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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第二章 仲間編

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058 頑張る時は頑張るんだから

 翔達のメンバーは大いにサラを歓迎した。何しろ生き返った時の献身の看病を受けた者からするともはや他人とは思えない。


 サラは若くして天宮の要職の聖母になるほどの天才であり『聖母。神聖魔法師。白魔術師。回復魔法師』のフォースである。金髪に青い瞳の美女で回復系・復活系・白魔術・神聖魔法のエキスパートだ。


 彼女さえいれば大仰おおぎょうな天宮など作るまでもなく復活させてくれるだろう。


 復活魔法はユグドラシル固有の魔法でおそらく一種の特殊技に近い魔法でさすがの翔ですらうまく使う事ができない魔法である。メロなどには絶対に任せたくはない魔法だった。


「サラ。嬉しい。私。サラと一緒に歩く」

 メロがサラに飛びついた。一緒に歩くとは冒険の時はサラの横のポジションが良いと言いたいのだろう。


「メロさんは可愛らしいですね」

 サラがメロの頭を撫で撫でしてやりながら言った。





 翔達のメンバーとアンジェリーナ達『解放戦線』のメンバーが今後の方針について話合った。その中で重要案件が以下のように浮き彫りにされた。


○戦士の訓練

○伯爵との連携

○戦費調達

○組織作り


 翔はいくつかの提言をした。

 それは①戦士の訓練は翔達のメンバーが担当する。②魔法道具を有効利用する。③伯爵には魔人軍団《音無》として参戦すると説明する。④人材を登用し優秀なリーダーを育てる。

 の四点だ。


 始めに①の訓練だが翔はレイラを訓練隊長にしてメロ、芹那せりなの二人を魔術師系戦士の養成に、アメリアを剣技形戦士の養成にセーラを特殊技系戦士の養成をするように分けた。翔達のメンバーのようにオールマイティである必要はないし効率よくレベルを上げる事ができる。



 次に②の魔法道具の有効利用は、『解放戦線』の戦費の調達に寄与しつつ戦力強化もできると言う一石二鳥を狙った作戦だった。翔はアイテムを自分達の戦力増強の為に作るだけではなく産業として今後の『解放戦線』の組織の運用資金とすることを考えたのだ。翔が担当することとなった。


 早速、魔界(ヘル・ヘルム)中から優秀な職人が呼び集められた。


 次に③の伯爵との連携のために《音無》の名前を使うのは、元々、《音無》と言う名前は、カロンが人間の権利を救う目的で作った組織で由緒がある名前だからだ。これはアンジェリーナの説明で『解放戦線』の全てのメンバーが納得した。


 また、悪魔貴族達は人間の支援など最初から期待しないだろう。そうなれば活躍の場が与えられない。魔人軍団の《音無》が支援すると言うならそれなりの場が与えられるとの考えだ。


 しかし既存の暗殺組織《音無》が名前を侵害されて妨害してくるのではないかとアンジェリーナが心配したが、翔は本当はそれを狙ってやっている事だと説明して皆を黙らせた。


 伯爵との直接の連絡にはアンジェリーナと本物の魔人であるイリスが当たる事となった。



 最後の④の『解放戦線』の人材登用についえば、現『解放戦線』のリーダー達を口先だけでなく訓練に積極的に参加させてモヤシ体質を脱皮させる事。より良い人材は積極的にリーダー格に押し上げることで組織を活性化させようとしたのだ。翔にはこのメンバーが戦争ごっこをしているように見えて仕方がなかったのだ。



 直ぐに翔はとある建物を借りて工房を作りアイテムの作成準備に取り掛かった。


 工房には鍛治職人、付与魔法職人、設計技師、魔法陣設計技師などが集められた。彼等は人間であるが、普段は悪魔達に安価で雇われて貧困に喘いでいた職人達だった。


「俺は様々なアイテムの製造方法を知っている。それを応用して新しいアイテムを作ろうと考えている。君達のノウハウやアイデアを合わせてより良い物を作る。しかし、俺は量産品と特別品の二種類作るつもりだ」


