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009 え? こいつって最弱モンスターだろ?

2019年8月14日訂正。

読みやすく、文章を訂正しました。

ブックマーク。高評価。いいね。よろしくお願いします。

 翔が手で合図した。本格的な数のゴブリンの群れがいたのだ。およそ三百ほどもいるだろうか。


「メロ。派手にぶっ放してやれ」


「いいの?」


 メロが嬉しそうに言った。


「いいぞ。あんなに纏まっている時こそ、お前の大仰な攻撃魔法が一番効率的なんだ」


 翔がゴーサインを出した。


 メロは杖を天にかざし魔法の術式を展開した。訳の分からない魔法の詠唱をするのは止めていた。メロはイメージを優先させて魔法の術式を展開するようになっていたのだ。


瀑布カタラクタ!」


 メロが叫ぶと魔法が発動された。空から恐ろしい勢いで、大量の水が降ってきた。


 水は、ゴブリン達に巨大な凶器となって降り注いだ。


 地面に激突した水が怒涛の急流となって、廃墟のあらゆる物を押し流した。


「メロ。お前はたったレベル16の魔術師だったはずだが。この魔法の威力は……」


 アメリアは唖然として、当たりの惨状を見回ながら言った。


「こいつの気違い魔法などに驚く事はないぞ。全く制御が不完全な見た目の派手なクズ魔法だ。現に我々も水に飲み込まれるところだったろ?」


 翔は怒涛の洪水を避けるために構築した魔法障壁を解きながら言った。


「所詮こいつの魔法は、派手だが俺のような欠陥魔術師ですらやすやすと破られるようなせいぜいゴブリンの群れ程度にしか通じない半端な魔法だ」


────そのゴブリンの群れを一瞬で退治するのが凄いんじゃないか。


 アメリアは、そう心で考えていたが口には出さなかった。


 ただただ、翔とメロの凄い魔術に呆れる思いだった。


 ーーーーパパパパーン!ーーーー


 どうやらレベルが上がったようだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 翔、レベル8【アップ】

【空中キック】を覚える。

【魔法跳ね返し】を覚える。


 アメリア、レベル8(変わらず)

 メロ、レベル16(変わらず)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 翔は、魔法の各属性が少し上がった。


────悠長な事だな。


 武術系の能力は勢い良くレベルアップしているようだが興味は無いので無視した。


────ほんとうにレベルが上がらんな。


 翔は諦めたように心の中で呟いた。


《申し訳ありません。そろそろ退治する魔物の質を上げた方が良いかもしれません》


────そうだな。パーティーも増えたしな。


 その時だ、瓦礫の山が大きな音を立てて吹き飛んだ。


 激しい衝撃波が翔の全身を打つ。


 メロが意識を無くし崩れ折れた。


《翔様。上空にゴブリンが飛び上がったようです》


 アリスは、緊張した鋭い声で警告した。


「アメリア! 上空に意識を集中しろ!」


 翔は、メロに駆け寄ろうとするアメリアに注意を発した。


 瓦礫が跳ね飛ばされた上空から「ギャー」と恐ろしい雄叫びを上げながら何かが落ちてくるのが見えた。なんと言うジャンプ力だ。何十メートルも飛び上がったのだ。


「アメリア、攻撃魔法を放て!」


 翔が命じたが、アメリアは戦いに慣れていないため直ちに魔法を発動する事ができなかった。


「ギャ〜!!!」


 雄叫びは空中のゴブリンが落ちてくるに従ってだんだん大きくなった。その影響なのだろう身体中がビリビリ震えた。両耳を抑えたが意識が朦朧もうろうとして来た。


 翔は、薄れそうになる意識を必死で留めながら、上空のゴブリンのレベル表示の吹き出しを確認した。


『ゴブリングレイト。レベル18』


 やはり、唯のゴブリンではなさそうだ。


《ゴブリングレイトの称号は珍しいです。レベルからしてもゴブリンロードとぼぼ同義だと思われます。おそらく、成長が早くゴブリンナイトを飛び越して強くなった個体でしょう。急成長のためコロニーがまだ新しく、ゴブリナの数もまだまだ少なくて済んだようです。コロニーが小さくて幸いだったのですが、この個体だけは、レベルが高過ぎるので、今の翔様では危険です》


 アリスは分析した結果を説明して警告を発した。


「アメリア。逃げるぞ」


 アリスの説明を聞くや躊躇い無く、翔は、アメリアに叫びながら、メロを抱えて走り出した。アメリアも、慌てて翔の後ろに付いて走り出した。


 !!!ドカン!!!


