027ー2 ゼノ要塞城の狂騒『第一幕』シーン2
【修行履歴】
2019年11月23日
①27話を5分割しました。
②文章の訂正をしました。
③主人の思考を表す、表現方法の変更をしました。
復活の天宮は、直ぐに完成した。シスターサラが、上位のシスターに昇格し、復活の天宮を召喚する神技をマスターしていた事が大きかった。さすがに、シスターサラと言うべきか。
完成した復活の天宮は、試すわけにもいかないが、冒険者や難民達の精神的な支柱になった。
夜の九時頃、ゴブリン軍の先鋒約七千五百が要塞城に着いた。
翔も、要塞から打って出て、最前線で戦った。今度は、前衛をイリスとレイラが守り、中衛を翔とアメリアが、後衛をメロが守った。
“剛腕“の正メンバーは、その更に後衛の左翼に、“火神の杖”が同じ後衛の右翼を守った。
ゴブリン軍は、“火神の杖”が調べた通り、最低のクラスでもホブゴブリンに成長しており、S級ランクパーティーの“剛腕”や“火神”のメンバーでも、かなりシビアーな戦いとなった。
イリスとレイラは剣技により、最前線のゴブリン達を倒して行った。翔は、防御魔法と攻撃魔法を同時に発動し、アメリアは、防御魔法と治療や補助魔法を担当した。メロは好き勝手に魔法攻撃を連発していた。
後衛の“剛腕”と“火神の杖”は、翔達の攻撃から漏れたゴブリンが左右から襲ってきたのを担当した。
「アルマの姉御。あの連中は、確かに凄いが、戦いでは割とこじんまりとした魔法しか使わないな」
“剛腕”の正メンバーである預言者のゲルマン・ソホフが言った。正にその時、彼らのはるか前方に巨大な火花が立ち上がった。
「言った矢先だな。あれは相当大きな魔術じゃないのか?」
“剛腕”のリーダー。アルマ・ベストがニヤリと笑いながら言った。
「あれは、第七グレイドの『爆砕』のようですね」
答えたのは、魔術師マリレーナ・リピーニだった。
「あいつは、無差別攻撃に向いた遠距離魔法の最高峰です。凄い」
「マリレーナ。お前も、少しは、その遠距離魔法でもぶっ放して貢献しなよ」
アルマが命じた。
「了解!」
魔術師マリレーナ・リピーニは、そう言うと第五グレイドの『炎海』の詠唱を始めた。
「ララ。俺達も第五グレイド魔法『岩弾雨』で攻撃するぞ」
“火神の杖”リーダー。ラビノビッチ・バシコフがそう言うと詠唱を始めた。彼は短唱技で詠唱を短くする事ができる。
直ぐに術式が完成し、魔法を発動。
「『岩弾雨』!」
石飛礫が広範囲に渡って、雨の様に降り注いだ。
その直後に、剛腕の魔術師マリレーナ・リピーニの第五グレイド魔法『炎海』が発動し、炎の海が出現した。石飛礫の雨と炎の海広範囲のゴブリンを仕留めて行った。
ラビノビッチの魔法の効力が無くなる間際にララ・ラッセの『岩弾雨』が発動し、ラビノビッチの魔法よりやや弱いが、同じような石飛礫の雨が降り注いだ。
アルマは、前方を見るとメロが両手を左右に広げて魔法陣を展開しているのが見えた。いつの間に魔法陣を展開したのか。その速さもさることながら、美しく鮮やかな魔法陣に、さすがだと、アルマは、驚いた。。その魔法陣は、手から放たれ、第六グレイドの『爆発』になって、前方の二箇所に巨大な爆発をもたらした。
「何て魔法を、同時に……」
ラビノビッチは、呆れて呟いた。
その時、メロの横からレベル28ゴブリン貴族が剣を振りかざして、飛び込んで来た。
メロは、杖で軽くいなした。一瞬遅れて、アルマが目にも止まらない斬撃をゴブリン貴族に見舞った。
「アルマ。ありがとう」
メロは、笑いながら礼を言った。
「これぐらいしかできんので申し訳ないな。もう少し魔法を学んでおくのだった」
アルマは、申し訳なさそうに、言いながら、次に、飛び込んで来たゴブリン貴族を袈裟懸けに斬りさげた。
メロは、腕をクルクルと回した。それに合わせて要塞城から一斉にサラマンダーの炎が吐き出された。
