000 プロローグ
翔は、教室の前に、生徒が群がっているのを見て、立ち止まった。
────何だ?
翔は、不思議に思って近づいて行った。
人だかりは主に我が学園の女の子達だ。その最後尾いた女の子、確かクラスメイトだったはずだが彼女の名前なんて、興味がないので覚えていない。仮に少女Aとでも呼ぼう。
その少女Aが、突然なんの前ぶれも無く振り向いた。しかも目ざとく翔を見つけると満面の笑みを浮かべた。
翔は、彼女の笑みを見て、引き気味に立ち止まってしまった。
────こいつレーダーでも持ってんじゃねぇの?
翔は、面倒臭くそうに心の中で悪態をついた。
見ると、少女Aは満面顔の笑みで翔の方に駆け寄って来くるではないか。
「翔様。凄いですわ。中間テストの結果が貼りだされていますわよ。またダントツの一位でらっしゃいますわ♡♡」
少女Aは、何を興奮しているのかみっともく鼻の穴を膨らませ、大きな声で叫びながら翔の方に迫って来たではないか。
それを見た翔は、生徒達が群がっていた理由を知った。
────なんだよ。ただの成績発表かよ。やめろよ皆に聞こえるよ。
翔は、顔を引きつらせて直ぐに踵を返えすと、少女Aから逃げるように早足でその場を去ろうしたのだった。
しかし、もはや後の祭りだった。その場に居合わせた女の子達が少女Aの声を聞きつけてしまったのだ。
彼女達は、やかましく騒ぎ立てて翔の方に駆け寄ってくるではないか。
「きゃ〜。翔様……」
「翔様よ!」
「どこ? あ本当、翔様だ」
「きゃー!」
女の子達が、騒ぎながら、こちらを見て、手を振った。
────はちゃ〜。面倒な事になったよ〜
慌てて逃げ出す翔だった。
☆
さて、なぜ翔が、これほど、女の子達にモテモテなのかを説明しなければならないだろう。
その理由は以下の通りだ。
翔は………
①大変な『お金持ちの令息』
②由緒ある魔術師の家系の出身
③天才の名を欲しいままにするほどの学業成績
④Sを何十個も前に連ねるほどの『S……級イケメン』
であるからだ。
そう、彼は何もかもを持って生まれた、男の子だったのだ。
翔が、通う私立魔法学院は希少な魔法の才能を有する若者達の学び舎であった。
それだけでなく、私立魔法学院は、とても由緒ある高貴な家柄の令息令嬢のみが入学を許される。いわば超エリート校だったのである。
そんな中でも翔は、最高の家柄と才能を持つ若者だった。
常に成績がダントツの天才と噂も高い超イケメン少年だった。
もし、そんな全てを持った男の子がいたら同性なら嫉妬のあまり「そんな奴は地獄に堕ちろ!」と願うはずだ。
そして、運命の男神も同じ気持ちになって翔の運命を狂わせようと何らかの細工をしたに違いない。
こんな、いけ好かないとても羨ましい男を放っておけるほど男の器量は、大きくできていない。そうでなはいか?.......
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
運命の歯車が狂い始めているとは知らず。翔は、うるさい女達を振り切ろうと躍起になって足早で廊下を曲がったのだった。
全ての始まりは、廊下を曲がった、その瞬間だった。
彼は、いきなり不思議な空間に放り出されていたのだった。
こうして、翔の人生の歯車は大きく狂い始めるのだった。