「量産品と特別品ですか?」

 職人の一人が尋ねた。


「敵に強力な武器を売ってどうするんだ?」


「敵にアイテムを売りつけるつもりですか?」

 その職人は目を白黒させている。


「量産品は、敵の悪魔侯爵デーモンマーカスマルコキアスの領内で作って売りさばく。戦争前だから飛ぶように売れるだろう」


「それは利敵行為では?」


「俺達の敵は悪魔達全員だよ。そこはお前達と俺とでは感覚が別だろうがな。ちなみに悪魔を崇拝するんだったら悪魔侯爵デーモンマーカスマルコキアスとも戦えんだろう」


「いいや。俺達職人は悪魔なんぞ崇拝してませんよ。要は良いものを作りそれを適正価格で買ってもらえりゃ相手はだれだって良い。悪魔崇拝の組織だって、我が身が可愛いから入っただけだよ」

 その職人は正直に自分達の境遇を語った。


 翔は頷いた。

「その説明の方が俺には理解できるな。俺なら馬鹿にされればそいつ等より強くなって見返してやるだけだが、尻尾を振って宗教組織まで作るなんぞは信じられん」

 翔の辛辣しんらつな評価が始まった。


 しかし、翔の意見は、『解放戦線』の頭デッカチのリーダー達よりも職人達の方がよほど理解が早かったようだ。


「俺達職人は翔さんと似たり寄ったりだよ。しかし悪魔には勝てる気がしないので悪魔を崇拝しているように見せるしかない」


「そんなもんかい?」

 翔は職人の話を納得できそうもない。


「まぁ。そんな話よりも、アイテム作りの話しだ」

 翔は話題を切り替えた。

「この辺には毒消し草が全く生えないと聞く。調べると『毒消し薬』は結構高いんだよ。そこで敵の悪魔侯爵デーモンマーカスマルコキアス領内に我々が毒矢を大量に仕入れているとの偽情報を流しつつ『毒消し薬』を大量に制作する。毒消し草は、俺が刈り取って持ってきてやる」


 敵は二十万からいるそうだから『毒消し薬』は飛ぶように売れるだろうし『毒消し薬』は利敵行為にもならないのだ。売って嫌な思いもしないだろうとの配慮だ。その辺を説明すると職人達はようやく納得したようだった。


「もう一方のアイテム開発だが……」

 翔はマジックバックから様々な素材を取り出して職人達に見せつつ、様々なアイテムの調合について話し合いを行なった。


 回復アイテムは、大量に作り、これは味方の悪魔に売りさばく事とする。翔は調合師としてのスキルを使い上級回復薬の作り方などを職人達に教える予定だ。


 更には武具についてだ。『解放戦線』の約三千の兵達に強力な武具を作ってやろうと言うのだ。翔一人でも三ヶ月もかければ三千人くらいの武具を作ることはできるかもしれないが『解放戦線』の今後の活動を考えると翔以外の職人で作る事が可能な武具でどこまでやれるかを考えた方が将来的に有用だろうとの翔の判断だった。