要塞城の外周にある擁壁の上に、配置された、数十ものサラマンダーは、砲台のような役割を担っていた。サラマンダーの遠距離火炎放射が森林の奥に放たれて行った。
サラマンダーの凄まじい火炎放射は、要塞の周りを真昼のように照らし出した。
メロは、今度は、逆の手を回した。その合図で、要塞の屋上から数十もの数のワイバーンが、空に飛び立った。ワイバーン達は、一旦、空に上がると、直ぐに急降下し、城から離れたゴブリンに向かって、空中から、火炎を吹き付けた。
前衛のイリスと中衛のアメリアは、メロと同じように、合図を送った。
彼らの後方に、待機していたデュラハン隊と精霊達が凄い勢いで、森林に入って行った。
翔達は、その間、ゴブリン達の攻撃が止んだので、一息ついた。
しかし、この時。
「前方に強い個体が近づいてる」
メロが大声で報告した。
「止まれ!」
メロの報告を聞いた、翔が命じたため、皆は、直ぐに、停止した。
翔は、直ぐに、マジックバックから金棒を取り出した。
その直後だった。前方からデュラハンの足首を片手で引っ張っるような形で、デュラハンを引きずりながら、近づいてくる巨大なゴブリンがやって来たのは。
魔人のイリスは、それを見た瞬間に、すすっと、前に出て来た。
その動きは、走るように早かったので、翔も、制止できなかった。
イリスは、そのまま、つつつーーーと、滑るように、巨大なゴブリンの手前まで近付いて行くと。
「その子を、放してもらいましょう」
暗黒魔法により、真っ黒い剣を虚空より取り出して、構えながら言い放った。この時、イリスの白目には、怒りで、血管が浮き出ていた。
直ぐに、アルマも、イリスの援護をするために、駆け寄ろうとしたが、それを、翔が止めた。
「イリスは、自分が召喚した死霊をコケにされて相当、怒っている。あいつが、本気で暴れている最中は、味方と言えども近寄らない方が良い」
翔の説明に、アルマは、怪訝な表情を向けた。
イリスの前に立つ、巨大なゴブリンは、イリスの姿を見るや、野太を放った。
「この弱い死人は、お前が召喚したのか?」
巨大なゴブリンは、嘲笑うように、顔を歪めながら、片手でデュラハンを振り回しながら言った。
アルマは、その様子を見ていて、このゴブリンは、危険だと判断した。
「あいつは普通じゃないぞ。レベル50のデュラハンを、オモチャにしているのは、常状じゃない」
「ああ。あいつはゴブリン大将軍とか言う、歴史上初めて見るゴブリンのようだ。レベルは62もある」
「「「ろ、62だと。」」何を悠長に。イリスがやられるぞ」
アルマ達が叫んだ。
「イリスは、狂戦士だ。下手に味方が周りに居ない方が、実力を発揮するんだ。もしもの時は、復活魔法を掛けているから心配するな」
「復活魔法か。本当にそんな凄い魔法が使えるのだな。確か、復活魔法は、最高グレイドのはずだ。しかし、復活魔法も、絶対では無いのだろ?」
アルマが言い募ろうした時、裂帛の気合いをイリスが発した。
イリスは、目にも止まらない素早さで暗黒の剣を振りかざし、ゴブリン大将軍に切りかかっていた。
そして普段のイリスとは思えないような叫び声をあげ、強烈な一撃を振り下ろした。
ゴブリン大将軍は、か弱そうな、女の子の攻撃だと、たかをくくっていたのだろう、イリスの鋭い斬撃をぞんざいに、片手で受けてみて、その強烈な威力に狼狽えていた。
ゴブリン大将軍は、態勢が整わず、完全に腰が引けていたため、狂戦士のイリスによる、狂人だけが出すことのできる鋭い剣圧に押されて、吹っ飛んだのだ。
その威力の凄さに、ゴブリンだけでなく、剛腕や火神のパーティー達も、驚いていた。
不覚を取った事が、よほど腹立たしかったのか、ゴブリン大将軍は、気が狂ったように、遠吠えをあげて、イリスに反撃し始めた。
ゴブリン大将軍は、目にも止まらない、斬撃を、力の限り、無茶苦茶に振りまわした。
