021ー4 ベニベドルの後釜
【修正履歴】
2019年10月9日
○第21話を4分割しました。
○分りにくい表現を訂正しました。
○少し加筆しています。
○主人公等の思考を表す表記の方法を以下のように変更しました。
(主人公等の思考)
↓
────主人公等の思考。
なお、この変更は、順次行っています。
表記がしばらく混在しているので、お許しください。
【天界】
「レイラ。今回は少し苦戦していたじゃないか」
ブリュンヒルデが言った。
「はい。驚きました。レベル13程度の冒険者にあそこまでやられるとは」
レイラが答えた。
「彼等は、ハッキリ異常だ。あの翔という少年の異常な魔術師としての才能と言い、今度仲間になかった蝕の幼生の闘気と言い。お前が苦戦するのも仕方がないよ」
ブリュンヒルデが慰めるように言った。
「あの子達は、ブリュンヒルデの秘蔵っ子には収まりきらないわよ」
ヴェルダンディが横から笑いながら言った。
「レリエルの悪戯がラグナロクの回避の鍵となると言うのは、彼等の事なのか?」
ブリュンヒルデがヴェルダンディを見つめながら聞いた。
「レリエルちゃんは、まだまだたくさん悪戯をするわよ。それがこのユグドラシルの命運を左右する大事件に発展する火種なるのに、あの子だけが知らないのよ」
「お前達、運命女神は曖昧な言い回しが多過ぎるぞ」
ブリュンヒルデは、不満そうに言った。
「仕方がないのよ。私達が下手な神託をすると未来が大きく変わるわ。そうすると未来への布石が全て台無しになるもの」
ヴェルダンディが答えた。
「それより。レイラちゃん。あなた、今のままで良いの?」
急に話題を、ヴェルダンディから、振られたレイラは、ドギマギした。
「レイラちゃんは、まだまだ、実力的にはあの子達よりずっと上だけど、最後まであの子達の後見役をできるのかしら?」
ヴェルダンディの質問にレイラは答える事が出来なかった。
レイラは、自分自身の修行の在り方を、もう少し厳しく見直す必要がある事を身にしみて感じていたのだった。
唇を噛んでうつむいているレイラを見てブリュンヒルデがニヤリと笑みを漏らしていた。
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【復活の天宮】
翔達は、レイラとの戦いに敗れて、復活都市の復活の天宮に、復活した。
また一からやり直しの形だった。
シスターサラは、また、復活した、翔達を、見て、今回は、仲間が一人増えている事に、驚いていた。
それと、翔達の復活障害が小さい事にも驚いていた。
「皆さん。久しぶりです。半年ぶりでしょうか」
シスターサラが言った。
「ああ。シスター。久しぶりだね」
翔は、シスターに渡された服を着ながら答えた。
「皆さん。雰囲気が随分変わられましたね」
シスターは、目を細めて翔達を見た。
「シスターも司祭になったようだね。出世じゃないか」
翔は、そう言いながらシスターの肩に手を置いた。
シスターは、上手にその手を避けながらイリスの様子を見に行った。
イリスは、初めての復活で強い障害を受けているようだった。
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【スタバンゲル街道にて】
翔達は、今回はのんびりとした歩調で、スタバンゲル街道を下っていた。
イリスに旅を楽しんで貰いたかったのだ。
街道を下りながらイリスに剣の稽古をしたり、メンバーの戦うフォーメーションを練習したり、情報の交換も行った。
楽しい旅になった。
時々出てくる魔物を相手にいろいろ試行錯誤を試してみた。そして、一つ分かったことがあった。
ここ、スタバンゲル街道では、闘気を強く込めると、弱い魔物が近づかなくなったのである。
目一杯、闘気を出しても、水晶迷宮の魔物は、どんどん出てくる。スタバンゲル街道との魔物のレベル差だと思われた。
スタバンゲル街道で、再び貴族の従者で騎士見習いのイレーネ・ハウザーと出会った。
今度は、翔達が徒歩だった事も有って、騎馬のイレーネ達とは黙礼する程度のすれ違いとなった。
『イレーネ・ハウザー。17歳。騎士。サブ職業魔法剣士。レベル25。クラン名“F旅団”。ランクC。パーティ名“Fとお供”』
イレーネは、レベルが七つも上がり、サブ職業にも付いていた。25と言えば相当なレベルだ。
「おい。あれは噂のベルゲン山脈ルートマスターの“Fとお供”じゃないか」
