056 こんな奴らを鍛え上げるなんてできるわけねぇだろ
【修正履歴】
2020.11.5
文章の構成などを手直ししました。現在全ての文章を手直しする予定です。手直しは、28話までできています。ここは、少し飛ばして手直ししました。前後と少し違和感のある文章となってしまっています。ご容赦ください。
アンジェリーナは、翔達を『解放戦線』の本部に連れて行き、翔達を仲間に紹介した。『解放戦線』だとか『悪魔崇拝』だとか何だか面倒で近づきたく無さそうな響きのメンバーの割になかなか気さくそうな雰囲気の人達だった。
「何から話そうかしら。貴方達は、見るからに強そうだし。貴方達は本当に不思議なメンバーね」
アンジェリーナは、そこまで言うと、まず魔王の芹那をチラ見し、次に魔人イリスを見た。
「俺達がどうだってんだ? ありふれたメンバーだろう。この魔界では俺達なんかよりもよっぽど変わった面子が大手を振って歩いているじゃ無いか」
翔は、不思議に思って話した。
「翔。貴方は魔人じゃ無いわよね」
アンジェリーナは、翔を見ながら言った。
「ああ。俺は人間だ。それがどうしたんだ。魔人も人間も似たようなもんだろう」
翔が言った。
「私達魔人は、見た目が人間なだけで魔物と一緒よ」
イリスが翔の横から言った。
「貴方は本物の魔人なの?」
アンジェリーナが驚いてイリスを見た。目が大きく見開かられて口が開いている。その表情から相当驚いているのが分かる。
「まぁ、こいつの言っている事は気にするな。こいつは普通の女の子だ。それより、魔人如きでどうしてそんなに驚くんだ? 魔界には魔人なんぞ幾らでもいるだろう」
翔は、逆に聞き返した。
「魔人がどこにもいるなんて、そんなはず無いでしょう」
アンジェリーナは笑いながら言った。
「そうなのか? そんな奴は幾らでも居るんだと思ってたが」
逆に翔は驚いてみせる。
「魔族も魔人もそんなにいないわよ。ちなみに、芹那様の角や羽はアクセサリーじゃないですよね」
アンジェリーナは呆れながら答えた。
その言葉を聞いた途端に芹那はシュンとしょげた。
「うう。こんな気持ち悪い……。アイテムだったら良かったのに……」
「芹那様は本当に魔族様なのですね。この魔界では、魔族様は階級の頂天の存在です。我々悪魔崇拝者には神にも等しい存在です。しかも魔族の中でも角や羽まで生えている魔族様は本当に希です。さぞお強いのでしょうね」
アンジェリーナは芹那に憧れの視線を向け少し頭を下げながら言った。芹那に対する態度は他の誰とも違っている。
さすが悪魔崇拝者達だ。芹那が魔王だなどと漏らせばアンジェリーナはその場に土下座しかねない勢いだ。
アンジェリーナは芹那に頭を下げたまま魔界の階層意識を説明してくれた。
魔界の住人の階層意識は上から『魔族→魔人→知的で強い魔物→強い魔物→強い亜人種→人間→魔物』と言う階層意識となっているらしい。
魔界では強さが社会的階層の判断基準だ。魔物であっても強ければ社会的階層では上になる。魔物は普通はコミュニケーションすら取れない知能の低い魔物がほとんどだが魔界の人々はそんな魔物でさえ強いと言うことで尊崇する。
しかし、地表のミッドガルドとは違い魔界の住民は、決して弱いだけの生物ではない。人間は束になり他の弱い魔物達を狩ることも可能だからだ。
それが知恵の力だ。強さが社会的階層の唯一の基準である魔界では知恵ですら強さの判断基準の一つでしか無いのだ。
「魔界の最底辺が普通の人間。私達はその人間のレベルを少しでも上げ地位を良くしたい。戦力の向上に益しているので悪魔貴族も私達の活動を支援してくれているの」
「なるほどな。なかなか複雑だな」
翔が首を傾げながら言った。
「そう。それは私の政治的手腕なんだけど……。敵の敵は味方だという説明を領主の伯爵様は理解してくださった」
「利用されているだけじゃ無いか?」
「それでも良いわ。伯爵様は魔人なので、魔族の悪魔よりは我々に好意的よ」
アンジェリーナが答えた。
ここの領主である悪魔伯爵ハルファスは開明派の領主で、彼の領地は人間や亜人種など弱い種族の比率が多い。そんな場所なのでアンジェリーナ達は『解放戦線』の本部をここに作ったのだそうだ。
「あなた達は、さっきから魔族の芹那様を茶化したりしているから気をつけたほうが良いわよ。別の魔族が見ていたら騒動になりかねないわ」
「無理だ。こいつを茶化さずにはいられない」
翔が即答した。
「貴方はまぁ、魔人に見えるから好きにすれば良いわよ。でも貴方とイリスさん以外はやめておいた方が良いわよ」