イリスは、その目にも止まらない滅茶苦茶な斬撃の全てを、暗黒剣で、受けていた。
「アルマ。出番だぞ」
翔は、笑いながらアルマを誘って走りだした。
アルマは、イリスに助っ人に行くのだと判断して、『イザ!』と、無言で闘気を腹に落とし込んで、剣を抜くと、ゴブリン大将軍に向かって走り出そうとした。
「そっちじゃない。俺について来い」
しかし、翔は、アルマの手を取ってゴブリン大将軍とイリスの二人を迂回して森林の方に走って行くではないか。
剛腕のアルマは、イリスとゴブリン・アークジェネラルとの戦いが気になって、視線を向けた。イリスは、豪快なモンスターの攻撃に、少しもたじろぐ事無く、逆に圧倒しているように見えた。
この時、レイラとアメリアも、アルマ達に付いてきたが、二人で何かを話し合っていた。
「どうしたのだ?」
アルマは、二人の表情を見て、何か良くない事が起きたと悟って、尋ねた。
「あの遠吠えは、自分を鼓舞する為だけではなく、仲間を呼ぶための遠吠えのようだ。強そうなのがかなりの数、こちらに近づいてくるのだ」
翔は、アルマに状況の説明をした。
直ぐにゴブリン貴族達が魔獣の騎馬アハイシュケに騎乗して、凄い速度でやって来るのがアルマにも見えた。
そのゴブリンの騎馬隊を最初に攻撃したのはレイラだった。
「第六グレイド剣技『斬風殺』!」
レイラは、そう叫びながら剣を大きく横に切り込んだ。すると、剣から閃光が走り、まだかなりの距離あったが、ゴブリン貴族騎馬隊十数騎が吹っ飛ばされた。
「おお。レイラ。そんな技が使えるのか?」
アルマは、驚いてレイラに言った。
「虫も殺さないような可愛い顔で、恐ろしい剣技を使うもんだな」
「当然だ。彼女は、我々の中で一番レベルが高い半神だからな」
アメリアは、笑いながらアルマに説明した。
「彼女は、元々は『試練の間』の教官だったんだ」
「何? すると天界の人間なのか?」
アルマは、驚いて問い質した。
「彼女は、女神ブリュンヒルデ様の直弟子だった」
「何。それじゃ、ルートの運営側の人間じゃないか」
アルマは、あまりの事に、驚いて、叫んでいた。
「翔は、最初全くレイラに歯が立たなかった。しかしルートの最後にはレイラを破り、仲間に入れてしまった」
「翔は、それほど強いのか?」
「今の翔の実力は、レベル70を超えているだろう」
アメリアは、囁くように言った。
「しかし、私も他のメンバーも翔に負けないように頑張っている。
でも翔も私達も、まだまだこれからだ。今回のゴブリンとの戦いが終わる頃にはもっと強くなって……」
しかし、アメリアの声は、最後までアルマの耳には届かなかった。アメリアがあまりにも素早い動きで移動して、かき消されて聞こえなくなったからだ。
アメリアは、凄まじい高速度で移動してアッと言う間にゴブリン貴族達の所まで、飛んで行き、攻撃を叩き込んだのだ。
それにほんのすこし遅れて、翔も、アルマを置いて、凄まじい速度で、ゴブリン貴族に攻撃を加えた。
────この少年は物理攻撃も………何と私にぁ、足元も及ばないレベルじゃないか。
アルマは、一瞬呆気にとられるが、彼女も次の瞬間には、意を決して翔達の横まで飛び込んで行き、並んで攻撃を仕掛けていた。
翔にアレンジしてもらった剣は、非常に硬くしかも木でできた剣のように軽かった。そのため、攻撃も嘘のように遠くまで届いた。五十センチ、リーチを伸ばしてもらった効果が、これほど効果的だとは思わなかった。
武器の善し悪しは、レベルが数段上がったような感覚を覚えた。
思えば、武具に掛けられた魔法の効果で、攻撃力などもかなり上がっているのだ。その上、魔精結晶を飲んで、ステータスが大幅に上がっていた。
アルマは、面白いようにゴブリン貴族達を切り捨てて行った。
何十匹も切り倒した時、アルマは本当に、久しぶりにレベルが上がって52になっていた。
────嘘だろ。こんなに簡単にレベルが上がっていいのか?