翔達の近くにもいた冒険者の声が聞こえた。
「すげぇ奴らもいたもんだ。瞬く間に、二つのルートマスターだもんな」
別の冒険者が言った。
翔達が迷宮に潜っているうちに、イレーネ達は更に有名人になったらしい。彼等が通ると手を振る者もいるようだ。
「翔。イレーネ凄いね」
メロは喜んで手を叩いている。
「イレーネ!」
メロは、イレーネを呼んで手を振った。
イレーネは振り返って微笑むと、手を軽く振ったが、そのまま走り去った。
「サブ職業についていたね。イレーネ凄い」
手放しでメロは、喜んでいる。
「お前の方が実力は上だと思うぞ」
翔は、指摘した。
「ありがとう。でもイレーネは、レベル25だった」
メロが答えた。
「俺達は、厳しいところを行ってるからな」
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【翔達は再び水晶迷宮に入り深層を目指していた】
「イリス。そろそろ慣れたか?」
翔は、尋ねた。
「翔。慣れたかと聞いているのは、その手の事か?」
イリスがサワサワと背中を撫でる翔の手を指差して聞いた。
「翔がソフトタッチしてくるのは承知でメンバーになったものの、その行為には意味があるの?」
イリスも不思議そうに尋ねた。
「何を言っている。スキンシップは、コミニケーションの重要な手段だ。特に男女の人間関係には、より密接なスキンシップが介在することが一般的だ」
翔が、訳の分からない理論を述べた。明らかに屁理屈だった。嫌がらないことをいい事に可愛い女の子を撫で回しているだけだ。
メロが見かねて、撫で回す翔の手を強くつねってイリスから離させた。
「翔。嫌がらないからってタッチがエスカレートしてはダメ。私が許さない」
メロは、翔を睨みながら言った。
「ほい。ほい。わかったよ」
そう言いながら翔は、今度はメロの頭を撫で撫でした。
それには、メロは異を唱えなかった。
「メロ。翔に撫でられるのは嫌じゃないのか?」
今度は、イリスが不思議そうにメロに聞いた。
「頭を撫でられるのは気持ちいい。マッサージになる」
「お前はネコか犬みたいだな」
翔はそう言いながら、メロのトンガリ帽子を被せてやった。
「翔は、撫で撫でして、何かいい事あるの?」
イリスは、本当に不思議そうに尋ねた。
「俺も、お前達の手触りの良い髪の毛や、柔らかな肌触りなんかを触っていると気持ち良いし安心するのさ」
翔は、珍しく真面目に説明した。
イリスは、不思議そうに首を傾げた。
「イリス。手を貸してみろ」
「え? こう」
イリスは、翔の言われたままに手を出した。
メロが、スッと近寄って二人の間に入ろうとするのを真面目な顔で翔が遮った。
差し出されたイリスの手を翔がそっと両手で包み込む。
「目をつむって俺の手の肌触りを感じてみてくれ」
イリスは、翔に言われた通りにした。
「人と人は肌で触れ合うと、とても落ち着くようにできている。そう思わないか?」
翔が尋ねた。
イリスは、翔に両手で手を包まれてみて、翔の言われるままにお互いの肌の感触を感じてみた。
確かに何も触っていない方の手と比べると気持ち良いような、安心するような感触だと分かった。
「何となく……分かるわ」
小さくイリスが言った。
「そうか。分かってくれたら嬉しいな」
「イリス。騙されちゃダメ。翔のは、今の説明が少しで、ほとんどはエッチな気持ちで触っている」
メロは、イリスの手を翔の手から無理やり剥がしながら言った。
「エッチとは、なんなの?」
また、イリスが尋ねた。
「エッチは、女性の敵。男は、そのうち好き勝手に嫌らしい事をする」
「俺も節度を持っているつもりだが」
「翔は、少し簡単に触り過ぎだ。そんなに女の子の身体が触りたかったら私の身体を触りたいだけ触ればいい」
アメリアが豊かな胸を突き出して言った。
翔は、目を輝かせてアメリアに近づこうとするが、メロが間に入って止めるのは、毎度のことだった。
「ダメ。アメリアは、翔には勿体無い」
メロは、翔を睨みつけながら叱りつける。
「まぁ。そうだな」
翔は、案外簡単にメロの意見に同意してみせた。アメリアの価値を高く評価しているのだ。尊大が服を着て歩いているような男だが、他人を尊重するのは彼の美徳でもある。
イリスは、そんな皆を見ながらやはり良く分からないと首を捻っていた。
☆
水晶迷宮の新たなる試練が始まった。
翔が迷宮でのイリスの闘いぶりを観察したところ、イリスは、手から不思議な黒い剣を出して闘うこことが多いようだ。