 地面に重い物が当たった音が響いた。


 ゴブリングレイトとやらが、着地した音だろうと、翔は想像しながら懸命に逃げた。


 翔は、ゴブリングレイトの視線を遮る為に、慌てて路地を曲がった。アメリアも翔の後に追随した。


 後ろで雄叫びが聞こえたが、立ち止まるどころか振り返りもせずに全力で走った。


 翔は、手で合図をしながら右に角を曲がり、同じようにして、さらに右に角を曲がった。


 ドドドと、ゴブリングレイトが走る音が聞こえた。恐ろしい速度で走って来ているのが音で分かった。


 音は、翔達がさっきまで走っていた路地を走って行ったようだ。間一髪だったのだ。


 足音は市街地の方に走り去ったようだ。上手く躱すことが出来たのだ。


「あっちに行くぞ」


 翔は、全く別の方角に走っていった。


 遥か彼方から、恐ろしい叫び声と爆発音が響いてきた。


 衝撃波がジンジンと体に響いた。ゴブリングレイトは、市街地に入って暴れ回っているに違いない。


「止まれ!」


 翔が叫んだ。


 翔は、メロを肩から下ろした。


「アメリア、メロに回復魔法をかけてやってくれ」


 回復魔法がかけられて、その効果で直ぐにメロが目を覚ました。


「メロ。お前の一番遠くに飛ばせる攻撃魔法をできるだけ遠くの廃墟に打ち込め」


 翔は、まだ、意識のハッキリしていないメロに命じた。


 キョトンとして訳がわからないメロに翔が「早くしろ!」と叱咤した。


 あまりにも切迫した翔の顔に逆らわず、メロは何が何だか分からぬままファイアーボールの魔法をできるだけ遠くに放った。


 翔はメロの魔法を修正し、より大きな爆発が起きるように魔法を調整した。同時に出来るだけ遠くに飛ぶようにも魔法を修正した。


 思ったよりも大きな炎の玉が湧き起こり、恐ろしい勢いで空に打ち出された事に術者本人のメロが驚いて尻もちをついてこけたほどだった。


 高くまで舞い上がった炎の玉は随分遠くまで飛んで行って遥か彼方で着弾すると大爆発を起こして爆音を響かせた。


「よし。全速力で走れ」


 翔は、そう言うとファイアーボールを飛ばした方とは逆の方に走り始めた。


 市街地の方で響いていた雄叫びが、ファイアーボールの方に移動して行くのが分かった。


 翔は、今の爆発で、ゴブリングレイトを市街地から廃墟に意図的に移動させたのだ。


「止まれ」


 翔は、ある程度、廃墟の中心まで移動すると命じた。三人は肩で大きく息をしてていた。


 耳をすますと、ファイアーボールが着弾した辺りでゴブリングレイトが暴れて物を破壊する轟音と雄叫びが響いているのが聞こえた。


 怒り狂ったゴブリングレイトが暴れ回っているのだ。


「お前達。息を整えたか?」


 しばらくして、翔は、尋ねた。


 メロとアメリアの二人は緊張した表情で頷いた。


「あいつは、ゴブリンでも相当強い奴だが、所詮ゴブリンだ。お前達は、ゴブリン如きの雄叫びに気を失ったり、気後れして魔法が発動ができなかったんだぞ」


 翔は諭すように淡々と彼女達の状態を説明してやった。


「あいつは、今は、怒り狂っている。あいつの状態は、先程のお前達と同じで冷静を欠いた状態だ。戦いにおいて、ボンヤリしたり、緊張しすぎたり、あんな風に猛り狂ったりすることがどれほど致命的なのか理解して欲しい。

