001ー2 これって、転生? 死んでないんだけど?
翔は、ここに来て、自分が転生の魔術に巻き込まれたらしいと気付いた。
先ず、現状をこの女に分からせて暴挙を阻止しなければならないだろう。
「まてまて。どんな神聖な機器を持っていようが、魔法陣に誤りがあれば誤動作するに決まってるだろうが。俺は死んでなんかないぞ。お前は死んだ誰かと間違えて生きてる俺を呼び寄せたんじゃないのか?」
翔は、最も重大な誤りを指摘した。死んでもいない者を無理やり転生させるなど殺人じゃないか。
図星だったようで、女は見るからに狼狽えていた。
「黙りなさい。私は、転生を司る女神フォーチュナー様に仕える転生天使レリエルよ。天使に誤りはあり得ません」
もはや言い訳を通り越して強弁だ。言い繕う気もないらしい。
「だから、神聖四文字が間違ってるだろうが。お前の神聖四文字はヤーヨかい」
「お黙りなさいと言ってるしょうが」
転生天使レリエルは、目を怒らせて唸るように言った。それだけでなく、明らかな攻撃魔法を構築しようとしているのが分かる。無詠唱だが翔には手に取るように見えるのだ。
「待て待て待て。どうして攻撃してくんだよ」
翔は、驚いて、レリエルが構築しようとする危険な魔法を妨害する為に、魔法の基礎部分に軽いラップ魔法を混入させて亀裂を走らせた。
────しかし、この天使の魔法。信じられんくらい稚拙な魔法を使うな。
翔は呆れた。魔法が稚拙な上に与えた魔力が大き過ぎるのだ。いつ暴発してもおかしく無い。ダメダメ魔法だ。
天使の魔法は、翔が混入させたラップ魔法のせいで発動する前に崩れ去った。
上手く発動しない魔法に天使レリエルが驚いてた。
「何したのよ」
自分を睨みつける天使に翔は少し呆れてしまった。
「お前、そんな大それた魔法を使ってもし当たったら本当に死んじゃうじゃないか」
「当たり前でしょ。貴方が生きていたら私の失敗が白日の下にさらされてしまうじゃないの。せっかく権天使まで駆け上ったのに……。あなたを立派に転生させてあげるからとっとと往生しなさい」
天使にあるまじきメチャクチャな話に翔は呆れてしまった。
「お前のような性悪天使が第七位天使だと。大天使よりも上位とは。天界も世の末だな」
高慢不遜な男。翔は鋭く突っ込んだ。
「あなた。本当に失礼な奴ね。あなたは魔法がとてもお得意みたいね。魔術師としての資質は、能天使以上のようね。しかし調子に乗っているんじゃないの。私にはこの神器があるのよ。ふふふっ。あなたにお似合いのところに転生させてあげるわ」
レリエルは恐ろしく邪悪な笑みを浮かべながら言った。
────こいつ。まさか本物の天使か?
翔の疑念が高まった。
何よりも死んでもいない者を転生させるのは無理がある。その上使うのが聖属性の神器とあってはこの天使の思うように翔に打撃を与える事は無理なような気がするのだ。
「ふふふっ。あなたのご自慢の魔法の力は軒並み下げさせてもらうわよ。覚悟なさいね」
────こいつは、転生の理が平等って事が分かっていないようだ。それを覆すのは絶対に無理だろうに.......
翔は、ここに来ても平然と天使レリエルの行動を興味深そうに眺めるだけで慌てる素振りも無かった。ある意味凄い胆力の持ち主と言えるだろう。
一方の天使レリエルは自分の悪巧みに悦に入り、くつくつと嫌らしい笑いを浮かべて言った。
「貴方には、魔法を使えなくした上に私たちの魔法優先の世界に送り付けてやるわ」
天使レリエルは勝ち誇ったように更に背を反らして宣言した。
────こいつ絶対にS女だ。
天使レリエルはもはや狂っているとしか思えなかった。
「どう。泣いて謝るならあなたのような優秀で可愛い男の子なら私の召使いにしてあげてもいいわよ。あなたを私の椅子に任命していつも私の美しいお尻に背中だけ触れられる権利を与えてあげるわ」
レリエルは、そう言いながら、好色そうな熱い視線を翔に投げかけた。天使のくせに艶めかしさがパない。自分の色香にはどんな男も逆らえないと信じているのだ。男への侮蔑が著しいのだろう。
レリエルのこの侮蔑の眼差しが生きる尊大男である翔を完全にキレさせてしまった。
「お前。本当につくづくどうしようもないバカだろ。つまらん脅しをかける暇があったらできることをやってみろ」
────言っちゃったな。
翔は心の隅でそんな事を思いながらもスッキリした気分になる。死んでも負けるは嫌な翔だ。言い返さねば気が済まないのだ。馬鹿とも言う。
今度こそレリエルは本気で怒った顔になった。恐ろしい怒気が全身を包んだ。
「いいわ。そこまで私をバカにするなら、あなたには最悪の転生をお見舞いしてあげるわ」
レリエルは吐き捨てるように言った。
翔はそもそも不遜で横柄な性格的の欠陥だらけの男だ。天使との邂逅という特殊な状況という事にも相手が天使だという尊敬の念も一切考慮する気がないのだ。
「転生の理をお前如き馬鹿に自由にされてたまるか。せいぜい微妙な形で干渉しようと考えているのだろうが結果的に何をしても無駄なんじゃないか?」
翔は、大観的な見地からそう言ったが実際にどのようなルールがあるかなんて分からない。
しかし、図星だったのだろう、この権天使レリエルは悔しそうな顔をしている。
「いいわ。私の持てる力と、この神器の能力をフル活動させてあなたを地獄に送ってやる」
「やれるものならやってみろ。バカ天使」
翔はどこ吹く風とそっぽを向いて言い放った。
レリエルが転生車輪をクルクル回し始めた。彼女は転生車輪を回しながら何やら細々(こまごま)操作している。
さすがに神器だ。凄い魔力が車輪から流れ出しているのが分かる。これには流石の翔もどうする事も出来そうにない。
翔は、防御魔法を使っても無駄だろうとは思いながら防御壁を構築し魔法無効化を何重にも自分に発動した。
その手練にレリエルが驚いていた。
2019年9月6日
第一話をプロローグと二つの第一話に分割しました。




