬が百名ずつ、三つ塊になって騎乗していた。
大主教が振り向くと、その三百の騎馬達は、馬上から一斉に敬礼した。
その三百の騎馬達は、なんと、百名のゴブリン大将軍、百名の大元帥、百名の大賢者だった。
「お前達の中から、下位レベルの者から十名ずつ、先陣の軍まで急行し、軍を総監せよ。先陣の軍の司令部の大元帥、大司祭、大賢者の三名は、敗北の罪を許されて、戦う栄誉を頂戴する事になった。なお、彼等の部下の貴族以上は、己の意思にて、この者達の援助を許す。それ以外の先陣の軍は、可能な限り温存し本軍と合流させるのだ。行け!」
大主教は、叫ぶと、それぞれの百名の一団の中から十名ずつがもう一度敬礼してその場を離れた。
「全軍。進発!」
大主教が合図すると、大地を埋め尽くすゴブリンの本軍が移動を始めた。
ゴブリンの王となるべき皇太子とゴブリンの最高権力者の大主教が載っている天幕が張られた巨大な台車が軋む車輪の音を響かせながら動きだした。
台車の周りを三十名が総監として出ていったため二百七十名となった大元帥、大司祭、大賢者達が取り囲んで行軍が開始された。
彼等の前後には数千もの高レベルのゴブリンが、ゴブリンプリンスを守る為に、並走していたのである。
大地を埋め尽くすゴブリン軍が翔達の要塞に到着するまで後三日程度が必要だ。
すみません。16日に訂正した時に、半分眠っていたんだと思います。再度訂正しました(言い訳です)ごめんなさい。