 その他のアイテムについても翔は多くの提言をした。例えばマジックバック一つにしても有れば相当便利だからだ。


 そもそも魔法道具はあまりにも高価で魔界の底辺で生きる人間達には高値の花だったのだ。


 翔はゼノ要塞城で出会った鍛治職人セルマと共同で開発した魔道具の銃や魔核で魔力を供給するシステムなどを魔界の職人達に教えた。


 鍛治師セルマの技を職人達に教えるため今ではアガリアンで大きな工房を作っていた鍛治師セルマをわざわざ呼んできて職人達に技を教えてもらった。


 翔は聖オーラヴ王国の『始まりの街』のマギクラフト工房『星章スターサイン』で女工房主だった、シーズ・リードのアイテム調合の技を職人達に教えてやった。


 魔界には無い様々の技を職人達は学び工房は大いに盛り上がった。そして極め付けがマム村のアベル村長から教えてもらった技の伝授だ


「このユグドラシル世界では存在しない神代文字によるアイテムについても話しておく」

 翔がその話を始めた時、部屋からどよめきが起こった。


「翔さん。まだそんな隠し玉があったんですか?」

 職人の一人が思いっきり食いついてきた。


 職人達は既に翔の話に虜になっている。職人とはそう言うものだ。目の前に未知の知識や技を開示してくれる存在がいる。それは彼等にとっては神にも等しい存在だろう。



「つまり、この神代文字で魔法を定着させれば付与魔法の効果が簡単に作れるのですね」


「そうだ。俺は創造魔法を駆使して付与魔法の重ねがけをする事ができる」

 そう翔が説明すると付与魔法師がどよめいた。それを無視して翔は話を続けた。ここにいるものは付与魔法が重ねがけ出来ない事を熟知している者だけだ。

「しかし、この神代文字は上手く使うといくつかの付与魔法を重ねがけするのと同じ効果が出せるんだ。凄いだろ」


 その話に職人達は目一杯食いついて来た。


「神代文字をパーツに仕込んで組み込めば伝説の機械人形やゴーレムなんてのも作れますね」

 若い職人がそう言って目を輝かせた。


「そうかもな。それは、今後お前が挑戦してみるんだな」

 翔が軽く言った。


 翔は軽く言ったがこの職人は後に機械人形マスターとなり多くの魔法の人形を作るマイスターになる。彼は翔からこの時に授けられた技を広めるなとの約束を守り彼の技は一子相伝となった。この技を彼はマンダリン法と呼んだのはづっと未来の別の話だ。



 翔と職人達が工房に閉じこもって武具を作っている間に『解放戦線』では二つのことが進められていた。一つは戦費獲得のための商売だ。


 翔から味方のハルファス伯爵領内では『回復薬』を敵のマルコキアス侯爵領内では『毒消し薬』を作って販売するための拠点が作られて早々に製造販売が行われた。


 もう一方は、『解放戦線』の戦士達の訓練だ。


 訓練の総合責任者はレイラ・リンデグレンが任される事になった。手の空いている者が訓練に当たるという事で進められた。


 ルルとララはシスターサラから回復魔法を教わったり、逆にシスターサラのレベル上げを行なったりお互いのスキル向上を行なった。もちろん『解放戦線』の戦士が死んで復活を依頼されることもあった。


 三千の戦士達のレベル上げも魔界ではそれ程困難ではなかった。それ程魔界では多くの強力な魔物が大量生産しているポイントに事欠かなかったからだ。



「翔様。戦士達の訓練は順調です。翔様のおっしゃられたように、復活の効果は凄いですね。戦士達は最近までレベルの向上は顕著ではありませんでしたが、最近ではかなりの速度でレベルが上がり始めたようです」

 アンジェリーナが興奮気味で報告した。


 メニューで鑑定するとアンジェリーナのレベルも100を超えているようだ。レイラの手腕を褒めてやらねばならないだろう。レベル100と言えば下級の悪魔貴族並みだ。


「アンジェリーナ。そろそろ伯爵とご対面と行こうか。イリスと俺が魔人と称してお前が伯爵と折衝しろ。お前は精一杯闘気(バトルオーラ)を撒き散らして自分が強いんだと奴らに見せてやれ。伯爵の屋敷に入る前に強化魔法をかけまくってやるから心配するな」


 翔は不安そうなアンジェリーナを励ますように言った。


「心配するな。奴らの誰かがお前を試すような展開になったらイリスを使えば良い。ちなみにお前は自分が魔人とも人間とも一言も言うなよ。種族鑑定とかされたら面倒だからな」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【ハルファス悪魔伯爵デーモンカウトンの屋敷】


 予想通りアンジェリーナは、伯爵と面会できなかった。


 入って来たのはレベルが80ぐらいの悪魔だった。部屋に入るなりアンジェリーナの闘気バトルオーラに圧倒されて目を白黒させている。


「俺は伯爵様の代理の下級騎兵キャバリエ・メージャーのアファンダだ。お前達が『悪魔崇拝』の人間どもか?」


「はい。本日は我々の実戦部隊《音無》のメンバーを連れてきました」

 アンジェリーナが答えた。


「ほう。《音無》だと。確か魔人の軍団だと噂を聞いた事があるが」

 アファンダン下級騎兵キャバリエ・メージャーが驚きの声をあげる。


「はい。私の後ろのこれらの戦士達も魔人でございます」

 アンジェリーナが答えた。


「何?」

 一瞬、アファンダン下級騎兵キャバリエ・メージャーの顔色が変わる。


 彼は人間と同じく両親から生まれた、言うなればにせものの魔人だ。魔精結晶から生まれる魔人などそうそういるものでは無い。


 悪魔のほとんどはアファンダン下級騎兵キャバリエ・メージャーと同じようなものだ。力を欲するあまり、知能の低い魔物と交配することも少なくない彼らの世界だ。アファンダンの血の中にもどんな魔物の血が混じっているのか分かったものではない。その点、魔精結晶から生まれる純粋の魔人は憧れの対象だ。