「そんな事よりもお前は、ここで何をしてたんだ?」
翔が逆に聞いた。
「そうね。メロさん。大地母カロン様の話が聞きたいわよね。カロン様は、ずっと昔、悪魔崇拝組織の司祭をされていたらしいわ。でも同じ悪魔崇拝組織から派生した原理主義組織《音無》との間で主義主張に争いがあったため出ていかれたと伝えられているわ」
アンジェリーナが答えた。
「アンジェリーナ。お前の話はよく分からん。大地母だとか《音無》とかいろんな単語ありすぎだろう。ちゃんと説明しろよ」
「翔。メニューに説明が書いてるよ」
メロが翔の耳元で囁いた。
なるほどと翔はメニューを立ち上げた。
《カロンは、異界の地球からの転移者である。転移後に魔界の住民となったが、魔界に於いて、あまりにも酷い人間(魔人を含む)への差別扱いを改善させるため人間の結集を呼びかけ『壊滅党』を結成した。その後、彼女は大地母と呼ばれるようになった。
しかし、彼女の思想は、ラグナロクにより世界の全てを浄化し正しい世界を再構築するというものであった。この思想は、ユグドラシルでは、多方面で広く広がっている古くからの思想である。
その思想は、一方で破滅主義者の危険思想家とみなされて、世間から排斥される事にもなった。彼女の組織は、後に悪魔皇帝ベルゼブブの傘下に入ったが、魔人の暗殺部隊である《音無》が結成されるなどカロンの当初の目論見から大きく外れたため争いとなり、組織を追われる事となった。カロンは、その後、大賢者ゾングアルスと出会い一子を設けるが魔法で子供の出産を停止させながら活動を続けた。その後ミッドガルドのユーリ国王の暗殺を阻止しようとして《音無》と深く敵対する事となった。
長い間、魔界の人間達を暴力から守る為のレジスタンス運動を主催していたが、彼女は、魔法で老化を抑制するなどして長い間、子供の出産を停止していたが、限界に達したため、全ての活動を辞めて、出産停止の魔術を解除してメロを産み、メロを育てた。
彼女の作ったレジスタンス組織や『破壊党』の一部組織が独立して現在の『解放戦線』が結成され、アンジェリーナがその組織を引き継いだ。カロンは『解放戦線』では大地母として崇められている。しかし『解放戦線』は、あまりにも弱体化しており誰にも相手にされていないと言うのが現状。翔達の支援を受けることができれば多少マシになるかもしれない》
とても長いメニューの説明文だ。読んでいて疲れる。
翔は、その説明文を見て、内容に少なからず驚いた。メロは、こんな内容を読んで平然としているのだろうかと、なんだか不思議な気分だ。
メロの平静極まりない佇まいが納得いかない翔だったが、今は、説明文の最後に書いてある、『解放戦線』への支援をどうするかが重要だ。
「お前達の活動の事は俺の鑑定能力で大体分かった。しかし俺達はレベルアップするまで人の事に構っている暇はないぞ」
翔は、冷たく言い放った。
「でも、そこを何とか。お願いだから助けて」
アンジェリーナが頭を下げた。
「俺達に何をしろと言うんだ?」
助けてという言葉に弱い翔は、改めて聞いたが、メロが自分の頭を人差し指てトントンとつつく動作をして翔にメニューを見ろと促している事に気付いた。
──────メニュー!
翔は、頷きながらメニューを開く。
《アンジェリーナの願いクエストが発生しました。このクエストを成就するとメロの仇の情報を得る事ができる。
【クエストの内容。】
○アンジェリーナの願いを聞き入れ『解放戦線』の戦士として、悪魔伯爵ハルファスの傘下に入り、ハルファスの隣の領主である悪魔侯爵マルコキアスと戦いって活躍し恩賞をもらう事。
○『解放戦線』の戦士達を鍛え上げて使い物になるようにする事。
「アンジェリーナ。マルコキアス侯爵とやらには勝たなくて良いんだな。あまり目立ちたくないよな」
翔は、アンジェリーナに尋ねた。
「どうして私の願いが?」
アンジェリーナが驚いて聞いた。
「だから、鑑定能力だって言っただろ。この鑑定能力は多少の予言的な力があるだよ」
翔が説明した。
「随分。その鑑定能力はすごい能力なのね。でも修得するのは難しいのでしょうね」
アンジェリーナが感嘆しながら言った。
「ああ。大魔王サタンを倒すぐらいの能力が必要だな。ちなみにお前のお願いのもう一つの方だか、……しかし、こいつらを使い物にできるほど俺は名コーチじゃないぞ」
翔は『解放戦線』のお人好しそうなメンバーをうんざりして眺めながら言った。
056 了