アルマは、不思議だった。
「アルマ。大丈夫か?」
その時、アルマの耳元で翔が呼びかける声がした。
────何を言っている?
アルマは、怪訝な表情で翔の方を見た。
肩で大きく息をするアルマの横に、翔が、並んでいた。その時、ゴブリンの断末魔の叫び声がアルマの耳を打った。
アルマは、そちらに視線を向けると、ゴブリン貴族が馬から落ちて行くところがスローモーションのように見えた。
────翔が助けてくれたのか·····
アルマは、ぼんやりした頭で考えていると、彼女の身体がふわりと宙に浮いた。翔に担がれたのだ。次の瞬間にはアルマは、メンバーのリーザ・リンガーに手渡されていた。
「大丈夫か姉御。やられたのか?」
リーザ・リンガーは、心配そうに聞いてきたが、アルマは、息が切れて何も答えられなかった。
後で考えるとアルマはハイ状態で、ずっと闘っていて意識が朦朧としていたのだ。それ程ゴブリン達との闘いが濃密だったのだ。
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一方イリスは、ゴブリン大将軍の鋭い突きを黒剣で激しく跳ね上げると、手を突き出して第五グレイド魔法『電撃牢』を発動した。
ゴブリン大将軍は電撃の檻に囚われて、激しい電撃を受けて痛みに絶叫した。『電撃牢』は、高グレイド魔法では珍しい単体攻撃魔法だ。それだけに与えるダメージは大きい。
しかし、ゴブリン大将軍は、電撃に構わず両手剣を大きく振り下ろして来た。
イリスは、華奢な体からは想像もつかない膂力を発揮てして、その攻撃を激しく弾き返し、そのまま、開いたゴブリンの横腹に黒剣を猛然と、叩き込んだ。
この鋭い一撃は、防御力の高いゴブリン大将軍の鎧を貫いて大きく切り裂いた。
「グギャー!!!」
ゴブリン大将軍は、絶叫とも咆哮ともつかない声を上げて大きく後ろに飛び下がった。
「お前達は、何者だ?」
ゴブリン大将軍は、驚愕で目を見開け、醜い顔を更に醜くして聞いた。
「下賤の魔物の分際で私に刃向かう愚か者が」
イリスは、ゴブリン大将軍だけに聞こえる声で言った。
「我が名はイリス。我が名により命ずる。下賤の魔物よ。私の前に跪くが良い」
「馬鹿か、そんな事をするわけがなかろう。な、何だ。なぜ……。身体が勝手に動く……」
ゴブリン大将軍は、必死で抗おうとするが、イリスの魔物支配の力を前に、直ぐに屈して地面に両手、両膝を地面に付けて頭を下げたのだった。
次の瞬間、イリスの斬撃がゴブリン大将軍の首を切り落としていた。