 早速、アファンダンは翔とイリスの二人に『探知サーチ』魔法を掛けて確かめる。闘気バトルオーラをムンムンさせているアンジェリーナには怖くて探知はかけられなかった。


 なるほど、レベル130ぐらいだろうか自分よりもレベルが高いのでよく分からないが魔人で間違い無いだろう。アファンダン下級騎兵キャバリエ・メージャーは、ギョッとして探知を解いた。


「少し待っていてくれ。俺では荷が勝ちすぎる。上司を呼んでくる」

 アファンダン下級騎兵キャバリエ・メージャーが言った。



 次に魔界騎士アファンダンと一緒に入って来た悪魔はドアーの隅から中の様子を見ただけで消えた。直ぐに別の悪魔が応対に現れた。悪魔は何も名乗らずに翔達の前にドカリと座り何も言わずに探知魔法を使った。


 翔がメニューを見ると、悪魔騎士はレベル165だと分かる。


 しかし、その悪魔騎士も翔達のレベルが高すぎて探知魔法が発動せず、腰を浮かしてギョッとした。そこをすかさず翔が言った。


「この屋敷では客人に探知魔法を当てるのが習わしか。これ以上、無礼を働けば覚悟があるぞ」

 翔は重々しく言った。


「翔。黙りなさい」

 手はず通り、アンジェリーナが翔を叱咤するフリをした。


「はっ」

 翔は口だけ丁寧に言ったが、一瞬だけ闘気バトルオーラを悪魔騎士に放った。完全な威嚇だ。


 しかし、悪魔騎士はその闘気バトルオーラの強さに意識が飛びそうになる程の衝撃を受けて、彼はゴニョゴニョ言い訳して、慌てて部屋を飛び出して行った。



「すまんな。お主達のような魔人殿が来られると知れば、余が参ったものを」

 ハルファス伯爵が快活に言った。


 強さが判断基準の魔界ならではだ。客人が強い者なら丁重に扱うのだ。地位よりも力が全てなのだ。成長の早い魔人は時には魔王に匹敵するまで強くなる事もある。魔人をおろそかにしないのはそれだけの理由があるのだ。


 ましてや魔族となると、大抵は大貴族に匹敵する力を持つようになるから絶対におろそかにはしない。


「悪魔崇拝の人間の組織にも《音無》という心強い組織があるのだな。余の記憶では《音無》は悪魔皇帝ベルゼブブ様の組織と記憶しておるがな」


「はっ。《音無》は悪魔崇拝の組織です。閣下の仰っている《音無》も元々は同じ組織から派生したものです。調べていただければ分かるかと存じます」

 翔は事実をそのまま伝える。


「そうなのか。魔人の暗殺者集団というから恐ろしいイメージしかなかったが、悪魔崇拝者達の組織だったのだな」

 伯爵は納得したようだ。もし、調べても《音無》が悪魔崇拝組織から派生したことは誤りで無いので問題にはならないだろう。そもそも暗殺者集団など正式な組織として公表されているはず無いのだ。


 翔は世界樹ネットの情報をアリスに頼んでレベル224に改ざんし、わざと自分のレベルを伯爵に探知させて見せている。ちなみにメニューを見て分かった伯爵のステータスは、レベル280の悪魔伯爵、魔界騎士。暗黒騎士のトリプルだった。


 イリスも翔と同じようなレベルに、アンジェリーナは少し上のレベルに見せかけていた。


「お主達ほどの実力なら当家に士官するつもりはないか?」

 伯爵は真剣な眼差しで言った。


「ありがとうございます。その話も含めてお話があります。今日は、我が『悪魔崇拝組織』がこの度の戦において伯爵様の軍に参戦させて頂きたいと知らせに参りまったのです」

 アンジェリーナが言った。


 三人のレベルだけで、伯爵は思いっきり食いついてきた。

「それで、《音無》はいかほど参戦して頂けるので?」


「三千騎ほど参戦させていただきます」


「おお。三千騎とな。それは皆、魔人なのか?」

 伯爵が身を乗り出した。


「いえいえ。さすがに。しかし実力は伯爵様もご満足頂けることは間違いないと。何しろ《音無》の精鋭ですから」

 アンジェリーナが答え、伯爵は何度も頷いた。

「そこで、伯爵様にお願いがございます」


「なんじゃ? 士官の事か?」

 伯爵は尋ねた。


「はい。それは我々の実力に見合った持ち場を与えて頂きたいのです」

 アンジェリーナが願い出る。



「ほう。つまり厳しい戦場を望まれると」

 伯爵が少し驚いた顔で言った。


「我々《音無》は噂ばかりであまり歴史の表面には出ておりません。我々はそれが不本意なのでここにやって参りました。我々の真の実力を宣伝し我々の実力にふさわしい地位を勝ち取るのが我々の願いです」