 メロはボンヤリ突っ立ているから簡単に意識を持って行かれるんだ。アメリアは常に気を張り詰め過ぎているからいざという時にオーバーヒートして魔法が使えなくなるんだ。

 戦いで最も大切なのは冷静な頭と適度な緊張感だ。分かったか」


 翔の淡々とした叱責に二人は返す言葉もない。


「よし。あんな程度の奴に尻尾を巻いて逃げるのは止めるぞ。お前達は、奴が現れたら、出来るだけ威力を込めた攻撃魔法を順番に打ち込め。今は速射できるるようにするのが重要だ、決して派手で大掛かりな魔法なんか撃つんじゃないぞ。分かったか?」


 翔が命じると二人は緊張した面持ちで小さく頷いていた。


「それじゃぁ。あいつをおびき出すぞ。よし、メロ。奴の叫びに向かってさっきと同じ遠距離砲撃だ。用意……ぇぃ!」


 翔の号令と同時にメロがファイアーボールを撃った。翔が魔法を補正し、ファイアーボールが勢いよく飛んで行った。


 遥か彼方に、ファイアーボールが着弾し、爆発音が響いた。その音の直後に、怒り狂った雄叫び響き渡った。ゴブリンが暴れ回る破壊音もしたが、まだかなり距離があった。


 翔は、メロのファイアーボールの方向を、雄叫びの方向に正確に方角を修正した。


「続いて、撃方うちかた準備……ぇぃ!」


 同じようにしてファイアーボールが飛んで行った。


 雄叫びが、先程よりもかなりはっきり聞こえた。ゴブリンがこちらに向かって吠え立てたので声が大きく聞こえたのだろう。


「よし! そろそろ近づいて来るぞ! できるだけ密集しろ」


 そう翔が叫んだ時、建物が破壊される轟音が近付いて来た。先程の雄叫びとは違い相当近くに聞こえた。


《あの雄叫びには破壊力があるようです……》


 アリスが説明してくれたので、翔は皆に言って聞かせた。


「雄叫びは破壊力を含んでいる。効果は物理破壊や精神破壊があり攻撃レベルは5程度だろう。メロならダメージ2、俺とアメリアはダメージ1程度の弱い物理・精神攻撃だ。全くノーガードでも、数回受けても持ちこたえられるはずた。

 奴が視野に入ったら、俺が魔法で防御壁を作る。奴の攻撃力をかなり弱められるはずだ。あまりMPを消費したくないのでできるだけ密集しろ。お前達は、奴が見え次第、二人が交互に攻撃ひろ。できる限り休みなく連続で魔法攻撃を打ち続けろ、俺はお前達の魔法を攻撃力が強くなるように魔法の補正をしてやる。