魔物は、大抵、その剣に貫かれて死んだ。しかし、イリスの攻撃は、トロールのベニベドルが評する単調な素人剣法だった。
そこで、翔達は、時間をかけて巨鬼のベニベドルに習った剣をイリスにも教え込んだ。
闘気については、さすがに魔王の幼生のイリスは、生れつきマスターしていた。それどころか翔達が自然に会得した闘気に対して、様々な欠陥を指摘してくれるほどだった。
黒い剣や黒い塊は、闘気の応用技なのだそうだ。
イリスによると、うまく闘気を操ると攻撃にも、防御にも、魔法にもなるのだと言う。ただしイリスも多分に理論先行で、実際には使えない技が多く、その点、翔と良く似た所が有った。
彼らは、お互いの技を共有しつつ、お互いを補い合って、深層に向けて進んで行った。
しかし、イリスが入ったおかげで、翔達は、復活の回数が、多くなってしまった。
一つには、イリスに経験を積ませるために前衛を任せたからだった。
そして、彼らが、水晶迷宮の、深層に達するころには、彼等は最初から同じメンバーで闘ってきた馴染みのパーティーのようになっていた。
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【第百層】
大きな扉は、イリスを見つけた時と同様に大きく開いていた。
「前のままだな」
翔は、周りを見回わしながら、言った。
ドアの中は、明るい日差しで眩しい。
彼等は、中に入って行った。大きな空間の中に有った、どう言う仕掛けか、ハリボテの宮殿は、無くなっていた。
中央付近に、大きな魔物の陰が見えていた。
「あれが、水晶迷宮のラスボス?」
メロが言った。
「巨鬼だな」
翔だ。
「あいつは、ベニベドルが言っていた奴じゃない?」
メロは、ベニベドルの別れ間際に言っていた言葉を思い出して言った。
「ベニベドルの後釜となる巨鬼は、なかなかの剣の腕前だと言っていたな」
翔も思い出した。
近付いて、改めて見ると、巨鬼は、見上げるほどに大きかった。巨大な金槌を片手に持って、振り回している姿が迫力満点だった。
見るからに重そうな金槌は、振り回される度にビュンビュン風切音を立てた。
翔達からかなりの距離があるだろうが、その音は、ハッキリと聞こえた。それだけで金槌の威力の凄い事が想像できた。
「行くか」
しけし翔は、臆する事無く皆を促した。
翔は、闘気を全身に纏うと共に、武器である金棒にも強い闘気を送り込んだ。途端に巨鬼の回す金槌が鈍く感じられるようになった。
翔が走り出すと、メロは精霊魔法で七精霊の一つである大精霊を呼び出した。
その召喚獣である森精霊の力を借りて地面から木や根を生えさせて、巨鬼の脚に絡みつかせた。
巨鬼は、慌てて脚に絡みついた根や枝を払った。
そこに、翔はタイミング良く、金棒を巨大化させると、巨鬼に叩き込んだ。
巨鬼は、慌てて金槌を振り上げ、翔の攻撃を避けた。
その隙を狙ったのがアメリアだ。飛翔の技で急降下し、巨鬼の脚に切りつけた。
思わず巨鬼が「「「ぎゃーぎゃー」」」と喚いた。
ベニベドルと同じ種族とは思えなかった。
しかし、その声は悲鳴かと思ったが第二グレイドの魔法だった。魔法の術式を表す魔法陣が現れたのだ。
すかさず翔は、その魔法陣の術式を書き換えて無効化した。
イリスは、闘気を十分に蓄えると巨大で真っ黒な塊にすると、巨鬼に投げつけた。
エネルギー化した闘気の塊が巨鬼に直撃すると、閃光とともに大きな爆発を引き起こしたのだった。
しかし、巨鬼は、さすがにそれだけでは死ななかった。丸焼けになってもしぶとく炎の中から飛び出してくるとイリスに向かって、突進してきたのだ。しかも大火傷が凄い速さで回復していくのが見えた。
メロは、精霊魔法で谷精霊に、呼びかけて、地面に大穴を穿らせた。
巨鬼は谷精霊の作った穴に悲鳴と共に落ちて行った。谷精霊が無情に穴を閉じて行く。大穴の遥か底から巨鬼の断末魔の悲鳴が微かに聞こえた。
「凄まじい回復力を持った奴だったな。手こずった。あんなのがたくさん出てきたらと思うと俺達もまだまだだな」
翔は、ため息と共に言った。
巨鬼が落ちた地面の上にキラキラ輝く結晶が出現した。
「あれが魔精結晶だな」
こうしてようやく魔精結晶を採取することに成功したのだった。
【水晶迷宮。第百層攻略】
○翔 レベル16【3UP】
○メロ レベル17【3UP】
○アメリア レベル17【3UP】
○イリス レベル16【2Down】
021 了