 アンジェリーナが説明した。


「よしよし。お主達と我々の目的がピタリと当てはまったのじゃな」

 伯爵はそう言って笑った。



「馬鹿貴族で助かったな」

 翔がいつもの辛辣しんらつな評価をくだした。


「冷や汗で背中が冷んやりしているわ」

 真面目なアンジェリーナは人を騙すのが苦手なようで終始オドオドしていた。しかしその姿は翔には好ましく見えた。


「お前は、真面目すぎだ。もっと自由に生きたらいいんじゃないか?」

 翔が小さな声で言った。


 アンジェリーナは何も言わなかったが翔の言葉で物思いに浸っていた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【戦士達の訓練風景】


「はーい。皆。私にかかってきなさい。どうにかして私に手傷を負わせたら訓練終了よ」

 セーラが言った。


 セーラの前には『解放戦線』の戦士達が集団で待機していた。その中には、翔に食って掛かった『解放戦線』のリーダー格の者達も混じっている。

「先生。貴方は芹那せりな様のメンバーの中では一番弱い方だと言われましたよね。我々全員で掛かって大丈夫なんでしょうか?」


「口だけの男は嫌いだよ。つべこべ言ってないであんたから掛かってきな」

 セーラが冷たく言い放った。


「偉そうに。皆、行くぞ!」

 そう言ってリーダー格の男の子はセーラに飛びかかった。


 その飛びかかった全員がセーラの剣技の一閃で吹き飛んでしまう。身体の原型もとどめない無残な残骸となって後方に控えていた『解放戦線』のメンバーに降りかかった。


 恐ろしい悲鳴が上がり、『解放戦線』の戦士達は我先に逃げ出した。


 しかし彼らの前には猫魔獣ミケが爪を伸ばして待っていた。真っ先に逃げた戦士達は最初に肉片になった者達よりももっとひどい目にあったのだった。



「大丈夫ですか?」

 復活した男の子に優しいシスターサラが声をかけた。


「どうか私を殺してください。こんな苦しみには耐えれません。どうか苦痛を味合う暇も無いぐらいに殺してください」

 復活した男の子は、例の『解放戦線』のリーダー格の男の子だった。復活障害のため死ぬよりもひどい苦痛に見舞われているのだ。


「大丈夫です。直ぐに楽にしてあげますからね」

 シスターサラはそう言うと直ぐに復活障害を取り除く魔法をかけた。


「ああ〜」

 リーダー格の男の子は大きなため息をつくとようやく少し落ち着いた。直ぐに気を失ってしまう。



「……。皆さんも翔さん達のようになりたかったら、どれほど苦しくっても立ち上がり何度でも復活して実力をつけてください」

 復活者全てを集めシスターサラは復活とレベルの関係の講義を行なったのである。


 その講義を聞いて、あまりもの辛さに身をさいなまれつつも希望に燃えつつ、もう一度立ち上がる人とそのまま消えて行く者に分かれる。ここが高レベルへの分水嶺ぶんすいれいだと知らずに。



「よく戻ってきたな。頑張れよ」

 その声とともにポンと肩を叩かれ男の子は振り向いた。


 彼が見たのは翔の優しい笑顔だった。頑張る者に対する掛け値無しの賞賛の笑顔だ。


「はっ」

 『解放戦線』のリーダー格の男の子は背筋を伸ばして翔の顔を改めて見た。


 偉そうで不遜な男との印象が今やガラリと変わっていた。美しく優しいシスターサラが語る伝説の男がそこに立っていた。


 彼と関わる全ての戦士達は芯から鍛え直される。それこそ殺されるほどに。


「努力は裏切らん。死ぬほどに強くなる。信じて頑張ってくれ」

 翔はそう言って去って行った。


 口だけの『解放戦線』のリーダー格の男の子がその瞬間から真の戦士に変わった瞬間だった。


058 了

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