 お前達。MPに注意しろ。しかし今回は、俺のMPが無くなるのが一番早いだろう。

 MPが無くなると防御壁が無くなるし、お前達の魔法を補正できなくなる。その時は俺は前に打って出る。

 お前達は、その後は各自で判断して行動しろ。俺がゴブリンと打ち合う間に逃げるがいい」


 早口で翔は、命じた。


 今までにないくらい間近に雄叫びが聞こえた。雄叫びに乗って、衝撃波が体に響いた。瓦礫が吹き飛んだ。メロは、身体に力を入れて衝撃波に耐えながら、魔法を構築した。


 翔は、メロが構築する魔法の術式を読み取った。メロは、電撃系の魔法を構築しようとしているようだ。翔は、直ぐに、メロの魔法の術式に可能な限り、手を加えてやった。


 その直後にアメリアも魔法を構築し始めた。アメリアが構築しようとしている魔法は、ファイアーボールのようだ。同じように翔は、術式を補正してやった。


 次の瞬間、大音響が響き渡ったかと思うと、目の前の建物が弾け飛んだ。


 同時に翔は、防御壁を作った。


 待ちきれなかったのだろう、メロが弾け飛んだ建物に向かって攻撃魔法を放った。


「いいタイミングだ」


 翔は、メロの絶妙なタイミングを褒めた。メロには、戦闘のセンスがあるようだと感心した。


 メロの電撃の魔法が建物の奥に着弾し、爆発を引き起こした。


 その次の瞬間、何事も無かったかのように、体長二メートル余りもある恐ろしく凶暴そうなゴブリングレイトが、むしろゆっくりとした動作で全身を現した。


 距離はまだかなりあった。


 メロは落ち着いて次の魔法の構築を始めていた。


 メロの魔法の術式は、先程よりかなり手早く上手くなっていた。


────面白い奴だ。実践型だな。


 翔は、メロの戦闘を見ながら、心の中で感嘆の声を上げていた。


 アメリアが続いてファイアーボールを放った。ファイアーボールは大砲の砲弾のように飛んで行きゴブリングレイトを直撃した。


「見事だ」


 ゴブリングレイトは爆発で少しよろめいたが、吠えながら前進をやめなかった。凄い凶暴さだ。


 続けてメロが電撃の砲弾を発射した。翔が魔法の補正してやった。初速をより早く、加速を大きくしてやった。


 その魔法は、見事にゴブリングレイトの右肩に着弾し、大きな爆発を起こした。ゴブリングレイトは、右肩を後ろにそらすが、前進は止まらなかった。


 次の瞬間、ゴブリングレイトは、雄叫びを上げた。翔の防御壁で衝撃を吸収するが何しろ自分でも情けない位にショボい防御壁だ。衝撃波が三人を包み込んだ。メロが片膝をついた。


 「しっかりしろ。意識を集中させろ。それだけで精神攻撃の防御力が上がる」


 翔が叱咤した。


 メロは頷いて、片膝のまま魔法を構築し始めた。


 翔はすかさずメロの魔法を手直ししてやった。しかし、最初の一発目に比べると随分と魔法が纏まっているではないか。メロの魔法のセンスは大したものだ。


 アメリアがファイアボールを発射した。その攻撃は、前に踏み出そうとしたゴブリングレイトに命中した。


 ゴブリングレイトは、その攻撃で、よろけた。


 メロが、今度は電撃の魔法を発射した。


 ゴブリングレイトは、よろけながらも前に出た。メロの電撃魔法を受けても、よろけながら前進するのをやめなかった。なんというタフさだろう。


 距離がかなり近くなってきた。


 翔は、魔法防御力を高めた。


 アメリアがファイアボールを発射。ゴブリングレイトに命中。


 ゴブリングレイトはこの攻撃で一旦は、片手を地面つけた、しかし、それでも立ち上がり前に飛び出した。恐ろしい強靭さだ。距離が相当縮まった。


 翔は、そろそろ、ゴブリングレイトが雄叫びを叫ぶ頃合いだと判断した。


「メロ。アメリア。攻撃を顔に集中しろ」


 手をついていたゴブリングレイトが立ち上がり、胸を大きく膨らませた。まだ、雄叫びを上げようとしているようだ。


────単純で攻撃の仕方が分かりやすい奴だ。


 翔はほくそ笑んだ。


 その時、アメリアの放ったファイアボールが魔物の顔面に炸裂した。


 ゴブリングレイトは、身を仰け反らせて悲鳴をあげた。


「よし。良いぞ」


 アメリアの攻撃で、ゴブリングレイトの雄叫びを阻止したようだ。魔物はブルブルと空気の漏れるような音を出してうなるぐらいしかできなかった。


 しかしそれだけでも体にジンジン響いたのには翔も驚いた。


 続いてメロは、電撃魔法を発射した。もうほとんど、翔が魔法を補正する必要が無くなっているのには関心した。メロは、本当に凄い魔法センスを持っていたようだ。


「メロ。もう少しMPを強めにし、魔法の発動のタイミングをほんの少し遅らせて打ち出せ」


 すかさず、翔は、最後の微調整を教えてやった。メロは、黙って頷いた。



 翔は、メロの魔法を補正するために残していたMPを防御壁に注ぎ込んだ。アメリアのファイアボールの魔法術式を見ているとアメリアの方も少しマシな術式なってきたようだ。手で書くルーンの速度も随分早くなった。


 翔の手直しの調整も大分楽になり、余裕が出た分を防御壁に回すことが出来るようになった。嬉しい誤算だった。


 ゴブリングレイトの勢いが、弱まって来た。しかし、迫力は、まだまだ凄い。あのギルドで翔を殴ったダグという戦士と比べると桁違いの凄い迫力だった。強靭さ凶暴さのためかレベルよりも強く感じられた。

 

 メロの電撃魔法の発射が少し遅れたスキにゴブリングレイトは間合いを詰めて翔達のところまでたどり着いてしまった。


「ごぉぎゃー!!!」


 雄叫びの衝撃は、感じ無くなったが、その迫力は、凄まじいばかりだった。


 ゴブリングレイトは、叫び声を上げて巨大な剣を振り上げると、恐ろしい速度で皆の先頭の翔に剣を振り下ろした。


 翔は、ゴブリングレイトの剣が当たる辺りだけ、防御壁を強化して魔物の剣を受け止めた。


 殆ど同時に武闘家の必殺技『闘魂キック』を放った。


 大した効果は無いだろうと思っていたがキックは、ゴブリングレイトの腹部に見事にめり込み大きな音を鳴らした。


 二メートルを超すゴブリングレイトが数メートルも吹っ飛んだ。


 そこに、すかさずメロが威力を高めた電撃魔法を放った。


 翔の蹴りで吹き飛んだゴブリングレイトが大勢を立て直そうとしたところに、もろに顔面にメロの電撃砲が爆発した。


 ゴブリングレイトは、その爆発の威力で後ろに大きく吹き飛ばされると倒れた。


 アメリアのファイアボールが追い打ちをかけるように炸裂した。


 しかし異常にしぶといゴブリングレイトは、メロが次の魔法を構築する間に飛んで立ち上がった。


 その勢いを利用して巨大剣を振り下ろしてきた。翔は魔法防御壁で、ゴブリングレイトの斬撃を受け止めた。


 そして、すかさず翔は、ゴブリングレイトの顔面にパンチをかました。


 衝撃で、ゴブリングレイトの顔が後ろに反らされたが、ゴブリングレイトは無理な体勢に構わず、大剣を振り上げた。なんともタフな奴だ。


 体勢を崩しつつ攻撃しようとしたゴブリングレイトは、さすがに大きく腹部を開いてしまったので、翔はがら空きになった腹部にもう一度『闘魂キック』をお見舞いした。


 ゴブリングレイトは、無防備な腹部を蹴られて大きく後ろに弾き飛ばさた。


 ゴブリングレイトの攻撃の動作は、モーションが大きすぎ、攻撃が単調で分かりやすかった。


 弾き飛ばされたゴブリングレイトに、メロが電撃魔法を炸裂させた。


!!!ドカーン!!!


 と、大きな爆発音とともにゴブリングレイトが吹き飛んだ。


「アメリア。俺と連携で攻撃だ。メロは最大の電撃の攻撃をかます準備だ。先程と同じように威力を鋭く集中させて放てよ」


 翔は、叫びながら前に飛びだした。


 翔は、起き上がろうしていたゴブリングレイトに飛び蹴りを放った。蹴りは見事に顔にヒットした。蹴りの衝撃で、ゴブリングレイトの顔が後ろに跳ね上がった。


 直ぐに、アメリアがファイアボールを放った。攻撃が、またもや魔物の顔に命中した。


 さらに、翔が『闘魂キック』を放って、ゴブリングレイトの顔を蹴り上げた。


 ゴブリングレイトは、連続の攻撃を受けて、堪らず膝をついた。


 翔は、その瞬間に、皆に合図を送った。翔とアメリアは、次の瞬間に、ゴブリングレイトの前から飛び退いた。その動作のさ中に。


ぇぃ!」


 翔が大声で命じた。


 翔の命令を受けて、メロが特大電撃魔法を炸裂させた。その攻撃魔法により、大きな爆発が発生したのだった。


 翔が、慌てて電撃を魔法障壁で守らなかったら翔達まで、巻き込まれるほどの魔法だった。


────やれやれだな。


 とにかく、メロのその攻撃でゴブリングレイトは動かなくなった。



☆☆☆



 三人は、やれやれとその場に座り込んで息を整えた。


 ようやくゴブリングレイトを退治したようだ。暫く休んでから翔は、動かなくなったゴブリングレイトの横に行き魔核を精製した。魔核とゴブリンナイトの牙、ゴブリンロードの爪が精製された。


 魔核は、いつもの物よりも少し大きかった。


「アメリア。これは、お前にやろう」


 翔は、アメリアに魔核を渡した。


「これは?」


「魔核と言って、魔物の魔法能力を凝縮したものだ。飲むと魔法の能力が少しだが改善する」


「そんな便利なものが有るのか?」


「珍しい物らしい。俺は、こっちの世界に転生されるときに、この魔核を精製する能力を授けられたんだ。とにかく今の能力を確認してみて、それから飲んで能力がどう変化したか見てみろ」


 アメリアは、翔の言われた通りにした。アメリアには、翔やメロのようなレベルやステータスを感知する能力は無いので冒険者カードで確認しながら魔核を飲んだ。


「この魔核のおかげで土、火、風、金、水の属性のステータスが3〜5アップしたぞ」


 アメリアが驚いて言った。


────やはり、レベルが高いと能力のアップが良いようだな。


 アメリアの返事を聞きながら、翔は頭の中で考えた。


《あのゴブリングレイトは、将来性の高いゴブリンだったのでしょう。レベル以上に強敵でした。さすがに翔様ですね。よく退治されました》


「おい。お前達。ボスゴブリンは退治したぞ、後はゴブリンを掃討しに行くぞ」


 翔は、まだ戦いの余韻に浸っていた、メロとアメリアに宣言したのだった。


「ええええ? まだ戦うの。メロ嫌だぁぁぁ」


 メロが非難の声を上げた。


「安心しろ、あのゴブリングレイト以外はカスばかりだ。ちゃっちゃと掃討して冒険者ギルドに戦利品を買い取らせに行くぞ」



☆☆☆



 この日、翔達は、ゴブリンのコロニーを掃討した。ゴブリングレイトの高いレベルに比してコロニーは貧弱で小規模なものだった。


 アリスによると、ゴブリングレイトは、あまりにも才能がありすぎて、コロニーや親衛隊の整備が追いつかないほど、レベルアップが早かったのだろうとの事だった。


 ゴブリングレイトがもう少し経験の深い奴なら、自分が戦うような馬鹿な真似はせず、コロニーと親衛隊の整備に専念したはずだ。逆に、アリスもコロニーの規模から群れのボスのレベルを見誤っていた訳で、際どい綱渡りだった。



《翔様。分析が大きく外れた事、申し訳ありませんでした。しかし、ゴブリンナイト以上が現れたら逃げると仰っていたのにどうして戦われたのですか?》


 アリスが珍しく質問してきた。


────ああ。あのゴブリングレイトは、完全に切れて冷静さを欠いていたからな。れると思った。


《さすがは翔様です。戦いの機微を良く知っていらっしゃる》


────お世辞を言うのはよせ。ちょっと甘かったと反省している。我々があれ程弱いとは思ってもいなかったしレベルからするとあいつは強すぎはしないか?


狂戦士バーサク状態だったのでしょう。稀にそのような資質を持ったゴブリンが生まれる事があります。しかし、狂戦士バーサクは、翔様のように冷静に対処すれば容易たやすく対応できるものです。お見事でした》


 翔は、バーサクなどと言う要素は考えもしなかった。理論と実践がかけ離れている事の事例なのだろうが、翔は改めて認識した瞬間だった。


 今回の苦戦は、翔の判断ミスに起因したものと認めざるを得なかった。本当に際どかった事を、改めて思い知らされたのであった。


【ゴブリン討伐後の戦果】

○翔、レベル8【アップ】

○アメリア、レベル9【アップ】

○メロ、レベル16

【魔核による魔法能力の改善状況】

(魔法能力だけをレベルに換算して、評価)

○翔、レベル4程度【アップ】

○アメリア、レベル10【アップ】

○メロ、レベル18

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